自分の血圧が正常なのか高めなのか、知っておくことは重要です。
高血圧は、脳卒中や心筋梗塞など多くの病気の原因になるため、血圧は身体の健康を知る
バロメーターといわれています。
本記事では、血圧の正常値や高血圧の基準値、年代別の血圧平均値、血圧の正しい測定方法、
血圧を正常に保つためのポイントについて解説します。
高血圧の予防・改善のために、どのように生活習慣を見直したらいいのかが分かる内容です。
目次
血圧とは、血液が血管の内壁を押す力のことです。
心臓が収縮して血液を強い力で押し流すときの血圧を「収縮期血圧(最高血圧)」、
心臓が拡張しているときの血圧を「拡張期血圧(最低血圧)」といいます。
以下、日本高血圧学会の「高血圧治療ガイドライン2019」を参考にして、血圧の正常値や高血圧と
低血圧の基準値について解説します。
血圧の正常値とはどのくらいなのでしょうか。
血圧には、医療機関で測定したときの「診察室血圧」と、自宅で測定したときの「家庭血圧」があり、それぞれで正常値や高血圧の基準値が設定されています。医療機関では、緊張から「白衣高血圧」
になりやすいため、診察室血圧の基準は家庭血圧より少し高めです。
「正常血圧」に分類されるのは、血圧が以下の範囲の場合です。
血圧は年齢とともに上昇する傾向があります。
その主な原因は、血管の老化により弾力がなくなって硬くなる動脈硬化です。
血液が流れにくくなって心臓はより強い力で押し出そうとするため、収縮期血圧が上がりやすく
なります。
以下、厚生労働省の「令和元年国民健康・栄養調査報告」を参考にして、年代別の血圧平均値
(収縮期血圧/拡張期血圧)をご紹介します。
20代 ・男性: 115.3/67.7mmHg ・女性: 105.7/63.8mmHg
30代 ・男性: 117.3/73.7mmHg ・女性: 107.9/66.3mmHg
40代 ・男性: 125.8/81.3mmHg ・女性: 114.3/71.2mmHg
50代 ・男性: 131.7/82.0mmHg ・女性: 123.7/75.4mmHg
60代 ・男性: 135.8/78.5mmHg ・女性: 131.0/76.7mmHg
70代以上 ・男性: 135.8/73.1mmHg ・女性: 136.1/73.0mmHg
50代までは男性よりも女性の方が低くなっていますが、60代以降では男女差は小さくなります。
「家で血圧を測ると毎回違う値が出る」という方も多いと思います。
血圧は1日の中でも大きく変動し、運動や食事、入浴、ストレスによっても、季節によっても
変動します。同じ条件で継続して測定することが重要です。
ここでは、自宅で血圧を測定するときのポイントを解説します。
血圧は朝と夜の1日2回、ほぼ同じ時間に測定します。
測定のタイミングは、朝は起床後1時間以内、排尿後、食事・服薬前で、夜は就寝前です。
仕事などの都合で1日2回の測定が難しい方は、1日1回の測定でも構いません。
毎日ほぼ同じ時間に継続して測定することが重要です。
それ以外にも、仕事中や強いストレスを感じているとき、体調が悪いときの血圧も測定し記録して
おくことが望ましいとされています。
なお、測定直前の喫煙や飲酒、カフェイン摂取、入浴は避けましょう。
血圧は、測定する腕の左右の違いでも差が出るので、毎回同じ腕で測定します。
利き手の反対の腕で測ることが推奨されています。
また、血圧計は、手首式より上腕式の方がより正確な測定ができるためおすすめです。
カフ(腕帯)は、肘の関節から1~2㎝上にぴったりと巻き付け、カフの位置は心臓と同じ高さに
します。
測定時は衣服で腕を締め付け過ぎないように注意してください。
血圧は、快適な温度、静かな環境下で測定してください。
いすに足を組まずに座り、1~2分安静にして体の力を抜いてから測定します。
寝た状態で測定する場合は、あお向けになって手のひらを上に向け、腕を伸ばしてリラックス
しましょう。
測定中は、動いたり話をしたりしてはいけません。
