介護保険料の計算方法は?納付方法や滞納した時の措置も紹介

2025.01.23

介護保険制度の運用に必要な費用をまかなうために、40歳以上の国民が納めている保険料の
ことを介護保険料といいます。
介護保険を納めている方の中には「介護保険料を納めているのは知っているけれど、
何に使われているのかまではよくわからない」
「介護保険料の金額がどうやって計算されているのかわからない」という方も少なくない
のではありませんか。

この記事では、介護保険料とは何か・その計算方法と納付方法や滞納した時の措置に
ついても紹介していきます。

そもそも介護保険とは

介護保険とは、高齢者の介護を社会全体で支え合う仕組みのことをいいます。
この費用をまかなうためにあるのが介護保険料であり、40歳以上の国民はこの
介護保険料を納めています。

介護保険料について詳しく知るために、まずは介護保険について解説していきます。

 介護保険の概要

介護保険は、国内の高齢者の人口が増えていくにつれ、高まってきた介護のニーズに
社会全体で支え合うことができるように2000年の4月1日から施工された制度です。

要介護認定を受けた対象者が、介護サービスを利用した際に給付を受けられる仕組みで、
利用者の負担が基本的には1割の負担で済むようになっています。
※利用者に一定以上の所得がある場合は負担割合は2割か3割となる場合があります。
なお、残りの9割をまかなう財源は公費50%、保険料50%となっています。

第1号被保険者と第2号被保険者の受給条件の違い

介護保険料の被保険者には「第1号被保険者」と「第2号被保険者」に区分されます。
この2つの区分は年令によって分けられるほか、第1号被保険者と第2号被保険者が介護サービスを受けられる条件にも違いがあり、
保険料の算出方法や納付の仕方にも違いがあります。

 第1号被保険者

介護保険における、第1号被保険者の条件と介護サービスを受ける条件(受給条件)などは
以下の通りです。

  • 対象者:65歳以上の者
  • 受給条件:要介護状態または要支援状態の認定を受けていること。
    ※要介護状態とは、寝たきりや認知症などの理由で介護が必要な状態。
    要介護1〜5に区分され、数字が大きいほど寝たきりに近くなり介護の負担が大きくなる。
    ※要支援状態とは、日常生活に支援が必要な状態。要支援1と要支援2に区分され、
    要介護状態に進んでしまわないよう介護サービスを利用しながら、
    身体機能や認知力を維持することが大切。
  • 保険料負担:市町村が徴収する(原則として、年金から天引き)

 第2号被保険者

介護保険における、第2号被保険者の条件と介護サービスを受ける条件(受給条件)などは
以下の通りです。

  • 対象者:40歳〜64歳までの医療保険に加入している者
  • 受給条件:要介護、要支援状態か、末期がん・間接リウマチなどの加齢に起因する
    「特定疾病」による場合に限定。
  • 保険料負担:医療保険者が医療保険の保険料と一括徴収

※第2号被保険者の受給条件にある特定疾病は以下の通り。
 ・末期がん(医師が医学的知見に基づき、回復の見込みがない状態に至ったと判断したもの)
 ・筋萎縮性側索硬化症 ・後縦靭帯骨化症 ・骨折を伴う骨粗鬆症 ・多系統萎縮症
 ・初老期における認知症 ・脊髄小脳変性性 ・脊柱管狭窄症 ・早老症 
 ・糖尿病性神経障害、糖尿病性腎症および糖尿病網膜症
 ・脳血管疾患(外傷性を除く) ・進行性核上性麻痺 ・間接リウマチ
 ・慢性閉塞肺疾患 ・両側の膝関節または股関節に著しい変形を伴う変形性関節症

第1号被保険者と第2号被保険者の介護保険料の納付方法の違い

介護保険における、第1号被保険者と第2号被保険者の介護保険料の納付方法には違いがあります。
先にも簡単に記述をしましたが、改めて第1号被保険者と第2号被保険者の納付方法の
違いについて詳しく見ていきましょう。

 第1号被保険者

第1号被保険者の対象者は、65歳以上の者で、納付方法は市町村が徴収する
(原則として年金からの天引き)となっています。
この徴収方法にも「特別徴収」と「普通徴収」の2種類がありそれぞれの徴収方法となる条件は
以下の通りです。

  • 特別徴収:年金の受給が「年18万円以上の者」は「2ヶ月ごとに年金から天引き」されます。
  • 普通徴収:年金の受給が「年18万円未満の者、または年金受給を繰り下げた方」は
    「口座振替もしくは役所やコンビニなどでの支払い」となっています。

 第2号被保険者

第2号被保険者の対象者は、満40歳〜64歳未満の方で徴収方法は会社員か自営業かで
以下のように少し変わります。

  • 会社員の方:会社で加入している健康保険とあわせて徴収される。
  • 自営業の方:国民健康保険とあわせて国民健康保険税として世帯主が徴収される。

自営業をされている方は、国民健康保険の支配を滞納してしまうと介護保険料の滞納に
直結してしまう点に注意が必要です。
介護保険料がなぜ40歳になると徴収されるかというと、一般的に40歳以降の年齢では老化が
原因で病気を発症して介護が必要になる可能性が高くなるためです。

介護保険を支払わなくて良いケースに当てはまる方は以下の通りです。
・社会保険の被扶養者(専業主婦など)
・生活保護受給者
・適用除外施設入所者(障害者支援施設や国立ハンセン病療養所などに入所している方)
・海外居住者、短期滞在者(在留資格3ヶ月未満)
・産前産後休業や育児休業の取得者も介護保険料が全額免除となります。

