足がむくみやすくて悩んでいる方は多いです。
特に、働く世代の女性の大半が「足のむくみ」で悩んでいます。
足のむくみは、二足歩行の道を選んだ人類が背負う宿命ですが、多くの場合は生活習慣の見直しや
適切なケアで解消・予防することができます。
しかし、長期間続く場合は、何らかの病気が隠れている可能性もあります。
この記事では、足のむくみのメカニズムや原因、解消・予防法について解説します。
目次
まずは、足のむくみが起きるメカニズムについて解説します。
むくみは「血流の低下」によって引き起こされます。
心臓からは、血液が動脈により送られ、全身の細胞に酸素や栄養分が届けられます。
また、血液は細胞から二酸化炭素や老廃物を回収し、静脈を通って心臓に戻ります。
その際に、足から静脈を通って心臓に戻る血液は、重力に逆らわなければなりません。
そこでポンプの役割を果たすのが、ふくらはぎの筋肉(腓腹筋・ヒラメ筋)です。この筋肉が
動くことで血液を心臓に戻します。
しかし、長時間同じ姿勢で下肢の筋肉を動かさないと、足の血流が悪くなりむくみが
生じやすくなります。また、静脈に異常が生じて血液が戻りにくくなったり逆流して
しまったりする場合も、むくみの原因になります。
足のむくみには、一過性のものと慢性的なものがあります。
ここでは、足のむくみにつながる主な原因について解説します。
足のむくみの多くは、生活習慣が原因で短期間のうちに改善することが多いです。
「過度の飲酒」により体の水分が失われると、血管内に水分が取り込まれます。
この取り込んだ水分がむくみの原因となります。
「運動不足」や「過度なダイエット」でふくらはぎの筋肉が衰えると、ポンプ機能が上手く
働かなくなり、むくみにつながります。また、デスクワークなど「長時間同じ姿勢」のままで
いることも、ふくらはぎの筋肉を動かさないので、同様にむくみやすくなります。
「塩分の過剰摂取」も、むくみの原因となります。塩分には水を抱え込む性質があり、
水分が体の中に溜まりやすくなるからです。
慢性的なむくみは、以下のような病気のサインとなっていることがあります。
女性は男性よりも足がむくみやすい傾向にあります。
月経や妊娠、更年期などによるホルモンバランスの変化により、むくみが出やすくなります。
例えば、月経前の基礎体温が高い期間は、女性ホルモンプロゲステロンの分泌量が多くなります。
これにより水分を体に溜めこもうとするため、むくみやすくなります。
また、男性に比べて女性は筋肉量が少ないため、ふくらはぎの筋ポンプ作用の働きが弱いことも
原因です。
さらに、女性は男性より体脂肪が多い傾向があり、それにより水分が保持されてむくみやすい
とされています。
ここまでに紹介した原因以外にも、さまざまな足のむくみの原因があります。
「冷え性」は血行不良によるもので、足の毛細血管まで血液が循環しなくなります。
そのため血液やリンパの流れが滞り、むくみにつながります。
夏場の「冷房病(クーラー病)」にも注意が必要です。
また、「ストレス」による自律神経の乱れもむくみの原因になります。
さらに、「薬の副作用」による足のむくみもあります。副腎皮質ステロイドや非ステロイド抗炎症剤、カルシウム拮抗剤などの副作用で、むくみが生じることがあります。
むくみの原因には、上で述べたもの以外にも、高齢者特有のものがあります。
高齢になると、心機能・筋力の低下や血管の老化などによって、血液やリンパの流れが悪くなり、
足のむくみが起こりやすくなります。
高齢になると心臓のポンプ機能が弱まることで、血液をうまく送り出せず血行が
悪くなることがあります。これにより、水分や老廃物が体にたまりむくみが生じます。
そのような心臓のポンプ機能が正常に働かなくなった状態は、「心不全」と呼ばれ、
初期症状として、息切れや足のむくみなどがみられます。5年生存率は50%程度と報告されており、2020年に日本で心疾患により亡くなった方の41%が心不全です。
息切れや動悸、足のむくみなどの症状が見られる方は、循環器内科などの受診を検討してください。
高齢になると足の筋肉量が減って筋力が低下することで、血液やリンパを重力に逆らって
押し上げるポンプ機能が低下することがあります。これにより、足のむくみの原因になります。
日本人の筋肉量の加齢による変化を調査した論文(2010年)によると、20歳から80歳にかけて
