下肢(足)のむくみで悩む方におすすめの記事です。
下肢のむくみは主に「血流の低下」で起こります。
血液が下肢から心臓に戻る際に、ポンプの役割を果たすのがふくらはぎの筋肉です。
長時間下肢を動かさない場合などは、血流が悪くなりむくみやすくなります。
むくみの多くは生活習慣の改善や適切なケアで解消できます。しかし、長期間続く場合は
何らかの病気の可能性があります。
この記事では、下肢のむくみの原因(一過性のものと慢性のもの)や解消・予防法について、
詳しく解説します。
目次
まずは、一過性の下肢のむくみの原因について解説します。
下肢のむくみの多くは一過性のもので、生活習慣に原因がある場合が多いです。
運動不足や睡眠不足、食生活の乱れなどはむくみの原因になります。
また、高齢者では筋力の低下によるむくみが起こりやすく、女性はホルモンバランスの変化などが
原因でむくみが生じやすいです。
運動不足などによりふくらはぎの筋肉が衰えて筋力が低下すると、ポンプ機能が
うまく働かなくなり、むくみにつながります。
また、高齢になると下肢がむくみやすくなるのは、筋肉量が減ることが主な原因です。
20歳から80歳にかけて筋肉量は30%程度減少するという報告があります。
加齢により筋肉量が減少し筋力や身体機能が低下している状態は、「サルコペニア」と
呼ばれています。
転倒・骨折による寝たきりの原因にもなるため、無理のない範囲で運動を生活に
取り入れることが重要です。
デスクワークや立ち仕事など長時間同じ姿勢のままでいると、ふくらはぎの筋肉を
ほとんど動かさないので、下肢がむくみやすくなります。
定期的に立ち上がる、足踏みをする、トイレに行くなどして、ふくらはぎの筋肉を
動かすことを意識するとよいでしょう。
また、「エコノミークラス症候群」は乗り物の長時間移動だけでなく、長時間の
デスクワークなどでも起こる可能性があります。
下肢の静脈に血栓ができて血液が心臓に戻りにくくなり下肢がむくみます。
これは一過性のものではないため、病院での治療が必要です。予防には、十分な
水分摂取や下肢の運動のほか、弾性ストッキング着用も有効です。
空調が効いた温度変化が少ない環境で長時間過ごすと、体温調整に関係する自律神経の
機能が低下します。
自律神経がうまく働かなくなると水分の代謝の低下を招き、むくみの原因となることがあります。
自律神経の乱れの原因としては、心身のストレスや睡眠不足、不規則な生活、栄養不足、
ホルモンバランスの変化、疾患なども挙げられます。
定期的に外気に触れたり、ストレスをためこまないように気をつけたりすることが重要です。
過度の飲酒によりアルコールを多量摂取すると、体の水分が失われ血液の濃度が高くなるため、
血管内に水分が取り込まれます。この取り込んだ水分がむくみの原因となります。
塩分の取りすぎも、むくみの原因となります。体内の塩分濃度が高くなると、体内に
水分を溜めこもうとするからです。
過度の飲酒や塩分の過剰摂取は、がんや高血圧などのリスクを高めることも知られています。
飲み会の席では、お酒も塩分の多いおつまみもほどほどにしましょう。
体重を落とすために食事を抜くなどの無理なダイエットをすると、むくみやすくなります。
タンパク質やビタミン、ミネラルが不足して、筋肉の衰えや血行の悪化などを
引き起こすからです。
また、体が冷えるとむくみやすくなります。
冬場だけでなく、夏場でも、冷房や冷たい飲食物により、体の外部と内部から冷えすぎる
ことがあります。それにより、血液やリンパの流れが悪くなり、むくみの原因となるのです。
特に、首筋などの太い血管が通っている部分は、冷房の風が直接当たらないようにしましょう。
また、足首回りを冷やし過ぎると、血行不良で下肢がむくみやすくなります。
職場などで冷房が効きすぎていると感じたら、温かい飲み物や厚い靴下、レッグウォーマー、
カーディガン、ストールなどで冷え対策をしてください。
女性は男性よりもむくみやすい傾向にあります。
月経や妊娠、更年期などによるホルモンバランスの変化が原因です。
例えば、月経前の基礎体温が高い期間は、女性ホルモン「プロゲステロン」の分泌量が多くなります。これにより水分を体に溜めこもうとするため、むくみやすくなります。
また、一般的に男性より女性は筋肉量が少ないため、ふくらはぎの筋ポンプ作用の
働きが弱いことも原因です。
さらに、女性は男性より体脂肪が多い傾向があり、それにより水分が保持されて
むくみやすいとされています。
次に、慢性的な下肢のむくみの原因について解説します。
長期間続いている下肢のむくみは、さまざまな病気のサインとなっていることがあります。
早めに病院を受診しましょう。
