人生100年時代といわれるようになってきた現代ですが、それでも逃れられないのが「死」です。
その過程において、近年注目されているのが、「看取り」です。
看取りとは、病院や介護施設などで、最期の瞬間までその人らしい生活を送れるように支援すること
であり、その最後の瞬間が迫っている状態を看取り期といいます。
この記事では、その看取り期にどんなケアが行われているのかなどを、わかりやすく紹介して
いきたいと思います。
目次
「看取り」という言葉自体は、昔からあったのですが、医療技術の進歩により延命が可能になった
一方で、人生の終末期におけるQOL(生活の質)も重要視されているのです。
ここでは、「看取り」と似ている「ターミナルケア」と「緩和ケア」との違いについて詳しく
説明していきたいと思います。
看取りとターミナルケアは、どちらも終末期におけるケアという点では共通していますが、
その目的やケア範囲に違いがあります。
ターミナルケアとは、医学的なケアを中心としたケアです。
看取りはより広い範囲のケアのことを言い、ターミナルケアも看取りの中の一つといえるのです。
具体的な違いは次の三つです。
看取りと緩和ケアは、どちらも患者さんの苦痛を和らげQOLを向上させることを目的としたケアです。患者さんの状態やケア内容、目的などに違いがあります。
具体的な違いは、次の三つです。
人生の最終段階を看取るということは、患者さんだけでなくその家族にとっても不安や戸惑いを
感じる時期です。そのため、看取り期に入る前に、どのような段階を経て最期を迎えるのかなど、
ある程度の知識を持っていれば、心の準備をする上では重要です。
そこで、ここからは一般的な看取りまでの流れを、5つの段階に分けて、詳しく説明していきたいと
思います。
適応期とは、病気やケガ、あるいは加齢によって、これまでの生活が困難になり、その状況を
受け入れ、新たな生活に適応する時期のことです。
この段階では、患者さんやその家族のほとんどが、不安や戸惑いを感じていることが多いと思います。適応期は、患者さんとそのご家族にとって、大きな変化を受け入れるための重要な時期です。
そのため、医療や介護の従事者と連携し、情報共有をしながら、前向きに今後の生活を
考えていくことが重要です。
安定期とは、病気や症状が安定し、比較的穏やかに過ごせる時期のことです。
適応期を経て、患者さんやその家族も病気や症状などを受け入れ、新たな生活に慣れてきたころ
ともいえるでしょう。この時期では、身体的・精神的な苦痛が少なく、穏やかに過ごせます。
そのため、患者さんにおいても、その人らしい生活を送り、残された時間を大切に過ごすことを
大切にしなければなりません。家族だけでなく、医療や介護従事者が、協力して、サポート
していくことが重要です。
安定期を過ぎると、病気や症状が再び悪化し、不安定な状態になることがあります。
これが不安定期です。
身体的な苦痛が増すことが多く、それに伴って精神的に不安になったりと、つらい時期といえる
でしょう。ご家族にとっても、状態の変化に戸惑い、不安や心配を感じてしまう時期です。
この時期、医療や介護従事者は、患者さんの状態を注意深く観察し、適切なケアを提供することで、
患者さんとその家族を支えていくことが重要となります。
終末期とは、医学的に回復の見込みがなく、死期が近いと判断された時期のことをいいます。
一般的に、余命が数週間から数か月程度と予想される状態です。
この時期になると、身体機能が著しく低下し、生活のほとんどに介護が必要な状態です。
意識レベルも低下し、昏睡状態になることもあります。終末期は、患者さんやその家族にとって、
最期の時間を迎えるための準備期間ともいえるかもしれません。
家族にとっては、患者さんとのお別れの時期が近付いていることを実感し、悲しみを感じる
時期でもあります。そのため、終末期に医療や介護従事者は、患者さんの状態を観察し、
適切なケアとともに家族の気持ちに寄り添い、サポートしていくことが重要となります。
看取り期とは、終末期を経て、いよいよ最期の時が近づき、穏やかに最期を迎えるためのケアを
行う時期です。呼吸や脈拍など、バイタルや意識レベルが低下し、死期が迫っている状態です。
この段階では、延命治療は行わない場合も多く、患者さんの苦痛を和らげ、安らかな最期を
迎えられるように、心身のケアに重点を置く必要があります。
医療や介護従事者は、患者さんの状態を観察し、適切なケアを行うことで、患者さんと
その家族を支え、安らかな最期を迎えられるように支援することが重要です。
看取り期は、患者さんにとって人生の最終段階であり、残された時間をいかに安らかに過ごせるか
