高齢者が地域の中で尊厳を持って暮らせる社会は、社会全体が求めているものです。
しかし、高齢者の虐待がおこっている実情はまだまだ問題とされており、社会全体で
取り組むべき課題のひとつかと思います。
この記事では、どんな行動や言動が高齢者虐待にあたるのか?
そして、虐待を発見した時の対応についても紹介していきます。
目次
ひとえに高齢者虐待と言っても、様々なケースが存在します。
主な高齢者虐待は「身体的虐待」「心理的虐待」「性的虐待」「経済的虐待」
「介護・世話の放棄・放任」の5種類です。
ここからは、そんな5種類の高齢者虐待について解説していきます!
高齢者の虐待ひとつめは「身体的虐待」です。
身体的虐待は高齢者虐待のなかでも約40%と最も多い虐待であり、虐待と聞いてまず
イメージするのもこの身体虐待ではないでしょうか?
高齢者を殴る、蹴る、つねる、無理やり食事を口に入れる、やけどさせるなど直接体に傷を
つけるような暴力行為を身体的虐待といいます。
また、ベッドに縛り付けたり、意図的に薬を過剰摂取させ、「身体拘束」や「抑制」を行うことも
身体的虐待に含まれます。
高齢者の虐待ふたつめは「心理的虐待」です。
高齢者虐待のうちの心理的虐待の割合は約33%と、身体的虐待についで多い虐待です。
これは、高齢者を怒鳴ったり、罵ったり、話しかけられているのにわざと無視し、心理的や
精神的に傷を負わせる虐待のことをいいます。
介護者の負担やストレスから起こることの多い虐待で、本人も知らずに行っている場合もある
虐待です。
特徴として、怒鳴ったり罵ったりせずとも威圧的な態度で関わることも心理的虐待にあたるため、
知らず知らずに高齢者の心に大きな傷を与えてしまっているケースがあります。
高齢者の虐待3つ目は「性的虐待」です。
性的虐待の具体例としては「排泄の失敗を咎め、罰と称して裸にして放置する」「わいせつな
行為をしたり、強要する」などがあげられます。
直接的な罰やわいせつ行為の他にも介護施設などで「入浴の順番待ちの間、裸で並んで待たせる」
や「入浴や排泄が丸見えの環境で介助を行っている」など、人数が多く忙しい中、
失念したりその環境に慣れてしまい知らず知らずに虐待に至ってしまっているというケースも
少なくありません。
高齢者の虐待4つ目は「経済的虐待」です。
高齢者虐待における、経済的虐待の割合は約13%となっています。
具体的には、「生活費を渡さない、使わせない」「勝手に高齢者の自宅や財産を売却する」
「年金や貯金を本人の意思や利益に反して使用する」などです。
経済的虐待は、家族や後見人などが行うことの多い虐待で、身体的虐待や心理的虐待などの件数が
増加し、それに対処し通報や防止策が発展してきた中で、ノウハウが確立され、今まで
表面化されづらくなってきた経済的虐待も、発見や通報が増え表面化されやすくなってきた虐待です。
高齢者の虐待5つ目は「介護・世話の放棄・放任」です。
「ネグレクト」と呼ばれることが多く、医療や介護従事者の中ではこちらの呼び名のほうが、
聞き馴染みのある言葉かもしれません。
介護・世話の放棄・放任(ネグレクト)の具体例は、「水分や食事を充分に与えない。それに
伴い栄養失調や脱水状態にある」
「入浴させずに異臭がしたり、髪が伸び放題、皮膚が汚れている」
「室内がゴミだらけで劣悪な環境で生活させている」などです。
ここまで、5種類の高齢者虐待について説明しました。
では、実際にこれらのような高齢者虐待を見つけた際はどのように対応すればよいのでしょうか?
ここからは、高齢者虐待を見つけた時、もしかして虐待が起きているかもと気付いたときのために、
通報の流れと通報先について解説していきます!
