年齢別脈拍数の正常値を紹介!頻脈や徐脈についても解説!

2024.10.15

成人の脈拍数の正常値は60~100回です。
脈拍とは、心臓が血液を全身に送る際に動脈に生じる脈動のことです。
1分間の脈拍を測定した値が脈拍数です。この値が高すぎたり低すぎたりすると、何らかの病気の
可能性もあります。

この記事では、脈拍数の正常値について年齢別に解説します。
また、正常値より高い場合・低い場合や、脈拍数はあくまで目安であることも、詳しくまとめました。
ご自身や家族の脈拍数が正常値と比べてどうなのか知りたい方や、介護の現場で活躍中の方にも
役立つ内容です。

脈拍の正常値はどれくらい?

安静時の脈拍の正常値は、一般的にどれくらいなのでしょうか。
このセクションでは、まずは健康の目安となる脈拍の正常値について解説します。
脈拍数が高すぎたり低すぎたりと正常値から外れた場合について、疑われる病気などについても
紹介しています。

 一般成人の脈拍数の正常値

一般的に、成人の安静時の脈拍数は、1分間に60~100回が正常値とされています。
脈拍数が100回以上は「頻脈」、60回未満は「徐脈」と呼ばれます。
脈拍の異常は、何らかの病気が隠れている可能性があります。

しかし、後述するように正常値はあくまで目安です。個人差も大きく、体調や精神状態などに
よっても変動します。病院での診察で緊張しやすい方は、病気でなくても脈拍数が100回を超えることも
あります。
また、普段から運動をする方は脈拍数が低い傾向にあります。
ご自身の安静時の脈拍平均値を把握しておくとよいでしょう。

 1分間の脈拍数が100回以上の場合「頻脈」

1分間の脈拍数が100回以上の場合を、「頻脈」といいます。
緊張や興奮などで交感神経の働きが優位になると、脈拍数は高くなります。
また、強いストレス、運動、入浴、アルコールやカフェインの大量摂取などでも高くなりやすいです。しばらく安静にして脈拍数が正常値に戻るのならば、問題ありません。

しかし、安静時にも頻脈が続く場合は、何らかの病気が原因の可能性があります。
例えば、狭心症や心筋梗塞などの循環器疾患や、バセドウ病などのホルモン異常、貧血などが
考えられます。
動悸や呼吸困難、意識障害、失神などの症状が見られることもあり、最悪の場合は心停止に
至ることもあります。
そのような症状が現れたら、早めに病院を受診してください。

 1分間の脈拍数が60階未満の場合「徐脈」

1分間の脈拍数が60回未満の場合を、「徐脈」といいます。
就寝中などのリラックス時には、副交感神経の働きが優位になり、脈拍数は低くなります。
また、日常的にスポーツをしている人は、心肺能力が高く脈拍数が低いことが多いです。
ただし、息切れやだるさ、足のむくみ、めまいなどの症状がある場合は、以下の病気が疑われるため、早期の治療が必要です。

  1.  洞不全症候群
    心臓の右心房にある「洞結節」に異常が生じ、電気刺激の回数が減るまたは止まる病気です。
    失神などの症状が見られることもあります。
  2.  房室ブロック
    電気信号を心房から心室へ伝える「房室結節」の機能低下により起こる病気です。
    失神や心不全、さらには心停止につながることもあります。

年齢別の脈拍数の正常値を紹介

一般的に、乳幼児の脈拍数は高く高齢者になると低くなるというように、年代により脈拍数の
正常値は変化します。
成人の基準値は60~90回、高齢者の基準値は50~70回とされることが多いです。
このセクションでは、年齢別に脈拍数の正常値をご紹介します。

 20代~30代の脈拍数の正常値

20~30代の、脈拍数の正常値は以下の通りです。

  • 20代 男性: 63回、女性: 69回
  • 30代 男性: 66回、女性: 69回
    脈拍数を正常に保つためには、若いうちから適度な運動やバランスのよい食事、
    禁煙などの生活習慣の見直しが重要です。
    また、甲状腺ホルモンが過剰に分泌される「バセドウ病」は、若い女性の罹患が多く、
    頻脈などの症状があります。
    若いうちから脈拍を測定することで、病気の早期発見につながります。

 40代~50代の脈拍数の正常値

40~50代の、脈拍数の正常値は以下の通りです。

  • 40代 男性: 67回、女性: 69回
  • 50代 男性: 68回、女性: 68回
    20~30代と比べて脈拍数が少し高くなる傾向にあります。
    もしも、通常よりも脈拍数が大きく増え、その理由に心当たりがない場合は、心臓病などの
    病気の可能性もあるため注意が必要です。不安な方は、循環器内科などを受診してください。

    脈拍数を安定させるためには、適度な運動などの生活習慣の見直しをしましょう。
    40代から罹患率が上がるがんも多く、その予防にもなります。
    また、40代以上で高血圧が急激に増えます。健康維持や病気の早期発見のためにも、
    脈拍と血圧の両方を毎日測定・記録しておきましょう。

 60代~70代の脈拍数の正常値

60~70代の、脈拍数の正常値は以下の通りです。

  • 60代 男性: 67回、女性: 68回
  • 70代 男性: 63回、女性: 66回
    高齢者とされる65歳を過ぎると、脈拍数が低下する傾向にあります。
    しかし、脈拍数が通常より大きく低下したときは、洞不全症候群や房室ブロックなどの病気の
    疑いがあります。
    息切れやだるさ、足のむくみ、めまいなどの症状が見られる場合は、早めに病院を受診して
    ください。

