親と同居している場合に世帯分離は可能?メリット・デメリットを紹介

2024.12.02

親と同居している場合に世帯分離は可能なのでしょうか?
世帯分離をすると、どんなメリットやデメリットがあるのでしょう?
高齢者の親が要介護者である場合、介護費用の負担を軽減したいとお悩みの方は検討する
価値があるようです。

そのような世帯分離に関する疑問やメリット・デメリットについて、詳しく紹介していきましょう。

そもそも世帯分離とは

世帯分離とは、親と同居を続けながら、住民票上で、主に親と子の世帯を分けることをいいます。
世帯分離は、住民票の世帯を分けることになるため、役所の窓口で手続きをする必要があります。

介護が必要な家族と同居している場合は色々なメリットがあるので、
認知症の老親との同居を考えている方などには検討する価値が大きいでしょう。
また、世帯分離することでデメリットもあるので、総合的に考え実際に行うか検討し
判断しましょう。

親と同居している場合にも世帯分離は可能

世帯分離とは、現在同居している親と子の間で住民票の世帯を分けることをいいます。
そのため、親と同居している場合にも、親子間であれば、世帯分離は可能となります。

世帯分離をするための条件は、対象者がそれぞれの世帯で独立した生計を営んでいることです。
世帯分離と生活保護の関係については、世帯分離をすることで、同じ家に住んでいても「両親」
と「あなたと子供」を別々の世帯にでき、両親だけが生活保護を受給できます。

親と同居している場合に世帯分離をするメリット

世帯分離をした場合のメリットについて解説しましょう。

  • 介護費用の自己負担額を軽減できる
  • 介護費用の自己負担額の上限を下げられる
  • 後期高齢者医療制度の保険料を下げられる
  • 国民健康保険料が下がる可能性がある

 介護費用の自己負担額を軽減できる

世帯分離をして親世帯の所得が下がると、介護保険施設の自己負担額である居住費と
食費の軽減が期待できます。
介護保険制度には、居住費と食費を軽減できる負担限度額認定制度があり、世帯分離によって
これらの制度も活用できる可能性があります。

負担限度額認定制度は、所得が低い方や資産が少ない方などを対象としている制度です。
所得に応じて「利用者負担段階」が設けられており、世帯分離することで経済的メリットが
期待できます。

 介護費用の自己負担額の上限を下げられる

世帯分離をして世帯年収を抑えることで、「高額介護サービス費制度」によって自己負担額上限を
下げることができます。

「高額介護サービス費制度」とは、1カ月に支払った介護費用が自己負担額の上限を超えた場合に、
超えた分が払い戻される制度です。
自己負担額の上限は5段階に区分されており、所得が少ない方ほど低額で設定されているため、
世帯年収を抑えることで「高額介護サービス費制度」で受けられるメリットが大きくなります。

 後期高齢者医療制度の保険料を下げられる

後期高齢者医療制度とは、75歳以上の後期高齢者の医療費を負担する医療制度です。
基本的に後期高齢者は自己負担割合が1割で医療機関を利用できますが、本人も保険料を
納付する必要があります。

保険料は世帯所得に応じて負担額が異なっており、低所得者であれば保険料の軽減制度が
適用されます。
世帯分離すると世帯所得を抑えて保険料負担を軽減できる可能性があるため、
後期高齢者医療制度の保険料が下げられる場合があります。

 国民健康保険料が下がる可能性がある

世帯分離をすることで、国民健康保険料の納付額が下がる可能性も期待できます。
国民健康保険料の納付額は前年の所得と被保険者の人数により計算されるので、
前年の所得を下げることができれば負担額を減らすことが可能です。

国民健康保険に加入している場合には、このような減額が期待できる点を把握しておきましょう。
また、世帯ごとに年の所得を計算するため、世帯分離をすると世帯の所得額が減って
住民税が減額されることがあります。

