本記事では、高額介護サービス費とはどんなものかについて解説します。
公的介護保険で要介護認定を受けると、介護保険サービスを受けることができます。
毎月の限度額を超えた金額を、払い戻してくれる嬉しい仕組みです。
制度の概要や申請方法、注意事項などについて、わかりやすく解説しますので、ぜひ参考に
してみてください。
目次
高額介護サービス費とは、1ヶ月の自己負担額の合計が高額になったとき適用される制度です。
公的介護保険サービスの自己負担額は所得に応じて1〜3割ですが、日常的に介護保険サービスを
利用していると、金額が膨れ上がってきます。
そこで、高額介護サービス費を利用することで、個人の所得や世帯の所得によって決まる
月々の負担額上限を超えた金額が、介護保険から支給されます。
一般的に、高額介護サービス費の対象になれば自治体より通知がきます。
通知が来ればすみやかに申請しましょう。
ただ、申請方法が不透明だと、いざ必要になった時にあたふたしてしまう可能性も考えられます。
そこで、具体的な申請の方法についてもまとめました。
高額介護サービス費の申請時に必要な物は以下の通りです。
高額介護サービス費の支給を受けるには、お住まいの自治体に申請する必要があります。
サービス利用料の自己負担額が上限額を上回った場合、自治体から支給申請書が自動的に
送られてきます。
一度申請を行えば、その後の該当した月分については、申請がなくても初回申請した口座に
自動的に振り込まれます。
このように少ない手間で利用できる制度ですが、制度の存在を知っているかどうかで、
介護保険サービス利用の判断が変わってきます。
しっかりと頭に入れておきたい仕組みです。
自治体によってマイナンバーの提示を求められたり、印鑑が不要だったり、申請手続きの詳細は
異なります。
介護サービスの限度額を超えた場合、該当する月の約3~4カ月後を目安に自治体から申請書が
送付されます。
申請書を受け取った後は、同封の案内に従って郵送、またはお住まいの市区町村役所の
保険年金課窓口で申請手続きをしましょう。
申請書が受理されると「支給決定通知書」が送付され、指定した口座へ還付金が振り込まれます。
詳しくはお住まいの自治体へお問い合わせください。
高額介護サービス費制度では、所得によって1ヶ月の自己負担額の上限が設定されています。
2021年8月に制度が改定され、高所得者の限度額が引き上げられました。
自分がどの程度制度で負担軽減できるのかを知っておくためにも、利用者負担上限についても
覚えておきましょう。
世帯の全員が市区町村税を課されていない場合は、自己負担の上限が月額2万4,600円となります。
さらに、前年の所得と公的年金収入の合計が年間80万円以下の人は、個人としての負担上限が
月額1万5,000円と定められています。
生活保護を受給している人は、月額1万5,000円が負担上限です。
実際は生活保護を受けていると窓口負担は0円の場合が多いです。
介護保険サービスの1割が月額1万5,000円を超えると高額介護サービス費が発生しますが、
振り替え処理が行われるだけで、生活保護受給者に直接支給されるわけではありません。
住民税の課税対象となる人がいる世帯の場合、一般的な所得なら月額4万4,400円が自己負担の
上限となります。
介護保険サービスを受ける方の課税所得によっては、9万3,000円、14万100円が上限額となります。
第4段階〜第6段階の区分は、介護保険サービスを受ける方の課税所得で判定されます。
例えば、同じ世帯に課税所得700万円の息子がいても、判定には影響しません。
介護保険サービスを受ける方が2人以上いる場合は、課税所得の高い方が採用され、判定されます。
例えば70歳の夫の課税所得が500万円、67歳の妻の課税所得が200万円の場合、第5段階と判定され、
利用者負担上限額は93,000円となります。
介護は長期間にわたるケースも多く、介護サービスを受けるための経済的負担はけっして
少なくありません。
利用する場合には、払い戻し対象になるのかどうか、逆に対象外になっていないかなどを
事前に確認する必要があります。
高額介護サービス費の支給対象となるのは、自宅で暮らしながら受けられる「居宅サービス」、
施設に入居して受けられる「介護施設サービス」、住み慣れた地域で生活し続けることを
目的とした「地域密着型サービス」を利用した際の利用者負担額です。
「居宅サービス」は、買い物や身の回りのサポートをする訪問サービス、デイサービスなどの
通所サービス、ショートステイなどの短期入居サービスが該当します。
「介護施設サービス」は特別養護老人ホームや介護老人保健施設、介護療養型医療施設などへの
入居に付随したサービスです。
食事や入浴、排せつの介助などのほか、看護などが含まれることもあります。
介護保険が適用されていても、高額介護サービス費の支給対象にならないものがあります。
介護保険の高額介護サービス費は、介護サービスの利用料として支払った自己負担部分の合計額が
対象となります。
先述した通り、自治体によっても申請の仕方が異なっている部分はありますが、最後に申請時に
気を付けるべきポイントも解説します。
一般的に、高額介護サービス費の対象になれば、自治体より通知がきます。
通知が来ればすみやかに申請する必要があります。
申請期間は支給対象となった介護保険サービスが提供された月の翌月1日から2年間となっています。
期間を過ぎてしまった場合は、時効により申請を受け付けることができません。
自治体から申請書が届いたら、早めに手続きを済ませましょう。
ただし、利用者負担額の支払がサービスを利用した翌月以降の場合には、その支払った日の翌日から
起算します。
介護保険サービス利用の翌々月に申請書が送付され、申請から支給まで1〜2ヶ月かかります。
つまり介護保険サービスの利用から支給まで最短でも3〜4ヶ月は見ておく必要があります。
その間の資金繰りも考えておきましょう。
介護保険施設やグループホームによっては、「受領委任払い制度」が使える場合もあります。
自己負担が一時的に膨れ上がるのを抑えられるので、該当する方は検討してみてください。
また、高額介護サービス費等の支給申請については、一度申請をすれば次回からは手続きを
行わなくても、1カ月に一定の上限金額を超えた利用者負担がある場合に支給が行われる自治体も
あります。
翌年の確定申告(医療費控除)で必要になるため、支給決定通知書や介護保険サービスを利用した
際の領収書は保管しておきましょう。
介護保険サービスの中には、医療費控除の対象になるものがあります。
高額介護サービス費として払戻しを受けた場合は、その高額介護サービス費を医療費の金額から
差し引いて医療費控除の金額の計算をすることとなります。
書類がないと確定申告がうやむやになり、還付されずに終わるケースもあるのでご注意ください。
本人が申請できない場合は、対象者本人の家族、または指定居宅介護支援事業者、介護保険施設、
地域包括支援センターなどに申請を代理してもらうことも可能です。
代理申請時には、代理権の確認書類を併せて提出する必要があります。
基本的に家族であれば代理申請できますが、本人確認書類や委任状など、必要となるものが
自治体によって異なります。
申請書 · 被保険者本人の保険者証など、代理権の確認ができるものや、申請者の本人確認が
できるものなどが主に必要となります。
申請の前に電話で確認しておくといいでしょう。
家計への負担が増えることを気にして介護保険サービスの利用を控えていた方は、
「高額介護サービス費」を知ることで、利用が促進されるかもしれません。
介護保険の利用料は自己負担が1~3割とはいえ、毎月の支払いとなると負担が大きくなることも
あります。
「高額介護サービス費」を利用して介護を受けられれば、より快適な生活が期待できます。
一度、自分の世帯の状況と照らし合わせてみてください。