高齢になると、尿が出にくくなったり、頻尿になったり、おおよそ10人に1人の割合で
「排尿障害」と診断される統計があり、介護室に入居している方の、約半数が何らかの排尿障害に
あるというデータもあります。
頻尿などの方であれば尿パッドやおむつを使用するのが一般的ですが、尿を自分で出すことが
できない方の場合、「バルーンカテーテル」という尿道から膀胱までカテーテルを通して尿を
排出するという方法があります。
バルーンカテーテルは管理が必要で、バルーンカテーテル自体に尿や汚れがつまらないようにする
「ミルキング」という方法があります。
バルーンカテーテルの管理の方法に自信がない、注意すべき点がいまいちわからないという方に
向けて、バルーンカテーテルとミルキングの方法について解説していきます。
目次
バルーンカテーテルは尿道留置カテーテルまたは膀胱留置カテーテルとも呼ばれ、
カテーテルという管を尿道から膀胱まで通したままにし、膀胱内の尿をカテーテルを通して
排出するようにする処置です。
体外のカテーテルの先には、蓄尿袋という排出された尿を溜めるものがあり「排尿量の管理」や
「排尿の状態を観察」することも、しやすいようになっています。
バルーンカテーテルでも適切な管理と注意点を把握すれば入浴することも可能で、
細菌は、蓄尿袋やカテーテルが外見でわかりづらいよう、足に巻き付けるタイプのものなども
あります。
バルーンカテーテルを使用している方は、カテーテルを通したままにすることで自己排尿が
できない方でも、体外に尿を排出できるようになります。
しかし、常にカテーテルを通したままにしているということは「カテーテル内に汚れや尿の成分が
結晶化したものが溜まる」場合があります。
汚れや結晶がカテーテルに溜まり続けると、「カテーテルに詰まり閉塞してしまう」危険があります。
これを防ぐために「ミルキング」という方法でこの汚れや結晶をカテーテル内から
排出する方法があります。
ミルキングを直訳すると「乳搾り」となります。
つまりバルーンカテーテルに置けるミルキングは「チューブをつまんだり、専用のローラーなどを
使い流してあげる作業」のことをいいます。
カテーテル内の浮遊物や汚れが結晶となり長期間たまり続けるとカテーテルの閉塞の原因となるほか、
細菌の温床となり炎症や感染症の原因ともなってしまいます。
ミルキングを行うには、いくつかのポイントや注意点があり、それらを適切に把握して実施
することが安全な対処につながるといえます。
冒頭で、介護施設に入居されている方の約半数が排尿障害を持っていると説明しましたが、
看護師や介護職の方であれば、このバルーンカテーテルを使用している方を見かける方も
多いのではないでしょうか。
では、介護施設などで働く「介護職」はバルーンカテーテルを使用している方の介助をする際、
ミルキングを行ってもよいのでしょうか。
現状、介護職ができる医療行為の中に「バルーンカテーテルのミルキング」は含まれていないため、
法律の解釈上では「介護職がミルキングを行うことはできない」ことになっています。
このの根拠は、医師法や歯科医師法などの法律に「膀胱留置カテーテルについて、医行為と
みなされもの(介護職でもしてよいこと)は何か」が明記されているためです。
上記の解釈から、バルーンカテーテルのミルキングは法律上の解釈では介護職では
実施できないと言えます。
法律上、バルーンカテーテルのミルキングは介護職で実施することはできないことになっていますが、
反対にバルーンカテーテルを利用している方に対して、介護職はどんなケアができるのでしょうか。
ひとつずつ見ていきましょう。
バルーンカテーテルの方に対して介護職ができること1つ目は「バルーンカテーテルの管理や観察」
です。
バルーンカテーテルは、ねじれや折れがあると尿の排出ができなくなったり、
カテーテルが何かに引っかかり力が加わると尿道や膀胱内のカテーテルも引っ張られ、
尿道や膀胱が傷ついてしまうかもしれません。
また、カテーテル内の排尿が適切に流れているか、血尿や浮遊物が出ていないかを観察することで
異常の早期発見につなげることができます。
