介護食士とは?資格の取得方法や仕事内容を詳しく紹介!

2024.09.19

介護食士は、介護の仕事に携わる全ての方におすすめの資格です。
高齢になると、咀嚼力や嚥下力の低下により通常の食事が難しくなり、低栄養から
フレイル(虚弱)と呼ばれる状態になりやすくなります。

「介護食士」を取得することで、そのような食べる力が低下した方にも、美味しく楽しい食事を
提供することができるようになります。

この記事では、介護食士の仕事内容や試験の概要、就職先、メリットなどを解説します。
介護食士という資格の全てがわかる内容になっています。

介護食士とは?

介護食士は、「公益社団法人 全国調理職業訓練協会」が認定する民間資格で、3級から1級まで
あります。
介護食に関する専門知識を習得することができ、介護施設で働いている方や、家族に要介護者がいる方などにおすすめの資格です。

ここでは、介護食士の仕事内容と、よく似た資格の管理栄養士との違いについて解説します。
【介護食士の公式サイト】
https://www.kaigosyokushi.jp/qualifications/kaigosyokushi/

 介護食士の仕事内容

介護食士は、調理師や管理栄養士などが介護食の知識を深めるために取得するケースが多いです。
そのため、「要介護者の毎日の食事作り」が主な仕事となります。

加齢により咀嚼力や嚥下力が低下すると、食べる楽しみが失われ、十分な栄養がとれなくなる
ことがあります。しかし、体力を維持し健康な生活を送るために食事は欠かせません。
現在の介護食は、安全かつ美味しく食べられることが重要視されています。
また、要介護者のそれぞれに合わせた適切な食事形態で提供することが求められます。
さらに、介護食の製造・販売をする会社で商品開発をしたり、外食産業で高齢者向けメニューの
開発に携わったりすることもあります。

 介護食士と管理栄養士の違い

介護食士と似た資格に管理栄養士があります。両者には、資格を認定する団体や勉強内容などの
違いがあります。

  1. 認定団体の違い
    介護食士は民間資格で管理栄養士は国家資格です。民間資格は民間団体などが独自に認定し、
    国家資格は法律に基づき一定の基準で認定されます。
    管理栄養士になるには、管理栄養士養成施設を修了するなどして受験資格を得て、
    国家試験に合格する必要があります。
    介護食士の場合は、最初に受ける3級には受験資格がありません。
    認定校で講習を受けて試験に合格することで取得できます。
  2.  勉強内容
    管理栄養士は、乳幼児から高齢者まで、幅広い層の栄養指導や栄養管理などを行ないます。
    そのため、栄養に関する非常に幅広く専門的な知識を学びます。
    一方、介護食士は介護食の専門家で、高齢者の食事に関する知識を中心に学びます。
    そのため、介護施設で働く管理栄養士が、より専門的に介護食を学ぶためこの資格を
    取得することもあります。

介護食士の受験資格・講習内容・合格基準

このセクションでは、介護食士という資格の取得に興味のある方に向けて、
「受験資格」や「講習内容」、「合格基準」について解説します。
なお、3級は受験資格がなく誰でも受験することはできますが、決められた内容の講習を
決められた時間受ける必要があります。独学で勉強して試験だけを受けることはできません。

 受験資格

各級の受験資格は、以下のようになっています。
講習会終了後に修了試験を受けて合格することで、資格を取得することができます。
最初は必ず3級からスタートして、その後2級、1級と段階的に取得していくことになります。

  • 3級
    受験資格なし(誰でも受験可能)
  • 2級
    介護食士3級取得者
  • 1級
    介護食士2級を取得した後、2年以上介護食調理の実務に従事した25歳以上の方

 講習内容

各級の講習内容は、以下のようになっています。

  •  3級
    ・学科(25時間) 介護食士概論、医学的基礎知識、高齢者の心理、栄養学、食品学、食品衛生学
    ・実習(47時間) 調理理論・調理実習Ⅰ、調理理論・調理実習Ⅱ
  •  2級
    ・学科(16時間) 医学的基礎知識、高齢者の心理、栄養学、食品学、食品衛生学
    ・実習(56時間) 調理理論、調理実習
  •  1級
    ・学科(32時間) 医学的基礎知識、高齢者にかかわる制度、栄養学、食品学、食品衛生学
    ・実習(40時間) 調理理論、調理実習

 合格基準

各級とも、講習会の修了後に「筆記試験」と「実技試験」を受ける必要があります。
その両方で合格基準に達していれば、その級の介護食士の資格を取得することができます。

ただし、この試験を受けるためには、講習会で80%以上の出席が必要です。
また、筆記試験および実技試験は、どちらも60点以上が合格基準となります。
なお、試験の内容や試験時間、合格率などは非公表となっています。

介護食士の資格を取得する方法は?

