高齢者の血圧正常値は?高血圧の基準値や正常に保つためのポイントも解説

2024.12.05

高齢者になると、高血圧の方が増え、脳卒中や心臓病などのリスクが高まります。
年齢を重ねると、血管が老化して硬く厚くなる動脈硬化が引き起こされます。
そのため、血圧が高くなりやすく、統計データでも年代が上がることに血圧平均値は
高くなっています。

この記事では、高血圧の基準値や症状、関連する病気、血圧を正常に保つためのポイントなどを
解説します。
「数値の見方がわからない」、「たまに胸が痛くなるけど高血圧と関係あるの?」、
「高血圧を改善するにはどうしたらいい?」といった、血圧に関する疑問にお答えします。

血圧とは

血圧とは、血液が血管の内壁を押す力のことです。
心臓が収縮して血液を強い力で押し流すときの血圧を「最高血圧(収縮期血圧)」、
心臓が拡張しているときの血圧を「最低血圧(拡張期血圧)」といいます。

血管は年齢とともに弾力性が低下して硬くなる傾向にあり、心臓はより強い力で血液を押し出す
必要があります。そのため、年齢を重ねるほど最高血圧は高くなりやすいです。

最高血圧が高い場合は心筋梗塞などの心臓病のリスクが高まり、最低血圧が高い場合は
脳卒中や腎不全などのリスクが高まるとされています。

高齢者の血圧正常値は?

高齢者の血圧の正常値はどのくらいなのでしょうか。
ここでは、日本高血圧学会の「高血圧治療ガイドライン2019」と厚生労働省の
「令和元年国民健康・栄養調査報告」を参考にして、血圧の正常値と高血圧の割合を紹介します。

 80代の血圧正常値と高血圧の割合

  • 血圧正常値
    血圧には、医療機関で測定したときの「診察室血圧」と、自宅で測定したときの
    「家庭血圧」があり、それぞれで正常値や高血圧の基準値が設定されています。
    医療機関では、緊張から「白衣高血圧」になりやすいため、診察室血圧の基準は
    家庭血圧より少し高めです。

    「正常血圧」に分類されるのは、血圧が以下の範囲の場合です。
    血圧と脳心血管病リスクとの関係などの最新知見を踏まえ、現在ではこの基準は高齢者も
    含めたすべての年代の成人に適用されます。
  1.  診察室血圧
    「最高血圧 120mmHg未満」 かつ 「最低血圧 80mmHg未満」
  2. 家庭血圧「最高血圧 115mmHg未満」 かつ 「最低血圧 75mmHg未満」

ちなみに、高血圧患者の降圧目標(診察室血圧)は、以下のようになっています
(最高血圧/最低血圧)。糖尿病など他の病気を合併している場合は、目標値が異なる
場合があります。
・75歳未満 130/80mmHg 未満     ・75歳以上 140/90mmHg 未満

  • 高血圧の割合
    80代を含めた75歳以上の高血圧症有病者の割合は以下の通りです。
    男女ともに7割以上と高い数値になっています。
    男性 71.5%、女性 74.5%

高血圧の基準値と主な症状

ここでは、まず、日本高血圧学会の「高血圧治療ガイドライン2019」を参考にして、
高血圧の基準値を紹介します。
そして、高血圧の主な症状についても紹介します。

 高血圧の基準値

「高血圧」に分類されるのは、血圧が以下の範囲の場合です。
この基準は、高齢者も含めたすべての年代の成人に適用されます。

  1. 診察室血圧
    「最高血圧 140mmHg以上」 かつ/または 「最低血圧 90mmHg以上」
  2.  家庭血圧
    「最高血圧 135mmHg以上」 かつ/または 「最低血圧 85mmHg以上」

    高血圧は、原因不明で生活習慣がかかわっているとされる「本態性高血圧」と、
    病気などが原因の「二次性高血圧」に分類されます。
    高血圧の基準に当てはまらなくても、正常血圧の範囲を超えている場合は、
    将来的に高血圧になる可能性が高いです。
    また、正常血圧の人と比べて、脳卒中や心臓病などの発症リスクが高いので、
    後述する生活習慣の見直しをおすすめします。

 高血圧の症状

高血圧に自覚症状はほとんどありません。
高血圧が進行すると、「頭痛」や「めまい」、「呼吸の乱れ」、「胸部圧迫感」、「動悸」、「目のかすみ」、
「肩こり」、「耳鳴り」、「疲労感」などの症状が見られることもあります。
ただし、それらの症状は高血圧以外の原因でもよく見られるものです。

高血圧は、自覚症状がないからといってそのまま放置すると、重篤な病気を引き起こす可能性が
あります。
定期的に健康診断を受けたり自宅でも血圧を測定したりして、さらに生活習慣を見直すことで、
高血圧を予防することが重要です。

高血圧で注意すべき合併症や疾病は?

血圧が高い状態が続くと、血管の壁は傷つき、次第に動脈硬化が進行します。
この動脈硬化は全身の血管に起こり、さまざまな合併症や疾病の原因になり得ます。
ここでは、特に注意すべき高血圧に関連する合併症や疾病について解説します。

 糖尿病

高血圧と糖尿病は、共通する原因が多く、合併しやすい病気です。
また、ともに動脈硬化の危険因子であり、合併することでより動脈硬化が進行し、脳卒中や
心筋梗塞などが起こりやすくなります。血圧と血糖の両方について厳格なコントロールが必要です。

どちらの病気も、早い段階から治療や生活習慣の改善を行うことで、病気の重症化の予防が
可能となります。
しかし、高血圧も糖尿病も初期症状がほとんどないため、定期的に健康診断を受けて、
異常が見られた場合には、早い段階で治療を始めることが重要です。