    また、加齢により「心房細動」という不整脈も増加するため、特に70代以降は注意が必要です。
    さらに、高血圧や糖尿病、肥満、喫煙、ストレスなども不整脈の原因とされており、
    生活習慣の改善が重要となります。

 80代以上の脈拍数の正常値

80代以上の、脈拍数の正常値は以下の通りです。

  • 80代以上 男性: 61回
  • 80代以上 女性: 65回
    60~70代と比べて、脈拍数がさらに低くなる傾向にあります。
    活動量も酸素消費量も低下することで、心臓が多くの血液を送り出す必要がなくなるためです。
    また、高齢者に多い降圧剤や抗うつ薬などの服用も、脈拍が低くなる原因です。

    さらに、80代以上では、冬場の入浴時にヒートショックによる死亡事故が増えます。
    脱衣所が寒いと血管が収縮して血圧が上がり、熱い浴槽に浸かると血管が拡張して血圧が
    下がります。通常は、血圧が下がりすぎないように心拍数が増え、脈拍も高くなりますが、
    80代以上では脈拍が高くなりにくいことがわかっています。

    血圧の急激な変化により心臓に過大な負荷がかかって、最悪の場合は脳卒中や心筋梗塞などが
    引き起こされます。
    脱衣所を暖かくしたり、お湯の温度を低めにしたりといった対策が必要です。

脈拍数は環境などにより変化する

一般成人の安静時の脈拍数は、平均で60~70回/分程度とされていますが、環境によって大きく
変化します。緊張・興奮状態、ストレスなど要因はさまざまですが、運動習慣や加齢によっても
変化するのです。
日常的に激しい運動をしている人は、安静時の脈拍数が低いことが分かっています。
逆に、運動を全くしない人は、脈拍数が高くなる傾向にあります。
また、一般的に加齢によって脈拍数は低下していきます。

 日常的に激しい運動をしている人は脈拍数が少ない

日常的に激しい運動をしている人は、脈拍数が少ない傾向があります。
マラソンや水泳などの一流のスポーツ選手では、安静時の脈拍数が30~40回ということもあります。
激しい運動を日常的に行っていると、体が多量の血液を必要とするため、心臓の筋肉が発達し
肥大化することがあります。この心臓は「スポーツ心臓」と呼ばれ、一度に送り出す血液量が
増えるため、脈拍数が減少するのです。

スポーツ心臓の選手は、1回の拍動で多くの血液を送ることができます。
全身の筋肉に多くの酸素が行きわたり、競技パフォーマンスが向上するのです。
なお、スポーツ心臓は病気ではなく、現役を引退した選手は数年で通常の心臓に戻ると
いわれています。

 日常的に運動をしていない人は脈拍数が多い

日常的に運動をしていない人は、安静時の脈拍数が多い傾向にあります。
運動により心臓の筋肉が鍛えられますが、運動不足の人は心臓の働きが弱くなります。
一度に送り出す血液量が減少するため、脈拍数が増えることになるのです。
また、運動不足は以下のようなデメリットもあります。

  • 筋肉量の減少や血行不良により心臓に血液が戻りにくくなり、むくみやすくなる。
  • 自律神経が乱れ、不整脈を起こす。
  • がんや心臓病などの生活習慣病のリスクが高まる。
    ウォーキングやジョギング、水泳、サイクリング、なわとび、エアロビクスなどの
    有酸素運動を、無理のない範囲で生活に取り入れましょう。

 年齢とともに脈拍数が低下していくのが一般的

一般的に、脈拍数は年齢とともに低下していきます。
乳児や幼児は、基礎代謝が高くて酸素消費量が多いことから、心臓の動きが活発で、
脈拍数が高くなります。
しかし、高齢者は活動量も酸素消費量も少ないため、脈拍数も低くなります。

また、降圧剤や抗うつ薬などの服用も、脈拍が低くなる原因です。
このように、一般的には脈拍数は加齢により低くなりますが、若くてもスポーツ選手は低いことが
あり、高齢者でも病気などが原因で高くなることもあります。

 脈拍数の年齢別正常値は目安として捉える

脈拍数の年齢別正常値はあくまで目安です。正常値から外れた場合を、すべて異常と
捉えてはいけません。
心臓疾患の人は普段から脈拍数が高かったり、日常的に運動をしている方は徐脈傾向だったりします。基礎疾患や生活スタイルの違いで、人によって大きく異なります。

ご自身の普段の脈拍数を覚えておき、異常値が出た場合に、的確に判断して適切に対応することが
重要です。
測定前の運動や入浴などにより脈拍数は上がりやすいため、異常値が出た場合は測定前の行動を
考慮して、時間をおいて再測定するなどしてください。

毎日、ほぼ同じ時間に同じ条件で測定し記録をつけることで、ご自身の正常値を把握して
おきましょう。それにより、病気の早期発見や予防につながります。

まとめ

今回は、年齢別の脈拍数の正常値などを解説しました。

  • 成人の脈拍数は60~100回が正常値。
  • 100回以上で「頻脈」、60回未満で「徐脈」。それぞれ心臓などの病気の可能性もある。
  • 年齢により正常値は変化し、一般的に加齢とともに低下する。
    脈拍数を安定させるために、若いうちから適度な運動などの生活習慣改善が重要。
  • 日常的に運動する人は脈拍数が低く、運動しない人は高い傾向にある。

    今後の人生を健康に過ごすためにも、毎日の測定で自身の脈拍数を把握し、生活習慣の見直しも
    心がけましょう。

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