介護食士の資格を取得するための講習を受けるには、以下の2つの方法があります。

  1. 講習会を開講している学校(専門学校など)の学生となり、受講する。
  2.  一般の方を対象とした講習会を開講している施設(専門学校など)で受講する。
    一つずつ解説していきます。

 介護食士講座がある学校に入学・受講

まず、介護食士を取得できる講座がある専門学校や大学、短期大学などに入学し、
授業の一つとして介護食士の講習を受けるという方法です。
2024年8月現在で、3級は43校、2級は10校、1級は3校で開講しています。
3級は受講できる学校が多いのですが、2級以上になると非常に少なくなります。
それらの学校で調理や福祉などの専門的な教育を受けながら、調理師や福祉・介護関係の資格に加え、介護食士も取得することになります。

 一般の人を対象とした講習会に参加・受講

そして、一般の人を対象とした講習会を開講している専門学校や大学、短期大学などで受講
する方法です。
2024年8月現在で、3級は17校、2級は4校、1級は3校で開講しています。
先述の学生向けの講座を開講している学校の数より少なく、特に2級以上は非常に少なくなります。
すでに福祉や介護、調理関係の職場で働いている社会人の方にとっては、効率的な方法です。
多くの方が、こちらの方法で介護食士を取得しています。

介護食士の資格を活かした就職先や職種を紹介

介護食士の資格を取得すると、まず介護施設で活躍できる可能性があります。
それ以外にも、さまざまな活躍の場があります。また、栄養士や調理師などの資格も持っていると、
さらに職場の選択肢が広がります。
ここでは、介護食士が活躍できる就職先や、就職する際の職種について解説します。

 就職先

  1.  介護施設
    介護施設には、咀嚼・嚥下の機能が低下した要介護者が多くいます。
    咀嚼や嚥下がうまくできないことで、窒息や誤嚥を起こすリスクがあります。介護食士の資格を
    活かせば、一人ひとりに適したメニューの考案が可能になります。
  2. 医療機関・障がい者施設
    医療機関や障がい者施設にも、咀嚼・嚥下機能が低下している方がいます。幅広い病気や
    障がいを抱える人たちに適した介護食が提供できます。
  3. 食品会社・外食産業
    近年は、介護食を開発・販売する会社や高齢者向けメニューのある飲食店が増加しています。
    介護食士の資格は、介護現場だけでなく、食品会社での商品開発、外食産業でのメニュー開発
    にも活かすことができるのです。

 職種

求人サイトで「介護食士」という資格名での募集はほぼ見られません。
介護食に関連する仕事は、「介護職員」や「調理師」、「栄養士・管理栄養士」などの職種で
募集が出ていることが多いです。

それらの職種に応募する際に、介護食士の資格を持っていることをアピールすれば、プラスの評価に
なる可能性があります。介護食の知識や調理技術のある方のニーズは高いので、介護施設で
働きたい方は、介護食士の取得を検討してみてください。

介護食士の資格を取得するメリット

介護食士の資格を取得するメリットには、例えば以下のものがあります。

  1. 業務に役立つ知識やスキルを体系的に学べる
    介護食に関係する幅広い知識やスキルを、基礎から体系的・網羅的に学ぶことができます。
    それらを実際の介護食の調理の現場で活かすことができます。
  2. 知識やスキルを客観的に証明できる
    就職や転職時には、高齢者向けの食事について知識やスキルを有していることの証明になり、
    強いアピールになります。また、現在の職場での人事評価が上がる可能性もあります。
  3. 介護業界以外でも活躍できる
    超高齢化社会により社会全体で介護食の需要は非常に高まっています。介護業界だけでなく、
    医療機関や障がい者施設、食品会社、外食産業など、活躍の場は非常に多いです。

まとめ

今回は「介護食士」という資格について解説しました。

・民間資格で、3級から1級まであり管理栄養士などが取得することが多い。
・主な仕事は、要介護者の食事作り。
・似た資格の管理栄養士は国家資格で勉強する範囲なども異なる。
・3級は受験資格がなく、72時間の講習後に筆記・実技試験を受けて、どちらも60点以上で
取得できる。
・講習は「学生向け」と「一般向け」がある。
・就職先は、介護施設や医療機関、障がい者施設、食品会社など。
・取得のメリットは、実用的な内容を学べる、知識の客観的証明になるなど。

介護食士は、今後さらにニーズが増えていくことが予想される資格です。
介護や調理関係の仕事をしている方は、取得を検討してみてはいかがでしょうか。

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