介助者とは何か?仕事内容や介護との違い・介助する際の注意点を解説!

2025.01.15

介助者とは、要介護者に対して日常生活の動作を支援する人のことです。
介護の現場で働いている人でも、「介護」と「介助」の違いを正しく理解している人は
多くないかもしれません。

しかし、適切なケアを行うためには、それらの違いを理解しておくことが重要です。
この記事では、介護と介助の違いや、介助の種類、介助レベル、注意点を解説します。
介助に携わっている方や、将来の介助に備えたい方におすすめの内容です。

介助と介護の定義の違い

「介助」と「介護」という言葉は、似たような意味を持っているため一般的に混同されがちです。
しかし、厳密には意味が異なります。
ここでは、介護の現場で働く人が知っておくべき「介助」と「介護」の違いについて解説します。

 介助とは

「介護」とは、「要介護者の自立支援を目的とした行為全般」であり、「介助」とは
「介護を実現するための実際の手段」です。介護が要介護者の生活の全体を見るものだとすると、
介助はそのときに必要な手段だといえます。

介助は、介護のうちの「身体介護」に含まれると覚えておきましょう。
介助の内容を具体的に挙げると、食事や移乗、入浴、歩行、更衣、排泄など日常生活で生じる
あらゆる動作のサポートです。

 看護とは

「介護」とは、日常生活において何らかの支援が必要な人に対して、生活行為や自立支援に関わる
身体的および精神的、社会的なサポートを行うことです。
前述のように、「要介護者の日常生活の自立を目指す行為全般」を指します。

介護に分類される仕事内容には、「身体介護」や「生活援助」などがあります。
身体介護は、要介護者の身体に直接触れて、日常生活に必要な動作をサポートする介護サービスです。食事や入浴、排泄などの介助が含まれます。
生活援助は、要介護者の身体には触れずに、日常生活をサポートするサービスです。
例えば、掃除や洗濯、調理、買い物などが挙げられます。

介助者の主な仕事内容6つ

前述の通り、介助は介護の一環として提供されるサポートであり、日常生活で生じるあらゆる動作の
サポートを行います。
ここでは、具体的に介助者の主な仕事内容を6つ紹介します。

 食事介助

「食事介助」とは、加齢や病気などで咀嚼機能や嚥下機能、消化機能が低下して、うまく食事が
とれない人に対するサポートです。
介助者は、食べ物を適切な大きさに切ったり、口元に食べ物を運ぶ手助けをしたりします。
テーブルや椅子の高さを調整して姿勢を整えたり、身体の状態に合わせた食器を選んだり
することも、食事介助の一環です。

介助を行う際は誤嚥や窒息を防ぐために、要介護者の状況に応じて、一度に食べる量や
ペースなどにも注意します。

 移乗介助

「移乗介助」とは、ベッドから車椅子、車椅子からトイレの便座など、安全に移乗できるように
手助けすることです。
少しでも足に力が入る人であれば、つかまり立ちと簡単な介助で移乗できます。
要介護者のできること、できないことを見極める必要があります。

車椅子から移乗介助を行う際には、車椅子が動いた反動で転倒することのないよう、ブレーキを
かけておくことがポイントです。また、声を掛けながらタイミングを合わせて行いましょう。
半身麻痺の人の介助を行う場合は、身体の麻痺がない側に車椅子を配置することが基本です。
できるだけ角度をつけないことで、負担を軽減できます。

また、体格差がある場合は、一人で無理をせず複数人で行うことも検討してください。

 入浴介助

「入浴介助」とは、自力で入浴することが困難な人のために、身体状況や希望に沿った方法で
入浴をサポートすることです。
これには、以下のような目的や効果があります。

  1. 身体を清潔に保ち、感染症を予防する。
  2. 全身の皮膚の状態を確認し、傷や内出血などを早期発見する。
  3. 副交感神経が優位になり、リラックスできて睡眠の質の改善にもつながる。
  4. 血行が促進され、褥瘡(じょくそう)やむくみの予防につながる。

    入浴は危険を伴う可能性がある行為です。
    転倒しないようにしっかり支える、脱衣所や浴室の温度を調節するなどの対応が必要となります。
    なお、要介護者によっては、入浴が体力の消耗や疲労を伴う行為となることも理解しておいて
    ください。

 歩行介助

「歩行介助」は、要介護者が安全に目的地まで歩行できるようにサポートすることです。
筋力低下や麻痺などがある人は歩行中の転倒リスクが高いため、身体状況に応じて適切なサポートが
求められます。

介助の方法には、介助者が横に立って歩く「寄り添い歩行介助」や、お互いに向き合って歩く
「手引き歩行介助」などがあります。
なお、杖や歩行器、シルバーカーなどの補助具を利用している場合や、階段・段差の上り下りが
伴う場合などによっても介助の方法は変わります。
歩行動線をしっかりと整備し、無理をせず安全に歩行できるよう心掛けましょう。

 更衣介助

「更衣介助」とは、着替えをサポートする介助です。
ひとりでは着替えが難しい人のために、袖に腕を通したり襟から頭を出したりなど、衣服の着脱を
サポートします。

更衣介助は、なるべく自力で着替えを行えるように、手順を統一して着脱のサポートを行うことが
求められます。また、着脱しやすく、体に負担が少ない衣類をそろえることも、更衣介助の
一環です。

