養護老人ホームの費用を解説!メリット・デメリットも詳しく紹介

2025.01.23

「養護老人ホーム」について、基本情報から費用・入居手続きまで詳しく紹介します。
「養護老人ホーム」といわれても、「特別養護老人ホームのこと?」・
「費用はどのくらい?」・「入居のための条件や手続きは?」という方も少なくないでしょう。

この記事では、養護老人ホームの基本情報(入居条件・提供されるサービスなど)や費用、
メリット・デメリット、入居までの流れについて解説します。

養護老人ホームとは

養護老人ホームとは、 環境的・経済的な理由から自宅での生活が困難になった高齢者を
養護する施設です。
施設の目的は、高齢者の自立支援や社会復帰のための訓練・援助となっています。
そのため、長期の利用はできず、入居者が自立した生活が送れるようになったら退去します。
以下、入居条件などの基本的な特徴について解説します。

 入居条件

養護老人ホームに入居するためには、原則として以下の3つの条件をすべて満たすことが必要です。

  1.  65歳以上
  2.  環境的・経済的な理由から居宅生活が困難と認められること
  3. 身体的に自立していること

    具体的なケースは、例えば以下の通りです。
    ・ひとり暮らしで身寄りのない方
    ・無収入、無年金で経済的に困窮している方
    ・家族などから虐待を受けている方
    ・家族による支援や介護が受けられない方
    ・他の法律に基づく施設に入居できない方
    ・ホームレスの方
    ・賃貸住宅から立ち退きを受けた方
    ・犯罪歴のある方

 人員体制

養護老人ホームには、「支援員」と呼ばれる職員が配置されており、日常生活のサポートや
自立支援を行います。また、入居施設のため、夜間でも職員が常駐しています。
厚生労働省による設置基準は、以下の通りです。これらに加え、ケアマネジャーや
機能訓練指導員なども在籍している施設も多いです。

  1. 施設長: 1人
  2.  医師: 入居者に対して必要な数
  3.  生活相談員: 入居者30人に対して1人
  4. 支援員: 入居者15人に対して1人
  5. 看護職員(看護師または准看護師): 入居者100人に対して1人
  6. 栄養士: 1人以上
  7.  調理員、事務員その他の職員: 適当数

 受けられるサービス

養護老人ホームでは、さまざまなサービスを受けられます。
例えば、食事の提供や健康面のチェック、自立・社会復帰に向けてのサポートなどです。
他にも、経済面での相談や機能訓練、レクリエーションなどが行われます。
ただし、 養護老人ホームは、介護サービスを提供する施設ではありません。

所属しているのは介護職員ではなく、「支援員」です。介護サービスを利用する必要があれば、
外部のサービス事業者と契約する必要があります。

 特別養護老人ホームとの違い

「養護老人ホーム」と名称が似ており、間違えられやすいのが「特別養護老人ホーム(特養)」です。
特養は、要介護者が身体介護や生活支援を受ける施設のため、養護老人ホームと
施設の目的が全く異なります。

  • 特養
    要介護3~5の認定を受けた高齢者が対象の公的施設です。
    介護職員や看護師が常駐しており、手厚い身体介護・生活支援サービスを受けることができ、
    長期の入居も可能です。看取りに対応した施設も増えています。
    ただし、入居希望者が多いため、待機期間が長い傾向にあります。
  • 養護老人ホーム
    経済的に困っている方を対象とし、食事の提供や健康管理などの自立支援をします。
    身体的に自立していることが入居条件なので、介護サービスは提供していません。
    また、社会復帰が目的で、長期の入居はできません。
    入居には市区町村長の決定が必要で、希望しても必ずしも入居できるとは限りません。

養護老人ホームの費用はどれくらい?

ここでは、養護老人ホームの入居にかかる費用について解説します。
高齢者施設によっては、数百万円の入居一時金が必要だったり、月額利用料が何十万円も
かかったりすることがあります。
しかし、養護老人ホームは、経済的に困窮している方を対象にしているため、費用は
負担にならないよう全体的に安く抑えられているのです。

 入居一時金や敷金は不要

養護老人ホームでは、入居の際に入居一時金や敷金などの初期費用はかかりません。
環境的・経済的に困窮している高齢者が自立して生活できるように支援をする施設であり、
さらに基本的に長期の利用をしないことから、入居一時金や敷金が不要です。

ちなみに、入居一時金は「一定期間の家賃の前払い」で、敷金は「家賃滞納や原状回復費用に
備える担保」です。
養護老人ホームは特に何かを準備をしなくても、入居が可能です。
金銭的な心配をせずに、食事などの生活支援を受けられる環境が整っています。

