認知症ケア専門士の合格率は?資格取得の流れやメリットも解説!

2024.12.02

「認知症ケア専門士」は、認知症ケアのスペシャリストです。
厚生労働省によると、2025年には高齢者の約5人に1人が認知症になると予測されています。
そのため、専門的な知識をもった認知症ケア専門士の需要は高まるでしょう。

この記事では、認知症ケア専門士の仕事内容や認定試験の概要、合格率、取得のメリットについて
詳しく解説します。

認知症ケア専門士とは

認知症ケア専門士とは、認知症介護従事者の自己研鑚および生涯学習の機会提供を目的に
設けられた民間資格です。
一般社団法人日本認知症ケア学会(以下「学会」)が主催する更新制資格となっています。

取得すると、認知症ケアに関する知識や技術、倫理観を有していることが証明されます。
国家資格ではないものの、認知症ケアの分野ではメジャーな資格です。

 認知症ケア専門士の役割

認知症ケア専門士は、認知症患者やその家族、医療・介護スタッフに対して包括的な
サポートを提供し、ケアの質を高める重要な役割を果たしています。
具体的には、以下のような役割です。

  1.  認知症の人への支援
    認知症の症状は人によって異なります。そのため、個々の患者に合わせた適切な
    ケアプランを作成し、日常生活のサポートを行います。
    また、患者の不安や混乱を和らげ、安心して過ごせるよう丁寧にコミュニケーションを
    取り、信頼関係を築くことが重要です。
  2.  スタッフへの指導・アドバイス
    現場のスタッフに対して、認知症ケアに関する指導・アドバイスを行います。
    これにより、スタッフ全体のケアの質が向上し、より良いチーム医療・介護が実現します。
  3.  家族への精神的なケア
    患者の家族に対してもサポートを行います。認知症介護の負担は大きいので、
    家族への精神的ケアは不可欠です。

 認知症ケア専門士が働く施設

認知症ケア専門士は、介護や福祉、医療、行政などさまざまな職場で活躍しています。

主な職場は、「グループホーム」や「特別養護老人ホーム」、「有料老人ホーム」などの
介護サービスを提供する施設のほか、「居宅介護支援事業所」などです。

また、介護サービスとの連携が進む「医療機関」でも、看護師や作業療法士などが取得する
ケースも多いです。
さらに、「地域包括支援センター」などの窓口でも知識を活かすことができます。

学会では、認知症ケア専門士が2名以上在籍するなど一定の要件を満たす福祉・医療機関を
「認定機関」として認定しています。
施設にとっては、認知症ケアに力を入れているというアピールになります。
利用者や家族にとっては、安心感に繋がります。

認知症ケア専門士の合格率はどれくらい?

認知症ケア専門士の公式サイトによると、2023年度の合格率は「51.4%」です。
以下は、直近5年の合格率です。
・2023年 51.4%
・2022年 54.5%
・2021年 53.7%
・2020年 56.5%
・2019年 53.3%

近年、合格率は50%前後で推移しています。40%台や60%台の年もありますが、おおよそ
2人に1人は合格する試験といえます。
ちなみに、他の介護関係のメジャーな資格について、最新の合格率は以下の通りです。

・介護福祉士 82.8%(2024年)
・介護支援専門員(ケアマネジャー) 21.0%(2023年)

それぞれで必要とされる受験資格も、出題内容・出題形式も異なるので単純比較はできませんが、
難易度のイメージをつかむ参考にしてください。

認知症ケア専門士を取得するには?

それでは、認知症ケア専門士の取得方法を紹介します。
ポイントは、以下の通りです。

  1. 受験には3年以上の実務経験が必要。
  2. 一次試験(Web、分野合格制)と二次試験(論述)がある。
  3.  合格後に登録申請し、5年ごとの更新が必要。
    以下、詳しく解説していきます。

 実務経験を有し受験資格を満たす

認知症ケア専門士を受験するには、以下の「受験資格」が必要です。
● 認知症ケアに関する施設や団体、機関などにおいて、3年以上の認知症ケアの実務経験を
有する者。
実務経験の対象期間は、受験する年の3月31日から遡って10年以内となっています。
例えば、2025年度の試験を受験する場合は、「2015年4月1日~2025年3月31日」の間に、
3年以上の実務経験が必要です。

この資格の受験資格は、認知症ケアの実務経験の要件だけです。
他の資格の有無や実務経験の職種・職務内容は問われず、教育・研究・診療なども実務経験に
含まれます。
ただし、ボランティアや実習は実務経験に含まれないため注意してください。

 受験申請書と実務経験証明書を提出

受験資格を満たしていることを確認したら、「受験申請書」と「実務経験証明書」を用意し、
申し込みを行います。
試験は一次試験と二次試験に分かれており、試験ごとに申し込みが必要です。

まずは、一次試験の受験申請書と実務経験証明書、申請書類のコピー(各2部)を
所定の封筒(第一次試験用)に入れ、簡易書留で申請期日までに提出します。
なお、受験申請書を入手するには、「受験の手引」を認知症ケア専門士認定試験の公式サイト
から1,000円(税込)で購入する必要があります。
実務経験証明書は、公式サイトからフォーマットをダウンロードしプリントアウトします。

 一次試験

一次試験は、インターネット上で行うWeb試験です。
そのため、自宅などでインターネットに接続可能なパソコンまたはタブレットを使用します。
詳細な方法は受験の手引や試験の公式サイトで確認してください。

