血圧を正常に保つことは、健康寿命を延ばすためにも重要です。
一般的に、血圧は年齢が上がるほど高くなる傾向があり、特に40代以降では注意が必要です。
高血圧はさまざまな病気の原因になるため、血圧は身体の健康を知るバロメーターといわれています。
この記事では、血圧の正常値や高血圧の基準値、高血圧の原因、血圧を正常に保つための
ポイントなどを解説します。
健康診断などで血圧が気になり出した方におすすめの内容です。
目次
血圧とは、血液が血管の内壁を押す力のことです。
心臓が収縮して血液を強い力で押し流すときの血圧を「最高血圧(収縮期血圧)」、
心臓が拡張しているときの血圧を「最低血圧(拡張期血圧)」といいます。
以下、日本高血圧学会の「高血圧治療ガイドライン2019」を参考にして、
血圧の正常値や高血圧と低血圧の基準値について解説します。
血圧には、医療機関で測定したときの「診察室血圧」と、自宅で測定したときの「家庭血圧」
があり、それぞれで正常値や高血圧の基準値が設定されています。
医療機関では、緊張から「白衣高血圧」になりやすいため、診察室血圧の基準は家庭血圧より
少し高めです。
「正常血圧」に分類されるのは、血圧が以下の範囲の場合です。
「高血圧」に分類されるのは、血圧が以下の範囲の場合です。
「低血圧」には、高血圧のような明確な基準はありません。
一般的に、「最高血圧 100mmHg未満」の場合を低血圧とすることが多いです。
低血圧は、そのリスクや改善・予防策について、メディアなどで取り上げられることは少ないです。
しかし、低血圧にも重大な病気が隠れていることがあり、症状によっては日常生活に支障を
きたすこともあります。
症状は、めまい、立ちくらみ、頭痛、失神、動悸、食欲不振、倦怠感などさまざまです。
原因不明の「本態性低血圧」、病気などが原因の「二次性低血圧」、急に立ち上がったときなどに
めまいなどの症状が起こる「起立性低血圧」などに分類されます。
高血圧には、原因不明の「本態性高血圧」と、原因を特定できる「二次性高血圧」があります。
日本人では高血圧の約90%が本態性高血圧で、運動不足、肥満、ストレス、喫煙といった生活習慣や
遺伝的な要因などが関係しているとされています。
二次性高血圧は、ホルモン異常などの病気や薬の副作用などが原因です。
運動不足の人は高血圧になりやすいとされています。
適度に有酸素運動をすると、血管が拡張して血行が良くなり血圧が下がります。
また、血管の柔軟性も保たれます。しかし、日頃から運動不足の人は血行不良を起こしやすく、
血圧が高くなりやすいです。
さらに、適度な運動は、体内の余分な塩分を汗として排泄する働きを強めますが、運動不足になると
身体に余分な塩分をためこみやすくなります。これにより血圧上昇の原因となります。
肥満の人は、正常体重の人よりも高血圧になりやすいといわれています。
特に腹部の脂肪が多い内臓脂肪型肥満の人は、高血圧になりやすいため要注意です。
脂肪細胞からは、血圧を上げたり動脈硬化を促進させたりする物質が分泌されます。また、
インスリンの働きが悪くなり過剰分泌されることで、交感神経を刺激して血管を収縮させます。
基本的に血液の量は体重に比例するので、肥満により血液量が増えて心臓にも負担をかけます。
肥満の予防や改善には、バランスの取れた食事と適度な運動が効果的です。
ストレスも高血圧の原因の一つです。
ストレスにより交感神経が刺激されることで血管が収縮し、心拍数と血圧を一時的に上昇させる
ことが知られています。慢性的なストレスは、心拍数と血圧の持続的な上昇を引き起こします。
また、ストレスが多い環境下では、食生活をはじめとする生活習慣が乱れ、高血圧につながる
他のリスク要因が増える傾向があります。
したがって、ストレス管理は血圧コントロールの観点からも非常に重要であるといえます。
喫煙は、高血圧の原因としてよく知られています。
