高齢者で脈拍数90は正常範囲?正常値や脈拍に影響がある疾患なども紹介

2024.12.02

脈拍は日常の生活や病気によって、変動がある数値です。
ご自身の正常値を把握しておくことで、身体の異常の早期発見、予防につながります。
高齢者の脈拍の正常値について、また、脈が早い時に考えられる病気について解説していきます。
健康的な生活を送るために、脈拍が変動する原因や、頻脈による健康被害などを理解しましょう。

高齢者の脈拍正常値は50~60回/分

成人の脈拍の正常値は、60〜100回/分が基準値となっています。
高齢者の脈拍の正常値は、成人と比べて50~60回/分とされていて、脈拍数は下がっています。
この大きな原因は代謝や活動量が少ないことにあります。

 高齢者で脈拍が100前後は頻脈の可能性

高齢者の脈拍が100前後になると「頻脈」と言われる部類に入ります。
脈拍は、体調不良や病気発見の目安となります。

加齢とともに心臓機能が低下しますので、成人と同様に労働するためには、より多くの血液を
送り出す必要が発生します。
そのため、心拍数が上がると同時に脈拍も高くなります。
頻脈は、冠動脈疾患や心不全などの疾患によって起こっている可能性があり、疲労やストレス
などによって頻脈になる場合もあります。

高齢者の脈拍が変動する要因を紹介

ストレス、興奮状態や緊張などの要因もあり、運動環境によって脈拍数は変化します。
高齢者の脈拍がどのような場面で、正常値から変動するのか、下記の症状から解説していきます。

  • 体温の上昇
  • 大規模な出血
  • 心臓機能の低下

 体温の上昇

体温が上昇することにより、脈拍数が上昇します。
体温の上昇で、血管が拡張し、血圧が下がってしまうため、血圧の低下を防ぐために
心拍数が上昇し、血圧を一定に保とうとする働きがおこります。

主に風邪や肺炎などによる発熱や、入浴時に体温が上昇し脈拍が正常値よりも増加します。
また高齢者は、体温調節機能が低下しており、運動によって体が必要とする酸素が増加し、
体温が上昇しやすい傾向があります。
心拍数は増加し脈拍も高くなります。

 大規模な出血

脈拍が上がる可能性として、大規模な出血も考えられます。
多量に出血すると、体内の血液量が減り、同じ労働をするために心臓の働きを活発にする
必要があり、脈拍も高くなります。
多量の出血による脈拍の変化には個人差があり、生活習慣や健康状態、持病が有るか無いかなどが
関係していることもあります。

高齢になると、血液をサラサラにする薬を飲んでいたり、血小板が少なくなっていたりするため、
出血が止まりにくい傾向があります。

 心臓機能の低下

心臓自体の機能が低下すると脈拍数は増加します。
血液を送り出すポンプの役割をしているのが心臓のため、血液を正常に心臓内に溜めたり、
排出できなかったりすると、脈拍1回あたりの心臓が送り出す血液量が低下します。

このような状態では血圧が低下してしまうため、その状態を防ぐために脈拍数を増加させて
対応します。
代表的な病気として、心筋梗塞や心不全、弁膜症などがあり、これらの病気にかかっている
ことが疑われます。

頻脈の時の症状は?

安静時に計測した脈拍が、1分間に100回以上で頻脈とされています。
運動や緊張によって脈が速くなる場合は頻脈とは言えません。
しかし、次のような症状がある場合は注意が必要です。

  • めまいや立ちくらみ
  • 動悸や息切れ
  • 失神
  • 胸痛

 めまいや立ちくらみ

頻脈の際には激しいめまいや、立ちくらみになる場合があります。
心臓は、血液を送り出す力が落ちることで、充分な酸素や栄養を全身に送ることができなくなって
脈拍が速くなります。

疲れがたまった際にめまいが起こったり、長時間座った後の立ち上がりの際に、立ちくらみを
することは、正常者にも起こりえます。
しかし、心室細動や心房細動の可能性もあるので、症状がひどい場合は、早めに受診と検査を
受ける必要があります。

