「養護老人ホーム」について、基本情報から費用・入居手続きまで詳しく紹介します。
「養護老人ホーム」といわれても、「特別養護老人ホームのこと?」・
「費用はどのくらい?」・「入居のための条件や手続きは?」という方も少なくないでしょう。
この記事では、養護老人ホームの基本情報(入居条件・提供されるサービスなど)や費用、
メリット・デメリット、入居までの流れについて解説します。
目次
養護老人ホームとは、 環境的・経済的な理由から自宅での生活が困難になった高齢者を
養護する施設です。
施設の目的は、高齢者の自立支援や社会復帰のための訓練・援助となっています。
そのため、長期の利用はできず、入居者が自立した生活が送れるようになったら退去します。
以下、入居条件などの基本的な特徴について解説します。
養護老人ホームに入居するためには、原則として以下の3つの条件をすべて満たすことが必要です。
養護老人ホームには、「支援員」と呼ばれる職員が配置されており、日常生活のサポートや
自立支援を行います。また、入居施設のため、夜間でも職員が常駐しています。
厚生労働省による設置基準は、以下の通りです。これらに加え、ケアマネジャーや
機能訓練指導員なども在籍している施設も多いです。
養護老人ホームでは、さまざまなサービスを受けられます。
例えば、食事の提供や健康面のチェック、自立・社会復帰に向けてのサポートなどです。
他にも、経済面での相談や機能訓練、レクリエーションなどが行われます。
ただし、 養護老人ホームは、介護サービスを提供する施設ではありません。
所属しているのは介護職員ではなく、「支援員」です。介護サービスを利用する必要があれば、
外部のサービス事業者と契約する必要があります。
「養護老人ホーム」と名称が似ており、間違えられやすいのが「特別養護老人ホーム(特養)」です。
特養は、要介護者が身体介護や生活支援を受ける施設のため、養護老人ホームと
施設の目的が全く異なります。
ここでは、養護老人ホームの入居にかかる費用について解説します。
高齢者施設によっては、数百万円の入居一時金が必要だったり、月額利用料が何十万円も
かかったりすることがあります。
しかし、養護老人ホームは、経済的に困窮している方を対象にしているため、費用は
負担にならないよう全体的に安く抑えられているのです。
養護老人ホームでは、入居の際に入居一時金や敷金などの初期費用はかかりません。
環境的・経済的に困窮している高齢者が自立して生活できるように支援をする施設であり、
さらに基本的に長期の利用をしないことから、入居一時金や敷金が不要です。
ちなみに、入居一時金は「一定期間の家賃の前払い」で、敷金は「家賃滞納や原状回復費用に
備える担保」です。
養護老人ホームは特に何かを準備をしなくても、入居が可能です。
金銭的な心配をせずに、食事などの生活支援を受けられる環境が整っています。
養護老人ホームの月額利用料は、前年度の収入から決められます。
前年度の収入から、租税、社会保険料、医療費などを控除した金額を「対象収入」といいます。
月額利用料は、この対象収入により決められ、後述するように収入に応じて39段階に
分けられているのです。
入居者本人の年収を元にするとは限らず、扶養義務者の年収を用いることもあります。
また、前年度の収入によっては、月額利用料が0円になることもあります。
さらに、生活保護を受けている高齢者では、月額利用料の減額や免除の措置が認められています。
前述のように、養護老人ホームの月額利用料は、前年度の「対象収入」に応じて39段階に
分けられています。
「老人福祉法第28条の規定による費用徴収規則」の別表第2「養護老人ホーム被措置者費用徴収基準」
の一部を抜粋して、具体的な月額利用料の例を示します。
・対象収入 27万円以下: 0円
・対象収入 40万円超 42万円以下: 10,800円
・対象収入 80万円超 84万円以下: 41,800円
・対象収入 120万円超 126万円以下: 65,100円
・対象収入 144万円超 150万円以下: 81,100円
・対象収入 150万円超: (150万円超過額×0.9÷12)+81,100円
ただし、規則によると、当分の間、月額利用料の「上限は14万円」です。
前年度の収入が多い方でも、過大な負担にならないので安心してください。
養護老人ホームに入居するにあたり、どのようなメリットやデメリットがあるのかを紹介します。
入居してから後悔しないためにも、入居前にメリットはもちろんデメリットも、
よく理解して納得しておくことが重要です。
主なメリットは、以下の通りです。
主なデメリットは、以下の通りです。
養護老人ホームへ入居する際の基本的な流れは、以下の通りです。
なお、虐待などの理由で緊急性が高い場合は、入所判定委員会の審査を必要としない
ケースもあります。
今回は、「養護老人ホーム」について解説しました。
・困窮した高齢者を一時的に養護する施設。
・入居条件は、「環境的・経済的に困窮し身体的に自立した65歳以上の人」。
・日常生活のサポートや自立支援のためのサービスは受けられるが、「特別養護老人ホーム」とは
異なり介護サービスは受けられない。
・入居一時金は不要で、月額利用料は前年の収入に応じて「0~14万円」。
・メリットは、「費用が安い」・「緊急時も対応可能」。
・デメリットは、「自治体により入居難易度が異なる」・「退去を迫られることも」
・「施設が少ない」・「長期利用は不可」。
・入居の流れは、「相談 → 申込み → 調査 → 審査 → 決定 → 入居」。
養護老人ホームは、施設が少ないうえに「措置控え」などの問題もあり、
必ずしも希望通りに入居できるとは限りません。
しかし、「最後の砦」として養護老人ホームという施設があることを覚えておいてください。