介護保険施設とは?種類や特徴・費用をわかりやすく解説!

2024.12.02

介護保険施設とは、介護保険サービスで利用できる公的施設です。
「他の施設とどう違うの?」、「サービス内容や費用は?」など、多くの方にはなじみがなく、
どのような施設なのか理解している方は多くないと思います。

この記事では、介護保険施設の概要や種類ごとの特徴、費用などをわかりやすく解説します。
そろそろ施設選びをしようと考えている方におすすめの内容です。

介護保険施設とは

介護保険施設とは、要介護認定を受けた人が介護保険サービスとして利用できる居住型の
介護施設のことです。
このセクションでは、介護保険施設とはどのような施設なのか、その概要を解説していきます。

 3種類の介護保険施設がある

現行制度では、介護保険施設には「特別養護老人ホーム(特養)」・「介護老人保健施設(老健)」
・「介護医療院」の3種類があります。

2024年3月に「介護療養型医療施設」が廃止され、2018年4月に新設された「介護医療院」が
その主な転換先となっています。

これらは、地方公共団体や社会福祉法人、医療法人などが運営する公的施設で、有料老人ホームや
グループホームのような民間施設とは異なります。

 入居時の費用が不要

介護保険施設は、民間施設である有料老人ホームなどとは異なり、入居一時金は不要です。
月額費用としては、居住費・食費・介護サービス費などがかかります。

しかし、介護保険施設はその運営にあたり国や地方公共団体などから補助金を受けているため、
月額費用は民間施設と比べて割安です。
また、介護保険施設の入居者で所得や資産が一定以下の場合は、居住費と食費の自己負担額が
軽減される「負担限度額認定制度」があります。
この制度を受けるには、住所地の自治体への申請が必要です。

 入居の対象となる人は?

介護保険施設の入居条件は、主に以下の2つです。
ちなみに、認知症の人でも入居可能です。

  1. 65歳以上の第1号被保険者である。
  2. 要介護1~5の認定を受けている。(特別養護老人ホームの場合は、原則として要介護3~5)。

    ただし、第2号被保険者の40~64歳の人も、厚生労働省が指定した16種類の特定疾病に
    該当すれば、施設の入居対象となります。
    特定疾病とは、末期がんや関節リウマチ、筋萎縮性側索硬化症(ALS)などです。
    それぞれの疾病ごとに細かい基準が設けられています。

 有料老人ホーム等との違いは?

有料老人ホームやグループホームなどは、主に民間企業が運営する施設で、比較的軽度の
要介護高齢者でも入居可能です。
入居にあたって一時金がかかることが多く、月額費用も高めに設定されています。
しかし、公的施設にはない充実した設備やサービスが整っていることが多いです。
また、施設数が多いため、公的施設と比べると入居しやすいことも特徴です。

一方、介護保険施設は公的施設で、重度の要介護認定を受けた人が対象であり民間施設よりも
基準が厳しいです。
入居一時金はかからず、月額費用も安く設定されているため、希望者が多く入居までに
時間がかかる傾向にあります。

種類別・介護保険施設の特徴を紹介

ここでは、介護保険施設の種類ごとの特徴やサービス内容などを詳しく紹介します。
それぞれの施設で入居条件やスタッフの人員体制などが異なるため、よく比較検討した
うえでどの施設にするかを選んでください。

 特別養護老人ホームの特徴

「特別養護老人ホーム(特養)」は、地方公共団体や社会福祉法人などが運営する施設です。
入居条件は要介護3~5を認定された、原則65歳以上の人です。
なお、要介護1~2の人でも、一定のやむを得ない事情がある場合には、特例で入居できる
ことがあります。

医療ケアよりも介護ケアに力を入れている「生活施設」であり、充実した介護に加えて
レクリエーションやリハビリテーションなども提供します。
終身にわたって入居することができ、近年は看取りに対応している施設も増えています。

一方で、医師の常駐は義務付けられていません。
看護師の配置数も他の施設より少なく、夜間常駐もない場合が多いです。

そのため、たん吸引などの医療処置が必要になった場合には、退去を求められるケースも
あるので注意が必要です。
また、入居希望者が多く待機期間が長い傾向にあります。

 介護老人保健施設の特徴

「介護老人保健施設(老健)」は、地方公共団体や医療法人などが運営する施設です。
入居条件は要介護1~5を認定された、原則65歳以上の人です。

病院での治療を終えた要介護者が、リハビリテーションに取り組みながら在宅復帰を
目指す施設です。
そのため、3~6ヶ月程度の期間で退去することが前提となっています。

また、大きな特徴としては機能訓練が充実しているという点です。
専用の器具がそろっているため、自宅でリハビリテーションに取り組むよりも高い成果が
期待できます。理学療法士や作業療法士などの人員体制も整っています。
さらに、特養と違って医師の常駐が義務付けられ、看護師の配置数も特養より多く夜間でも
常駐していることが多いです。
そのため、手厚い医療ケアを受けることが可能です。

