小規模多機能型居宅介護には問題点もありますが、それ以上のメリットもあります。
小規模多機能型居宅介護とは、同一事業所が「通い」・「訪問」・「宿泊」の3つのサービスを
提供する介護保険サービスです。
状況に応じて、必要なときに必要な介護を受けられるのが特徴です。
この記事では、小規模多機能型居宅介護の概要や問題点、メリット、向いている人・向いていない人
について、詳しく解説します。
在宅介護を検討されている方におすすめの内容です。
「小規模多機能型居宅介護」とは、介護保険サービスのひとつで在宅介護をしている方向けの
地域密着型サービスです。
住み慣れた地域で自立した生活を続けられるよう、3種類のサービスを組み合わせ、日常生活の支援や
機能訓練などを行います。
以下、小規模多機能型居宅介護について、対象者などの概要を解説します。
小規模多機能型居宅介護は、2006年の介護保険制度改正によって導入された、地域密着型サービス
です。地域の事業者が、利用者一人ひとりに合わせた柔軟なサービスを提供することで、
自宅や地域社会で自立した生活を送ることを目的としています。
同一の事業所が「通い(デイサービス)」を中心に、「訪問(ホームヘルプ)」や
「宿泊(ショートステイ)」といったサービスを提供します。
小規模多機能型居宅介護の対象者は、以下の2つの条件をすべて満たす人です。
「介護保険サービス」であることと、「地域密着型サービス」であることから、このように
なっています。
小規模多機能型居宅介護には、多くのメリットがありますが、問題点やデメリットもあります。
メリットだけでなく、問題点も理解しておくことで、より有効なサービス利用につながります。
以下、小規模多機能型居宅介護の問題点について解説します。
小規模多機能型居宅介護は、小規模サービスに位置づけられているため、「一つの事業所あたりの
登録定員は29名以下」に設定されています。
また、「通いサービスの定員は1日15名以下(一定の条件を満たした場合は18名以下)」、
「宿泊サービスの定員は1日9名以下」の設定です。
各サービスの利用定員が上限に達すると、そのサービスは利用できません。
そのため、他の利用者のサービスの利用状況によっては、ご自身の希望通りに利用できない場合も
あります。
小規模多機能型居宅介護は、月額定額制です。
そのため、利用回数・時間に関係なく毎月支払う利用料は一定であり、安心して介護サービスを
受けられます。
しかし、サービスの利用頻度が少ない方では、サービスを個別で契約した場合と比べて、割高に
なる場合があります。
要介護度が低く多くのサービスを必要としていない人や、基本的に家族が終日介護できる場合などは、契約前によく検討してください。
小規模多機能型居宅介護を契約した場合と、サービスを個別に契約した場合とで、どちらが費用を
抑えられるでしょうか。
小規模多機能型居宅介護では、「通い」・「訪問」・「宿泊」の3つのサービスが同一事業所から
提供されます。
一部のサービスに不満があったとしても、そのサービスだけを別の事業所に変更することは
できません。変更したい場合は、個別ではなく小規模多機能型居宅介護の契約自体を解約する
必要があります。
また、小規模多機能型居宅介護を利用するにあたり、既に他の事業所の訪問介護などのサービスを
受けている方は、それらの契約を解除する必要があります。
今まで慣れ親しんだサービスを利用できなくなることで、不安に感じる方もいるかもしれません。
小規模多機能型居宅介護の提供サービスは、「通い」・「訪問」・「宿泊」の3つです。
その他のサービスを利用したい場合には、以下のサービスに限り併用可能です。
「訪問看護」・「訪問リハビリテーション」・「居宅療養管理指導」・「福祉用具貸与」・「住宅改修」
しかし、以下のサービスは、小規模多機能型居宅介護のサービス内容と重なるため、併用できません。
「居宅介護支援」・「訪問介護」・「訪問入浴介護」・「デイケア」・「デイサービス」・「ショートステイ」
小規模多機能型居宅介護を提供する事業所には、専属のケアマネジャーが在籍しています。
小規模多機能型居宅介護のサービスを利用するには、利用開始前に、これまでのケアマネジャーから
施設のケアマネジャーへと、担当を変更しなければなりません。
なじみのケアマネジャーから離れ、新しいケアマネジャーと一から信頼関係を築くことが必要です。
環境の変化を苦手とされる方にとってはストレスになり、大きなデメリットとなります。