  1. 試験分野・試験時間
     ・認知症ケアの基礎 (1時間)
     ・認知症ケアの実際Ⅰ:総論 (1時間)
     ・認知症ケアの実際Ⅱ:各論 (1時間)
     ・認知症ケアにおける社会資源 (1時間)
  2. 受験料
     1分野につき3,000円(税込)。2026年度から1分野につき4,000円(税込)となります。
  3. 出題数
     各分野50問(五肢択一式)
  4. 合格基準
     ・各分野で70%以上の正答率  ・4つの分野すべてに合格で一次試験合格 
     ・各分野の合格有効期間は5年間

    すなわち、不合格になった分野があっても、合格になった分野は5年間有効です。
    次回の受験時は不合格の分野だけを受ければOKです。

 二次試験

二次試験は、認知症ケアの事例に関して3問の「論述問題」が課されます。
申請期日までに作成した答案を、二次試験の受験申請書や申請書類のコピー(各3部)と
ともに所定の封筒(第二次試験用)に入れ、簡易書留で提出します。
受験料は8,000円(税込)です。2026年度より9,000円(税込)となります。
合格要件は、論述試験において次の5つの要件を満たしていると評価されることです。

  1. 適切なアセスメントの視点を有している者
  2.  認知症を理解している者
  3. 適切な介護計画を立てられる者
  4.  制度および社会資源を理解している者
  5.  認知症の人の倫理的課題を理解している者

    なお、2026年度より論述試験の内容が大幅に変更されるため、公式サイトなどで
    確認してください。
    コロナ対策で中止されていた面接試験は、正式に廃止になる予定です。

 合格後は登録申請を行う

結果通知は郵送にて届きます。また、公式サイトでも合格発表日の13:00から合格者の
受験番号が発表されます。早く合否を知りたい人はそちらでも確認してください。

合格者は、倫理研修動画をオンラインで視聴しなければなりません。
動画視聴後は所定の書類を提出し、資格の登録申請を行います。登録には、15,000円(税込)の
費用が必要です。

登録されると「専門士カード」が送付され、認知症ケア専門士の資格を取得できたことになります。

 5年に1度資格の更新を行う

認知症ケア専門士の資格は、取得後5年ごとの更新が必要です。
更新申請書などの書類一式を申請期間内に提出します。
更新費用は、10,000円(税込)です。

故意に更新をしない場合や申請書類に虚偽記載が認められた場合は、資格が失効します。
更新には、学会または学会認定の団体が主催する講座への参加や、論文発表などにより、
5年間で30単位以上を取得する必要があります。
更新時期までに30単位取得できない場合は、保留申請により1年間延長することができます。

更新手続きの詳細は、公式サイトの「更新の手引」をご参照ください。
更新制度により、質の高いケアを提供するのに必要な、最新の知識や技術を学ぶ機会が
得られるのです。

認知症ケア専門士を取得するメリットは?

認知症ケア専門士の資格を取得すれば、専門的な知識が身につくので、スキルアップに
繋がります。
また、知名度と信頼性の高い資格なので、知識やスキルの客観的な証明になります。
以下、取得による主なメリットを3つ紹介します。

 転職や就職で有利になる可能性がある

認知症ケア専門士の資格を所有していることで、認知症介護についての専門的な知識と
技術が備わっていることの証明になります。

認知症ケアの高度なスキルは、介護や福祉、医療に関する幅広い仕事で役立つため重宝されます。
そのため、それらの業界への就職や転職で有利に働く可能性が高いです。

また、この資格は、業界では比較的難易度が高いことが知られています。
取得していることで、やる気や向上心をアピールすることができ、プラスの評価に繋がり
やすいでしょう。

 給料アップに繋がる可能性がある

認知症ケア専門士の資格を取得することで、職場によっては、報奨金が一時支給されたり
毎月の給与で資格手当がついたりします。

そのような規定のない会社でも、資格取得を目標管理に組み込んで自己啓発の意欲を示せば、
人事評価が上がることが期待できます。
また、資格取得によりスキルアップしたとみなされ、より責任のあるポジションに就ける
可能性もあります。
非正規社員の方は、正社員への登用を検討してくれる可能性もあります。

 スキルアップに繋がる

認知症ケア専門士の資格取得に向けて勉強することで、認知症ケアについての幅広い知識や
スキルを体系的・網羅的に習得することができます。
学んだ内容を現場でそのまま活かすことができ、自信もつきます。

また、5年ごとの更新が必要な資格であることから、常に最新の知識を身につけることができます。
講習会への参加や論文投稿、学会発表などを通じて、知識やスキルがアップデートされ、
最先端の認知症ケアを提供することが可能です。

まとめ

今回は、認知症ケアのプロという位置づけの資格「認知症ケア専門士」について解説しました。

  • 役割は、認知症患者や家族、スタッフに包括的なサポートを提供しケアの質を高めること。
  • 介護や福祉、医療、行政などの職場で活躍。
  • 合格率は50%前後。
  • 受験には3年以上の実務経験が必要。
  • 一次試験(Web、分野合格制)、二次試験(論述)がある。
  • 合格後は登録申請し、5年ごとの更新が必要。
  • メリットは、「就職・転職に有利」、「昇給の可能性」、「スキルアップ」。

    高齢化に伴い、認知症に関する幅広い知識を持つ人材のニーズはますます高くなっています。
    介護や福祉、医療の分野でより活躍したい方は、チャレンジしてみてはいかがでしょうか。

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