 介護医療院の特徴

「介護医療院」は、地方公共団体や医療法人などが運営する施設です。
入居条件は要介護1~5を認定された、原則65歳以上の人です。
経管栄養やたん吸引など、継続的な医療・介護を必要とする人の受け入れ先になっています。

医療ケアが必要な高齢者の療養施設なので、長期にわたって入居することができ、
看取りにも対応しています。
重度の身体疾患を抱える人などが入居するⅠ型と、Ⅰ型よりも比較的安定した状態の人が
入居するⅡ型とに分かれています。

また、大きな特徴としては手厚い医療ケアが受けられるという点です。
医師や看護師などの人員体制も整っているので、介護度の高い人でも安心して入居する
ことができます。

種類別・介護保険施設の費用を紹介

介護保険施設3種類について、それぞれの特徴を解説しました。
ここでは、介護保険施設の費用について解説します。

介護保険施設では、入居時の費用は必要なく、支払うのは月額費用だけです。
民間施設の有料老人ホームなどに比べて、費用の負担が少ないことが大きなメリットです。

 特別養護老人ホームの費用

特別養護老人ホーム(特養)の月額費用の相場について解説します。
居室タイプごとに月額費用の相場が異なります。居住費、食費、介護サービス費(1割負担の場合)
の合計は、おおよそ以下の通りです。

  1.  従来型個室(1人1部屋の個室タイプ)
    10.2~10.6万円
  2. 多床室(1部屋に2~4人が生活するタイプ)
    9.3~9.7万円
  3. ユニット型個室(10人以下のユニットごとに共有スペースが併設されているタイプ)
    13~13.4万円
  4. ユニット型個室的多床室(1部屋に2~4人が生活し、パーテーションの仕切りがあるタイプ)
    12~12.4万円

 介護老人保健施設の費用

介護老人保健施設(老健)の月額費用の相場について解説します。
居室タイプごとに月額費用の相場が異なります。居住費、食費、介護サービス費(1割負担の場合)
の合計は、おおよそ以下の通りです。

  1. 従来型個室(1人1部屋の個室タイプ)
    11.5~12.1万円
  2. 多床室(1部屋に2~4人が生活するタイプ)
    7.8~8.5万円
  3. ユニット型個室(10人以下のユニットごとに共有スペースが併設されているタイプ)
    12.7~13.4万円
  4. ユニット型個室的多床室(1部屋に2~4人が生活し、パーテーションの仕切りがあるタイプ)
    11.7~12.4万円

 介護医療院の費用

介護医療院の月額費用の相場について解説します。
居室タイプやⅠ型・Ⅱ型のタイプごとに月額費用の相場が異なります。

介護医療院にも「従来型個室」・「多床室」・「ユニット型個室」・「ユニット型個室的多床室」
といった居室タイプがあります。
ここでは、多床室タイプを例にして、居住費、食費、介護サービス費(1割負担の場合)の
合計の相場を示します。

  1. Ⅰ型(多床室)
    7.6~9.2万円
  2.  Ⅱ型(多床室)
    8.8~10.2万円

介護保険施設は医療控除の対象になる

「医療費控除」とは、1年間に支払った医療費が10万円(総所得金額等が200万円未満の人は
総所得金額等の5%)を超える場合に受けられる所得控除の項目です。

確定申告をすることで、超過した金額が課税対象の所得から控除され、納付すべき
所得税の額が減額されます。なお、会社勤めで年末調整を受けている人は、還付を受けられます。

介護保険施設で受ける施設サービスの費用は、医療費控除の対象です。
通常は、施設から発行される領収書に控除対象となる金額が記載されます。

  •  医療費控除の対象
    ① 特別養護老人ホーム
    施設サービス費(介護費、食費、居住費)の2分の1の金額
    ② 介護老人保健施設・介護医療院
    施設サービス費(介護費、食費、居住費)の全額
  • 医療費控除の対象外
    ・日常生活費(日用品、理美容代など)
    ・特別なサービス費(レクリエーションなど)

まとめ

今回は、介護保険施設について解説しました。

  • 「特別養護老人ホーム(特養)」・「介護老人保健施設(老健)」・「介護医療院」の3種類。
  • 公的施設で、入居一時金不要で月額費用も民間施設より安い。
  • 入居条件は、「65歳以上」かつ「要介護1~5(特養は3~5)」。
  • 「特養」は、介護が充実した生活施設で終身入居可。医療体制が不十分な場合も。
    入居までの期間が長い傾向。
  • 「老健」は、要介護者が在宅復帰を目指す施設で入居期間は3~6ヶ月程度。
    リハビリテーション・医療体制が充実。
  • 「介護医療院」は、医療ケアが必要な要介護者の療養施設で、看取りにも対応。
    医療体制が整っている。
  • 施設サービス費用は医療費控除の対象。

    3種類の介護保険施設それぞれにメリットとデメリットがあります。
    この記事が、入居を検討されている方の一助になれば幸いです。
お役立ちコラム一覧へ戻る