介護用語のトランスファーとは?具体的手順や注意ポイントも解説!

2024.10.15

介護の現場などでよく使われる「トランスファー」という言葉をご存知でしょうか?
「初めて聞いた」という方や「聞いたことはあるけどどんな意味だったか忘れた」という方も
いるのではないでしょうか?

この記事では、この「トランスファー」について、基本的な知識から、具体的な方法、
実施時のポイントについて解説していきます!

介護におけるトランスファーとは?

トランスファーとは直訳すると「移る、移行する、移転する、渡る、譲渡する」などを意味します。
では、介護におけるトランスファーとはどのような意味を指すのでしょうか?
まずは、介護におけるトランスファーについて解説していきます!

 移乗介助の意味で使われる

介護におけるトランスファーとは「移動・乗り換え」という意味で、略して「トランス」と
呼ばれることもあります。
つまり、介護としてのトランスファー(移動・乗り換え)はベッドから車いすなどへ
乗り移りさせる「移乗動作」のことを指します。

高齢になるにつれて、足腰は弱くなっていきます。車いすを使っている方で、自分で移れ
なくなったり立ち上がりや方向転換がおぼつかなくなることもあり、
移乗に介助が必要になってくることも増えてきます。

寝たきりにならないためにも、自分でできることは自分でするという考えが大事になって
きますので、車いすを使う人に安全に乗り移りしてもらうためにも、トランスファー介助の
方法についてきちんと理解していきましょう!

ベッドから車いすへのトランス介助の手順を紹介

トランスファーとは、移行や乗り移りという意味を持ち、介護の現場では「車いすやベッド、
自動車などへの移乗介助」を意味します。
では、ここからは「ベッドから車いすへのトランスファー介助の手順」を具体的に解説していきます!

 車いすの準備

トランスファー介助を行うために、車いすを準備します。
車いすを準備する際には「空気圧」「ブレーキの効き具合」「フッドサポートやレッグサポート
などに不具合はないか」を確認しましょう。
これらを確認することは、トランスファー介助のしやすさや、事故防止に繋がるため、
介助の際のルーティンとして癖づけてしまっておくと良いでしょう。

車椅子の点検ができたら、フッドサポートを上げてトランスファー介助の準備をしましょう。
この時、レッグサポートやアームサポートを外したり開いたりできるタイプの車椅子の場合は、
外しておきましょう。

これらの部品が、トランスファー介助の際に体にぶつかり、内出血や表皮剥離などのケガに繋がる
可能性もあるため、取り外しができるものは、外して介助に臨みましょう。

 車いすをベッドに近づける

車いすの準備ができたら、ベッドに車いすを近づけましょう。
全介助の利用者をトランスファー介助する場合は「極力ベッドに近づける」ほうが良いでしょう。
一部介助で、トランスファー介助する場合は、利用者のADLを考慮した位置を考え、
その方に今ある能力を活かせる位置に車いすを配置しましょう。

どういった介助を行う前でも大切なことですが、介助に入るという時は必ず利用者様に
言葉をかけてトランスファー介助を実施することを伝えましょう。
これは、寝たきりであったり言葉を発することができない方であっても、必ず行いましょう。
また、車いすやベッドは施設の備品であったり、利用者様の私物やレンタル品の場合が
ほとんどなため、乱雑な扱いやぶつけてしまったりしないように、丁寧に取り扱いましょう。

 利用者の姿勢を整える

車いすの点検を行い、利用者様へ言葉をかけ、車いすをベッドに近づけると、いよいよ利用者様の
体に触れての介助に移ります。
いきなり、力任せにトランスファー介助をするのではなく、まずは利用者様の姿勢を整えます。
利用者の動きやすい姿勢のポイントには以下のようなものがあります。

  • 浅く座る(太ももの真ん中がベッドの端にくるあたり)
  • 膝よりもお尻の位置が高くなる高さ
  • 足を引き、足底がつくように
  • 肩幅または骨盤幅に足を開く

※あくまでも一例であり、利用者様の体格や麻痺、拘縮などにより差があります。

 車いすを微調整する

車いすの準備をし、利用者様が動きやすい姿勢を整えたら、車いすとベッド間の位置、
利用者様から車いすまでの距離を再度確認し、微調整します。
全介助の利用者の場合、この微調整をしないとトランスファー介助の際に意外と距離があり、
利用者の体にもスタッフの体にも負担がかかりケガの原因になりかねません。

また、位置の微調整がずれると体をぶつけたり、擦ったりする危険もあり、これもまた事故や
ケガに繋がる可能性があります。
一部介助の利用者に対しても、車いすの距離が遠かったり近かったりすると、上手く力が
入らなかったり不安感に繋がる危険があります。