 動悸や息切れ

頻脈の症状には、動悸や息切れがあります。
頻脈になると、心臓はポンプとして血液をうまく送り出すことが難しくなります。

急に胸がドキドキしたり脈が乱れると、脈が速くなるとともに、胸の不快感や動悸がしたり、
冷や汗、吐き気、意識が遠のくといった症状が現れます。
安静にしていても動悸と息切れの状況が続くと、心筋梗塞や心狭症、心不全などの疾患が疑われ、
高度な頻脈になると、血液を送り出せなくなり、心停止に至ることもあります。

 失神

頻脈になると失神のおそれもあります。
頻脈性不整脈(心室性)1分間の心臓の拍動が100回以上になる不整脈です。
心臓内で微弱な電気が異常に早く作られたり、異常な電気の通り道(副伝導路など)ができて
電気信号が旋回してしまうなどが原因で発生します。
長時間立っていた時や興奮した時、疼痛などがきっかけで失神することが多くあります。
失神して倒れた際に大きなけがをしたり、神経疾患や脱水などが原因で起こる場合も
あります。

 胸痛

頻脈は胸痛を伴う場合もあります。
胸痛とは、胸あたりに、締め付けられる感覚や何かに押されているような圧迫感を感じる症状です。
体を動かして心拍数が増えたときに、血管が細くて十分な酸素を供給できないため、
心筋が酸欠になった結果、胸痛・胸部圧迫感などの症状が出ます。
心臓に血液を供給する冠動脈が完全に閉塞して血液の流れが途絶えてしまうと、心臓に
血液・酸素が供給されなくなり、やがて心筋が壊死してしまいます。

脈拍に影響のある高齢者の疾患

加齢とともに心臓機能は低下するため、より多くの血液を送り出す必要があり、心拍数が上がると
同時に脈拍も高くなります。
高齢者に多い病気のうち、脈拍に影響のあるものについて解説します。

  • 高血圧
  • 糖尿病
  • 心疾患

 高血圧

高血圧の人は脈拍数が上昇すると死亡するリスクが高まるという報告があります。
高血圧の状態では、心臓が強い力で血液を押し出すため、心臓の筋肉が厚くなる心肥大を起こします。
心肥大になると不整脈になりやすく、高血圧状態の脈拍の変化や、心電図異常には注意が必要です。

脈拍を測定するときは、5〜10分安静にしてから測定します。
高血圧の場合、普段から自分の脈拍数に充分注意を払って、高くなったら医師に相談しましょう。

 糖尿病

糖尿病の合併症のひとつに自律神経障害があります。
糖尿病によって自律神経障害が起こると、心拍数のコントロールができなくなります。
その結果、安静時の心拍は常に脈拍数が多い状態になります。

糖尿病の自律神経障害により迷走神経による安静時心拍数の調節に障害がある場合、迷走神経の
心拍数を低下させる作用が軽減するため、心拍数が高めになります。
安静時でも脈拍数が高い場合は、既往歴に糖尿病がないか確かめましょう。

 心疾患

心疾患は脈拍に影響があります。
加齢とともに心臓機能は低下しますが、成人と同様に労働をこなすには、更に多くの血液を
送り出す必要があり、心拍数が上がると同時に脈拍も高くなります。

頻脈は、冠動脈疾患や心不全などの疾患によって起こっている可能性があります。
また、疲労やストレスによって頻脈になる場合もあります。
心疾患は、不整脈を引き起こし、心拍数にも影響します。
脈拍が速くなったり、遅くなったり、不規則になったりする状態が不整脈です。

定期的な脈拍の測定が大切

高齢者は定期的な脈拍の測定をしましょう。
脈拍は、身体の末端まで血液が行き渡っているかどうかを知る目安になります。
また、脈拍数や脈拍のリズムに異常があると、心臓や血液循環に関わる病気が疑われます。

脈拍を定期的に測定することは、自分の脈拍の平均を知り、健康状態を把握し、異常がないかを
簡単に確かめられます。
「最近、体調が悪い」と思った時に脈拍を測定すると、病気や疾患の早期発見につなげることが
できます。

まとめ

高齢者の脈拍正常値について、高齢者の脈拍が変動する要因や頻脈時の症状、高齢者の脈拍に
影響のある疾患などを解説しました。

高齢者の脈拍は成人と比べて低い傾向にありますが、様々な原因により、変動することがあります。
正しい生活習慣を意識し、疾患の予防や早期発見のために脈拍を測定する習慣をつけましょう。
定期的な脈拍の測定をおすすめします。

お役立ちコラム一覧へ戻る