介護の現場において、腰痛で悩んでいる方や不安な方におすすめの記事です。
介護業界では腰痛は「職業病」とされており、約6割の方が腰痛で悩んでいるといわれています。
介護職として長く働き続けていくためには、腰痛の予防・改善が必須です。
この記事では、介護での腰痛の原因や予防法、腰痛になった際の改善方法について詳しく解説します。
目次
介護での腰痛の最大の原因は、腰に負担のかかる姿勢をとることが多いことです。
それ以外にも、さまざまな要因が重なって起こります。
ここでは、介護により腰痛になる主な原因を5つ挙げ、それぞれ詳しく解説していきます。
1つ目の原因は、被介護者と介護者との体格差です。
被介護者の体型はさまざまなので、小柄な方や自分より身体の大きい方の介護を行うことがあります。
小柄な被介護者の介助では、介護者はしゃがむことが多く、腰に負担がかかる中腰や猫背になりがち
です。また、身体が大きい被介護者を介助する際には、重い体をひとりで持ち上げたり、
身体を支えるために無理な体勢になったりと、やはり腰に負担がかかりやすくなります。
そのため、できるだけ体格差の少ない組み合わせで介助を行う、2人がかりで介助する、
ボディメカニクスの技術を身に付けるなどの工夫が必要です。
2つ目の原因は、腰に負担がかかる姿勢が多いことです。
これが腰痛の最大の原因とされています。
入浴介助や移乗介助、オムツ交換、体位変換といった身体介護は、前かがみや中腰になる動作が
多い業務です。これらの業務を長時間続けて行うと、腰への負担がかかりやすくなります。
また、被介護者を抱え上げて行う介助も、腰痛になるリスクが高いです。
食事や移乗の介助の際の身体をひねる動作も、腰に負担がかかりやすいため要注意です。
3つ目の原因は、無理な姿勢での介護です。
特に、未経験から介護業界に転職した場合など、正しい介護スキルを学んだことがない人は
要注意です。正しい方法を知らずに力任せに介護をすると、腰痛のきっかけとなります。
また、不安定な動きによって被介護者がケガを負う可能性もあります。
介護を行うときは、マニュアルやほかの職員のケアを参考に、正しい姿勢を意識してください。
また、介護の研修・セミナーなどに積極的に参加したり、資格取得のための勉強を
したりすることも、知識・スキルを身に付けるのに有効です。
4つ目の原因は、介護をする環境が整っていないことです。
例えば、「トイレが狭くて車椅子で入れない」、「脱衣所や浴室が狭くて介助しにくい」、
「職員ひとりあたりの業務量が多すぎる」などです。
そのような職場環境で働くことで、腰痛が引き起こされることがあります。
対策としては、施設側へ働きやすい環境への改善を要求することです。
設備の改修は難しくても、福祉用具の購入や人員の確保などは実現可能性が高いです。
改善されない場合は、転職も視野に入れましょう。
5つ目の原因は、ストレスなどの心的要因です。
例えば、「職場の人間関係がギスギスしている」、「業務量が多すぎる」、「利用者の言動に
イライラする」、「毎日同じことの繰り返しで働きがいがない」、「リーダーに昇格したが
自信がない」などです。
腰痛には、身体的な負担だけでなく、そのような心理的な負担も影響することがわかっています。
休日は趣味に没頭するなどオンオフをしっかり切り替え、ストレスを溜めこまないようにしましょう。
また、職場に問題がある場合は、上司に相談するなどしてください。
介護業界で長く働くためには、腰痛対策が重要です。
今はまだ腰痛でない人でも、今のうちから予防をしておかなければ、ある日突然腰痛に
襲われる日がくるかもしれません。
ここでは、腰痛を予防する方法を4つ紹介します。
一つ目の腰痛予防の方法は、正しい姿勢で介護を行うことです。
オムツ交換や移乗介助などの際には、ベッドの高さを調節するなどして、無理のない姿勢での
介助を心がけましょう。
「時間がないからベッドが低いまま介助する」といったケアを繰り返すと、腰への負担が
蓄積されます。
介助時に「ボディメカニクス」を意識すると、身体的な負担を減らせます。
ボディメカニクスとは、人間の関節や筋肉、骨の連動を利用したもので、最小限の力で
介助ができる技術です。
例えば、被介護者を支えるときに身体を密着させる、被介護者を抱き起こす際は足を開いた
姿勢で重心を落とす、といったものです。
