ケアプランの長期目標・短期目標を徹底解説!ポイントや目標例も紹介

2024.11.14

ケアプランの長期目標・短期目標を適切に設定すれば、適切なサービスの提供につながります。
「ケアプラン」は、介護サービスを受ける利用者にとって重要な計画書です。

ケアプランでは、「長期目標」と「短期目標」の2種類のゴールを設定します。
本記事では、ケアプランの概要や種類、作成のポイント、長期目標・短期目標の概要と作成例に
ついて解説します。
長期目標・短期目標の重要性や書き方が理解できる内容です。

そもそもケアプラン(介護サービス計画書)とは

「ケアプラン(介護サービス計画書)」とは、介護サービスの利用に関するさまざまな内容を
具体的に示した計画書です。

要介護または要支援の認定を受けた方について、利用するサービスの種類や内容、利用頻度、
スケジュールなどが示されています。
介護保険適用のサービスを利用するには、ケアマネジャーによるケアプランの作成が必須です。

ケアマネジャーは、介護サービスの利用者やその家族にヒアリングを行い、現状や希望、
困っていることなどを把握した上で適切なケアプランを作成します。
ケアプランの内容に基づき、ケアマネジャーが介護サービス事業者に手配を行います。

ケアプランの3つの種類

ケアプランは、要介護の人を対象とした「居宅サービス計画」・「施設サービス計画」と、
要支援の人を対象とした「介護予防サービス計画」の3種類に分けられます。

 居宅サービス計画

「居宅サービス計画」とは、自宅で介護を受ける要介護1~5の認定を受けた方が対象のケアプラン
です。
居宅介護支援事業所のケアマネジャーが、利用者と家族の状況を把握・分析して作成するのが
一般的です。
居宅サービスには、例えば以下のものが含まれます。

  1. 訪問サービス・・・訪問介護、訪問入浴介護、訪問看護、訪問リハビリテーション、
    居宅療養管理指導
  2. 通所サービス・・・通所介護(デイサービス)、通所リハビリテーション(デイケア)
  3. 短期入所サービス・・・短期入所生活介護(ショートステイ)、短期入所療養介護
    (医療型ショートステイ)
  4.  その他のサービス・・・福祉用具のレンタルや購入、住宅改修、特定施設入居者生活介護

 施設サービス計画

「施設サービス計画」とは、要介護1~5の認定を受けた方が介護施設を利用するための
ケアプランです。
介護施設で働くケアマネジャーが、利用者の状況を把握・分析して作成するのが一般的です。
施設サービスには、例えば以下のものが含まれます。

  1. 介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)
  2. 介護老人保健施設
  3.  介護医療院(2024年3月で廃止された「介護療養型医療施設」に代わり創設された施設)
    なお、①の介護老人福祉施設については、要介護3以上の認定を受けた方が対象です。

 介護予防サービス計画

「介護予防サービス計画」は、要支援1~2の方が対象で、介護予防サービスを利用するための
ケアプラン
です。
地域包括支援センターの主任ケアマネジャーや保健師、社会福祉士などが、利用者の課題や背景を
把握・分析して作成するのが一般的です。
要介護状態になることを予防して、自立した生活を継続できるよう支援を行います。
介護予防サービスには、例えば以下のものが含まれます。

  1. 訪問サービス・・・介護予防訪問介護、介護予防訪問入浴介護、介護予防訪問看護、
    介護予防訪問リハビリテーション、介護予防居宅療養管理指導
  2. 通所サービス・・・介護予防通所介護(デイサービス)、介護予防通所リハビリテーション
    (デイケア)
  3.  短期入所サービス・・・介護予防短期入所生活介護(ショートステイ)、
    介護予防短期入所療養介護(医療型ショートステイ)
  4. その他のサービス・・・介護予防福祉用具のレンタルや購入、介護予防住宅改修、
    介護予防特定施設入居者生活介護

ケアプランの長期目標・短期目標とは?

ケアプランの第2表に記載する目標には、「長期目標」と「短期目標」があります。
これらの目標をもとに、利用者の方が受けるサービスが構成されます。
長期目標とは、半年~1年以上の期間で達成を目指す目標です。

利用者の方が時間をかけて最終的に目指すゴールとなります。
短期目標とは、長期目標を達成するため1~3ヶ月程度の短期間で目指す目標です。
短期目標を積み上げることで、長期目標を達成できるようになっています。

 長期目標と短期目標を設定する理由

ケアプランで目標を長期・短期に分けて設定する理由は、介護サービスを提供する側・受ける側の
双方にメリットがあるからです。

  • サービスを提供する人
    自分がしていることの意義を再確認しやすくなります。
    長期目標のみでは、ゴールが遠く、途中で意義を見失いがちです。ゴールが近く段階的に
    達成していく短期目標があると、最終目標から遠ざかっていないかを確認しながらケアや
    サービスを行うことができます。
  • サービスを受ける側
    長期目標の設定により最終的に目指すものが明確になります。
    ただし、長期目標だけでは時間がかかるため、途中でモチベーションが下がりやすいです。
    そのため、短期目標も設定し段階的に達成することでモチベーションを維持しやすくなります。
    また、利用者の症状や計画の進捗は当初の予定通りに進むとは限らないため、ある程度の
    柔軟性も必要です。
    それにより、その時々の状況に応じた適切な構成に変えられます。

