介護の現場で大切な「接遇マナー5原則」を詳しく解説!

2025.02.10

「接遇」とは、相手に対し「おもてなしの心」を持って接することです。
介護の現場では、利用者の尊厳を守ったり、利用者との間に信頼関係を築いたりするために
「接遇マナー」が重視されます。

この記事では、介護の現場で接遇マナーが大切な理由や「接遇マナー5原則」、
介護の接遇で意識すべきポイントについて解説します。
介護業界で働くすべての人に、読んでいただきたい内容です。

そもそも接遇とは

「接遇」とは、人に接する際の「おもてなし」の心や行動を指す言葉です。
「遇」という漢字には「もてなす」という意味が含まれます。

ホテルや百貨店などの接客業で、お客様により良いサービスを提供するために重視されている
スキルです。円滑なコミュニケーションや信頼関係を築くために不可欠な要素となっています。

介護の現場にもこの言葉が定着しつつあり、利用者により質の高いサービスを提供するために、
職員に接遇マナーを身に付けることが求められています。

介護の現場で接遇マナーが大切な理由

介護の現場で接遇マナーが大切な理由は、以下のとおりです。

  1. 利用者の尊厳を守るため
    利用者の多くは、スタッフよりも年長です。人生の先輩への敬意を持って接し、
    失礼がない対応を心掛ける必要があります。そのためにも接遇スキルは重要です。
  2.  信頼関係を築き安全に介護を行うため
    接遇マナーを意識して利用者と接することで、信頼関係を築きやすくなり、
    ケアをスムーズに行えるようになります。

    身体介護では、スタッフと利用者が密着する場面が多いです。
    しかし、信頼関係がないと、利用者から抵抗されて事故やケガにつながる可能性があります。
    安全に介護をするためにも、利用者と信頼関係を築くことが重要です。

介護の現場で大切な「接遇マナー5原則」とは

接遇マナーの基本とされるのが、「挨拶・声掛け」・「身だしなみ」・「表情」
・「言葉遣い」・「態度」の5つ
です。
ここでは、介護の現場で大切なその「接遇マナー5原則」について、1つずつ詳しく解説していきます。

 1.挨拶や声掛け

介護の現場では、「挨拶・声掛け」はコミュニケーションの基本です。
大切なポイントは次の3つです。

  1.  自分から挨拶をする
  2. 立ち止まって相手の目を見る
  3. 明るくはっきりした声で伝える

    すれ違いながら、手元で作業をしながらの挨拶では、印象が良くありません。
    一度足を止め、明るい声で挨拶することを心掛けましょう。
    利用者が車椅子やベッド上にいるときは、上から見下ろすような姿勢にならないよう、
    視線の高さを合わせる意識も大切です。
    ケアを行う際も、いきなり介助動作に入らず、声掛けからスタートすると利用者に
    安心感を与えることができます。

 2.身だしなみ

「身だしなみ」は、見た目の問題だけではなく、事故防止の観点からも重要です。
身だしなみで最も大切なのは「清潔感」ですが、介護の仕事では「安全性」にも気を配る
必要があります。

服は機能性を重視し、靴はスニーカーなどの動きやすいものを選びます。
また、服のほつれ・破れは事故につながることもあるため、毎日着用前にチェックしてください。
髪が肩にかかる長さの場合は束ね、頭皮や髪を清潔に保ちます。

アクセサリーは着用しないのが一般的です。利用者の皮膚を傷つけないように爪も毎日チェックし、
爪切りややすりで整えます。
また、ニオイにも要注意です。服や靴、手などは常に清潔を保ちましょう。

 3.表情

「表情」も、介護の現場では特に意識すべきです。
「忙しくて余裕がない」、「新人で緊張している」というときこそ、笑顔が重要です。

スタッフが穏やかな表情で接すると、利用者も安心でき、結果的にケアがスムーズにいくことも
少なくありません。利用者の話を聞くときは、相手の目を見て明るくにこやかに対応することが
大切です。
まずは口角を上げ、笑顔を意識しましょう。マスクをしている場合は、表情が見えづらく不安な
気持ちを与えてしまうことがあります。目元の表情も意識してください。