ここでは、慢性的な下肢のむくみにつながる病気について解説します。
主に加齢が原因で心臓のポンプ機能が弱まることで、血液をうまく送り出せず血行が
悪くなることがあります。それにより、水分や老廃物が体にたまりむくみが生じます。
そのような心臓のポンプ機能が正常に働かなくなった状態は、「心不全」と呼ばれ、
初期症状として、息切れや下肢のむくみなどがみられます。
5年生存率は50%程度と報告されており、2020年に日本で心疾患により亡くなった方の
41%が心不全によるものです。
息切れや動悸、下肢のむくみなどの症状が見られる方は、循環器内科などの受診を
検討してください。
リンパ浮腫とは、全身を巡るリンパの流れが滞り、四肢に溜まった状態です。
がんの治療として行うリンパ節の切除や放射線治療などにより、起こりやすくなることが
知られています。それ以外に、原因不明のリンパ浮腫もあります。
リンパ浮腫は治りにくく進行も早いため、早期に治療を受けることが重要です。
医療的マッサージや弾性ストッキングなどによる圧迫療法、運動療法などの治療を受けることで、
症状が軽減されることがあります。
肝臓障害(肝硬変)や腎障害により、下肢のむくみが生じやすくなります。
血中のアルブミンというタンパク質は、血液の浸透圧を調整する働きをしています。
アルブミンは食物中のタンパク質から肝臓で合成され、腎臓でろ過されます。
肝臓や腎臓の障害によりアルブミン量が低下すると、水分が下肢にたまりやすくなります。
健康診断でアルブミンの数値が基準値より低い方は、肝臓や腎臓の疾患の可能性があり、
病院で詳しい検査を受けてください。
下肢静脈瘤は、下肢の静脈にある逆流防止の静脈弁が壊れて、逆流した血液が下肢に
溜まる病気です。これにより血液循環が悪くなるので、下肢のむくみや痛み、色素沈着、
皮膚の潰瘍などの症状が出ます。静脈がこぶのように膨れることもあります。
男性より女性に多く見られ、加齢とともに罹患率が高くなります。
また、高血圧や糖尿病、下肢静脈瘤の家族歴のある方はリスクが高くなります。
現在はさまざまな治療法が選択でき、適切な治療を受ければ治癒する可能性が高いです。
気になる症状があれば、早めに病院を受診してください。
下肢のむくみを解消し予防するためには、ストレッチ・マッサージに加え、
生活習慣を改善することも有効です。
むくみを予防するために食事や運動、睡眠などを見直すことで、同時にがんや生活習慣病などの
病気を予防し、健康寿命を延ばすことにもつながります。
下肢のストレッチやマッサージは、有効なむくみ解消・予防法です。筋肉をストレッチで
ほぐすことで、血行を促進します。
また、マッサージは、ふくらはぎに溜まった血液を心臓に戻すことを意識して行います。
ポンプ機能を正常に働かせるために、適度な運動により下肢の筋肉を鍛えることで、
むくみ解消・予防になります。
スポーツジムでの本格的なトレーニングなどは必要なく、普段の生活に無理なく
取り入れられるレベルの運動で構いません。
エレベーターではなく階段を使う、一駅分歩くなど、意識しながら毎日継続して行うことが重要です。
スクワットやつま先立ちなど、自宅でできてむくみ対策になる簡単な運動は、
インターネットで検索すればたくさん見つかります。
無理のない範囲で楽しみながら行うことが重要です。
むくみの予防・解消のためには、食生活の改善も重要です。
最も重要なことは「塩分の過剰摂取」に注意することです。
日本高血圧学会が推奨する食塩の摂取量は、「1日6g未満」です。濃い味付けの食事を好む方は、
意識して調味料を減らしてください。
インターネットや書籍では、塩分控えめでも美味しい料理のレシピがたくさん紹介されています。
また近年は「減塩」を謳った食品の種類も増えているので、購入してみては
いかがでしょうか。
むくみの解消に効果があるとされている栄養成分は、「カリウム」や「ビタミンE」、
「ビタミンB1」、「ビタミンC」、「タンパク質」などです。日々の食事で、
特に意識して取り入れましょう。
十分な睡眠・休養も下肢のむくみの解消・予防に有効です。
緊張やイライラなどのストレスは、むくみの原因になります。
ストレスによりコルチゾールというホルモンの分泌量が増えたり、自律神経の働きが
乱れたりすることで、血行不良が引き起こされます。
十分に睡眠や休養をとり、ストレスを溜めないことが重要です。
睡眠時に横になると、下肢に溜まった水が移動し、さらに血行も良くなります。
また、腎臓への血液の量も増え、余分な水が尿として排出されるのでむくみが軽減します。
また、クッションなどで下肢を少し高くして寝ることも有効です。
今回は、「下肢のむくみ」の原因や予防・解消法について解説しました。