が重要となります。そのため、この段階で行われるケアは、医療と介護が連携し、患者さんの
意思を尊重しながら、支えていくことが重要です。
ここからは、その具体的なケア内容について説明していきたいと思います。
看取り期を迎えた方の身体は、徐々に確実に衰弱していき、その影響もあって様々な変化が現れます。痛みや呼吸困難、食欲不振など、多くの身体的な苦痛を抱えてしまうことがほとんどです。
そのため、この時期の身体的ケアは、これらの苦痛をできるだけ和らげ、少しでも快適に
サポートすることが重要です。医療や介助従事者は、患者さんの身体的変化を注意深く観察し、
常に状態を把握しながら、適切なケアを提供していくことが非常に大切です。
看取り期における精神的ケアは、患者さんの不安や心の痛みを和らげ、穏やかに最後の時を
迎えられるようにするために重要なケアです。
患者さんには、身体的な苦痛に加えて死の恐怖や不安、さらに孤独など、様々な精神的な苦痛を
抱えています。
そのため、患者さんの心に寄り添い、安心感を与えるようなケアを行うことが重要です。
医療や介護従事者は、患者さんの表情や言葉にしっかりと耳を傾け、心の状態を把握しながら、
適切なケアを提供していく必要があります。
看取り期におけるグリーフケアとは、患者さんだけでなく、その家族の精神的苦痛を和らげ、悲しみを乗り超えていけるようにサポートするケアのことです。
大切な家族とのお別れは、深い悲しみや喪失感をもたらします。
さらに、患者さんの看病による疲労やストレス、死への恐怖、死別後の生活への不安など
様々な精神的な負担も抱えています。
そのため、グリーフケアでは、ご家族の気持ちに寄り添い、必要なサポートを提供し、悲しみを
乗り越えて、前向きに生きていけるように支援していくことが重要なのです。
看取り看護を行う場所として、病院や介護施設をイメージする人も多いかもしれません。
しかし、住み慣れた自宅で最期を迎えたいという方も多いのではないでしょうか。
実際、病院や介護施設以外にも自宅という選択肢もあります。
それぞれメリット、デメリットがあり、患者さんやその家族の環境や状況により、最適な場所は
変わります。
そこで、ここからは、病院、介護施設、自宅の3つについて、説明していきたいと思いますので、
参考にしてください。
病院は、当然ながら医療設備が充実しており、医療従事者による医療ケアを24時間受けられる
という点で、最も安心できる看取り場所といえるでしょう。
特に終末期になると、急に容体が悪化することも少なくありません。
そんな時でも、病院であれば、迅速に適切な対応ができるので安心です。痛みに関しての痛みや
呼吸困難への医療ケアも充実しているので、患者さんの苦痛も和らげることができます。
その一方で、費用面において負担が大きいこと、面会時間にも制限がある場合があるので、
注意が必要です。
介護施設は、病院に比べて家庭的な雰囲気の中、ゆっくりと過ごせます。
4人部屋などの多床室以外にも個室があったり、食堂や談話室など、他の入居者さんと交流できる
スペースが設けられています。
そのため、孤独を感じにくい環境です。介護職員が24時間体制で、食事、入浴、排泄などの
日常生活のサポートはもちろん、レクリエーションやリハビリテーションなどの心身の状態に
合わせたケアを提供しています。
一方で、医療機関と連携体制は取ってはいるものの、医療体制は病院に比べると手薄です。
そのため、看取り期には特に、介護従事者と急変時の対応について、話し合っておく必要があります。
病院や介護施設よりも、今まで暮らしてきた自宅で最期を迎えたいという方が多いのでは
ないでしょうか。いつもの部屋、いつもの家具、そして何より愛する家族に囲まれている空間は、
患者さんにとって、どこよりも安心できる場所といえるでしょう。
病院や介護施設のように、時間に縛られることなく、「好きな時間に起きて、好きなものを食べて、
好きなことをする」、このようなこのような自由な生活は、患者さんのQOLに大きく貢献します。
当然家族にとっても、大切な人と最期の時を最大限に確保することが可能です。
その一方で、やはり医療や介護従事者のような専門職員が、ずっといるわけではないので、
家族による介護の負担や、急変時に医療につなぐまでの対応も行わなければなりません。
この記事では、看取りについて詳しく説明してきました。
看取りは、単に息を引き取るまでを看守るだけでなく、患者さんの残された貴重な時間を、
その人らしく生きてもらうために支援することです。
そのためには、その家族だけでなく医療や介護従事者と情報共有し連携しながら、
ケアを行っていく必要があります。
患者さんやその家族にとって、より最善な選択肢の参考になれば幸いです。