高齢者虐待防止法は、高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律です。
高齢者虐待の防止、虐待を受けた高齢者の迅速かつ適切な保護及び適切な養護者に対する
支援を行います。
この記事では、高齢者虐待防止法について、虐待の定義や虐待を発見した際の通報先などについて
解説していきます。高齢者虐待について気になるという方は、参考にしてください。
目次
高齢者虐待防止法とは、高齢者に対する虐待を防ぎ、保護するための措置や支援について定めた
法律です。国及び地方公共団体、国民、高齢者の福祉に業務上 又は職務上関係のある団体及び
従事者等に対する責務が規定されており、虐待の防止や、虐待を受けた高齢者の保護及び適切な
養護者に対する支援を行います。
高齢者虐待防止法は、2005年に制定された、高齢者に対する虐待を防ぎ、保護するための措置や
支援について定めた法律です。 高齢者虐待の防止、虐待を受けた高齢者の迅速かつ適切な保護
及び適切な養護者に対する支援を行います。
主に、高齢者虐待防止に関する国の責務や養護者への支援、医療・福祉従事者の早期発見の
努力義務があります。
法では、国及び地方公共団体、国民、高齢者の福祉に業務上又は職務上関係のある団体及び
従事者等に対する責務が規定されています。
高齢者虐待防止法が制定された理由は、高齢者に対する虐待が社会問題となったことが
背景にあります。その要因として、高齢化社会による高齢者の増加、養護者の増加、介護への関心や
意識の低さ、高齢者の自立度の低さ、介護費の増加など社会的ストレス、養護者と高齢者の
関係性などが挙げられます。
高齢者虐待防止法では、高齢者虐待の定義を明確化し、通報や相談窓口への通報を義務化、
介護施設や介護サービス従事者には、虐待の早期発見を努力義務としています。
高齢者虐待に定義される5つの種類は、「身体的虐待」「介護、世話の放棄・放任」
「心理的虐待」「性的虐待」「経済的虐待」です。
高齢者虐待は、養護者が養護する高齢者に対して行われる行為ですが、虐待の状況の深刻さによって
考える必要があります。
それは、「緊急事態」「要介入」「要見守り・支援」の3つのレベルです。
身体的虐待とは、暴力的な行為により高齢者の身体に傷やアザ、痛みを与えるような行為を
加えることです。殴る、つねる、蹴る、無理やり食事を口に入れるなどが身体的虐待にあたります。
具体的には、殴る、蹴る、突き飛ばすなどの暴力的行為、立ち上がって動いたり、移動をしないよう
に車椅子やベッドなどにベルト、柵、紐などで拘束する、介護衣やミトン型手袋を使用させる、
鍵のついた居室に隔離する、無理やり食事を口に入れる、やけど・打撲させるなどの行為です。
心理的虐待とは、高齢者が、介護者によって精神的な苦痛を与えられることです。
具体的には、脅しや侮辱などの言葉や態度、無視や嫌がらせ、怒鳴る、ののしる、目の前で
悪口を言う、排泄の失敗を叱責・嘲笑したり、それを人前で話すことなどで高齢者に恥をかかせる、
侮辱を込めて、子供のように扱うなどの行為があたります。
心理的虐待を行った場合、虐待防止法に定められた虐待罪といった犯罪として裁かれることは
ありませんが、虐待行為が刑法上の犯罪行為に該当する場合は罰せられる可能性があります。
介護・世話の放棄とは、高齢者の世話をしない、放置する行為を指します。
ネグレクトとも呼ばれます。高齢者の生活環境や身体・精神的な状態を悪化させる行為が該当します。
具体的には、食事や水分を十分に与えない、汚れたおむつを交換しない、長期間入浴させない、
医療機関を受診させない、無視してコミュニケーションをとらない、室内にごみを放置するなど、
劣悪な住環境の中で生活させることです。
介護放棄は虐待の一種です。介護しなければ生きていけない状態だと知りながら介護を
放棄した場合は、罪に問われる可能性があります。
性的虐待とは、 高齢者にわいせつな行為をすること、高齢者にわいせつな行為をさせること、
性行為の強要や性的暴力、性的羞恥心を喚起する行為の強要、性的嫌がらせなどです。
高齢者本人が同意していないにもかかわらず、性的な行為をすることで、実際に行っていなくても、
そういった性的な行為を強要することだけでも虐待になります。
介護施設での虐待事例として、キス、性器への接触、セックスの強要、排泄介助、入浴介助時の
卑猥な言動、排泄の失敗に対して懲罰的に下半身を裸にして放置するなどです。
経済的虐待とは、養護者や高齢者の親族が、高齢者の財産を不当に処分したり、高齢者から
不当に財産上の利益を得たりすることです。
事例としては、日常生活に必要な金銭を渡さない、使わせない、お小遣いとして預かっている
金銭を着服する、本人の自宅や持ち物等を家族が無断で売却する、年金や預貯金を本人の
意思・利益に反して使用するなどです。
経済的困窮やストレスを抱える家族や介護者が原因となることが多いので、周囲からの早期発見と
適切な対応が求められます。
高齢者虐待が疑われる場合は、市区町村の担当窓口や地域包括支援センターに速やかに通報します。
まず、被虐待者本人または発見者が、市区町村の高齢者虐待対応所管課や地域包括支援センター
などへ相談・通報すると、相談・通報先が虐待かどうか事実確認の情報収集をします。
情報をもとに、施設や居宅などを訪問し、関係する人物からの情報を集めます。
高齢者虐待を発見した場合、まず発見者が、または被害者本人が通報します。
通報の流れは、次のとおりです。
まず被虐待者本人または発見者が通報します。
すると、通報先が虐待の可能性について協議し、事実確認のための情報収集を行います。
集めた情報をもとに、施設や居宅などを訪問するほか、関係する人物から話を聞きます。
そこで、情報を整理し、虐待の有無、緊急性の判断、対応方針の決定がなされます。
それから、ケースごとに対応を行っていきます。
高齢者虐待を発見した場合は、市町村担当窓口や地域包括支援センターに連絡します。
証拠がなくても、虐待のおそれがある段階で連絡しても大丈夫です。
相談者の秘密は守られるので、名前が相手方に伝わることはありません。
明らかに暴力が振るわれている様子があったり、怒鳴り声や悲鳴が聞こえた際には、すぐに近くの
警察に連絡します。虐待の通報を受けた後、警察は市町村の虐待担当窓口に連絡をします。
暴力を受けている、どなられる、年金を取られるなどと訴えている場合は虐待が疑われます。
医療・福祉従事者は早期発見の努力義務があります。
養介護施設、病院、保健所その他高齢者の福祉に業務上関係のある団体及び養介護施設従事者等、
医師、保健師、弁護士その他高齢者の福祉に職務上関係のある者は、高齢者虐待を発見しやすい
立場にあることから、高齢者虐待の早期発見に努めなければなりません。
高齢者虐待防止法の規定により、早期発見、地方公共団体等による啓発活動・高齢者保護のための
施策への協力が、高齢者虐待を発見した者には通報する努力義務が課されています。
この記事では、高齢者虐待防止法についてご紹介しました。
高齢者虐待防止法は、高齢者に対する虐待を防ぎ、保護するための措置や支援について
定めた法律です。
高齢者虐待について定義される5つの種類や、虐待の状況の深刻さのレベルを解説しました。
虐待を防止するためにも早期発見、速やかに通報することが重要ですので、ぜひ参考にしてください。