介護保険料の計算方法を紹介

介護保険料の計算方法は、第1号被保険者と第2号被保険者で違ってきます。
さらに第2号被保険者のなかでも、国民健康保険に加入しているか、
それ以外の医療保険に加入しているかによって、保険料の計算方法が違ってきます。
それぞれのパターンについて介護保険料の計算方法を解説していきますので、自分のパターンに
当てはめて計算してみてください。

 第1号被保険者の場合

第1号被保険者の介護保険料は市区町村によって異なります。
1ヶ月分の保険料は、3年に一度、「条例で定める基準額に対して所得段階に応じた割合を
かけて算出」します。
一般的に所得段階は9段階ですが、東京都北区などでは16段階とされていたりと市区町村に
よって所得段階は異なります。
そのため、居住する市区町村ではどのように設定されているか確認が必要です。

市区町村の窓口に問い合わせし確認するか、ホームページで公開されている市区町村も
あるようなので自分の市区町村はどのようになっているか確認しましょう。

 第2号被保険者で国民年金保険に加入している場合

国民健康保険に加入している第2号被保険者の場合は「所得割・均等割・平等割・資産割」
のいずれかを市区町村ごとに組み合わせて介護保険料を計算します。
さらに、介護保険料率も各市区町村によって異なります。
所得割:世帯ごとに被保険者の前年の所得に応じて算出し課せられる
均等割:被保険者の1人について算出し課せられる
平等割:一世帯ごとに算出し課せられる
資産割:所有する土地や家屋の固定資産税に応じて算出し課せられる

※計算方法は、各市区町村で異なるため、具体的な計算方法についてはお住まいの
市区町村に確認しましょう。

 第2号被保険者で国民健康保険以外の医療保険に加入している場合

サラリーマンや公務員のように国民健康保険以外の医療保険(共済組合や協会けんぽなど)
に加入している第2被保険者の場合、介護保険料は「労使折半」という方法になり、
事業主が保険料の半分を負担します。
そのため、保険料は毎月の給与や賞与の金額によって変動するため注意が必要です。

  • 給与にかかる介護保険料
     「介護保険料=標準報酬月額✕介護保険料率」※標準報酬月額は、4月〜6月の給与の
    平均額を計算し、健康保険法第40条による「標準報酬月額表」と照らし合わせて求める
  • 賞与にかかる介護保険料
    「介護保険料=標準賞与額✕介護保険料率」※標準賞与額は、税引前の賞与総額から
    千円未満を切り捨てて求める。

介護保険料を滞納するとどうなるのか

介護保険料を納める歳に注意しておかなければならないのが、介護保険料を滞納すると
どうなるのかという点です。
予期せぬ出費や収入が減少してしてしまい、もしも介護保険料を滞納してしまった場合
「何かペナルティがあるのでは」「滞納してしまったらどう対応すればいいの」と
不安を感じる方もおられるでしょう。

ここからは、介護保険料を滞納してしまった場合について解説していきます。

 第1号被保険者の場合

介護保険料を滞納してしまった場合は以下のペナルティが課せられる場合があります。

  • 滞納金が発生する:納付期限を過ぎてから20日以内に督促状が発行され、
    督促手数料と延滞金の請求が命じられる。
  • 給付制限をかけられる:滞納期間が1年を超えると、滞納期間に合わせて
    保険給付が一時差止めになったり、自己負担割合が増えたりなどのペナルティが課せられます。
  • 財産を差し押さえられる:最悪の場合は、滞納保険料徴収のために財産を
    差し押さえられることも考えられます。

もしも、介護保険料を滞納してしまった場合は、市区町村に確認しできるだけ
早く支払うようにしましょう。
介護保険料を継続して支払えない状況になった場合も市区町村にはやめに相談し、
減免措置が適用されないか、生活保護を申請できないかなどの対応をとりましょう。

 第2号被保険者の場合

介護保険料を滞納してしまった場合、第1号被保険者と同様に、納付期限20日以内に
督促状が届きます。
1年から1年6ヶ月滞納が続くと、自己負担1割から3割で介護サービスが利用できず、
全額支払わなければならなくなります。
この状態の場合は、全額支払った後、返還申請をすれば返還され、支払った9割が戻ってきます。

1年6ヶ月から2年までおよぶと介護保険サービス費用の全額支払い、2年以上だと
自己負担額が1割から3割になります。
保険料は納付期限から2年を経過すると、保険料を支払うことができなくなり
保険料の未納が確定され、お住いの市区町村で記録されます。
高齢になった時、介護費用の全額を支払い続けることとなってしまいこれは、
非常に難しい状況となってしまいます。
そのため、今は必要ないからと介護保険料の納付を拒否しないようにしましょう。

まとめ

介護保険料は、介護保険サービスを利用する方を社会全体で支え合うための制度で、
国民が40歳以上になると納めなければなりません。
介護保険の被保険者の区分は「第1号被保険者」と「第2号被保険者」に区分されます。

第1号被保険者の介護保険料は年金から天引きされ、第2号被保険者は加入している
医療保険料と一緒に徴収されます。
介護保険料の計算方法は、年金の額、会社員か自営業かによっても異なってきますので
確認しておく必要があります。

介護保険料の納付を滞納すると、最悪の場合、財産を差し押さえたり介護が必要に
なった時にサービス費用を全額自分で支払わなければならなくなります。
今は介護保険サービスを利用しないからと保険料を滞納することは自分の首を締めることに
なりかねないため、介護保険料はきちんと納めるようにしましょう。
もしも、生活が苦しく介護保険料を納められない場合は市区町村に相談し、
減免措置や生活保護の制度が利用できないか確認しましょう。

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