筋力の弱ってきた高齢者にとっては、この細かな差が事故やケガに繋がる可能性もあるため、
この微調整はとても大切です。
この間も、こまめに言葉をかけコミュニケーションを図り、利用者・職員双方にとって安全で
安楽にトランスファー介助ができる位置に調整をしましょう。

 介助者が重心を低くし姿勢を整える

車いすの準備をし、利用者様の姿勢を整え、位置の微調整が終わったら、
次に、介助者が重心を低くし姿勢を整えます。
これは、介助者が重心を低くすることで利用者様が体を前傾気味にしやすくなるためです。

人は真上に立ち上がることは体の構造上できないため、利用者様が体を前傾気味にしやすくなる
ことで立ち上がりがしやすくなるのです。
また、介助者が受診を低くする際は膝を曲げて重心を低くすることを心がけましょう。
腰をまげて中腰姿勢になると、腰への負担が大きくなり腰痛が起きやすくなりなるため、
注意しましょう。

 声掛けをしてゆっくり移乗させる

車いすの準備、利用者の姿勢、介助者の姿勢が整ったら、言葉をかけゆっくりと移乗します。
移乗の手順は以下の通りです。

  1. 利用者の体を前方に誘導し、お尻を浮かす。
  2. 利用者のお尻の高さが変えないように、一緒に回転する。(立ち上がりができる方の場合は
    一度立ち上がる)
  3. 密着したまま、ゆっくりと車いすに座る。

この時のポイントは以下の通りです。

  1. 動作ごとに言葉をかけ、今からどう動くのかの説明と体調確認を行う。
  2. 利用者のズボンなどを持っての介助はしない。
  3. ドスンと座らないように注意する。

トランス介助での注意ポイントは?

ここまで、トランスファー介助とは何かという基本的な知識と、トランスファー介助の具体的な方法
とポイントについて解説をしました。
では、トランスファー介助で抑えておきたいポイントには、どんなものがあるのでしょうか?
ここからは、トランスファー介助での注意ポイントについて解説していきます!

 転倒リスクを軽減させる

トランスファー介助での注意ポイントひとつ目は「転倒リスクを軽減させる」です。
高齢者は加齢や疾病に伴い、骨も脆くなっていることが多く転倒すると骨折に至る可能性が
大きくなります。
骨折から筋力の低下を引き起こし、寝たきりになる場合も少なくないため、転倒リスクを
軽減させることは重要になってきます。

転倒せずにトランスファー介助を行うためには、利用者が安心して介助者に身を任せることが
大切です。
そのためには、介助者が利用者様の心身状態・障がいの程度を把握し、一人ひとりに合った
介助を行うことが大切です。

 声掛けを行い利用者のペースに合わせる

トランスファー介助での注意ポイントふたつ目は「声掛けを行い利用者のペースに合わせる」です。
介助前、動作毎、介助後の言葉かけは重要で、どうすれば移乗しやすいか、次にどういう動きを
するのか説明をするなど、言葉かけをこまめに行い、息を合わせて利用者のペースに合わせた
移乗介助をすることが大切です。
介助前や介助後に言葉をかけ体調の確認や介助の振り返りを一緒に行うことで、次回の介助の質を
向上させることができたり、利用者様との信頼関係を築き、介助時の要望などを伝えやすい
関係性をつくっていくことも大切です。

 適切な姿勢を取る

トランスファー介助での注意ポイント3つ目は「適切な姿勢を取る」です。
トランスファー介助は、介助者の体にも負担がかかる介助のひとつです。
忙しいからといって、無理な姿勢で、力任せな介助を続けているといずれは腰痛や事故を
引き起こしかねません。
「利用者様と介助者の重心の位置は適切か」「中腰姿勢になりすぎていないか」
「安定して介助ができるよう介助者は足を開いているか」など、
適切な姿勢をとることが腰痛や事故防止に繋がるポイントです。

これらは「ボディメカニクス」という考え方が重視されており気になる方はボディメカニクス
についても勉強すると良いでしょう!

まとめ

この記事では、トランスファー介助について解説をしました。
トランスファー介助とは、移動や乗り換えという意味があり、介護では「移乗介助」を指します。
トランスファー介助のポイントは、利用者様・職員ともに安全、安楽に移乗ができるように、
車いすやベッドの位置、体の使い方を意識することが大切です。

トランスファー介助は、介助者にとっても負担が大きい介助のひとつのため、これらの知識と
技術の造形を深めることは、より良い介助と事故・ケガ防止に繋がるため、是非トランスファー介助
のみならず色々な介助について知識を身に着けていきましょう!

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