また、運動や食事、飲酒、喫煙、入浴の直後は測定を避け、しばらく時間をおいてください。
血圧は、毎日測定して記録することが重要です。自宅ではリラックス状態で測定できるため、
病院より安定した数値が出やすいです。
毎日測定・記録することで、血圧の変化が分かり、生活習慣の改善に役立てることができます。
また、高血圧の治療中の方は、治療の効果も確認できます。
血圧を測定したら、数値はすべて血圧手帳やスマートフォンのアプリに記録します。
ストレスや体調不良など、通常と異なる状況があれば、その状況も合わせて記録してください。
このセクションでは、血圧を正常に維持するために気をつけるべきポイントをご紹介します。
高血圧を長年放置すると、脳卒中や心臓病などの病気の発症リスクが高まり、取り返しのつかない
事態になりかねません。
高血圧の改善や予防のためには、ご自身の生活習慣全般を見直すことが重要です。
「食生活」、「運動」、「睡眠・休養」については、それぞれ後で詳しく解説するので、
それ以外の生活習慣である「飲酒」、「喫煙」の見直しについて解説します。
アルコールには血管を拡張させる作用があり、少量であれば一時的に血圧は下がります。
しかし、過剰な摂取により血圧は高くなります。
飲酒量の目安は、男性がアルコール換算で20~30ml/日(日本酒ならば1合、ビールならば
500ml程度)、女性が10~20ml/日以下です。
また、喫煙をすると、ニコチンにより血管が収縮するため血圧が上がります。
過度の飲酒も喫煙も、さまざまな疾患のリスクを高めることがわかっています。
適量の飲酒と禁煙が重要です。
まず、多くの専門家が口をそろえて言うように、塩分の多い食事に注意が必要です。
塩分を多く摂取すると、血中の塩分濃度を下げるために血液量が増え、血圧が高くなります。
日本高血圧学会では、「食塩の摂取量は1日6g未満」を推奨しています。
また、ナトリウム排泄効果があるカリウム・マグネシウム・カルシウムを積極的に摂取しましょう。
カリウム・マグネシウムは野菜や果物、海藻、豆類などに多く含まれ、カルシウムは乳製品や
小魚などに多く含まれます。
さらに、肥満の方は高血圧のリスクが高くなることが知られています。
特に、健康診断で「内臓脂肪が多い」と指摘された方は注意が必要です。
食べ過ぎに注意し、栄養バランスのとれた食事を心がけてください。
適度な運動を行うことで、高血圧のリスクが下がるといわれています。
また、運動により高血圧のリスクを高める肥満の解消にもなります。
運動をすると、血圧は一時的に上がります。しかし、筋肉に多くの酸素と栄養を運ぶために血管が
広がるなどして、血圧は下がっていきます。
運動としては、酸素をたくさん取り入れながら行う有酸素運動が適しており、1日30分程度を
毎日行うことが理想です。
有酸素運動としては、ウォーキングやジョギング、水泳、サイクリング、なわとび、エアロビクス
などがあります。
すでに血圧が高めの方は、医師に相談するなどして無理のない範囲で行ってください。
高血圧のリスクを下げるために、十分な睡眠と休養をとることも重要です。
1日の中で、起床後から血圧は上昇していきますが、夕方から血圧は下がり、睡眠中に最も
低くなります。睡眠不足により自律神経が乱れると、高血圧を発症しやすくなります。
また、極度の緊張などのストレスは、交感神経を刺激し血圧の上昇を引き起こします。
さらに、ストレスは食生活の乱れや不眠、飲酒、喫煙などにもつながりやすく、高血圧の
リスクがさらに高まります。
睡眠障害やストレスは高血圧だけでなく、さまざまな疾患のリスクを高めます。
好きな趣味に没頭したり、ゆっくり入浴したりといった自分なりのリラックス方法を見つけることが
重要です。
場合によっては、心療内科の受診なども検討してください。
今回は、血圧の測定方法や高血圧対策などを解説しました。
高血圧を予防して今後の人生を健康に過ごせるよう、今のうちから生活習慣を改善しましょう。