喫煙により以下のような影響があるからです。
遺伝的な体質も高血圧のなりやすさに関わっています。
がん遺伝子のように高血圧に関連する遺伝子があるというわけではなく、高血圧になりやすい
体質が遺伝すると考えられています。
両親とも高血圧の場合に子どもが高血圧になる確率は約50%、親のどちらかが高血圧の場合は
約30%といわれています。
一緒に暮らす家族は、食生活や運動習慣などの生活習慣も似ることが多いため、高血圧の人の
家族には高血圧の人が多くなる傾向があるのです。
二次性高血圧症にはさまざまな病気が関わっています。以下、その一部を示します。
このセクションでは、血圧を正常に維持するための6つのポイントを紹介します。
高血圧を長年放置すると、脳卒中や心臓病などの重大な病気の発症リスクが高まり、
取り返しのつかない事態になりかねません。
高血圧の改善や予防のためには、ご自身の生活習慣全般を見直すことが重要です。
食生活の改善では、「塩分を取りすぎないようにする」ことが最も重要とされていますが、
それ以外にも注意すべきポイントがあります。
日本高血圧学会の「高血圧治療ガイドライン2019」では、以下のことが推奨されています。
高血圧の最大の原因が、塩分の過剰摂取とされています。
塩分を多く摂取すると、血中の塩分濃度を下げるために血液量が増え、血圧が高くなります。日本高血圧学会では、「食塩の摂取量は1日6g未満」を推奨しています。塩分控えめで美味しい料理のレシピは、インターネットで検索するとたくさん見つかるので、参考にしてください。
また、ナトリウム排泄効果があるカリウム・マグネシウム・カルシウムを積極的に摂取しましょう。カリウム・マグネシウムは野菜や果物、海藻、豆類などに多く含まれ、カルシウムは乳製品や小魚などに多く含まれます。
肥満の人は、そうでない人と比べると、高血圧のリスクが高いとされています。
その原因は、以下の通りです。
適度な運動を行うことで、高血圧のリスクが下がるとされています。
また、運動により高血圧のリスクを高める肥満の解消にもつながります。
運動をすると、血圧は一時的に上がります。しかし、筋肉に多くの酸素と栄養を運ぶために血管が
広がるなどして、血圧は下がっていきます。
運動としては、酸素をたくさん取り入れながら行う有酸素運動が適しており、1日30分程度を
毎日行うことが理想です。
有酸素運動としては、ウォーキングやジョギング、水泳、サイクリング、エアロビクスなどが
あります。すでに血圧が高めの方は、医師に相談するなどして無理のない範囲で行ってください。
禁煙・節酒により高血圧のリスクが下がるとされています。
喫煙をすると、ニコチンにより血管が収縮するため血圧が上がります。
また、アルコールには血管を拡張させる作用があり、少量であれば一時的に血圧は下がります。
しかし、過剰な摂取により血圧は高くなります。飲酒量の目安は、男性がアルコール換算で
20~30ml/日(日本酒ならば1合、ビールならば500ml程度)、女性が10~20ml/日以下です。
喫煙も過度の飲酒も、がんなどさまざまな病気のリスクを高めることがわかっています。
健康のためには、禁煙と節酒が重要です。
高血圧のリスクを下げるためには、ストレスをためず十分な睡眠と休息をとることも重要です。
ストレスは、交感神経を刺激し血圧の上昇を引き起こします。さらに、ストレスは食生活の乱れや不眠、飲酒、喫煙などにもつながりやすく、高血圧のリスクがさらに高まります。
また、睡眠不足により自律神経の働きが乱れると、高血圧を発症しやすくなります。
ストレスや睡眠不足は高血圧だけでなく、さまざまな病気のリスクを高めます。
好きな趣味に没頭したり、ゆっくり入浴したりといった自分なりのリラックス方法を
見つけることが重要です。
今回は、高血圧の原因や予防・改善方法を中心に解説しました。