「居宅介護」とは「障害福祉サービス」の一つです。
近年、障害福祉サービスの利用者数は増加の一途をたどっていますが、サービスの種類が多く、
それぞれのサービス内容や申請手続きなどを理解している方は多くないかもしれません。
この記事では、居宅介護の対象者や訪問介護との違い、サービス内容、利用の流れ、
料金についてわかりやすく解説します。
障害福祉サービスの利用を検討している方に、読んでいただきたい内容です。
目次
「居宅介護」とは、「障害者総合支援法」に基づく「障害福祉サービス」の一つです。
これとよく似ている「訪問介護」は、「介護保険法」に基づく「居宅サービス」の一つです。
この両者は、サービスの内容もよく似ているので、しばしば混同されます。
ここでは、居宅介護について、対象者と訪問介護との違いを解説します。
「居宅介護の対象者」は、以下のとおりです。
「訪問介護」と「居宅介護」は、いずれも訪問介護員が利用者の居宅に訪問して、介護サービスを
提供します。しかし、サービスの根拠となる法律上の制度が異なるため、行政上は明確に
区分されます。
ここでは、居宅介護で受けられる主なサービスの内容を紹介します。
居宅介護では、他にも「生活などに関する相談・助言」や「その他生活全般にわたる援助」も
受けられます。それらは訪問介護では受けられないサービスです。
「身体介護」は、利用者の身体に直接触れて、日常生活に必要な動作をサポートするサービスです。
具体的には、以下のような行為が含まれます。
「家事援助」とは、身体介護以外の日常生活をサポートするサービスです。
例えば、掃除や洗濯、調理、生活必需品の買い物などが挙げられます。
利用者が単身の場合だけでなく、家族が障害や疾病、高齢、介護疲れ、就労などのため家事を
行うことが困難な場合などにも受けられます。
なお、2021年から、家事援助に「育児支援」が加わりました。
利用者に子どもがいる場合において、以下の3つの条件をすべて満たせば受けられます。
育児支援の具体例は以下のとおりです。
「通院等介助」とは、通院などの際の付き添い介助のことです。
「身体介護を伴う場合」は「身体介護」に、「身体介護を伴わない場合」は「家事援助」に
含まれます。
「通院等」の移動先は、「病院への通院」だけでなく「官公署に障害福祉サービス利用の
相談のために訪れる場合」などです。
また、「通院等乗降介助」というサービスもあり、通院等のためにヘルパーが運転する車両などへの
乗車・降車などの介助を行います。
なお、「通院等介助(身体介護を伴う場合)」のサービスを受けるには、次のいずれにも該当する
必要があります。
障害がある方にとって、日常生活や社会生活を送るうえで必要な支援を受けることは、
自分らしい生活を送るためにも重要なことです。
ここでは、障害福祉サービスのひとつである、居宅介護を利用する場合の流れを簡単に解説します。
まず、「障害支援区分認定」を受けることが必要です。区分は「6段階」あり、区分によって
利用できるサービスなどに差が生じます。
申請から認定までの期間は自治体によって異なります。細かい調査や二段階の判定が必要なので、
数ヶ月程度かかることもあることを考慮しておきましょう。
「サービス等利用計画案」とは、障害のある方が自立した日常生活を送るための支援を効果的に
行うため、適切な福祉サービスが提供されるように作成するものです。
指定特定相談支援事業者は、支給決定された居宅介護を提供する関係者などが集まる、
「サービス担当者会議」を開催します。
ここで専門的な知見から意見を聴取し、「相談支援専門員」が「サービス等利用計画」を作成します。
このサービス等利用計画をもとに、指定障害福祉サービス事業者が「居宅介護計画」を作成すると、
居宅介護が利用できるようになるのです。
サービス利用開始後、定期的に利用者や家族にモニタリングを実施して、居宅介護計画の見直しを行います。
居宅介護の料金は、訪問介護の料金と同じように、内容や時間により変わります。
障害福祉サービスでは、利用者の自己負担割合は、「最大でも1割」です。
厚生労働省の「障害福祉サービス費等の報酬算定構造」をもとに、簡単な例で料金を
計算してみましょう。
(例) 30分未満の身体介護を月に10回利用した場合
256単位 × 10回 = 2560単位
1単位が10円とすると、2560単位 × 10円 = 25,600円
1割負担なので、1ヶ月の料金は、「2,560円」
18歳以上の場合は利用者とその配偶者の所得、18歳未満の場合は児童を監護する保護者の
属する世帯(住民基本台帳上の世帯)の所得に応じた、自己負担の上限月額があります。
ただし、上限月額よりもサービスに係る費用の1割の金額の方が低い場合には、その金額を支払います。
今回は、「居宅介護」について解説しました。
・「障害者総合支援法」に基づく「障害福祉サービス」のひとつ。
・対象者は、18歳以上で障害支援区分1以上(18歳未満の場合はこれに相当する心身の状態)。
・「訪問介護」は「介護保険法」の「介護サービス」で、根拠となる法律上の制度が異なる。
・サービス内容は、「身体介護」・「家事援助」・「通院等介助」など。
・利用の流れは、「障害支援区分認定」、「サービス等利用計画案作成」、「サービス担当者会議」、「サービス等利用計画作成」、「居宅介護計画作成」。
・料金は、内容や時間により変わり、自己負担は最大1割。
この記事が、みなさまの障害福祉サービス選びの参考になれば幸いです。