関節の可動域が狭い人にとって、着替えは体に負担をかける行為の一つです。
そのため、伸縮性の高い素材やゆったりしたサイズのものを選ぶなど、工夫をしましょう。

 排泄介助

「排泄介助」とは、排泄のサポートを行う介助のことで、要介護者の状況によって内容が変わります。
排泄は、特にデリケートな行為なので、自尊心を傷つけることのないよう、配慮が必要です。

トイレまで移動できる場合は、トイレで介助を行います。
トイレまでの誘導と排泄後の対応をします。
トイレまでの移動が難しく、ポータブルトイレを使用する場合は、排泄物の処置なども併せて
行います。
ベッドから起き上がることが難しく、尿器や差し込み便器を使用する場合は、衣類やベッドが
汚れないように腰の下にタオルを敷くといいでしょう。
器具を使用した後は、洗浄や消毒などを行います。
おむつを使用している場合は、肌荒れや感染症を引き起こさないように、適切なタイミングで
おむつ交換をします。

介助を受ける人の段階に注意が必要

介助を行う際には、介助を受ける人の介助レベルを理解しておくことが必要です。
それにより、過介助や介助不足を防ぐことができるというメリットがあります。
介助レベルは、身体の状況によって4段階に分けられます。
それぞれについて、詳しく解説します。

 自立

「自立」とは、食事や排泄、入浴などの日常生活の全ての動作が自力で行える状態を指します。
介助者は、自立している人に関しては、基本的には直接的な介助の必要はありません。
自立している人には必要以上の介助を行わず、自分らしい生活を継続できるよう経過を見守って
いく必要があります。
その際には、福祉用具使用の有無や環境整備が必要となっているかなどを確認しておくと
良いでしょう。

 一部介助

「一部介助」とは、自立に近い状態ではありますが、特定の動作について不安があり、
部分的に援助や見守りが必要な段階です。
明確な基準はなく、自立と半介助の間をイメージするとよいでしょう。

例えば、「自力で歩くことができていても、環境によってふらつきのおそれがある」といった
ケースを指します。この場合、見守りや手を添えての誘導を行うことが必要です。
自立していた方が、特定の動作において転倒のリスクがあると判断された場合に、一部介助の
対応へと移ることがあります。

 半介助

「半介助」とは、一部介助よりもできる動作が限られている状態です。
動作における多くの部分をひとりで行うことは難しく、サポートを必要とします。

例えば、着替えをひとりではできないものの、袖に手を入れたり手を伸ばしたりするなどの
協力動作ができるケースなどです。
このように、ある程度の能力はあるものの、介助者の援助があってはじめてその行為が達成される
段階です。
ただし、本人ができる動作まで介助してしまうと、さらにできなくなるおそれがあります。

声掛けしながら、協力動作を促すことが重要です。

 全介助

「全介助」とは、特定の動作全般を自力で行えないため、介助者の手厚いサポートを必要とする
状態です。

例えば、着替えの場合、衣服を被る・袖を通す・ボタンを留めるなど、一連の動作のすべてを
介助者に行ってもらう形になります。
介助者は全面的に支援する必要がありますが、介護の目的が自立支援であることに変わりは
ありません。
全介助であっても、本人ができることを探り、能力を引き出す方法を検討することが大切です。
一方的な介助とならないよう、相手の声に耳を傾けながらサポートすることが重要といえるでしょう。

介助をする際の注意点

介助の意味や具体的な内容などについては、理解していただけたと思います。
しかし、不適切な方法で介助を行うと、相手にケガをさせたり、症状に悪影響が出たりする可能性も
あります。
このセクションでは、介助をする際の注意点を紹介します。

 声掛けを行いゆっくりとした動作を心がける

要介護者の体に触れたり、動かしたりする前には、声を掛けることが重要です。
これから行う動作について説明することで、相手も体を動かす準備ができ、介助しやすくなります。
急に体に触れると、相手は驚いて、転倒したり体を痛めたりする危険性があるので注意が必要です。


また、立ち上がるときや移乗するとき、歩行するときなど、すべての介助のシーンで、
ゆっくりとした動きを意識してください。介助者の動きが速いと、相手は不安を抱いてしまいます。
素早く体を動かして介助すると、要介護者の身体に負担をかけることもあります。
適宜声を掛けて不安を取り除きながら、相手に合わせてゆっくりした動きで介助することを
心掛けてください。

 過剰な介助はしないよう努める

介助を行う際は、過剰なサポートをしないようにしましょう。
必要以上に介助することで、今まで自分でできていたことまでも、できなくなる可能性があります。
これにより、要介護度が上がって、そのうち何もできなくなってしまう事態につながるのです。


「できることは自分でやってもらう」、「できないことだけを部分的にサポートする」、という
ことを心掛けてください。

ただし、加齢や体力の衰え、認知機能の低下などによって、今までできていたことがある日
突然できなくなることもあります。
あくまでも、本人ができない部分を補い、相手に寄り添った介助をすることが大切です。

まとめ

今回は、介助や介助者について解説しました。
・介護は、要介護者の自立支援を目的とした行為全般。
・介助は、日常生活を支援する行為そのもの。介護の中に介助が含まれる。
・主な介助の種類は、「食事」・「移乗」・「入浴」・「歩行」・「更衣」・「排泄」など。
・介助レベルは、「自立」・「一部介助」・「半介助」・「全介助」の4段階。
・介助をする際の注意点は、声掛けとゆっくりした動作を心掛け、過剰な介助はしないこと。

介助は実際に大変な場面も多いのですが、やりがいも多く社会的にも重要な仕事です。
この記事が、現在または将来介助に携わる方の参考になれば幸いです。

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