 4.言葉遣い

利用者や家族と信頼関係を築くには、「言葉遣い」も重要です。
「敬語を使う」のは基本ですが、以下も大切なポイントになります。

  1. 相手に伝わりやすい言葉を選ぶ(専門用語・略語・流行語などに注意)
  2.  ネガティブな表現を避ける・クッション言葉を入れる
  3. あだ名などで呼ばない
    敬語については、正しい使い方ができることが理想です。
    しかし、意識しすぎると、不自然な言い回しになったり、言葉が出てこなくなったりする
    ことがあります。
    あまり細かいルールに縛られる必要はなく、相手に敬意をもって接し、
    「あの人に対応してもらってよかった」と思ってもらえることが大切です。

 5.態度

「態度」とは「立ち居振る舞い」のことです。姿勢や所作などに気をつけましょう。
だらしなく歩く、腕を組んで立つ、大きな音を立てて物を置くなどの行為は、相手を不愉快に
させる可能性があります。

スタッフ同士の会話も利用者はよく見ているため、乱暴な言葉遣いや横柄な態度になっていないか
注意してください。
姿勢を伸ばして立つ、話を聴くときは体を相手に向けるなど、利用者が心地よく感じる
立ち居振る舞いを心掛けましょう。物を渡すときは両手で持つなど、細かい部分まで気が
配れるとより丁寧です。

また、相手の話をしっかり聴き、理解しようとする「傾聴」の姿勢も大切です。
利用者の言葉に共感する、オウム返しをするなどの対応を意識してみましょう。

介護の接遇で意識しておきたいポイント3選

「接遇マナーの5原則」について紹介しました。
それを踏まえたうえで、介護の現場で接遇マナーを実践する際に、特に意識しておきたいポイントを
3つ解説します。普段の業務で意識できているか、確認してみましょう。

 1.傾聴力

「傾聴」とは、相手に対して共感や理解を示すコミュニケーション技法です。
相手の話を深く聴いて理解を示すことで、円滑なコミュニケーションにつなげられます。
自分の話を親身になって聴いてくれた相手には、受け入れてもらえたと感じ、信頼を置けるように
なります。

多忙な介護スタッフには、一人ひとりに時間をかけていられない、という気持ちもあるかも
しれません。しかし、不安なことや辛いことなど、話を聴いてもらいたいと思っている利用者は
多いはずです。
利用者から話しかけられたら、いったん仕事の手を止めて話に耳を傾けましょう。
話を聴いて利用者の気持ちを汲み取り、理解者になろうとする姿勢が大切です。

 2.話す際の目線の高さ

利用者と話をする際は、目線の位置や高さに気をつけましょう。
利用者は、車椅子に乗っていたりベッドで寝ていたりする場合も多く、話すときは見下ろす形に
なってしまいがちです。人に見下ろされることはあまり気分がいいものではなく、場合によっては
恐怖感や屈辱感を与えてしまう可能性があります。

話をするときは、しゃがむなどして、利用者と目線の高さを合わせることを心掛けてください。
また、話をするときは、利用者の目を見ることを意識しましょう。

 3.利用者や家族への思いやりの気持ち

接遇は、相手への「思いやり」が何より大切です。
利用者や家族を思いやる気持ちがないと、自分の主張やルールを押し付けてしまうことがあります。
相手の気持ちを考えない自分本位の介護は、接遇マナーに反します。
常に、利用者と家族に思いやりを持って接する姿勢を心がけましょう。

思いやりを忘れなければ、自然に「挨拶」ができるようになり、「言葉遣い」や「身だしなみ」も
整い、「表情」や「態度」も親しみやすいものになっていくのです。

まとめ

今回は、介護の現場での「接遇マナー」を解説しました。

・接遇とは、おもてなしの心を持って相手に接すること。
・介護で接遇マナーが大切な理由は、「利用者の尊厳を守るため」
・「信頼関係を築き安全に介護を行うため」。
・接遇マナー5原則は、「挨拶」・「身だしなみ」・「表情」・「言葉遣い」・「態度」。
・介護で意識するポイントは、「傾聴」・「目線の高さ」・「思いやりの気持ち」。

質の高いサービスを提供できるよう、接遇マナーを意識して実践していきましょう。

お役立ちコラム一覧へ戻る