終末期医療とは、ターミナルケアとも呼ばれ、病気や障害で治療の見込みがなくなった方に、
最期を迎えるまでの期間、支援を行うものです。
医療、看護、介護によって、本人や家族の身体的、精神的、社会的な苦痛を軽減し、
尊厳ある生活を快適に過ごすためのケアをします。
ターミナルケアの特徴や高齢者へのケアの内容を詳しく解説しましょう。
目次
終末期医療(ターミナルケア)とは、病気などの進行により、余命わずかになった状態の方に
対して行う、医療、看護的、介護的ケアのことです。
点滴や酸素吸入などの医療的ケアは行わず、食事や排泄の介助、褥瘡の防止など、
日常生活のケアが中心になります。
残された余命を平穏に過ごせることを目的として、本人の意思や尊厳を尊重しながら、
心穏やかな生活や、生活の質(QOL)を保つための対応が行われます。
残された余命を、その人らしく過ごせるようにサポートをする終末期医療(ターミナルケア)では、
主に3つのケアが行われます。
下記のケアについて、詳しく解説しましょう。
身体的ケアでは、病気による痛みや不快感を取り除き緩和することを目的としたケアです。
終末期を穏やかに過ごせるように、食事、入浴、排泄を基本とした介助を行い、
床ずれを防いだり、体を清潔に保つための清拭やマッサージなど、生活をする上でのストレスを
感じさせないようにケアします。
栄養補給では、細かく刻むなどの食形態を工夫したり、「胃ろう」による経管栄養などで
水分補給や栄養状態の維持を行います。
終末期に入ると「死に対する不安や恐怖」「遺された家族への心配」などから、精神的に
不安定になる方が多くみられます。
終末期の、その様な感情に寄り添い、傾聴することが大切であり、心穏やかに過ごすための
サポートが、精神的ケアです。
孤独や寂しさを感じないよう、家族や友人と会う機会をつくったり、趣味の時間を作ります。
ベッドのまわりを本人がリラックスできる雰囲気にコーディネートするなども、精神的ケアの
ひとつです。
ターミナルケアが長期間続いた場合、費用や関係各所とのやり取りや手続き、入院や介護により
患者本人や家族が経済的な不安を抱えやすくなります。
この負担を減らすために、医療ソーシャルワーカーが中心となり、医療費軽減策や支援制度の
情報提供、遺産相続・遺品整理のサポート、家族の悩み相談の対応などを行います。
経済的負担、精神的負担を軽減し、快適な環境で最期を過ごせるように配慮するのは、社会的ケアの
重要なポイントです。
主にターミナルケアは、介護施設や病院、自宅で行われています。
近年では看取りケアを行う老人ホームも増加しています。
それぞれの特徴やメリット、デメリットについて解説しましょう。
自宅(在宅)でのターミナルケアは、最後の時間を慣れて親しみのある自宅で、家族と一緒に
過ごす時間が増えることが大きなメリットになります。
しかし、家族が主体となって介護をすることになり、患者の状態によっては介護に加え、
痰の吸引などの医療的ケアも家族が行う必要があります。
また、ターミナルケアは24時間体制のケアが必要であり、急変時での対応など、家族にとって、
肉体的、精神的に負担が大きなものになります。
病院やホスピスなどでターミナルケアを受ける場合は、急変時でも医者や看護師などが近くに
いるので安心です。
自宅(在宅)ケアに比べ、家族への肉体的、精神的負担も少ないというのがメリットです。
ですが、ケアや治療内容、期間によっては経済的な負担は大きくなります。
面会時間に制限があるため、家族と離れている間に患者の孤独感や不安感が大きくなる心配もあり、
充分にリラックスできる生活環境に整えるのは難しく、自由度は低くなります。
介護施設では、介護のプロがケアをしてくれるので、褥瘡ケアや日常生活のサポートには
安心感があります。
廊下移動、着替えや排泄など、あまりストレスを感じることなく過ごせるため、家族は患者と
向き合うことに集中できます。
介護士や他の利用者とコミュニケーションを取る機会も多く、孤独感や社会との関係の喪失感も
感じにくい環境は精神面にも良いでしょう。
リラックスできる環境にするのが難しい点などがあります。
ターミナルケアは、どこで行う場合でも本人に寄り添うことが重要です。
次のポイントを解説しましょう。
終末期の医療の選択では、本人に意識があれば、本人の意思を尊重します。
ですが、終末期では、患者自身に意識がない、または、意識はあるが判断力がない状態が多く、
その場合は、家族にその判断が任されます。
本人や家族とともに最期を迎えることを望む場合は、訪問看護と連携して在宅での生活を
継続したり、ホスピスなどの施設を利用したりすることもできます。
本人の意思を最大限尊重できるよう、意思疎通が可能である時に話し合っておくことが大切です。
精神的に不安定になることが多いため、孤独や寂しさを感じないよう、気持ちに寄り添い、
話を聞き、家族や友人と過ごす時間や趣味を楽しむ時間をつくりましょう。
また、ベッドの周囲は、できるだけ普段と変わらない環境を作り、心穏やかにリラックスして
過ごせるようにします。
好きな音楽をかけたり、大切にしている物、思い出の品などを身近に置いて、本人にとって
満足感のある空間にすることがとても大切です。
「最期は自宅で家族に見守られながら迎えたい」と考える人は多いようです。
しかし、自宅(在宅)でターミナルケアを行う場合、急変時の対応や人手の確保、介護者の体力と
精神面のバックアップなど難しい点がいくつかあります。
自宅・医療施設・介護施設のメリットとデメリットも考慮して、最期を迎える場所について無理の
ない決断をしましょう。
本人の意思を最大限尊重できるよう、意思疎通が可能である時に話し合っておきましょう。
終末期医療(ターミナルケア)とは終末期を迎えた患者さんが、生活の質(QOL)を維持しながら、
穏やかに過ごせるように支援していくことです。
ターミナルケアについて、特徴や高齢者へのケアの内容、提供される場所などについて解説して
きました。
患者本人や家族の意向を尊重し、個々のニーズに合わせたターミナルケアを選択できるよう
前もって話し合っておきましょう。