脈拍の正常値は?年代別の心拍数平均値も併せて紹介

2024.12.02

成人の脈拍数の正常値は60~100回です。
加齢とともに高くなる傾向があります。

脈拍数は、血圧などと同じく健康状態を知るための重要な情報です。
普段の脈拍数を把握しておくことで、病気の早期発見につながります。

この記事では、脈拍数の正常値とそれより高い場合・低い場合や年代別の心拍数平均値などを
解説します。ご自身や家族の脈拍数が正常値と比べてどうなのか知りたい方や、
介護の現場で活躍中の方にも役立つ内容です。

脈拍数と心拍数の違いは?

一般的に、「脈拍数」と「心拍数」について、それぞれの定義や違いを理解している人は
多くないため、両者はよく混同されます。
以下、脈拍数と心拍数の違いについて解説します。

 通常ほぼ同じだが不整脈など一致しないこともある

「心拍数」とは、「1分間に心臓が拍動する回数」のことです。
心拍数は一定ではなくさまざまな要因で変化するため、5分以上安静にした状態で測った
「安静時心拍数」が使われます。

「脈拍数」とは、「体の動脈が1分間に拍動する回数」のことです。
心臓から送り出される血液によって起こる拍動が動脈に現れたものであるため、通常は
「心拍数=脈拍数」になります。

しかし、不整脈がある場合は、心拍数と脈拍数が一致しないこともあります。
特に、「心室性期外収縮」、「頻脈」、「心房細動」などの不整脈では、両者が一致しないことが
多いです。
健康診断などで不整脈を指摘された場合は、自覚症状の有無にかかわらず、循環器内科を
受診しましょう。

脈拍数の正常値はどれくらい?

脈拍数の正常値は、一般的にどれくらいなのでしょうか。
このセクションでは、まずは健康の目安となる脈拍数の正常値について解説します。
脈拍数が高すぎたり低すぎたりと正常値から外れた場合について、疑われる病気などについても
紹介しています。

 60から100回が脈拍数の正常値

一般的に、成人の安静時の脈拍数は、1分間に60~100回が正常値とされています。
脈拍数が100回以上は「頻脈」、60回未満は「徐脈」と呼ばれます。
脈拍の異常は、何らかの病気が隠れている可能性があります。

しかし、正常値はあくまで目安です。
個人差も大きく、体調や精神状態などによっても変動します。病院での診察で緊張しやすい方は、
病気でなくても脈拍数が100回を超えることもあります。
また、普段から運動をする方は脈拍数が低い傾向にあります。
ご自身の安静時の脈拍平均値を把握しておくとよいでしょう。

 60回未満の場合はどうなる?

1分間の脈拍数が60回未満の場合を、「徐脈」といいます。
就寝中などのリラックス時には、副交感神経の働きが優位になり、脈拍数は低くなります。
また、日常的にスポーツをしている人は、心肺能力が高く脈拍数が低いことが多いです。

ただし、息切れやだるさ、足のむくみ、めまいなどの症状がある場合は、以下の病気が
疑われるため、早期の治療が必要です。

  1.  洞不全症候群
    心臓の右心房にある「洞結節」に異常が生じ、電気刺激の回数が減るまたは止まる病気です。
    失神などの症状が見られることもあります。
  2.  房室ブロック
    電気信号を心房から心室へ伝える「房室結節」の機能低下により起こる病気です。
    失神や心不全、さらには心停止につながることもあります。

 100回以上の場合はどうなる?

1分間の脈拍数が100回以上の場合を、「頻脈」といいます。
緊張や興奮などで交感神経の働きが優位になると、脈拍数は高くなります。
また、強いストレス、運動、入浴、アルコールやカフェインの大量摂取などでも高くなりやすいです。しばらく安静にして脈拍数が正常値に戻るのならば、問題ありません。

しかし、安静時にも頻脈が続く場合は、何らかの病気が原因の可能性があります。
例えば、狭心症や心筋梗塞などの循環器疾患や、バセドウ病などのホルモン異常、貧血などが
考えられます。
それらの病気が原因でなかった場合でも、動悸や呼吸困難、意識障害、失神などのさまざまな
症状が見られることがあります。高度な頻脈は放置しておくと心停止に至ることもあるため、
心当たりのある方は、早めに病院を受診してください。

脈拍は環境により変化する

一般成人の安静時の脈拍数は、平均で60~70回/分程度とされていますが、環境によって大きく
変化します。緊張・興奮状態、ストレスなど要因はさまざまですが、運動習慣や加齢によっても
変化するのです。