筋肉量は男性で30.9%、女性で28.5%減少するとのことです。
加齢により筋肉量が減少し筋力や身体機能が低下している状態は、「サルコペニア」と
呼ばれています。転倒・骨折による寝たきりの原因にもなるため、食事や運動などの
生活習慣改善が重要です。
高齢になると、血管の老化により柔軟性が低下し、血液の流れが悪くなることがあります。
これにより、足に血液が滞留しやすくなって足のむくみの原因になります。また、血管が
硬くなることで血圧が上昇し、さらにむくみやすくなります。
動脈硬化は、進行すると狭心症や心筋梗塞、脳出血など重篤な疾患の発症リスクが高まります。
加齢以外では、喫煙や高血圧、糖尿病などが動脈硬化の原因と考えらえており、生活習慣の
見直しが重要となります。
足のむくみを解消し予防するためには、以下に挙げるような生活習慣を改善することが必要です。
むくみを予防するために食事や運動、睡眠などを見直すことで、同時に生活習慣病などの
病気を予防し、健康寿命を延ばすことにもつながります。
ポンプ機能を正常に働かせるために、適度な「運動」により足の筋肉を鍛えることで、
足のむくみ解消・予防になります。
スポーツジムでの本格的なトレーニングなどは必要なく、普段の生活に無理なく取り入れられる
レベルの運動で構いません。
エレベーターではなく階段を使う、一駅分歩くなど、意識しながら毎日継続して行うことが重要です。
スクワットやつま先立ちなど、家でできてむくみ対策になる簡単な運動は、インターネットで
検索すればたくさん見つかります。無理のない範囲で楽しみながら行うことが重要です。
足の「マッサージ」や「ストレッチ」も、有効なむくみ解消・予防法です。
マッサージは、ふくらはぎに溜まった血液を心臓に戻すことを意識して行います。また、筋肉を
ストレッチでほぐすことで、血行を促進します。足湯などで足を温めることも有効です。
さらに、むくみに効くとされる足のツボもあるので、興味のある方はインターネットで
検索してみてください。
むくみの予防・解消のために、「食生活の見直し」も必要です。
一番重要なことは「塩分の過剰摂取」に注意することです。
日本高血圧学会が推奨する食塩の摂取量は、「1日6g未満」です。味の濃い料理を好む方は、
意識して調味料を減らしてください。
インターネットや書籍では、塩分控えめでも美味しい料理のレシピがたくさん紹介されています。
また近年は「減塩」をアピールした食品の種類も非常に増えているので、購入してみては
いかがでしょうか。
むくみの解消に効果があるとされている栄養成分は、「カリウム」や「ビタミンE」、
「ビタミンB1」、「ビタミンC」、「タンパク質」などです。
日々の食事で、特に意識して取り入れましょう。
「十分な睡眠・休息」も足のむくみの解消・予防に有効です。
緊張やイライラなどのストレスも、足のむくみの原因になります。ストレスによりコルチゾールと
いうホルモンの分泌量が増えたり、自律神経の働きが乱れたりすることで、血行不良となり
むくみやすくなります。適度に休息をとり、ストレスを溜めないことが重要です。
睡眠時に横になると、足に溜まった水が移動し、さらに血行も良くなります。また、腎臓への
血液の量も増え、余分な水が尿として排出されるのでむくみが軽減します。
むくみ対策として、クッションなどで少し足を上げて寝ることも有効です。
足のむくみの解消・予防のためには、「体が冷えないようにする」ことも重要です。
冬場だけでなく、夏場でも、冷房や冷たい飲食物により、体の外部と内部から冷えすぎることがあります。それにより、血液やリンパの流れが悪くなり、むくみの原因になります。
特に、首回りなどの太い血管が通っている部分は、冷房の風が直接当たらないようにしましょう。
また、足首回りを冷やし過ぎると、血行不良で足がむくみやすくなります。
職場などで冷房が効きすぎていると感じたら、温かい飲み物を飲んだり、厚い靴下や
レッグウォーマー、カーディガン、ストールなどを身にまとったりして、冷えの対策をしましょう。
今回は、「足のむくみ」の原因や解消法などについて解説しました。
足のむくみは、食事や運動などの生活習慣の見直しで改善することも多いです。
この記事が、足のむくみで悩んでいる方の一助になれば幸いです。