 月額利用料は前年度の収入により変動

養護老人ホームの月額利用料は、前年度の収入から決められます。
前年度の収入から、租税、社会保険料、医療費などを控除した金額を「対象収入」といいます。
月額利用料は、この対象収入により決められ、後述するように収入に応じて39段階
分けられているのです。
入居者本人の年収を元にするとは限らず、扶養義務者の年収を用いることもあります。
また、前年度の収入によっては、月額利用料が0円になることもあります。
さらに、生活保護を受けている高齢者では、月額利用料の減額や免除の措置が認められています。

 入所者費用徴収基準月額表で39段階に分けられている

前述のように、養護老人ホームの月額利用料は、前年度の「対象収入」に応じて39段階に
分けられています。
「老人福祉法第28条の規定による費用徴収規則」の別表第2「養護老人ホーム被措置者費用徴収基準」
の一部を抜粋して、具体的な月額利用料の例を示します。
・対象収入 27万円以下:  0円
・対象収入 40万円超 42万円以下:  10,800円
・対象収入 80万円超 84万円以下:  41,800円
・対象収入 120万円超 126万円以下:  65,100円
・対象収入 144万円超 150万円以下:  81,100円
・対象収入 150万円超:  (150万円超過額×0.9÷12)+81,100円

ただし、規則によると、当分の間、月額利用料の「上限は14万円」です。
前年度の収入が多い方でも、過大な負担にならないので安心してください。

養護老人ホームのメリット・デメリットを紹介

養護老人ホームに入居するにあたり、どのようなメリットやデメリットがあるのかを紹介します。
入居してから後悔しないためにも、入居前にメリットはもちろんデメリットも、
よく理解して納得しておくことが重要です。

 メリット

主なメリットは、以下の通りです。

  1.  費用を抑えられる
    養護老人ホームへ入居する場合、入居一時金などの初期費用は不要です。
    月額利用料は、前年度の収入により決まりますが、他の高齢者施設と比べて安い場合が多いです。さらに、特別な事情がある方の場合は、月額利用料の減額や免除が認められる可能性もあります。
  2.  緊急時にも対応可能
    養護老人ホームでは、夜間も必ず職員が1名以上配置されています。
    そのため、緊急時でも迅速な対応や処置を受けることが可能です。

 デメリット

主なデメリットは、以下の通りです。

  1. 自治体により入居難易度が異なる
    養護老人ホームへの入居の可否は市区町村によって決定され、入居基準は自治体により
    差があります。近年は、自治体が予算を抑えるため、入居者を意図的に施設に回さない
    「措置控え」が問題視されています。
  2.  入居後に退去を迫られることも
    無事に入居を認められても、退去を命じられる可能性があります。
    また、入居後に要介護度が重くなった場合も、退去しなければならない可能性があります。
  3. 施設・定員が少ない
    養護老人ホームは、全国的に施設が少ないうえに今後も増える見込みがありません。
    高齢化が進んでいることもあり、定員も十分とはいえません。
  4. 長期利用は不可
    養護老人ホームは、高齢者の社会復帰を目的に一時的に養護する施設です。
    永続的な利用を前提としておらず、長期入居はできません。

養護老人ホームへ入居する際の基本的流れ

養護老人ホームへ入居する際の基本的な流れは、以下の通りです。
なお、虐待などの理由で緊急性が高い場合は、入所判定委員会の審査を必要としない
ケースもあります。

  1. 入居相談
    市区町村役場の担当窓口や、居宅介護支援事業所、地域包括支援センター、
    民生委員、養護老人ホームなどの相談機関に相談。入居基準を満たしているかどうかを確認する。
  2. 申込み
    住民票のある市区町村役場の窓口へ、本人または家族が申し込む。
  3. 調査
    担当者が自宅を訪問し、入居対象者の心身の状況、家庭環境や養護の状況、
    経済状況などを調査する。
  4. 入所判定委員会
    調査結果や健康診断の結果に基づき、入所が必要かどうかを判定。
  5.  決定
    入所判定委員会の報告を受けた市区町村長が、入所の可否を決定する。
  6. 入居     
    市区町村から養護老人ホームへ連絡が入り、日程調整や身元引受人の
    確認完了後、入居することができる。

まとめ

今回は、「養護老人ホーム」について解説しました。
・困窮した高齢者を一時的に養護する施設。
・入居条件は、「環境的・経済的に困窮し身体的に自立した65歳以上の人」。
・日常生活のサポートや自立支援のためのサービスは受けられるが、「特別養護老人ホーム」とは
異なり介護サービスは受けられない。
・入居一時金は不要で、月額利用料は前年の収入に応じて「0~14万円」。
・メリットは、「費用が安い」・「緊急時も対応可能」。
・デメリットは、「自治体により入居難易度が異なる」・「退去を迫られることも」
・「施設が少ない」・「長期利用は不可」。
・入居の流れは、「相談 → 申込み → 調査 → 審査 → 決定 → 入居」。

養護老人ホームは、施設が少ないうえに「措置控え」などの問題もあり、
必ずしも希望通りに入居できるとは限りません。
しかし、「最後の砦」として養護老人ホームという施設があることを覚えておいてください。

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