要介護認定の特定疾病に該当する指定難病ALSとは?必要なサポートも解説

2025.02.07

ALS(筋萎縮性側索硬化症)は、筋肉を動かす運動神経細胞が障害される病気です。
この記事では、要介護認定の特定疾病に該当する指定難病ALSについて解説していきます。

ALSは、特定疾病なので介護保険の適用となり、医療や介護、福祉などのさまざまなサポートが
必要になります。ALSについて知りたいという方は、ぜひ参考にしてください。

ALS(筋萎縮性側索硬化症)とは

ALS(筋萎縮性側索硬化症)とは、筋肉を動かす運動神経細胞が障害される病気で、
筋肉が徐々に衰弱して力がなくなり、自分の意思で体を動かすことが困難になります。

主に中年以降に発症するといわれ、家族内で発症する家族性ALSと、遺伝しない孤発性ALSがあります。進行性の病気なので症状は軽くならず、発症からの余命は3~5年と言われています。

 ALSの症状

ALS(筋萎縮性側索硬化症)は、脳と脊髄にある運動神経細胞が障害される病気です。

症状には、手足の筋力の低下や筋肉の萎縮、筋肉がピクピクする筋の線維束性収縮、
舌やのどの筋肉が弱くなる嚥下障害、呂律が回りにくくなる構音障害、大声を出しにくい、
長く話せない、動作時の息切れなど呼吸障害があります。

症状が進行するスピードは患者によって異なります。
短期間で急速に進行する人もいれば、十数年にわたってゆっくり進行する人もいます。

 介護保険の特定疾病に該当

ALSは、介護保険の特定疾病に該当します。
進行性の疾患なので、完治させたり、症状を軽減させたりすることはできません。

特定疾病は、公的保険・民間保険において、特殊な扱いを受ける病気で、介護保険の適用となります。
介護サービスを利用できるのは、原則「要介護・要支援認定を受けた65歳以上」の方です。
第2号被保険者の場合は、介護が必要な心身状態になっただけでは適用されません。

しかし、特定疾病が原因で要介護状態となった場合は、第2号被保険者の方も介護保険が
適用されます。

介護保険の申請に必要なもの

介護保険の申請に必要なものは、介護保険の保険証と所定の申請書、主治医意見書、
個人番号(マイナンバー)など本人が確認できるものです。
ただし、第2号被保険者(40歳以上65歳未満)の方は、加入している医療保険の保険証も必要です。

 65歳以上の場合(第1号被保険者)

65歳以上の場合(第1号被保険者) は 、介護保険の申請ができます。
受給要件は、年齢や医療保険加入の有無、病状などによって定められています。
第1号被保険者と第2号被保険者に分類され、いずれの場合も介護保険サービスの利用には、
介護認定調査を受けて、要介護・要支援いずれかの認定が必要となります。

65歳以上の場合、本人が申請手続きをする必要はありません。
65歳になった月の中旬に介護保険被保険者証が送られ、翌月に介護保険料についての通知が届きます。

 40歳以上65歳未満の場合(第2号被保険者)

40歳以上65歳未満の場合(第2号被保険者)は、老化に起因する特定の病気によって要介護状態に
なった場合に限り、介護サービスを受けることができます。
また、40歳未満は要介護認定を受けることが出来ません。

第2号被保険者が要介護認定を受ける場合は、老化に起因する特定疾病(16疾患)によって
要介護状態になることが条件です。
16種類の特定疾病とは、がん(自宅等で療養中のがん末期)、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、
後縦靭帯骨化症、骨折を伴う骨粗しょう症などです。

ALSの方が必要になってくるサポート

ALS(筋萎縮性側索硬化症)の患者は、医療や介護、福祉などのさまざまなサポートが
必要になってきます。

難病医療費助成制度や高額療養費の還付制度を利用する医療のサポート、介護保険・重度訪問介護・
訪問看護サービスを利用する介護のサポートなどが利用できます。
ALSは指定難病に指定されているので、早期に治療を開始することが特に重要です。

