60代では、男女ともに高血圧の方が増えるため注意が必要です。
年齢を重ねると、血管が老化して動脈硬化が引き起こされます。
そのため、血圧が高くなりやすく、統計データでも年代が上がるほど血圧平均値は高くなっています。
この記事では、高血圧の基準値、60代の血圧平均値、高血圧のリスク、血圧を正常に
保つポイントなどを解説します。
血圧の数値の見方や、高血圧のリスク・改善法を知りたい方におすすめの内容です。
目次
血圧とは、血液が血管の内壁を押す力のことです。
心臓が収縮して血液を強い力で押し流すときの血圧を「最高血圧(収縮期血圧)」、
心臓が拡張しているときの血圧を「最低血圧(拡張期血圧)」といいます。
以下、日本高血圧学会の「高血圧治療ガイドライン2019」を参考にして、
血圧の正常値や高血圧と低血圧の基準値について解説します。
血圧には、医療機関で測定したときの「診察室血圧」と、自宅で測定したときの「家庭血圧」があり、それぞれで正常値や高血圧の基準値が設定されています。
医療機関では、緊張から「白衣高血圧」になりやすいため、診察室血圧の基準は家庭血圧より
少し高めです。
「正常血圧」に分類されるのは、血圧が以下の範囲の場合です。
高血圧の基準に当てはまらなくても、正常血圧の範囲を超えている場合は、
将来的に高血圧になる可能性が高いです。
また、正常血圧の人と比べて、脳卒中や心臓病などの発症リスクが高いので、
後述する生活習慣の見直しをおすすめします。
ここでは、60代の血圧平均値と高血圧の割合を示します。
厚生労働省の「令和元年国民健康・栄養調査報告」を参考にしています。
血圧が正常値から外れ、「高血圧」や「低血圧」に該当する人には、どのようなリスクが
あるのでしょうか。
一般的に、高血圧の方がより危険性が高いとされています。
しかし、低血圧の場合にも、全身への血液供給不足から酸素や栄養分が行きわたりにくくなり、
さまざまな症状が現れることがあります。
高血圧の状態が続くと、血管は次第に弾力を失って硬く厚くなっていき、「動脈硬化」が進行します。
この動脈硬化は全身の血管に起こり、さまざまな合併症や病気のリスクを高めます。
ちなみに、高血圧と動脈硬化は、互いに悪化させ合う関係性です。
動脈硬化は、狭心症や心筋梗塞、脳出血、脳梗塞、大動脈瘤、大動脈解離、
下肢閉塞性動脈硬化症などの重大な病気を引き起こすことがあります。
自覚症状がないまま進行することが多いため、「サイレントキラー」とも呼ばれます。
定期的に健康診断を受けたり自宅でも血圧を測定したりして、さらに後述するように
生活習慣を見直すことで、高血圧を予防することが重要です。
低血圧のリスクはあまり知られていませんが、症状によっては日常生活に支障をきたす
こともあります。
症状は、めまい、立ちくらみ、頭痛、失神、動悸、食欲不振、倦怠感などさまざまです。
ホルモン分泌異常などの病気が原因の場合は、その治療により改善が期待されます。
病気が原因ではないタイプで、生活の質を著しく低下させる症状がある場合は、
生活習慣の改善や薬による治療が必要です。
生活習慣の改善としては、例えば以下のものがあります。
このセクションでは、血圧を正常に維持するために、60代の方が特に注意するべき5つの
ポイントを紹介します。
高血圧を長年放置すると、重大な病気の発症リスクが高まり、取り返しのつかない事態に
なりかねません。高血圧の改善や予防のためには、自身の生活習慣全般を見直すことが重要です。
適度な運動を行うことで、高血圧のリスクが下がるとされています。
また、運動により高血圧のリスクを高める肥満の解消にもつながります。
運動をすると、血圧は一時的に上がります。しかし、筋肉に多くの酸素と栄養を運ぶために
