世帯分離のメリットとデメリット|住民税や保険料との関係も詳しく解説

2024.09.18

本記事では、世帯分離のメリットやデメリット、税金などとの関係性などについて解説していきます。
世帯分離は、家族が一緒に暮らす家庭から、別々の世帯として生活することを指します。

これから世帯分離をしようと思っている方や、扶養に関するあれこれが気になっている方は、
是非参考にしてみてください。

そもそも世帯分離とは

「世帯分離ってそもそも何?」という方のために説明すると、同居していながらも
家族間(主に親と子)の世帯を分けることを指します。
世帯分離を行うと住民票の世帯を分けることになるため、役所の窓口で手続きをする必要が
出てきます。

しかし、介護が必要な家族がいる場合は様々なメリットがあるので「要介護の親と同居している」
「認知症の親との同居を検討中」のような方には検討する価値が大いにあります。 
一方で、世帯分離することで生じるデメリットも存在するので、総合的に考えて実際に行うかどうか
判断しましょう。 

世帯分離のメリット

親子間での世帯分離は、現在同居している親子間で住民票の世帯を分けることを指します。
よって、親と同居している場合にも、世帯分離を行うことはできます。
そんな中で得られるメリットには何があるのかを解説していきます。

 住民税の軽減

世帯分離の本来の目的は住民税の軽減です。
世帯ごとに年の所得を計算するため、世帯分離を行うことで世帯の所得額が減ると住民税が
減ることがあります。
高齢の親と子どもの間で、世帯分離をすることで所得の低い親の住民税の軽減することができます。
ただし、世帯分離によってすべての世帯が住民税を減らせるわけでない点には注意が必要で、
場合によっては逆に高くなる可能性もある為、必ず得らえるメリットではないという点に注意が
必要です。

 介護費用の自己負担額の上限を下げられる

介護保険サービス費の自己負担割合を下げられる可能性があります。 
介護保険サービスの自己負担割合は、「本人の所得」「世帯の所得」の2つに応じて決められています。
自己負担割合は所得が少ないほど軽くなる仕組みとなっており、最終的に1割~3割の負担の
いずれかが設定されます。

したがって世帯分離を行い世帯ごとの年収が少なくなることで、3割負担の場合であれば2割負担、
2割負担の場合は1割負担などに自己負担割合が下がる可能性があるのです。

 介護費用の自己負担額を軽減できる

介護保険の居住費と食費といった費用の自己負担額を軽減することもできます。
特別養護老人ホームや介護老人保健施設などの介護保険サービスの一環として運営されている施設の
場合、世帯の所得ごとに居住費や食費が定められている特定入所者介護サービス費という制度を
利用することが出来ます。

所得が低い方から順に多くの介護保険の給付がされていくので、自己負担額も所得の低い方から
順に少なくなっていきます。
言い換えれば、所得や預貯金による4段階ごとに居住費と食費が定められている制度ともいえます。

 国民健康保険料が低くなる可能性がある

国民健康保険料も、世帯分離をすることで納付額が軽減される可能性があります。
国民健康保険料の納付額は前年の所得と被保険者の人数により計算されるので、前年の所得を
下げることができれば負担額を減らすことができます。

住民税非課税世帯になる場合は、国民健康保険料が全額免除されます。
世帯分離をして親世帯の収入が少なければ、親世帯は住民税非課税となり、国民健康保険料も
免除されます。
国民健康保険に加入している場合には、この点を忘れずにしておきましょう。

 後期高齢者医療制度の保険料が低くなる

75歳以上の後期高齢者を対象とする後期高齢者医療制度では、世帯分離をすることで保険料や
医療費の負担割合が軽減される場合があります。

後期高齢者医療制度の保険料は、前年の所得を算定基準としており、世帯分離により世帯全体の
年収が減少することで保険料の負担額を下げることができます。
また、医療費の自己負担額は3割から1割ですが、自己負担額の限度額も世帯の所得で決定するため、
世帯を分けることで軽減できる可能性があります。

世帯分離のデメリット

ここまで、世帯分離のメリットについて解説してきました。
しかし世帯分離には以下のようなデメリットも存在するため、注意が必要です。
メリットに挙げた住民税や健康保険料の軽減なども、場合によっては逆に高くなりデメリット
となってしまう可能性があります。

 住民税が高くなる可能性がある

世帯分離すると、住民税が低くなる可能性がありますが、高騰につながることもあります。
住民税の軽減効果が高いのは、所得が少ないほうです。

親世帯と子供世帯で1つの世帯としていた場合、親世帯は年金のみなら世帯分離で親世帯は
住民税非課税世帯となります。
しかし、非課税ではない場合には当然ながら住民税が発生することとなりますので、
2世帯分の課税が求められることとなります。
よって、住民税の軽減を目的に世帯分離を行っても、逆に高くなる可能性もあるのです。

 国民健康保険料が高くなる可能性がある

世帯分離のデメリットは国民健康保険料の負担額が増えることがある点です。
世帯分離では、1つの家に居住しながらも住民票における世帯を2つに分けることになりますが、
国民健康保険料の徴収は世帯主に対して行われるため、世帯分離をするとそれぞれの世帯が
保険料を負担しなくてならないのです。

つまり世帯分離をした結果、それぞれの世帯から国民健康保険料を支払わなくてはならなくなるため、世帯分離をする前よりも保険料が高くなったということがあり得るのです。

 扶養手当や家族手当の対象外になることがある

世帯分離をしたことによって扶養家族から外れることによって新たに健康保険に加入しなくては
ならなくなったり、今まで受け取っていた扶養手当や家族手当を受け取ることが出来なくなります。

なぜなら、世帯分離をすると会社員の息子などの扶養に入っていた場合は扶養から抜けることに
なります。
その結果、扶養されていた方は自分で国民健康保険に加入し保険料を払わないといけなくなったり、
あるいは扶養していた息子は会社から扶養手当や家族手当などの支給が受け取れなくなるのです。

 行政手続きが煩雑になる

手続きが煩雑になる点もデメリットになります。
今まで同一世帯で役所などの手続きがてきていたところを二つの世帯に分けなくてはならないので
手続きが煩雑になります。

例えば親の住民票が必要な場合、親が身体的な問題などで自ら役所に行けないとき、
子が代理で窓口に行くには委任状が必要となります。
必要な都度、親に「委任状」を書いてもらうことになるため、手続きの手間は増える
といえるでしょう。
以上より、世帯分離のデメリットとして手続きが煩雑になる点が挙げられます。

まとめ

本記事では、「世帯分離」とは何かや、メリット・デメリットについて紹介しました。
世帯分離には、介護サービスの自己負担額などを軽減できるといったメリットがある一方で、
国民健康保険料が高くなるなどのデメリットもあります。
世帯分離を検討する際には、ケアマネージャーやFPといったプロと相談するなどして、
本当に経済的なメリットが大きいのかを確認することが大切と言えるでしょう。

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