介護職として、色々な介護を行う際に、バルーンカテーテルの管理と観察を行い専門職に
つなげることで、トラブルを回避することに繋がります。
これまで解説してきた通り、バルーンカテーテルには適切な管理が必要です。
適切な管理を行うには、日頃からその方の状態をよく知り、観察することでトラブルに至る前に
異常を早期発見することが必要です。
しかし、医師や看護師だけで日に何度もチェックすることは難しく、介護職も一緒にカテーテルの
観察や利用者の体調に異変がないかを見守ることが大切です。
「カテーテルやカテーテル内の排尿に異常が見られる場合」や「利用者さんの様子がいつもと
違うかもしれない」という場合は、確信が持てないとしても、医療職へ報告し相談するのが大切です。
バルーンカテーテルは、尿道から膀胱までカテーテルが通っています。
しかし、このカテーテルは新陳代謝もなければ免疫もないため、長期間つかうと汚れや
劣化が起こり、細菌の温床や炎症の原因となります。
そのため、バルーンカテーテルは定期的な交換が必要で、使用者の状態に合わせて
「1ヶ月に1度」や「2週間に1度」と決められています。
この時のバルーンカテーテルの挿入は医師や看護師が行うこととなっているため、注意しましょう。
先にも少し触れましたが、介護職はバルーンカテーテルのミルキングをすることはできませんが、
その代わりに介護職には、利用者の「バルーンカテーテルの管理と観察」をするという重要な
役割があります。
では、どういった点を注意して管理と観察をするよよいのでしょうか。
バルーンカテーテルは尿道から膀胱までカテーテルが通っています。
そのため、カテーテルを伝って細菌が体内に侵入するリスクや、バルーンカテーテル内の排尿が
逆流したり、詰まってしまうことでカテーテル内で細菌が繁殖し炎症を起こしたり感染症になって
しまう危険もあります。
そのため、介護職はケアの都度、カテーテル内に「浮遊物が血尿が出ていないか」を観察しましょう。
また、排泄ケアで陰部や尿道を観察する機会は、「発赤や腫れがないか」「汚れがたまっていないか」「下腹部に違和感や痛みがないか」などを観察しましょう。
また、排泄ケアの都度、丁寧に陰部洗浄を行い感染症予防にも務めましょう。
バルーンカテーテルは、膀胱から体外に尿を排出した際、蓄尿袋に溜められるようになっています。
蓄尿袋に排尿を溜めることによって、その方の排尿量を正確に測定することができます。
排尿障害がある方にとって、排尿量を観察し記録していくことで、1日どのくらいの排尿があるかを
知ることができます。
そこから、排尿が少ない日が続くなどがあれば、「排尿障害が悪化しているのではないか」
「カテーテルの異常が起きてるのではないか」と推測する材料になります。
排尿量に注意して記録をおっていくことで、トラブルを未然に解決したり、早期発見から
早期対処につなげることができます。
バルーンカテーテルを常に通しておくことで、「肌がこすれて赤くなったりただれること」が
あります。固定テープを使用している方の場合は、テープの粘着によって肌荒れを起こすことも
あるため、皮膚の観察も重要になります。
また、バルーンカテーテルがずれたりすることで「尿道が傷つき出血したり腫れたりする」危険も
あります。
さらに、カテーテル周りについた汚れを落とし残すと細菌が繁殖し、そこから陰部がただれたり
炎症が起きる場合があります。
そのため、皮膚の状態を注意深く観察をすることはとても大切です。
バルーンカテーテルは、排尿障害で自分で排尿できない方が尿道から膀胱までカテーテルを通して、
膀胱に溜まった排尿を体外に排出するためのものです。
排尿障害は、高齢者の10人に1人、福祉施設に入居している方の半分が持っているという障害と
言われています。
バルーンカテーテルを使用する方は、浮遊物や汚れの結晶がつまらないよう注意する必要があり、
それを改善する方法がミルキングという手段です。
ミルキングは法律の解釈上は、介護職では実施できませんが、介護職にはカテーテルの管理や
観察をするという重要な役割があります。
バルーンカテーテルとミルキング、そしてその管理と観察について把握し、より良いケアを
実現しましょう。