日常的に激しい運動をしている人は、安静時の脈拍数が低いことが分かっています。
逆に、運動を全くしない人は、脈拍数が高くなる傾向にあります。

 全く運動していない人は脈拍が多い

日常的に運動をしていない人は、安静時の脈拍数が多い傾向にあります。
運動により心臓の筋肉が鍛えられますが、運動不足の人は心臓の働きが弱くなります。
一度に送り出す血液量が減少するため、脈拍数が増えることになるのです。
また、運動不足は例えば以下のようにデメリットも多いです。

  • 筋肉量の減少や血行不良によって心臓に血液が戻りにくくなり、むくみやすくなる。
  • 自律神経が乱れ、不整脈を起こす。
  • がんや心臓病などの生活習慣病のリスクが高まる。

    ウォーキングやジョギング、水泳、サイクリング、エアロビクスなどの有酸素運動を、
    無理のない範囲で生活に取り入れましょう。

 激しい運動をしている人は脈拍が少ない

日常的に激しい運動をしている人は、脈拍数が少ない傾向があります。
マラソンや水泳などの一流のスポーツ選手では、安静時の脈拍数が30~40回程度ということも
あります。
激しい運動を日常的に行っていると、体が多量の血液を必要とするため、心臓の筋肉が発達し
肥大化することがあります。
この心臓は「スポーツ心臓」と呼ばれ、一度に送り出す血液量が増えるため、脈拍数が
減少するのです。
スポーツ心臓の選手は、1回の拍動で多くの血液を送ることができます。
全身の筋肉に多くの酸素が行きわたり、競技パフォーマンスが向上するのです。
なお、スポーツ心臓は病気ではなく、現役を引退した選手は数年で通常の心臓に戻る
といわれています。

年代別の心拍数の平均値を紹介

一般的に、心拍数は加齢により低くなります。
乳児や幼児は、基礎代謝が高くて酸素消費量が多いことから、心臓の動きが活発で心拍数が高いです。
しかし、高齢者は身体活動量や酸素消費量、基礎代謝、筋肉量が減少し、心拍数も低くなります。
このセクションでは、年代別の心拍数の平均値を紹介します。

 20代・30代の心拍数の平均値

20~30代の、心拍数の平均値は以下の通りです。
・20代  男性: 64回、女性: 69回
・30代  男性: 67回、女性: 70回

心拍数を正常に保つためには、若いうちから適度な運動やバランスのよい食事、禁煙などの
生活習慣の見直しが重要です。
また、甲状腺ホルモンが過剰に分泌される「バセドウ病」は、若い女性の罹患が多く、
頻脈などの症状があります。若いうちから心拍数を日常的に測定することで、病気の早期発見に
つながります。

 40代・50代の心拍数の平均値

40~50代の、心拍数の平均値は以下の通りです。
・40代  男性: 68回、女性: 70回
・50代  男性: 69回、女性: 69回

20~30代と比べて心拍数が少し高くなる傾向にあります。
もしも、通常よりも心拍数が大きく増え、その理由に心当たりがない場合は、心臓病などの
病気の可能性もあるため注意が必要です。不安な方は、循環器内科などを受診してください。
心拍数を安定させるためには、適度な運動などの生活習慣の見直しをしましょう。
40代から罹患率が上がるがんも多く、その予防にもなります。
また、40代以上で高血圧が急激に増えます。健康維持や病気の早期発見のためにも、心拍数と
血圧の両方を毎日測定・記録しておきましょう。

 60代・70代の心拍数の平均値

60~70代の、心拍数の平均値は以下の通りです。
・60代  男性: 68回、女性: 69回
・70代  男性: 65回、女性: 67回

高齢者とされる65歳を過ぎると、心拍数が低下する傾向にあります。
しかし、心拍数が通常より大きく低下したときは、洞不全症候群や房室ブロックなどの病気の
疑いがあります。息切れやだるさ、足のむくみ、めまいなどの症状が見られる場合は、
早めに病院を受診してください。

また、加齢により「心房細動」という不整脈も増加するため、特に70代以降は注意が必要です。
さらに、高血圧や糖尿病、肥満、喫煙、ストレスなども不整脈の原因とされており、
生活習慣の改善が重要となります。

まとめ

今回は、年代別の心拍数平均値などを解説しました。

  • 通常は「心拍数=脈拍数」になるが、不整脈がある場合は両者が一致しないことも。
  • 成人の脈拍数は60~100回が正常値。
  • 100回以上で「頻脈」、60回未満で「徐脈」。それぞれ心臓などの病気の可能性もある。
  • 日常的に運動する人は脈拍数が低く、運動しない人は高い傾向にある。
  • 加齢とともに低下する傾向がみられる。

    今後の人生を健康に過ごすためにも、毎日の測定で自身の脈拍数を把握し、
    生活習慣の見直しも心がけましょう。
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