高齢者虐待を発見した場合は、速やかに通報することが求められています。
もし、職場や地域などで虐待を発見、または可能性を疑ったら迷わず相談や通報をしましょう。
通報の流れは次の通りです。
「虐待の発生」→「発見者または高齢者本人による通報・届け出」→
「市町村長の介入」・「自治体の介入」
市町村長の介入には「老人福祉法に基づく措置」「立入調査」などがあり、必要であれば
警察署長に援助要請が行われます。
自治体の介入には「老人福祉法、介護保険法に基づく権限の行使」があり、都道府県は
施設従事者による虐待発生件数を毎年度公表します。
高齢者虐待を発見したり、可能性が疑われる場合は「市町村の高齢者虐待対応窓口」や
「地域包括支援センター」に通報します。
これは、高齢者虐待防止法で高齢者虐待防止の責任主体を市町村と定めており、虐待にあたるか
どうかも市町村が判断します。
通報を受けた市町村は県と連携し調査を行い、法律に基づいて指導や監査を行います。
また、施設内で虐待が疑われる場合は、まず施設職員が各部署の責任者へ報告し、その後
施設長などに報告します。
施設長を中心に虐待を行っている職員や他の職員に聞き取り調査を行い、虐待の事実を
確認するという流れになる場合もあります。
ここまで、高齢者虐待が起こった場合や、可能性が疑われる場合の通報などについて解説しました。
ここからは、そもそも高齢者への虐待を防ぐ方法にはどんなものがあるのか?
いくつかのポイントについて紹介していきます!
高齢者虐待を防止する方法ひとつめは「介護を一人に任せきりにしない」です。
介護はたとえ家族や親族、介護スタッフであっても負担もストレスも大きいものです。
家庭内の介護であっても、施設での介護であっても介護をひとりに任せきりにすることは
高齢者虐待へと繋がりかねない危険があることを把握しておくことが大切です。
家族であれば、他にも介護を手伝ってくれるよう相談したり、介護サービスを利用し
プロの手を借りること、施設であれば、他の職員に気兼ねなく応援できる環境や、
職員の配置や人数を見直すなど、ひとりひとりの負担を和らげる取り組みが大切となってきます。
高齢者虐待を防止する方法ふたつめは「介護サービスを積極的に利用する」です。
介護サービスは年々、発展しておりそのサービスも多岐にわたります。
民間の介護サービスも増えてきているので、困った時はこのような介護サービスを積極的に
利用することも重要なポイントです。
未だに地域によっては「介護は家族が行う」という風潮があるところもありますが、
先に述べたように、介護は負担もストレスも大きく大きな費用と時間を要します。
介護が必要な高齢者にとっても、介護する家族にとっても、介護サービスを積極的に利用
することは恥ずかしいことではありません。
困った時は、市町村の窓口や介護事業所に気兼ねなく相談しましょう。
高齢者が安全に生活するために、切れ目のない支援や関係機関の連携が大切です。
虐待を早期発見しやすい立場にある医療・福祉従事者は、高齢者や介護をする方が孤立しないように
声を掛け合ったり、相談したりしやすい環境をづくりを心がけ、高齢者や介護をする方に
異変を感じたり早期に対応することが大切です。
厚生労働省のデータによると、65歳以上の高齢者数は2025年に3,657万人となり、その後も
増加を続け2042年には3,878万人とピークに達する見込みです。
これは、人口の40%近くが高齢者となり、要介護者や認知症をもった高齢者が増え続けることが
予想されます。
高齢者虐待を防止するためには、負担やストレスを感じた時点ではやめに専門機関に
相談するというのも方法のひとつです。
高齢者虐待防止に関わる主な職種には以下のような職種があります。
・介護サービス従事者 ・医療機関従事者 ・公的、民間機関従事者 ・市町村の専門窓口など
これらの職種には、「介護福祉士」「医師」「看護師」「保健師」「社会福祉士」
「精神保健福祉士」などが働いている場合が多く、介護の負担や虐待防止について専門的な
知見から、的確なアドバイスやサービスの提供を行ってくれるでしょう。
この記事では、高齢者虐待について詳しく解説をしました。
高齢者の虐待には「身体的虐待」「心理的虐待」「性的虐待」「経済的虐待」
「介護・世話の放棄・放任」の5種類があります。
虐待やその疑いを見つけた場合は、市町村の窓口や地域包括支援センターなどに速やかに
通報する必要があります。
また、虐待を未然に防止するには介護を一人に任せきりにはせず、介護サービスを積極的に
利用したり、専門の職種に相談することが大切です。
日本は超高齢化社会に突入しつつあり、ゆくゆくは人口の4割が高齢者になると統計が出ています。
高齢者虐待を見逃さない、または未然に防ぐためには高齢者虐待について詳しく知り、
地域全体で助け合い声を掛け合い、よりよい社会にしていきましょう。