ケアプランの長期目標・短期目標の例を紹介

ケアプランは長期目標と短期目標を設定しますが、似たケースの利用者でも身体状況や
生活環境などによってケアプランの内容は異なります。
以下では、3つのケースについて、長期目標・短期目標の具体例をご紹介します。

 1.歩行に不安がある方のケース

1つ目は、一人での歩行に不安はあるものの外出を楽しみたい方のケースです。
自力で歩くことを目指す場合は、短期目標で短めの距離を設定して少しずつ達成します。
杖を使う方の場合は、短期目標で介助ありでの歩行や筋力をつけることを目指します。

  • ケース①
     長期目標: 自力で700m先のスーパーまで歩けるようになる
     短期目標: 自力で50m歩けるようになる
  • ケース②
     長期目標: 杖あり介助なしで500m先の公園まで歩けるようになる
     短期目標: 杖あり介助ありで100m歩けるようになる、下半身の筋力をつける

 2.食事支援に関するケース

2つ目は、1人での食事が難しい方や、食事を拒否することがあり栄養摂取に不安がある方のケース
です。
1人で食事ができることを目指す方は、短期では介助を受けながらの食事から始めて徐々に
介助の頻度を減らします。
食事を残さず食べることを目指す方は、短期では少量から食べることを目指します。

  •  ケース①
     長期目標: 1人で安全に食事ができるようになる
     短期目標: 介助を受けながら食事をし、徐々に介助の回数を減らす
  •  ケース②
     長期目標: 1日3食の食事を楽しみ、残さず食べられるようにする
     短期目標: 好きなものを中心に体調に合わせて食事を摂る

 3.コミュニケーションに関するケース

3つ目は、他者とのコミュニケーションの機会を持つことを希望している人のケースです。
失語症の方は、短期目標はジェスチャーなどで意思の疎通を図ろうとすることとします。
趣味のサークルに参加して会話を楽しみたい方の場合は、短期目標は「他者との交流に慣れるため
デイサービスに参加する」などとします。

  • ケース①
     長期目標: 施設の人や家族と円滑にコミュニケーションがとれる
     短期目標: ジェスチャーやカードでコミュニケーションの練習をする
  •  ケース②
     長期目標: 趣味の囲碁サークルに参加して、楽しく会話する
     短期目標: デイサービスに参加して、職員と緊張せずに話せるようになる

ケアプランを作成する際のポイントは?

ケアプランは、介護サービス利用者一人ひとりの意向に沿った内容で作成しなければなりません。
そのために押さえておくべきポイントを、以下でご紹介します。
なお、ケアプランは、一般的にはケアマネジャーが作成しますが、利用者やその家族が作成することもできます(セルフケアプラン)。
ここでは、ケアマネジャーが作成する場合を取り上げます。

 利用者本人だけでなく家族にも話を聞く

ケアプランは、介護サービスを利用する本人はもちろん、その家族にも話を聞いて作成することが
重要です。
利用者のために作成されるケアプランではありますが、利用者と家族のニーズに相違がある可能性も
あります。利用者と家族双方の意向や希望を反映したケアプランを作成するためには、双方の話を
聞いてニーズを把握し調整する必要があります。

また、隠れたニーズがないか注意しましょう。
そのためには、相談しやすい雰囲気づくりをしたり、会話を誘導したりすることも必要です。

 利用者のモチベーションを上げられる内容を心がける

ケアプランで長期目標だけを設定すると、目標が高くなりすぎて利用者のモチベーションが下がって
しまいます。
そのため、段階的な短期目標も設定します。モチベーションを上げるためにも、短期目標は
1~3ヶ月程度で達成できる内容で作成しましょう。
さらに、利用者本人の状況やニーズが途中で変化することもあるため、定期的に聞き取りを行うこと
も重要です。
月に1回程度、面談を行うなどしてその時々の状況に合った内容で、ケアプランの見直しを行って
ください。

 利用者の理想的な生活を送れるよう目標を設定する

ケアプランは、介護サービス利用者の問題や悩みを解決することが目標です。
長期目標はそのように設定し、さらにそこに至るまでの小さな目標を短期目標として設定します。

ケアプランの最終目標は、利用者の悩みを解決するだけにとどまりません。
利用者が理想的な生活を送り、さらに生活の質(QOL)を高められるように設定することがポイント
です。
QOLは生きがいにもつながる概念として、近年は介護の現場でも重要視されています。

まとめ

今回は、ケアプランの長期目標・短期目標をメインに解説しました。
・ケアプランは介護サービスを受けるために必須で、「居宅サービス計画」・「施設サービス計画」
・「介護予防サービス計画」の3種類がある。
・ケアプランには長期目標と短期目標を記載する。長期・短期に分けることで、サービスを
提供する側・受ける側の双方にメリットがある。
・ケアプラン作成の注意点は、「本人と家族から話を聞く」・「モチベーション維持を心がける」
・「利用者の生活の質向上を目指す」

利用者と家族の要望をしっかり聞き出し、最適な長期目標と短期目標を盛り込んだケアプランを
作成しましょう。

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