バルーンカテーテルとは、排尿障害がある方や手術で長時間排尿ができない方などに
使われるものです。
排尿障害が起こると、自分で排尿ができなくなったり、頻尿や尿もれが頻繁に起きたりする
障害をいいます。
高齢者の10人に1人、高齢者施設に入居している方の約半分の方が、
何らかの排尿障害を持っているとされています。
このバルーンカテーテルについて理解を深め、介護職がバルーンカテーテル利用者に
できることについて知ることで、介護の質向上やスキルアップに繋がります。
この記事では、バルーンカテーテルを利用している方に介護職ができることについて解説します。
目次
バルーンカテーテルとは、何らかの原因で排尿障害を持つ方に利用するもので、
膀胱留置カテーテルとも呼ばれます。
使用時には、カテーテルという医療用の管を尿道から挿入し膀胱まで通します。
バルーンカテーテルを使用することで、排尿障害で自己排尿ができない方は、カテーテルを通して
尿を体外の蓄尿袋に排出できるようになります。
また、長時間の手術や、手術後に回復するまでトイレができないなどの場合に一時的に
使用されることもあります。
バルーンカテーテルは、自己排尿ができない排尿障害を持つ方の体調管理や排尿管理にとって、
とても役立ちますが、その使用には、メリットとデメリットがあります。
このメリットとデメリットについて理解してケアを行うことで、ケアの質向上と適切な
バルーンカテーテルの管理ができるようになります。
バルーンカテーテルを使用するメリットは以下の通りです。
バルーンカテーテルを使用することで、利用者はふとした尿失禁に悩む必要がなくなるため、
安心して生活でき外出もしやすくなります。
また、介護職員は排尿量や尿の観察ができるため、排尿障害に対する適切なケアが
行えるようになります。
バルーンカテーテルを使用する際のデメリットには以下のようなものがあります。
バルーンカテーテルは、尿道から膀胱までの尿の通り道で炎症を起こす場合があり、
尿の通り道で炎症が起こると尿路感染症や血尿など、排尿障害ではない疾患が起きる可能性が
あります。
そのため、病院や施設でのバルーンカテーテルの管理は細心の注意を払わなければなりません。
バルーンカテーテルを利用している方に対するケアは、医療職がケアする領域と
介護職がケアする領域に違いがあります。
これは、医師法第17条、歯科医師法第17条及び保健師助産師看護師法第31条の解釈が理由で、
この法律によって、バルーンカテーテルの利用者に「介護職員の実施が認められていないこと」が
明記されているためです。
では、バルーンカテーテルを利用している方に対して、介護職ができることは
どんなことがあるのでしょう。
介護職でできるバルーンカテーテルに対するケアの1つは「カテーテルの観察や管理」です。
観察や管理に含まれるのは以下のようなケアです。
介護職はバルーン内の尿廃棄や尿量の確認ができ、バルーンカテーテルを留置している方の
排泄ケアも行えます。
これらの管理と観察を行い、皮膚トラブルや異常尿を発見した場合は、すぐに医療職に
つなげることで早期発見、早期対応が行えます。
バルーンカテーテルを利用している方の中には、痛みや不快感、認知症などの理由で
カテーテルを引っ張ったり、抜いてしまう方もいます。
また、バルーンカテーテルを利用している方は、尿路、膀胱、腎臓などに疾患を持つ方も多く、
お腹の痛みを訴える方もいるでしょう。
その際、介護職の自己判断で処置をしたり、報告を怠ると病状の悪化に繋がる危険があります。
いつもと違う様子や、何か問題が起きたら、小さなことでも速やかに医療職に報告し
判断を仰ぎましょう。
バルーンカテーテルは管理のひとつに定期的な交換があります。
基本的には、約4週間に1回の頻度で交換します。(感染症にかかりやすい方などであれば2週間に
1回などもある)
古いバルーンカテーテルを抜き、新しく清潔なバルーンカテーテルを挿入する作業は、
医師や看護師が行います。
介護職では、バルーンカテーテルの交換や挿入はできませんが、高齢者施設などでバルーンカテーテルを使用している方が複数いる場合は、交換の受診を忘れるというミスが起きる可能性も考えられます。
介護職も利用者毎のバルーンカテーテルの交換時期を把握し、
医療職と連携して定期的な交換を行えるよう協力体勢を作っておきましょう。
介護職がバルーンカテーテルを利用している方のケアに携わる際の重要な役目に、
バルーンカテーテルの管理と観察があります。前述でも少し触れましたがより具体的に
どのような点に注意し、バルーンカテーテルの管理と観察をすればよいのか確認しておきましょう。
バルーンカテーテルを利用している方は、カテーテルがズレたりしないように固定用テープで
下腹部や太ももに貼り付けている場合が多いです。
この固定用テープで皮膚がかぶれたり、痒くなり掻いて傷がつく場合があります。
また、陰部周辺がカテーテルでこすれたり、汚れが溜まって炎症を起こし、陰部が腫れたり
赤くなる場合も考えられます。
これらの皮膚トラブルを早期発見するには、介護職が排泄ケアや入浴ケアに携わった際に、
皮膚の状態をよく観察することがとても大切です。
バルーンカテーテルの利用者は、尿路感染症などの感染症を発症する割合が高いと言われています。
日本泌尿器科学会の調べによると、尿路感染症の4割は病院と起こるといわれ、その中の8割が
バルーンカテーテルを留置していることが原因と発表しています。
そのため、病院や介護施設でバルーンカテーテルの利用者に関わる、介護職や医療職は、
尿路感染症についても理解を深め注意しておく必要があります。
尿路感染を起こすと、「排尿痛」「尿の濁り」「尿に血が混ざる」「発熱」「悪寒」
「吐き気や嘔吐」の症状がでます。
これらの症状が見られる場合は、尿路感染症を疑い医療職に報告し指示を仰ぎましょう。
また、尿路感染症を予防するには、「定期的な陰部洗浄」「水分をしっかりと飲む
(1500ml / 日が目安)」「排便は前から後ろに拭く」などの方法が効果的です。
介護職は、陰部洗浄ができているかチェックしたり、水分の摂取量を記録したりと
尿路感染症の予防をチームで行う体勢を整えることが大切です。
バルーンカテーテルを利用している方の、尿の量を観察することはとても重要です。
1日の排尿量の目安は「1500ml〜2000ml」と言われています。
排尿には、尿路にたまった細菌を体外に押し出す役目もあり、バルーンカテーテルを
留置している方が尿路感染症にかかりやすいことも考えると、排尿がしっかりと出ている
ということは健康面から見て大切なこととなります。
1日の排尿量を観察し記録に残すことで、排尿量が少ないと飲水量を調節するなどの対応が
とりやすくなり、健康管理にも役立ちます。
高齢者の約10人に1人が、何らかの排尿障害があり、病院や高齢者施設に入居している方は
約半数が排尿障害を持っているというデータがあります。
その中でも、自己排尿が困難な方にはバルーンカテーテルを利用して、膀胱内の排尿を体外に
排出する方法を取っている方も少なくありません。
介護職は「バルーンカテーテルの管理と観察」「感染症や皮膚トラブルの早期発見」
「陰部洗浄などの清潔ケア」を行うことなどが重要な役割です。
バルーンカテーテルの交換などは、医療職しか行えませんが、交換のタイミングを介護職も
把握する異常やトラブルを見つけ医療職につなぐなど、チームで支援することが重要で、
バルーンカテーテルについての知識を深めることで、介護の質の向上や介護職としての
スキルアップにつなげましょう。