居宅介護とは?サービス内容や訪問介護との違いもわかりやすく解説!

2025.02.10

「居宅介護」とは「障害福祉サービス」の一つです。
近年、障害福祉サービスの利用者数は増加の一途をたどっていますが、サービスの種類が多く、
それぞれのサービス内容や申請手続きなどを理解している方は多くないかもしれません。

この記事では、居宅介護の対象者や訪問介護との違い、サービス内容、利用の流れ、
料金についてわかりやすく解説します。
障害福祉サービスの利用を検討している方に、読んでいただきたい内容です。

簡単に居宅介護とは

「居宅介護」とは、「障害者総合支援法」に基づく「障害福祉サービス」の一つです。
これとよく似ている「訪問介護」は、「介護保険法」に基づく「居宅サービス」の一つです。
この両者は、サービスの内容もよく似ているので、しばしば混同されます。

ここでは、居宅介護について、対象者と訪問介護との違いを解説します。

 居宅介護の対象者

「居宅介護の対象者」は、以下のとおりです。

  1. 18歳以上で身体障害、精神障害、知的障害を持ち、「障害支援区分1以上」に認定された方
  2. 18歳未満でこれに相当する障害を持つ児童

    しかし、40~64歳の方(第2号被保険者)は、介護保険が優先され、「訪問介護」の
    サービスを受けることになります。
    ただし、交通事故などが原因で障害者となった場合は、介護保険の対象外です。
    居宅介護が利用できます。

    なお、65歳以上の方は、介護保険の対象となり、原則として居宅介護を受けることはできません。

 訪問介護との違い

「訪問介護」と「居宅介護」は、いずれも訪問介護員が利用者の居宅に訪問して、介護サービスを
提供します。しかし、サービスの根拠となる法律上の制度が異なるため、行政上は明確に
区分されます。

  • 「訪問介護」は、介護保険法に基づき、高齢者が住み慣れた自宅で必要な介護を受けられる
    サービスです。主な目的は、加齢に伴う病気や機能低下を抱える利用者が、自宅で自立した
    日常生活を送れるよう支援することです。「身体介護」と「生活支援」のサービスを提供します。
  • 「居宅介護」は、障害者総合支援法に基づき、障害者の在宅生活を支えるための障害福祉
    サービスです。主な目的は、障害の有無にかかわらず、すべての人が基本的人権を享有し、
    日常生活や社会生活を営むことを支援することです。
    「身体介護」や「家事援助」などのサービスを受けられます。

居宅介護のサービス内容

ここでは、居宅介護で受けられる主なサービスの内容を紹介します。
居宅介護では、他にも「生活などに関する相談・助言」や「その他生活全般にわたる援助」も
受けられます。それらは訪問介護では受けられないサービスです。

 身体介護

「身体介護」は、利用者の身体に直接触れて、日常生活に必要な動作をサポートするサービスです。
具体的には、以下のような行為が含まれます。

  • 食事介助: 身体の状態に合わせた食事の準備や口元に食べ物を運ぶ手助けなど
  • 入浴介助: 全身浴や部分浴で、ケガや事故を防ぐために体を支えるなど
  • 清拭: 入浴ができない場合に体を拭いて清潔にする
  • 排泄介助: トイレ誘導やおむつ交換など
  • 歩行介助: 見守り歩行、手引き歩行、寄り添い歩行、階段昇降介助、杖・歩行器を
    使った介助など
  • 更衣介助: 着替えの手助け
  • 体位変換: 床ずれ予防目的の姿勢交換
  • 移乗介助: ベッドから車いすに移る際などに体を支える
  • 移動介助: 「寝返る」「起き上がる」「座る」「立ち上がる」「歩く」といった移動動作や、
    別の場所に移る際の介助

 家事援助

「家事援助」とは、身体介護以外の日常生活をサポートするサービスです。
例えば、掃除や洗濯、調理、生活必需品の買い物などが挙げられます。
利用者が単身の場合だけでなく、家族が障害や疾病、高齢、介護疲れ、就労などのため家事を
行うことが困難な場合などにも受けられます。

なお、2021年から、家事援助に「育児支援」が加わりました。
利用者に子どもがいる場合において、以下の3つの条件をすべて満たせば受けられます。

  1. 利用者が障害により家事・付き添いが困難
  2.  子ども一人では対応できない
  3. 他の家族からの支援を受けられない

育児支援の具体例は以下のとおりです。

  • 沐浴・授乳
  •  言語発達を促進する視点からの支援
  • 保育所への連絡など
  • 利用者へのサービスと一体的に行う子どもの分の掃除や洗濯、調理
  • 子どもが通院する際の付き添い、保育所への送迎
  •  子どもが親の代わりに行う家事・育児など