親と同居している場合に世帯分離をするデメリット

世帯分離には下記のようなデメリットをもたらす可能性もあります。
解説していきましょう。

  • 国民健康保険料の負担額が増える可能性がある
  • 健康保険料や家族手当の扶養から外れる可能性がある
  • 手続きが煩雑になる

 国民健康保険料の負担額が増える可能性がある

国民健康保険に加入している世帯が世帯分離をした場合に、同一世帯ならば世帯主ひとりが
保険料を負担しますが、世帯を分けると各自が世帯主となり各自の負担となります。

その結果、各世帯主が国民健康保険料を支払うことになり、負担額が増える場合もあるので、
世帯分離をした前後の負担額について事前に確認することが大変重要です。

世帯分離によって国民健康保険料が下がるのか?上がるのか?は、世帯によって異なります。

 健康保険料や家族手当の扶養から外れる可能性がある

勤務先の扶養に親を入れており、会社から扶養手当や家族手当をもらっている場合は、
世帯分離によって扶養から外れてしまう場合があります。

会社の健康保険組合の扶養から抜けると、それまで利用していた組合のサービスなどは
利用できなくなり、扶養手当などが支給されなくなります。
また、扶養家族なら自分で健康保険料を負担する必要はありませんが、扶養から抜けると
自分で保険料を支払わなければなりませんので、確かめておきましょう。

 手続きが煩雑になる

世帯分離をするためには、手続きをする前後において煩雑な手続きが必要となり、
時間がかかってしまう点がデメリットでしょう。

住民票を取得したり、複数の書類に色々な事項を記入する必要があるので、かなり面倒な
作業もあり、親が自力で手続きが難しい場合には、代理で手続きをする際、「委任状」が
必要となります。

世帯分離によるメリットはありますが、実践するために手間がかかるデメリットもある
ことは知っておきましょう。

世帯分離の手続き方法を紹介

世帯分離の手続き方法について、下記の順に詳しく紹介しましょう。

  • 世帯分離によるメリット・デメリットの確認
  • 必要書類の準備
  • 市区町村窓口で申請
  • 世帯分離を申請しても断られるケースがある

 世帯分離によるメリット・デメリットの確認

手続きをする前に世帯分離によって実際に経済的メリットがあるのかを確認しましょう。
世帯分離した後、国民健康保険料が増えたり、手当が支給されなくなったり、
健康保険が使えなくなる点には注意が必要です。

世帯分離には、メリットだけでなくデメリットも存在することを常に念頭に置き、
世帯分離によって生じる変化や影響をよく理解し、慎重に行うことが必要です。

FPやケアマネージャーなどと相談し、慎重に判断することが重要です。

 必要書類の準備

世帯分離の手続きを進めることになったら、必要な書類などを準備しましょう。

  • 本人確認書類(いずれか一枚の提示で済むもの:マイナンバーカード、運転免許証、
    パスポートなど)
  • 世帯変更届
  • 国民健康保険証(持っている場合)
  • 印鑑
  • 委任状(代理で行う場合は必要)

    不備がある場合は、手続きをスムーズに進めることができないため、役所に何度も
    足を運ぶことのないよう、不安があれば役所に確かめておくと安心です。

 市区町村窓口で申請

市町村の窓口へ届け出をします。
世帯分離の手続きは住んでいる市区町村の窓口で対応しているので、必要な書類などが
準備できたら窓口へ提出し申請しましょう。

窓口で準備した本人確認書類や世帯変更届などを提出し、訂正等があれば印鑑が必要になる
場合もあるので、忘れずに持参しましょう。
親の代理で手続きをする場合、同一世帯であったとしても「委任状」が必要となるため、
こちらも忘れないように準備しておきましょう。

 世帯分離を申請しても断られるケースがある

世帯分離を希望しても、自治体によっては申請が断られるケースがあります。
介護費用の負担を軽減したいと伝えた際、それが不十分な理由だと判断された場合です。

また、世帯分離を希望する場合、自治体の規定により、生計を別にしていることを証明するのに
必要な証明書や書類を正確で適切に提出することが重要で、
この証明ができなかった場合に申請が断られる可能性が高くなります。
不足したり、不正確な情報だと申請が却下される可能性があります。

まとめ

世帯分離は、介護保険制度において親と子が別々の世帯として生活することを指します。
世帯分離の条件である「それぞれが独立した生計を営んでいること」を満たせば、
世帯分離は可能となります。

世帯分離にはさまざまなメリットがありますが、デメリットも存在するため、個々の状況や
制度の変化に応じてメリット・デメリットを把握し、事前にシミュレーションをすることが
重要です。

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