看護と介護の3つの違い|仕事内容や職種・資格について詳しく解説

2025.01.23

介護施設における「看護」と「介護」は、役割や目的、業務内容などに違いがあります。
どちらも、施設で利用者のサポートを行うという共通点があり、違いが分からないという方も
いるかもしれません。しかし、両者は明確に異なります。

この記事では、まず看護と介護の定義を示し、それぞれの違いについて3つの点から解説します。
また、看護職と介護職が連携をとるための方法についても紹介します。
介護の仕事に興味のある方や、施設で看護職または介護職として働いている方に読んでいただきたい
内容です。

看護と介護の定義

「看護」と「介護」は、仕事内容が重なる部分もあるため混同されることがあり、違いを正しく
説明できる人は多くないかもしれません。
それぞれの違いについては、後のセクションで詳しく解説します。
このセクションでは、「看護」と「介護」の定義や役割などを紹介します。

 看護の定義

「看護」とは、あらゆる年代の個人や家族、集団、地域社会を対象に、健康増進や疾病予防、
健康の回復、苦痛の緩和などを行う支援的な活動のことです。
介護施設では、看護師は介護職と連携しながら利用者のサポートを行います。

介護職は利用者の生活全般をサポートするのが主な仕事ですが、看護師は医療従事者として
利用者の「健康管理」や「医療行為」を行います。
健康管理は、介護職と協力して行い、仕事内容はほとんどが非医療行為です。
医療行為は、薬の管理・投薬やたんの吸引、点滴などを行います。

 介護の定義

「介護」とは、要介護者の日常生活の自立を目指す行為全般のことです。
生活行為や自立支援に関わる身体的および精神的、社会的なサポートを行います。
介護に分類される仕事内容には、「身体介護」や「生活援助」などがあります。

身体介護とは、要介護者の身体に直接触れて、日常生活に必要な動作をサポートすることです。
食事や入浴、排泄などの介助が含まれます。
生活援助は、要介護者の身体には触れずに、日常生活をサポートすることです。例えば、
掃除や洗濯、調理、買い物などが挙げられます。

介護と看護の3つの違い①資格の違い

ここから、「看護」と「介護」の違いについて、3つの点から説明していきます。
「看護」と「介護」の3つの違いの1つ目は、「資格の違い」です。
看護と介護において、それぞれで取得する資格には違いがあります。
ここでは、看護と介護における主な資格の種類を紹介するので、参考にしてください。

 看護の資格

看護の仕事に就くには、資格が必要になります。この点が介護との大きな違いです。
看護の資格には、以下の4つの種類があります。准看護師は都道府県知事が認定する公的資格ですが、
他はすべて国家資格です。

  1. 看護師
  2. 准看護師
  3. 助産師
  4. 保健師
    看護師になるには、大学または3年以上の教育を受けて、看護師国家試験に合格する必要が
    あります。

    准看護師になるには、2年以上の教育を受けて、准看護師試験に合格する必要があります。
    なお、助産師と保健師は、それぞれの国家資格を取得する前に、看護師の国家資格を取得して
    おかなければなりません。

 介護の資格

介護の仕事に就くには、資格が必要というわけではありません。
無資格・未経験でも、介護の仕事をすることは可能です。

ただし、以下の職種に就くには、資格取得が必要です。

  1. 訪問介護員(ホームヘルパー)
  2.  介護福祉士
  3.  社会福祉士
  4.  ケアマネジャー(正式名称は「介護支援専門員」)

    「訪問介護員」になるには、「介護職員初任者研修」・「介護福祉士実務者研修」や国家資格
    である「介護福祉士」のいずれかの資格が必要です。
    「介護福祉士」になるには、国家資格である「介護福祉士」の資格が、「社会福祉士」に
    なるには、国家資格である「社会福祉士」の資格が必要です。
    「ケアマネジャー」になるには、「介護支援専門員実務研修受講試験」に合格後、実務研修を
    受講して登録することが必要です。

    また、これら以外にも介護関係の資格の種類は多いです。取得により、就職で有利になったり、
    業務の幅が広がったり、キャリアアップにもつながります。

介護と看護の3つの違い②職種の違い

「看護」と「介護」の3つの違いの2つ目は、「職種の違い」です。
看護と介護において、それぞれでさまざまな職種があります。
ここでは、看護と介護における主な職種を紹介するので、参考にしてください。

 介護の職種

介護の主な職種は、例えば以下の通りです。主な仕事内容も簡単に示します。

  • 介護職員
    「介護の現場で働いている人」の総称です。主に介護施設の利用者に対して、食事介助や
    入浴介助、排泄介助などの身体介護や生活援助などのサポートを行います。
  • 訪問介護員
    要介護者の自宅を訪問して、身体介護や生活援助などの介護業務を行います。
  •  介護福祉士
    介護職員と同じように介護業務も行いますが、介護職員の管理・指導などのリーダー的な
    役割も担います。
  • 社会福祉士
    身体・精神上の障がいがある人や日常生活を送るのが困難な人の相談に応じ、
    助言や指導などを行います。
  •  ケアマネジャー
    利用者が状況に応じた介護サービスを受けられるように、ケアプランの作成や
    サービス事業者との調整などを行う職種です。