 通院等介助

「通院等介助」とは、通院などの際の付き添い介助のことです。
「身体介護を伴う場合」は「身体介護」に、「身体介護を伴わない場合」は「家事援助」に
含まれます。

「通院等」の移動先は、「病院への通院」だけでなく「官公署に障害福祉サービス利用の
相談のために訪れる場合」などです。
また、「通院等乗降介助」というサービスもあり、通院等のためにヘルパーが運転する車両などへの
乗車・降車などの介助を行います。
なお、「通院等介助(身体介護を伴う場合)」のサービスを受けるには、次のいずれにも該当する
必要があります。

  1. 障害支援区分2以上
  2.  障害支援区分の認定調査項目のうち、次の状態のいずれか一つ以上に認定
    ・「歩行」: 「全面的な支援が必要」
    ・「移乗」: 「見守り等の支援が必要」、「部分的な支援が必要」または
    「全面的な支援が必要」
    ・「移動」: 「見守り等の支援が必要」、「部分的な支援が必要」または
    「全面的な支援が必要」
    ・「排尿」: 「部分的な支援が必要」または「全面的な支援が必要」
    ・「排便」: 「部分的な支援が必要」または「全面的な支援が必要」

居宅介護の利用の流れ

障害がある方にとって、日常生活や社会生活を送るうえで必要な支援を受けることは、
自分らしい生活を送るためにも重要なことです。
ここでは、障害福祉サービスのひとつである、居宅介護を利用する場合の流れを簡単に解説します。

 障害支援区分の認定を受ける

まず、「障害支援区分認定」を受けることが必要です。区分は「6段階」あり、区分によって
利用できるサービスなどに差が生じます。
申請から認定までの期間は自治体によって異なります。細かい調査や二段階の判定が必要なので、
数ヶ月程度かかることもあることを考慮しておきましょう。

  1. 自治体の窓口への申請
  2. 認定調査
    認定調査員が自宅に訪問し、80項目の調査などを行い、どの程度の支援が必要なのかを調べる。
  3.  一次判定
    認定調査の結果と主治医の意見書をもとに、コンピュータにより判定が行われる。
  4.  二次判定
    自治体の審査会によって、個別の事情などを考慮した総合的な判断を行う。
  5. 自治体による認定
    二次判定の結果を踏まえ、自治体による区分の認定が行われる。

 サービス等利用計画案作成・提出

「サービス等利用計画案」とは、障害のある方が自立した日常生活を送るための支援を効果的に
行うため、適切な福祉サービスが提供されるように作成するものです。

  1.  自治体の窓口へ申請
  2. 指定特定相談支援事業者との契約
    申請者は「指定特定相談支援事業者」と利用契約を行う。
  3. アセスメント実施とサービス等利用計画案作成
    指定特定相談支援事業者が申請者の居宅を訪問し、サービスを受けるうえで解決すべき
    課題を把握する(アセスメント)。
    事業者はアセスメントの結果からサービス等利用計画案を作成する。
  4. サービス等利用計画案提出・支給決定
    自治体は、サービス等利用計画案や自治体が調査した結果をもとに支給決定を行う。

 サービス担当者会議

指定特定相談支援事業者は、支給決定された居宅介護を提供する関係者などが集まる、
「サービス担当者会議」を開催します。
ここで専門的な知見から意見を聴取し、「相談支援専門員」が「サービス等利用計画」を作成します。

このサービス等利用計画をもとに、指定障害福祉サービス事業者が「居宅介護計画」を作成すると、
居宅介護が利用できるようになるのです。
サービス利用開始後、定期的に利用者や家族にモニタリングを実施して、居宅介護計画の見直しを行います。

居宅介護の料金

居宅介護の料金は、訪問介護の料金と同じように、内容や時間により変わります。
障害福祉サービスでは、利用者の自己負担割合は、「最大でも1割」です。

厚生労働省の「障害福祉サービス費等の報酬算定構造」をもとに、簡単な例で料金を
計算してみましょう。
(例) 30分未満の身体介護を月に10回利用した場合
     256単位 × 10回 = 2560単位
     1単位が10円とすると、2560単位 × 10円 = 25,600円
     1割負担なので、1ヶ月の料金は、「2,560円」

18歳以上の場合は利用者とその配偶者の所得、18歳未満の場合は児童を監護する保護者の
属する世帯(住民基本台帳上の世帯)の所得に応じた、自己負担の上限月額があります。
ただし、上限月額よりもサービスに係る費用の1割の金額の方が低い場合には、その金額を支払います。

まとめ

今回は、「居宅介護」について解説しました。
・「障害者総合支援法」に基づく「障害福祉サービス」のひとつ。
・対象者は、18歳以上で障害支援区分1以上(18歳未満の場合はこれに相当する心身の状態)。
・「訪問介護」は「介護保険法」の「介護サービス」で、根拠となる法律上の制度が異なる。
・サービス内容は、「身体介護」・「家事援助」・「通院等介助」など。
・利用の流れは、「障害支援区分認定」、「サービス等利用計画案作成」、「サービス担当者会議」、「サービス等利用計画作成」、「居宅介護計画作成」。
・料金は、内容や時間により変わり、自己負担は最大1割。

この記事が、みなさまの障害福祉サービス選びの参考になれば幸いです。

お役立ちコラム一覧へ戻る