小規模多機能型居宅介護には、問題点やデメリットがいくつかあるため先に紹介しました。
しかし、他の介護保険サービスにはない良い点やメリットもたくさんあります。
以下、小規模多機能型居宅介護のメリットについて解説します。
小規模多機能型居宅介護の最大のメリットは、サービスの利用回数に制限がないことです。
一般的な介護サービスであれば、利用回数や利用時間に応じて利用料金が請求されます。
小規模多機能型居宅介護ならば、夜間の訪問を受けたい場合や、短時間だけ通いを利用したい
場合などでも、時間の制限なくいつでも必要なときに必要な分だけ、介護サービスを受けられます。
24時間365日注意を払う必要がある在宅介護は、介護者の負担も大きいものです。
高齢者の急な体調変化などがあっても、必要なときにすぐにサービスを受けられます。
小規模多機能型居宅介護は、月額定額制で利用できます。
そのため、前述の通り、サービス利用頻度が少ない方にはデメリットとなり得ますが、サービスを
たくさん利用される方には大きなメリットとなります。
金額を気にすることなく、安心して介護サービスを受けられるのです。
なお、具体的な月額利用料の金額は、要介護度や介護保険の自己負担割合によって異なります。
注意すべき点としては、食事代やおむつ代、ショートステイの宿泊代など、別途必要になる料金も
あることです。
小規模多機能型居宅介護では、同じ事業所が「通い」・「訪問」・「宿泊」の3種類のサービスを
提供するため、スタッフとの信頼関係を築きやすいです。
常に顔なじみのスタッフからサービスを受けられます。
通常のデイサービスやショートステイなどを利用する場合には、同じ施設内であっても、担当する
スタッフは異なることが多いです。
小規模多機能型居宅介護ならば、新しい環境になじむことが苦手な方でも、安心して利用する
ことができるのです。
小規模多機能型居宅介護では、「通い」・「訪問」・「宿泊」の3つのサービスを同時に、
回数に制限なく利用できます。
通常、複数の介護サービスをそれぞれで利用しようとする場合、契約は3回必要となります。
しかし、小規模多機能型居宅介護ならば、1回の契約で3つのサービスを利用することができるので、
契約の手間を減らすことができます。
また、デイサービスを利用した後にそのまま宿泊したり、自宅に送ってもらったあとにそのまま
訪問介護のサービスを受けたりと、状況や要望に合わせて柔軟にサービスを受けることも可能です。
小規模多機能型居宅介護ならば、臨機応変にサービス利用ができます。
単独の訪問介護やデイサービスでは、ケアプランによって利用時間や回数が決められています。
一方で小規模多機能型居宅介護の場合は、必要なタイミングで必要な分だけサービスを受けられます。
急に宿泊サービスを利用したいという場合でも、定員に空きがあれば調整してもらえることも
あります。
さらに、「午前中だけ」、「昼食だけ」、「午後だけ」など、短時間でのスポット利用にも
対応できます。
小規模多機能型居宅介護は、自宅での生活を望む方やその家族には多くのメリットがあります。
しかし、すべての人に最適とは限らず、人によっては他の選択肢が適切である場合もあります。
以下、小規模多機能型居宅介護に向いている人と向いていない人について解説します。
小規模多機能型居宅介護に向いているのは、以下のような人です。
小規模多機能型居宅介護に向いていないのは、以下のような人です。
これらに該当する人は、他の介護サービスの利用を検討することをおすすめします。
今回は、小規模多機能型居宅介護について、問題点などを解説しました。
・介護保険サービスのひとつで、同一事業所が「通い」・「訪問」・「宿泊」の3つのサービスを
提供。
・対象者は、「要支援または要介護の認定を受けた人」かつ「事業所と同じ自治体に住民票が
ある人」。
・問題点は、「利用頻度によっては割高」、「サービスごとの事業所変更不可」、
「ケアマネジャーの変更が必要」など。
・メリットは、「利用回数無制限の月額定額制」、「柔軟な対応が可能」など。
・向いている人は、「自宅で生活を続けたい人」、「柔軟な対応を望む人」など。
・向いていない人は、「利用中のサービスを続けたい人」、「他のサービスが適している人」など。
小規模多機能型居宅介護は、利用者の方にも家族の方にも強い味方となりうるサービスです。
この記事が、介護サービス選びの参考になれば幸いです。