 脳卒中

脳卒中には、脳の血管が詰まる「脳梗塞」や、脳の血管が破れる「脳出血」、「くも膜下出血」
あります。いずれも高血圧が最大の原因です。

脳梗塞では、脳動脈が血栓などで閉塞したり狭窄したりして、脳細胞に血液が十分に供給
されなくなります。また、脳出血では、細動脈が破れて脳の中に出血し、脳組織を圧迫したり
脳細胞が破壊されたりします。どちらも意識障害や半身麻痺、言語障害、認知機能の低下などの
症状が現れます。
くも膜下出血では、脳動脈瘤が破裂して、脳の表面を覆うくも膜の内側に出血します。
突然の激しい頭痛や意識障害が起こります。脳卒中の中で最も死亡率が高いです。

心臓病

高血圧になると動脈硬化が引き起こされ、血液を送り出すのに大きな力が必要となるため、
心臓に負担がかかります。これにより、次のような病気を引き起こす原因になります。

  1.  狭心症
    動脈硬化により心臓への血流が悪くなって、心臓の筋肉が一時的に酸素不足になり胸が
    痛む病気です。心筋梗塞に移行することがあります。
  2. 心筋梗塞
    心臓の血管が血栓で詰まるなどして血流が途絶えると、心臓の一部が酸欠により壊死します。
    その結果、心臓のポンプ機能が低下して激しい胸痛が続き、心停止に至ることもあります。
  3. 心肥大
    心臓がより大きな力で血液を送り出そうとするため、心筋が厚くなって弾性力が失われた
    状態です。進行すると、心不全につながります。
  4. 不整脈
    狭心症や心筋梗塞、心肥大などが原因で、心臓の拍動に異常が見られることがあります。

血圧を正常に保つためのポイントを紹介

このセクションでは、血圧を正常に維持するために気をつけるべきポイントを紹介します。
高血圧を長年放置すると、脳卒中や心臓病などの重大な病気の発症リスクが高まり、
取り返しのつかない事態になりかねません。
高血圧の改善や予防のためには、自身の生活習慣全般を見直すことが重要です。

 食生活の改善を図る

高血圧の最大の原因が、塩分の過剰摂取とされています。
塩分を多く摂取すると、血中の塩分濃度を下げるために血液量が増え、血圧が高くなります。
日本高血圧学会では、「食塩の摂取量は1日6g未満」を推奨しています。
塩分控えめで美味しい料理のレシピは、インターネットで検索するとたくさん見つかるので、
参考にしてください。

また、ナトリウム排泄効果があるカリウム・マグネシウム・カルシウムを積極的に摂取しましょう。
カリウム・マグネシウムは野菜や果物、海藻、豆類などに多く含まれ、カルシウムは乳製品や
小魚などに多く含まれます。
さらに、肥満の方は高血圧のリスクが高くなるとされています。特に、健康診断で「内臓脂肪が多い」と指摘された方は注意が必要です。
食べ過ぎに注意し、栄養バランスのとれた食事を心がけてください。

 適度な運動を行う

適度な運動を行うことで、高血圧のリスクが下がるとされています。
また、運動により高血圧のリスクを高める肥満の解消にもつながります。
運動をすると、血圧は一時的に上がります。しかし、筋肉に多くの酸素と栄養を運ぶために
血管が広がるなどして、血圧は下がっていきます。

運動としては、酸素をたくさん取り入れながら行う有酸素運動が適しており、1日30分程度
毎日行うことが理想です。有酸素運動としては、ウォーキングやジョギング、水泳、サイクリング、
エアロビクスなどがあります。
すでに血圧が高めの方は、医師に相談するなどして無理のない範囲で行ってください。

 十分な睡眠と休息をとる

高血圧のリスクを下げるためには、十分な休息と睡眠をとることも重要です。
極度の緊張などのストレスは、交感神経を刺激し血圧の上昇を引き起こします。
さらに、ストレスは食生活の乱れや不眠、飲酒、喫煙などにもつながりやすく、高血圧のリスクが
さらに高まります。

また、睡眠不足により自律神経の働きが乱れると、高血圧を発症しやすくなります。
ストレスや睡眠不足は高血圧だけでなく、さまざまな病気のリスクを高めます。
好きな趣味に没頭したり、ゆっくり入浴したりといった自分なりのリラックス方法を見つけることが
重要です。

 禁煙・節酒に努める

禁煙・節酒により高血圧のリスクが下がるとされています。
喫煙をすると、ニコチンにより血管が収縮するため血圧が上がります。
また、アルコールには血管を拡張させる作用があり、少量であれば一時的に血圧は下がります。
しかし、過剰な摂取により血圧は高くなります。飲酒量の目安は、男性がアルコール換算で
20~30ml/日(日本酒ならば1合、ビールならば500ml程度)、女性が10~20ml/日以下です。

喫煙も過度の飲酒も、がんなどさまざまな病気のリスクを高めることがわかっています。
健康のためには、禁煙と節酒が重要です。

まとめ

今回は、高齢者に多い高血圧について、関連する病気や改善方法を中心に解説しました。

  • 血圧の正常値は「120/80mmHg未満」、高血圧の基準値は「140/90mmHg以上」。
  • 加齢により動脈硬化が進み、高血圧は増える傾向。75歳以上では7割以上が高血圧。
  • 高血圧に自覚症状はほとんどない。
  • 高血圧の合併症では、「糖尿病」や「脳卒中」、「心臓病」などに注意。
  • 高血圧リスクを下げるには、「食事」、「運動」、「休養」、「飲酒」、「喫煙」などの
    生活習慣見直しが必要。

    高血圧を予防して健康寿命を延ばすためにも、生活習慣を改善しましょう。
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