サービス付き高齢者向け住宅の問題点やトラブル例|施設選びのポイントも

2024.12.02

「サービス付き高齢者向け住宅」のトラブルを回避して、快適な生活を送りたい方におすすめの
記事です。
近年は施設数が急増し、生活の自由度の高さなどから人気も高まっています。
しかし、よく検討せずに選ぶと、入居後にさまざまなトラブルに巻き込まれることもあります。

この記事では、サービス付き高齢者向け住宅の問題点やトラブル事例、施設選びのポイントに
ついて
解説します。

サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)とは何か

「サービス付き高齢者向け住宅」とは、要介護度が低く自立した生活ができる高齢者のための施設です。
バリアフリーの設備が整っており、「安否確認」と「生活相談」のサービスを提供しています。
「一般型」と「介護型」の2種類のタイプがあります。

  • 一般型は、一般の賃貸住宅と同じような生活ができる自由度の高い施設です。
    介護が必要になった場合は、外部サービスと契約をします。
  • 介護型は、特定施設入居者生活介護に指定されています。
    施設のスタッフから介護サービスを受けられる点が特徴です。

サービス付き高齢者向け住宅の問題点は?

サービス付き高齢者向け住宅は、高齢者の生活を支える施設として人気が高いですが、
多くの問題点も指摘されています。
このセクションでは、そのうちのいくつかの問題点について解説します。

 職員体制が整っていない施設がある

サービス付き高齢者向け住宅の中には、職員への負荷がかかり過ぎて、入居者に対するサービスが
行き届いていない施設もあります。
これは、入居者の受け入れに対応できる職員体制が整っていないことが原因です。
近年、サービス付き高齢者向け住宅は急激に施設数が増加しています。入居希望者の受け入れ先が確保
できるのは、本来ならば良いことです。
しかし、実際は補助金目当てに施設を建てている悪質な業者もごく一部ながら存在します。
そのような業者による施設は、設備もスタッフも不十分なまま運営されているのが現状です。

 医療機関や公共交通機関へのアクセスが良くない施設がある

サービス付き高齢者向け住宅の中には、医療機関や公共交通機関へのアクセスが良くない施設も
あります。
国土交通省の2017年の調査によると、一般的に立地条件が良いとされる市街化区域に建設されている
施設は、全体の3分の2程度です。
「鉄道駅からもバス停からも遠い」とされる施設は17.8%で、「医療機関まで徒歩圏外かつ公共交通利用圏外」
とされる施設は2.6%となっています。

特に、医療機関にすぐにアクセスできない施設は、緊急時に対応が遅れる可能性があります。
また、そのような立地の良くない施設は、入居者の家族にとっても働く職員にとっても、
不便を強いられることになります。

 一般の賃貸住宅よりも費用が高い傾向がある

サービス付き高齢者向け住宅は、一般の賃貸住宅よりも費用が高くなる傾向があります。
その理由は、バリアフリー構造のため建築時のコストがかかっていることと、安否確認と生活相談の
サービスを提供していることです。
また、家賃や管理費に加えて、食費や光熱費なども月額費用に上乗せされます。
さらに、介護型の場合は介護サービスの費用もかかります。
しかし、初期費用は安く済む場合が多いので、有料老人ホームなどと比べると費用は抑えられる場合があります。
一般的な賃貸住宅より費用がかかるとはいえ、スタッフが見守ってくれるので、安心な住環境といえます。

 介護サービス費が別途かかる

一般型の場合には、介護サービスの提供はありません。
介護サービスが必要な場合は、訪問介護などの外部サービスと契約する必要があり、その分費用がかかります。
利用した分だけ請求されるため、毎月の費用は変動します。
介護型の場合は、介護サービスの利用が前提となっており、月額費用に介護サービスの費用が上乗せされます。
要介護度に応じて毎月定額の介護サービス費を支払う必要があります。
基本的に、どれだけサービスを利用しても、毎月の支払額に変動はありません。
一般型でも介護型でも、介護サービスは基本的に介護保険が適用され、要介護度に応じた支給限度額の
範囲内であれば、1~3割が自己負担です。