二つ目の腰痛予防の方法は、同じ姿勢を長時間続けないことです。
同じ姿勢で作業すると、腰に大きな負担がかかるだけでなく、血行が悪くなることでも腰に
悪影響を与えます。これは身体介護だけでなく、デスクワークで座っている時間が長い人にも
注意してほしいポイントです。
そのため、介助中にはこまめに姿勢を変えたり、同じ業務を集中して行ったりしないことが重要です。
業務スケジュールを調整して、介護記録などのデスクワークと身体介護業務をバランスよく
こなすことで、長い間同じ姿勢にならないようにしましょう。
三つ目の腰痛予防の方法は、被介護者の自立支援を意識した介護を実践することです。
被介護者本人ができる動作は介助しないのが、介護の基本です。
自分でできることまで先回りして手伝ってしまうと、そのうち本当に何もできなくなってしまう
おそれがあります。
見守りや声かけをしてもできないときや、時間がかかって被介護者の負担になる場合は、
介助が必要な部分を手伝います。
被介護者の能力を把握したうえで、介助の際には無理のない範囲で動いてもらうようにすると、
介護者の負担が軽減できるだけでなく被介護者の自立にもつながります。
四つ目の腰痛予防の方法は、筋トレやストレッチなどの運動習慣を身に付けることです。
運動をして、身体が柔軟になったり筋肉がついたりすれば、腰痛を予防できます。
スポーツをする習慣がない方でも、自宅でできるストレッチやエクササイズ、体操、
筋トレならば無理なく行えるでしょう。
自宅で簡単にできる筋トレや、腰痛予防のストレッチなどは、インターネットで検索すれば
動画も含めてたくさん見つかります。
適度な運動を行うと、姿勢の改善や血行促進といった効果も期待できるので、おすすめです。
腰痛予防の対策をしていたとしても、腰痛になってしまうことはあります。
ここでは、介護をしている人が腰痛を悪化させないための対策や、改善する方法を紹介します。
「腰痛持ちなので仕事が苦痛」と悩む方や、「将来腰痛になったらどうしたらいい?」
と気になる方は参考にしてください。
すでに腰に違和感や軽い痛みがある場合は、腰痛ベルトやコルセットの使用がおすすめです。
腰痛ベルトやコルセットが、腰周りの筋肉をサポートする働きをして、痛みが出にくい
姿勢になるため、腰への負担が軽減し痛みが和らぎます。
ただし、腰痛ベルトやコルセットでは腰痛の根本的な解消にはつながらないため、
痛みや違和感がある場合は、病院を受診することをおすすめします。
また、ラクだからという理由で1日中着用するのは、腰回りの筋力低下につながり腰痛が
悪化する可能性があるので控えてください。
ベッドから車椅子への移乗介助は、抱え上げや腰のひねり、前かがみ、中腰といった腰に
負担をかける姿勢が多くなるため、腰痛を発症しやすい業務です。
しかし、リフトのような福祉用具を活用することで、身体的な負担を減らせます。
これにより、介護職員の腰痛を改善でき、労働環境の改善も期待され、ケアの質の向上に
注力することができます。
ただし、リフトは導入にコストがかかるため、まだ十分に普及しているとはいえません。
また、設置スペースが確保できない、マンパワーの方が早い、といった理由もあります。
メリットとデメリットを踏まえて、介護リフトの導入を施設側に提案してみましょう。
我慢できないほどの腰の痛みがあったり、腰痛が長引いたりしている場合は、整形外科を
受診しましょう。また、職場の上司にも報告しておきましょう。痛みを我慢して働き続けると、
腰痛が悪化したり、事故につながったりするリスクがあります。
マッサージや整体に行くのもおすすめです。
それにより血流が改善するので、慢性的な腰痛に効果的です。負担の少ない体勢や、
自分の姿勢の癖を教えてもらうこともできます。また、気分転換やストレス解消にもつながります。
今回は、多くの介護職の方が悩んでいる腰痛ついて解説しました。
・主な原因は、「体格差」・「腰に負担がかかる姿勢」・「無理な姿勢」
・「介護環境の不備」・「ストレス」。
・予防方法は、「正しい姿勢」・「同じ姿勢を続けない」・「サポートは最小限」
・「筋トレ・ストレッチ」。
・改善方法は、「腰痛ベルト・コルセット」・「リフトを使った移乗介助」
・「整形外科・整体」。
この記事が、腰痛で悩んでいる方や腰痛に対する不安を抱えている方の参考になれば幸いです。