血管が広がるなどして、血圧は下がっていきます。
運動としては、酸素をたくさん取り入れながら行う有酸素運動が適しており、1日30分程度を
毎日行うことが理想です。有酸素運動としては、ウォーキングやジョギング、水泳、
サイクリング、エアロビクスなどがあります。
すでに血圧が高めの方は、医師に相談するなどして無理のない範囲で行ってください。
高血圧の最大の原因が、塩分の過剰摂取とされています。
塩分を多く摂取すると、血中の塩分濃度を下げるために血液量が増え、血圧が高くなります。
日本高血圧学会では、「食塩の摂取量は1日6g未満」を推奨しています。
塩分控えめで美味しい料理のレシピは、インターネットで検索するとたくさん見つかるので、
参考にしてください。
また、ナトリウム排泄効果があるカリウム・マグネシウム・カルシウムを積極的に摂取しましょう。
カリウム・マグネシウムは野菜や果物、海藻、豆類などに多く含まれ、カルシウムは乳製品や
小魚などに多く含まれます。
さらに、肥満の方は高血圧のリスクが高くなります。
特に、健康診断で「内臓脂肪が多い」と指摘された方は注意が必要です。
食べ過ぎに注意し、栄養バランスのとれた食事を心がけてください。
高血圧のリスクを下げるために、十分な睡眠をとることも重要です。
1日の中で、起床後から血圧は上昇していきますが、夕方から血圧は下がり、睡眠中に最も
低くなります。睡眠不足により自律神経が乱れると、高血圧を発症しやすくなります。
高齢になると、健康な人でも睡眠が浅くなり、中途覚醒や早朝覚醒が増加します。
また、心身の不調により、不眠症や睡眠時無呼吸症候群などの睡眠障害が出現しやすくなります。
なお、睡眠時無呼吸症候群に高血圧が合併するケースは多いです。
改善策は、「就寝環境を整える」、「午前中に日光を浴びる」、「規則正しい生活をする」、
「アルコール・カフェイン・ニコチンの摂取を控える」、「睡眠薬を処方してもらう」などです。
高血圧のリスクを下げるには、ストレスをためないことも重要です。
ストレスは、交感神経を刺激し血圧の上昇を引き起こします。
また、ストレスは食生活の乱れや不眠、飲酒、喫煙などにもつながりやすく、高血圧のリスクが
さらに高まります。
60代は職場や家庭の環境の変化により、ストレスを抱えやすくなる年代です。
ストレスは高血圧だけでなく、さまざまな疾患のリスクを高めることがわかっています。
好きな趣味に没頭したり、ゆっくり入浴したりといった自分なりのリラックス方法を
見つけることが重要です。
禁煙・節酒により高血圧のリスクが下がるとされています。
喫煙をすると、ニコチンにより血管が収縮するため血圧が上がります。
また、アルコールには血管を拡張させる作用があり、少量であれば一時的に血圧は下がります。
しかし、過剰な摂取により血圧は高くなります。飲酒量の目安は、男性がアルコール換算で
20~30ml/日(日本酒ならば1合、ビールならば500ml程度)以下、女性が10~20ml/日以下です。
喫煙も過度の飲酒も、がんなどさまざまな病気のリスクを高めることがわかっています。
健康のためには、禁煙と節酒が重要です。
今回は、60代の血圧平均値や高血圧の予防・改善策などを解説しました。
・血圧の正常値は「120/80mmHg未満」、高血圧の基準値は「140/90mmHg以上」。
・60代の血圧平均値は、男女ともに高血圧の一歩手前の「高値血圧」に該当。
・高血圧では、動脈硬化が進行し、心臓病や脳卒中などの重大な病気のリスクが高まる。
・高血圧リスクを下げるには、「食事」・「運動」・「喫煙」・「飲酒」・「睡眠」
・「ストレス」などの生活習慣見直しが必要。
高血圧を予防して健康寿命を延ばすためにも、生活習慣を改善しましょう。