サービス付き高齢者向け住宅のトラブル例を紹介

ここでは、サービス付き高齢者向け住宅について、実際に起こりうるトラブルの例をいくつか紹介します。
できるだけトラブルを回避するためにも、よくあるトラブルの内容を把握し、どのような点に注意する
べきかを知っておきましょう。

 介護事業者を指定される囲い込み

一般型のサービス付き高齢者向け住宅では、介護サービスを受けたい場合は、外部の事業者を利用します。
原則として、どの事業者を利用するかは入居者が自由に選べます。以前から利用していた介護サービスを
そのまま利用することも可能です。

ただし、ごく一部の施設では、併設した介護施設を強制的に指定する「囲い込み」が行われ、問題視
されています。
さらに悪質な事例では、必要のないサービスを無理やり契約させ、多額の介護費用を請求する場合もあります。
併設した施設の利用には、密な連携が取れるというメリットもあります。ただし、入居者本人の希望を聞いて、
あくまで選択肢の一つとして併設した施設を提示するのがあるべき姿です。

 契約時に想定していた月額費用と請求額に差がある

入居者が施設との契約時に聞かされていた月額費用と、実際に請求された額に大きな差異があるケース
あります。
このようなトラブルに見舞われたら、まずは実際の請求額の内訳を確認し、契約書の記載内容と
合致しているかを確認してください。

また、先述したように、過剰な介護サービスによる不当な請求がされている可能性もあります。
納得できない場合は、請求額の内訳や根拠について、施設側に確認してください。

 月額費用の急な値上げ

月額費用が急に値上げされたというトラブルもあります。
契約時に、どのような場合に値上げするのかが明記されていることもあります。
特に、近年では物価の上昇に伴い、管理費や食費などを値上げする施設が増えています。
そのような場合には、値上げの数ヶ月前には通知されるのが通常です。
そのような通知もなく、突然請求額が増えた場合は、契約書の値上げについての記載を確認してください。
納得できない場合は、施設側に詳細や根拠を確認するとよいでしょう。

 退去時に入居一時金が返還されない

退去時に入居一時金が返還されないというトラブルもあります。
サービス付き高齢者向け住宅では、入居一時金は「家賃の前払い」の意味合いです。
一般型では0円の施設が多く、介護型では数十万~数百万円程度が必要な場合があります。
通常、入居一時金には返還制度があり、支払った家賃分の期間より前に退去となった場合には、
残りの期間分の金額が返還されます。
しかし、返還の条件や手続きが不明確であったり、一方的に返還を拒否されたりする事例も
報告されています。

そのような場合、入居者は法的措置を検討することが必要です。

 入居してみて食事が口に合わない

多くのサービス付き高齢者向け住宅では食事の提供が行われていますが、質や内容は施設によって
大きく異なります。

調理師が栄養バランスを考えて作った食事を提供する施設もあれば、コスト削減のために
レトルト食品などを提供する施設もあります。

食事の内容が好みに合わない、食事の質に不満があるという声も多いです。
食事が口に合わないだけでも、毎日楽しく生活できなくなってしまいます。
入居前の見学や体験入居の際に、施設の食事内容を確認しておくことが重要です。

施設選びのチェックポイントを紹介!

