「全身清拭(せいしき)」には、いくつかの留意点があります。
全身清拭の主な目的は、皮膚を清潔に保ち細菌感染を予防することです。
また、期待できる効果として、血行促進や爽快感が得られるなど多くのものがあります。
この記事では、全身清拭の目的・効果や手順、7つの留意点を解説します。
全身清拭で、どのような点に留意すべきかを知りたい方におすすめの内容です。
目次
「清拭」とは、入浴やシャワーが困難な要介護者や患者の身体をタオルで拭くことで、
皮脂や汗、角質を取り除き、身体の清潔を保つためのケアの一つです。
清拭には、全身に対して行う「全身清拭」と、部位ごとに行う「部分清拭」があります。
ここでは、全身清拭の目的と効果について解説します。
全身清拭の主な目的は、「身体の汚れを落とし皮膚を清潔に保つ」ことですが、
それ以外にも目的があります。
例えば、次のとおりです。
全身清拭により期待できる効果は、以下のとおりです。
全身清拭を行う場合は、事前準備をしっかりと行い、どの部位から順番に拭くかを頭に入れて
おきましょう。
全身清拭を行う際には、いくつかの留意点があります。
対象者の肌を露出させて直接触れる必要があるため、正しい方法を理解しておかなければ、
対象者の健康を害したり自尊心を傷つけたりすることにつながります。
ここでは、7つの留意点を紹介します。
全身清拭は、対象者の心身状態によっては体力を著しく消耗し、寒さなどから血圧が
大きく変動する可能性もあります。
そのため、清拭の前には必ず対象者本人に体調を確認してください。
また、体温や血圧、脈拍などのバイタルサインのチェックも必ず行うことが必要です。
この時点で、体調やバイタルサインの変化が少しでも見られる場合は、上司や医師・看護師に
相談しましょう。
対象者の体調がよくないときは、無理をせず、日を改めたり部分清拭に変更したりするなどの
判断も大切です。清拭中に具合が悪くなる場合もあるため、対象者の様子に気を配りましょう。
入浴介助や清拭をする際には、急激な温度変化により血圧が激しく上下して
「ヒートショック」が起こりやすいとされています。
そのため、対象者の身体を冷やさないことが何より重要です。
全身清拭時の室温は、「23~25℃程度」が適温とされていますが、適温には個人差があります。
身体を拭きながら、対象者に寒くないか確認しましょう。
濡れたタオルで拭いた後は、必ず乾いたタオルで水分をしっかり拭き取ってください。
皮膚表面に水分が残っていると、蒸発する際に熱が奪われるなどして体温が低下するからです。
また、清拭には入浴のような保温効果はありません。
なるべく手早く行い、清拭していない部分はバスタオルで覆うなどして保温します。
拭き終わったら、すぐに服を着せてください。
全身清拭に時間がかかる場合は、部分清拭に切り替えることで対処が可能です。その場合、
1日ごとに清拭する部位を変え、2~3日に分けて行うとよいでしょう。
全身清拭は、手早く行うことが重要なので、事前に必要な物品をすべて揃えておきましょう。
清拭に必要な物品は、例えば以下のとおりです。バスタオルや清拭用タオルは、
多めに用意しておくと心強いです。
全身清拭では、手早さとともに、対象者の安全やプライバシーへの配慮なども必要です。
そのため、どの部位から行うかの手順や、部位ごとの拭き方・留意点などを頭に入れておくことが
重要です。
拭く順番は、前述のとおり、「上半身 → 下半身」、「末端 → 中心」が基本です。
拭く際には、血流を意識することで、血行改善効果が得られやすくなります。
具体的に拭く部位の順番は、「顔 → 上肢 → 胸部・腹部 → 下肢 → 背部・臀部 → 陰部・肛門」です。
ただし、対象者の状況によっては、順番を一部入れ替えるといった対応が必要になる場合もあります。
全身清拭は身体の露出を伴うことから、対象者は羞恥心を感じる場合があります。
また、陰部など部位によっては、自尊心を傷つけてしまうおそれもあります。
そのため、プライバシーには十分配慮し、カーテンやドア、窓は必ず閉めましょう。
そして、清拭に必要な部位だけを露出し、拭いていない部位はバスタオルを掛けるなど
配慮してください。
また、対象者の緊張を解くために、楽しい会話を心掛けて、コミュニケーションを行うことも
重要です。
全身清拭では、肌を強くこすりすぎないことにも注意してください。
強くこすると、必要な皮脂まで落としてしまい、肌が乾燥しやすくなったり、痛みを感じたり
することがあります。
また、高齢者や皮膚が弱い方の場合は、軽くこするだけで傷つけてしまう可能性もあります。
皮膚の状態や好みの強さを確認しながら、その人に合った強さで拭きましょう。
身体を拭きながら、皮膚トラブルがないか確認することも重要です。
特に「床ずれ」は、痛みを伴うだけでなく感染症を引き起こすリスクもあるため、早期発見と
適切な処置が欠かせません。
皮膚に異常が見つかった場合は医師に相談し、悪化の予防や治療につなげることが大切です。
全身清拭は、基本的に食事の前後1時間を避けて実施しましょう。
その理由は、以下のとおりです。
今回は、全身清拭の留意点を中心に解説しました。
・全身清拭とは、入浴が難しい対象者の全身をタオルで拭くこと。
・目的は、身体の汚れを落とし皮膚を清潔に保つこと。
・効果は、「血行促進・床ずれ予防」・「皮膚トラブル早期発見」・「爽快感」など。
・基本は「上半身 → 下半身」・「末端 → 中心」で、具体的な流れは
「顔 → 上肢 → 胸・腹 → 下肢 → 背・尻 → 陰部」。
・留意点は、「事前に体調チェック」・「身体を冷やさない」・「必要な物は揃えておく」・「手順を確認」・「プライバシーに配慮」・「力加減に注意」・「食前食後は避ける」。
全身清拭の目的や効果、手順、留意点などを理解し、介護対象の方が受けてよかったと
思えるようなケアを心掛けましょう。