寝たきり在宅介護では、介護保険サービスをうまく利用することがポイントになります。
寝たきりでも自宅での介護は可能ですが、介護する側の身体的・精神的負担が大きいのも事実です。
そのため、できる限り負担を減らす工夫が必要です。
この記事では、寝たきり在宅介護の注意点や負担軽減策、利用できるサービスについて詳しく
解説します。
在宅介護を始めたばかりの方にも、介護で悩んでいる方にも、おすすめの内容です。
目次
「寝たきり」とは、病気やケガなどが原因で、自力での起き上がりや寝返りが難しく、
日常生活のほとんどをベッドの上で過ごす状態です。
寝たきりになると、要介護4~5の認定となり、日常生活の基本的な動作である食事、入浴、更衣、
排泄などを自立して行うことが困難となります。
介護度が高くなるにつれ、介護者の負担も大きくなります。
また、寝たきりの状態が長期間続くと、身体機能の低下やさまざまな合併症を引き起こすリスクが
高まります。
寝たきりの方を在宅介護する際には、さまざまな点に注意を払う必要があります。
例えば、「床ずれの予防」など、寝たきり特有のケアが求められるのです。
ここでは、寝たきりの方を在宅介護する際の注意点を5つ紹介します。
寝たきりの場合に、特に注意したいのが「床ずれ」です。
床ずれとは、身体の一部が長期間にわたって圧迫を受けることで血流障害が起こり、皮膚などの
組織が壊死した状態です。
後頭部、肩甲背部、肘部、仙骨尾骨部、腸骨大転子部、坐骨部、下腿部、踵部といった部位に
後発します。
床ずれは、痛みを伴うだけでなく、感染症を引き起こすリスクもあるため、早期発見と適切な
処置が欠かせません。更衣や清拭、入浴時などに、皮膚の状態を観察し、発赤などの異常がないか
確認してください。
対策としては、「定期的な体位交換」、「床ずれ防止マットの使用」、「下着やパジャマのゴムが
皮膚に食い込まないように注意」などです。
寝たきりの方は、飲み込む力が衰えている場合が多く、食事中の「誤嚥」に注意が必要です。
誤嚥とは、飲食物が食道ではなく気管に入ってしまうことです。
これにより、誤嚥性肺炎を引き起こす可能性があり、命に関わることもあります。
誤嚥を防ぐには、食事中の姿勢が重要です。ベッドで食事をする場合は、身体の状態にあわせて
リクライニングの角度を45~80度にして、首を軽く前に傾けた姿勢をとるようにします。
この姿勢を保持するために、枕やクッションを使って体を支えましょう。
また、食事の形態にも配慮が必要です。やわらかく、小さく切ったものを提供して、必要に
応じてとろみをつけたり、ミキサー食にしたりしましょう。
食事のペースも大切です。ゆっくりと、一口ごとに飲み込んだのを確認してから次の一口を運びます。むせたり咳き込んだりした場合は、食事を中断し落ち着くまで様子をみてください。
寝たきりになると、「排泄介助」が必要になります。
非常にデリケートなケアなので、配慮が必要です。
排泄を自力でできなかったり失敗したりすると、本人も自尊心が傷つくことがあります。
そのため、ネガティブな言葉がけをしないよう注意しましょう。
また、高齢になると尿意や便意を感じにくくなることがあります。そこで、決まった時間に声がけを
して、ルーティン化することをおすすめします。
なお、本人ができることまで先回りしてサポートすると、自尊心を傷つけたり、本当に何も
できなくなってしまったりする可能性があります。必要なことのみサポートしてください。
尿意や便意を伝えられるうちは、便器を使用します。
トイレまでの移動が大変な場合は、ポータブルトイレを使用するのも一つの方法です。
これにより、自力での排泄を促し、残存機能の維持ができます。
自力での排泄が難しくなってきたら、オムツ使用になります。
オムツ交換の際にはプライバシーに配慮し、オムツかぶれにも注意しましょう。
寝たきりの方は免疫力が落ちることから、床ずれなどの皮膚トラブルを起こしやすくなります。
そのため、「身体の清潔を保つ」ことが必要です。
寝たきりの方にとっても、介助をする方にとっても、入浴は身体的な負担が大きい行為です。
そのため、清拭がおすすめです。お湯で濡らしたタオルで拭くだけでも身体は清潔になり、
血行促進効果やリラックス効果も得られます。
また、介護保険のサービスに、訪問入浴があります。
入浴のような大変なうえに事故のリスクもある行為には、介護保険サービスなどをうまく活用する
ことがおすすめです。
長期間の寝たきり状態によって、心身のさまざまな機能が低下することを
「生活不活発病(廃用症候群)」といいます。
それにより、以下のようなさまざまな症状を発症する原因になります。
それらを最小限に抑えるために、以下のようなことを行いましょう。
寝たきりの方の在宅介護は、肉体的にも精神的にも大変な労力を要します。
介護者の負担軽減は、介護を続けていく上で欠かせません。
ここでは、負担を軽減する方法を詳しく解説します。
介護保険で要介護認定を受ければ、「居宅サービス」を利用できます。