 日常生活援助

ALS(筋萎縮性側索硬化症)の日常生活援助には、訪問介護や訪問看護、通所リハビリテーション、
デイケアサービスなどがあります。

日常生活援助では、呼吸管理や呼吸リハビリテーション、関節可動域訓練、食事の援助、
排泄の援助、清潔の援助、医療機器の点検・整備などのケアが行われます。

医療費の全額または一部について助成が受けられ、障害福祉サービスや介護保険制度を
利用することもできます。
援助を検討する場合は、地域の地域包括支援センターや居宅介護支援事業所などに相談してください。

 胃ろうの管理

ALS患者の胃ろうの管理とは、経皮内視鏡的胃瘻造設術(PEG)によって栄養や水分を投与し、
栄養状態を改善させて、生命予後を延ばすことです。

ALSは、運動神経が障害されて筋力が低下し、摂食嚥下障害があらわれます。
胃ろうは、体重を維持し、生命予後を延長するために重要な治療手段です。

胃ろうの管理には、ろう孔の周囲を清潔に保ち、栄養剤を投与します。
ろう孔の周囲を微温湯をしみ込ませたガーゼで拭き、胃ろうカテーテルの周囲は微温湯を
しみ込ませた綿棒などで拭きます。入浴やシャワーでろう孔を清潔に保ちましょう。

 痰の吸引

ALSの患者は、嚥下障害や呼吸障害によって痰が溜まりやすい状態になります。
痰の吸引が必要になり、家族やホームヘルパーが実施することもあります。
その場合は、患者や家族の同意を得て、適切な指導のもとに行います。

痰の吸引を行う際は、吸引が長時間続くと低酸素血症を引き起こす可能性があります。
また、咽頭部を刺激すると嘔吐を引き起こし、気道を詰まらせる可能性もあります。
吸引圧が高すぎると口腔内や鼻腔内の粘膜を傷つけて出血したり、清潔保持が不十分だと
感染症に罹患する可能性もあるので注意しましょう。

 呼吸管理

ALSの呼吸障害の症状には、大声を出しにくい、長く話せない、動作時に息切れする、ぐっすり
眠れない、早朝の頭痛や、日中ウトウトするなどがあります

呼吸管理は、感染症による呼吸困難の際には、感染症の収束とともに酸素投与が行われますが、
発症から約2~4年ほどで自力での呼吸が難しくなるので、人工呼吸器の装着が必要となります。
吸気筋トレーニングや肺活量を増やすトレーニングなどの呼吸理学療法は、機能維持療法として
期待されています。

 メンタルケア

ALSの患者は、疾患の進行に伴い、うつや不安などの精神状態を経験することがあります。
呼吸や栄養障害、痛み、手足の筋肉のつっぱり、不眠、うつ・不安、よだれが出る、
笑うべきでない場面で笑ったり、楽しいことに対して泣いてしまう、認知症などの症状です。

メンタルケアとしては、趣味や生きがいを見つける、今の自分の状態を受け入れる、疲労感には
薬が処方されることもありますが、何よりも休養を十分にとることが大切です。
ALSは指定難病なので、公的に治療費の補助を受けることができます。

 リハビリ

ALSのリハビリテーションは、患者が自立した生活を送れるようにします。
機能障害を評価しながら、運動療法や呼吸理学療法、福祉用具の導入、介助指導などを行います。

注意する点は、過度の運動は避け、残存している筋力や呼吸機能を考慮して各個人に合わせた
プログラムを決定する、運動負荷量は、疲労度だけでなく血圧、脈拍、呼吸状態などを
総合的に考慮するなどです。

根本的に治す治療法がないため、リハビリテーションは身体に起こる痛みや筋力低下を
防ぐための治療として重要です。

まとめ

この記事では、要介護認定の特定疾病に該当する指定難病ALSについて解説しました。
ALSは、進行性の病気なので症状は軽くならず、発症からの余命は3~5年と言われています。

指定難病に指定されているので、早期に治療を開始することが特に重要です。
医療や介護、福祉などのさまざまなサポートが必要になってきますので、ぜひ参考にしてください。

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