このセクションでは、サービス付き高齢者向け住宅に入居する前に、確認しておくべきポイントを
紹介
します。
快適な日常生活を送れるかの確認も重要ですが、施設の安全体制が整っているかのチェックも
必要です。

 相談員の人員体制

相談員の人員体制が法律に従っているかを確認しましょう。

  •  一般型の人員基準
    以下のいずれの職員が日中は施設に常駐する必要があります。入居者の安否確認と生活相談が
    義務付けられているからです。
    「社会福祉法人・医療法人・指定居宅サービス事業所等の職員、医師、看護師、介護福祉士、
    社会福祉士、ケアマネジャー、介護職員初任者研修修了者」
    しかし、入居者の事前承諾を得て以下の3つの条件をすべて満たせば、日中の常駐は不要です。
    ① 毎日1回以上、安否確認の実施    
    ② 居室に緊急通報装置などの設置    
    ③ 電話などでの生活相談サービスの提供
  • 介護型の人員基準
    以下のように、有料老人ホームと同じ人員基準を満たす必要があります。
    ① 管理者 1人
    ② 生活相談員 要介護者等100人に1人
    ③ 看護・介護職員 要支援者10人に1人、要介護者3人に1人
    ④ 機能訓練指導員 1人
    ⑤ 計画作成担当者 ケアマネジャー1人

 夜間や緊急時の体制・職員の人員配置

夜間や緊急時の体制、職員の人員配置も確認する必要があります。
なお、夜間は人員配置の基準が定められておらず、緊急通報装置などを設置すれば職員の常駐は
不要です。
実際には、多くの施設で1人以上の夜勤スタッフを配置しています。
緊急時の連絡体制について、具体的なチェックポイントは以下の通りです。

  • 夜間や緊急時対応の研修が行われているのか、マニュアルはあるのか
  • スタッフに緊急対応の経験があるか
  • 緊急通報装置の位置は適切か
  • 緊急通報装置はハンズフリー対応か
  • 緊急通報をしたらどの職員がどの順番で駆け付けるのか
  • 家族への連絡網はどうなっているのか
  • 緊急対応のスタッフ不在時はどのように対応するのか
  • 医療機関への搬送マニュアルはあるのか

 医療ケアサービスの充実度合

将来、要介護状態になった場合や認知症を発症した場合に、どこまでの医療ケアサービスの対応を
してくれるのかも
チェックしましょう。
サービス付き高齢者向け住宅では、併設・提携している医療機関から医療ケアを受けることができる
場合があります。
しかし、病院とは異なるため、すべての医療行為を受けられるとは限りません。
た、施設によって受けられる医療ケアの種類は異なります。
医療ケアの例をいくつか挙げると、以下の通りです。

  • たん吸引
  • 在宅酸素療法
  • インスリン注射
  • 胃ろう
  • 人工肛門(ストーマ)
  • バルーンカテーテル

 相談員が不在の場合の連絡先や対応方法

特に一般型の施設で、職員が不在のときに、どのような緊急対応がされるのかを確認してください。
基本的に、先述の夜間・緊急時の体制と同様のチェックを行います。緊急通報装置の設置場所や
職員不在時の連絡・通報先、誰が駆けつけるかなどです。
また、実際に緊急通報システムが稼働するのかを確認しましょう。
緊急時に医療機関とスムーズな連携が取れているのかも、あらかじめチェックしておくのが
望ましいです。
さらに、緊急通報装置から他の施設のスタッフに連絡できると安心です。

まとめ

今回は、サービス付き高齢者向け住宅のトラブルについて解説しました。

  • 自立生活ができる高齢者用の施設で、安否確認と生活相談のサービスを提供。
     一般型と介護型がある。
  • 一部の施設で「職員体制に不備」、「立地が悪い」などの問題点がある。
    一般的な問題点は、「一般の賃貸住宅より費用が高い」、「介護サービス費がかかる」など。
  • トラブル事例は、「囲い込み」、「請求額が想定より高い」、「急な値上げ」、
    「入居一時金が返還されない」など。
  • 施設選びでチェックするポイントは、「平時の体制」、「夜間・緊急時の体制」、
    「医療ケアサービス」など。

サービス付き高齢者向け住宅は人気が高く施設数も増えていますが、さまざまな問題点・トラブル
もあります。
しかし、事前にチェックすべきポイントを把握しておけば、トラブルは回避できます。
この記事が、皆様の施設選びの一助になれば幸いです。

お役立ちコラム一覧へ戻る