介護保険が適用されるため、サービス費用は1~3割の自己負担となります。
以下が利用できる居宅サービスです。
「施設への入居」を検討するのも一つの方法です。
介護離職して生活苦に陥ったり、介護疲れで共倒れになったり、虐待をしたりという事態は、
絶対に避けなければなりません。本人や家族が健康的に生活するためにも、介護ケアのプロに
任せてみることも考えましょう。
寝たきりの方の場合は、特別養護老人ホームや介護老人保健施設、介護医療院、
介護付き有料老人ホームなどがあります。
どの施設がいいのか分からない場合は、お近くの地域包括支援センターや、自治体の高齢福祉課
・介護保険課などにご相談ください。
寝たきりの方を在宅介護すると、経済的な負担が大きくなります。
介護用品の購入費や医療費など、さまざまな費用が発生するからです。
そのため、寝たきりの方の在宅介護を支援するために、さまざまな形の「助成制度」を設けている
自治体もあります。
自治体ごとに支給条件や支給額、支給目的などが異なり、実施していない自治体もあります。
まずは、お住まいの自治体の高齢福祉課などに問い合わせてみましょう。
窓口でご自身の状況を説明すれば、適用可能な助成制度を教えてもらえます。
自分一人では在宅介護は無理だと感じたら、身近な人に相談してみてください。
きょうだいや親戚による協力が得られれば、身体の負担だけでなく精神的にも余裕ができるでしょう。
相談する身内がいなかったり、相談するのをためらったりする場合は、ケアマネジャーなどのプロに
相談しましょう。悩みに対して実践的な解決策や、利用できるサービスなどを提案してもらえることが期待できます。
また、誰かに話を聞いてもらうことで、ストレスの発散になって気分がスッキリすることもあるため、けっして一人で抱え込まないようにしてください。
寝たきりの方の在宅介護では、介護保険の範囲内で多くの種類のサービスを利用することができます。
このセクションでは、そのうちの4つのサービスを紹介します。どれもサービス費用は1~3割の
自己負担です。
「訪問入浴」とは、看護職員を含むスタッフが自宅に訪問し、専用の簡易浴槽を使って入浴を
サポートする介護サービスです。
訪問入浴介護を受けるには、次の条件を満たしていなければなりません。
・要介護認定を受けている
・主治医から血圧の確認などを受けて、入浴を許可されている
訪問入浴は、次のような場合におすすめのサービスです。
・浴室の環境が悪く、家族や訪問介護のサポートがあっても入浴が難しい
・デイサービスなど通所サービスの利用が難しい
・体調管理が必要で看護職員のサポートが欲しい
「訪問介護」とは、訪問介護員(ホームヘルパー)などが自宅を訪問して、入浴や排泄、食事の介助などの「身体介護」や、調理や洗濯、掃除などの「生活援助」を行うサービスです。
要介護認定を受けた方が、訪問介護のサービス対象者です。
要介護の方が自立した在宅生活を送るために生活をサポートします。
なお、訪問介護は利用者本人だけを対象としたサービスです。
日常生活の援助の範囲を超える行為や、本人以外の家族のための行為、医療行為などは
受けることはできません。
「デイサービス(通所介護)」とは、要介護認定を受けた方が通う介護事業所です。
入浴や排泄、食事など日常生活の介助のほか、できるだけ自立した生活を送れるよう、身体機能の
維持・向上を目指した機能訓練などのサービスを受けられます。
また、レクリエーションでは、他の利用者やスタッフとのコミュニケーションも図れるので、
孤独感も解消され、認知症予防も期待できます。
家族にとっても、身体的・精神的負担が軽減され、一定の自由時間の確保ができるという
メリットがあります。
「ショートステイ(短期入所生活介護)」とは、短期的に施設に入居し介護を受けられるサービス
です。デイサービスと同様に、機能訓練やレクリエーションなどのサービスも受けられます。
原則として、要介護認定を受けた65歳以上の高齢者が利用できます。
施設では、24時間の介護体制が整っているため安心です。
家族としては、「介護疲れで休息したいとき」、「遠方の冠婚葬祭に出席するとき」、
「出張や旅行のとき」などに強い味方となります。
家族の身体的・精神的負担の軽減につながるため、定期的な利用がおすすめです。
今回は、寝たきりの方の在宅介護について解説しました。
・寝たきりとは、一日の大半をベッドの上で過ごし起き上がれない状態。
・在宅介護の注意点は、「床ずれ」・「誤嚥」・「排泄介助時の配慮」・「身体の清潔保持」
・「生活不活発病」など。
・介護者の負担軽減の方法は、「居宅サービス利用」・「施設への入居」・「助成制度」
・「親族・ケアマネジャーへの相談」など。
・介護保険が適用される「訪問入浴」・「訪問介護」・「デイサービス」・「ショートステイ」
などを適宜利用することもおすすめ。
介護に疲れを感じたら、一人で抱え込まず、介護保険サービスや助成制度などの積極的な利用や、
施設への入居も検討しましょう。