 看護の職種

看護の主な職種は、例えば以下の通りです。主な仕事内容も簡単に示します。

  • 看護師
    主な仕事は、医師の診察や治療の補助、患者の心身のケアなどです。
    医師の指示に従って点滴や採血などの診療補助を行ったり、患者の食事や入浴の介助など
    日常生活の支援も行ったりします。また、患者や家族に寄り添い心理的なサポートをする
    ことも大切な仕事です。
  • 准看護師
    看護師と同様に、診療補助や患者のケアなどが主な仕事です。
    ただし、准看護師は独断で医療行為を行うことが禁止されていて、医師や看護師の指示を受けて
    業務を行う必要があります。
  • 助産師
    妊婦の健康管理や分娩の介助、新生児のケア、産後の母親のサポートなど多岐にわたる
    業務を行います。
  •  保健師
    地域の人々が健康を保って生活できるよう、保健指導や健康相談などを通じてサポート
    することが仕事です。人々の病気の予防や健康の保持・増進のために、さまざまな
    保健活動を行います。

介護と看護の3つの違い③仕事内容の違い

「看護」と「介護」の3つの違いの3つ目は、「仕事内容の違い」です。
看護と介護において、それぞれで仕事内容には大きな違いがあります。
ここでは、看護と介護における主な仕事内容を紹介するので、参考にしてください。

 看護の仕事内容

ここでは、看護の職種の中でも、特に「看護師」の介護施設における仕事内容について紹介します。

  1. 健康管理
    看護師の主な役割は、利用者の健康管理です。介護施設では、医師が常駐していないことが
    多いため、医療従事者である看護師が健康管理を担います。
    業務としては、バイタルチェックや口腔ケア、爪切り、耳掃除などが挙げられます。
  2.  療養
    介護施設の利用者には病気を患っている方も多いため、療養に関する業務も重要です。
    業務としては、軟膏の塗布や湿布の貼付、ケガの処置、服薬管理、通院付き添いなどが
    挙げられます。
  3. 医療行為
    医師が常駐していない施設では、利用者の体調が急変した場合などの緊急時に、
    応急処理をしたり、病院への引継ぎなどを行ったりすることがあります。
    看護師が医師の指示のもとで行う医療行為には、点滴や採血、たん吸引、インスリン注射、
    胃ろう、尿道カテーテル挿入などが挙げられます。
  4. その他
    介護スタッフと協力して、食事や入浴などの介助を行います。

 介護の仕事内容

介護の仕事は、高齢者や障がいを持っている方が安心して生活を送れるようにサポートを
することです。
食事・入浴・排泄などの介助をする「身体介護」や、掃除・洗濯・調理などを行う「生活援助」が
主な業務です。それら以外にも、機能訓練のサポートやレクリエーションの企画・実施など、
勤務先の施設によって仕事内容は多岐にわたります。

スタッフは、利用者一人ひとりの心身状態を把握し、自立支援や健康回復を目指してケアに
取り組みます。

看護職と介護職がスムーズに連携を図るためには?

看護職と介護職は、それぞれの役割が異なるため、意見がすれ違ったりスムーズな連携を
取れなかったりする場合もあります。それにより、サービスの質・業務効率の低下や重大な
トラブルが引き起こされる可能性があります。
ここでは、看護職と介護職がスムーズに連携をとるための方法を紹介します。

 日頃からコミュニケーションをとる

看護職と介護職が連携するためには、まずは積極的にコミュニケーションをとることが重要です。
介護施設はさまざまな職種の人が働いているため、職員同士のコミュニケーションは欠かせません。
あいさつを心掛けたり、休憩中に世間話をしたり、感謝の言葉を積極的に伝えたりしましょう。

これにより、信頼関係が構築されて円滑なやり取りができるようになり、業務効率の向上にも
つながります。
職場の雰囲気は周囲にも伝わるため、職員同士の仲が悪いと利用者も居心地が悪くなります。
利用者が気持ちよくサービスを受けるためにも、看護職と介護職が信頼関係を築くことが重要です。

 お互いを尊重し合う

看護職と介護職が良好な関係性を築くためには、お互いに尊重することが大切です。
たとえば、医療面の課題については医療の知識が豊富な看護職の意見を尊重すると、
課題解決がスムーズにいくことが多いでしょう。また、介護のケアや利用者のことについては、
常に利用者の状態を観察している介護職の意見や情報が役に立つことが多いはずです。

お互いの仕事や役割を理解し尊重する気持ちを持っていれば、より適切なケアを利用者に
提供できるようになります。

 情報共有し協力し合う

看護職と介護職は、情報共有し協力し合うことが重要となります。
施設では多くの職種の人が働いており、職種ごとに役割が異なるため、他職種との連携・
チームワークが必要になります。これは施設外のケアマネジャーや医療機関と連携をとるときにも
大切なポイントです。
特に、シフト制でスタッフが頻繁に入れ替わる職場では、情報共有は必須です。
入れ替わったスタッフが利用者の情報を把握していないと、不適切なケアをしてしまい、トラブルに
発展する可能性があります。
スタッフどうしで情報共有を徹底するための体制を作ることが大切です。

まとめ

今回は、看護と介護の違いについて解説しました。
・「看護」とは、病気・ケガなどの治療・療養をサポートする行為。
・「介護」とは、要介護者の自立支援を目的とした行為全般。
・看護には看護師の国家資格などの資格が必要。介護には資格は必要ないが、取得することで
キャリアアップにつながる。
・看護の職種は、「看護師」・「准看護師」・「助産師」・「保健師」など。
介護の職種は、「介護職員」・「訪問介護員」・「介護福祉士」・「社会福祉士」
・「ケアマネジャー」など。
・看護の仕事内容は、「健康管理」・「療養」・「医療行為」。
介護の仕事内容は、「身体介護」・「生活援助」。
・看護職と介護職がスムーズに連携をとるためには、「コミュニケーション」・「互いを尊重」
・「情報共有」が重要。

介護施設で働く看護職と介護職が、お互いの役割を理解し尊重し合うことで、
利用者への最適なケアの提供につながるでしょう。

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