介護施設で行える医療行為一覧|介護士が行える医療的ケアも詳しく紹介

2025.03.03

介護士(介護福祉士・介護職員)は、高齢者や障がい者の日常生活を支援し、
快適で安心できる生活をサポートする仕事です。
介護施設や在宅介護の現場で活躍し、利用者の身体的・精神的なケアを行います。

介護士の仕事は、大きく分けて「身体介護」「生活援助」「コミュニケーション・見守り」
「記録・報告」の4つの分野があります。

職種別・介護施設で行える医療行為一覧

職種ごとに実施できる医療行為が異なります。
例えば医師の場合は、診察・診断・処方、点滴・注射・吸引・処置全般、緊急時の医療対応など。
看護師の場合は、医師の指示のもと、医療行為が可能です。
介護士は、原則として医療行為はできません。

 医師が行う医療行為

医師が行う医療行為には、診察、診断、治療、手術、処方、予防接種など、
患者の健康を維持・回復するためのさまざまな行為が含まれます。
具体的には、以下のようなものがあります。

  • 問診:患者の症状や病歴を聞き取る
  • 視診・触診・聴診・打診:患者の身体を直接観察し、異常を確認
  • 検査の指示:血液検査、X線、CT、MRI、内視鏡などを用いて病気を特定
  • 診断:病名や病態を特定し、治療方針を決定
  • 投薬・処方:患者の症状に応じた薬を処方
  • 注射・点滴:必要な薬剤や水分を体内に投与
  • 手術:外科的処置を行い、病気や怪我を治療
  • リハビリ指導:回復を促すための運動療法や指導などです。
  • 予防接種:感染症を予防するためのワクチン接種
  • 健康診断・がん検診:早期発見のための定期検査
  • 生活習慣病の指導:食事・運動・禁煙などのアドバイス
  • 救急医療:心肺停止、外傷、急性疾患(心筋梗塞、脳卒中など)への対応
  • 心肺蘇生(CPR)・気道確保:緊急時の救命処置
  • 外傷処置:骨折、出血、熱傷などの処置
  • カウンセリング・精神療法:心の健康を支える治療
  • 精神科治療(薬物療法・認知行動療法など)

    医師の医療行為は、患者の状態や医療の専門分野によって異なりますが、
    基本的には患者の診断・治療・健康維持を目的としています。

 看護師が行う医療行為

看護師が行う医療行為には、医師の指示のもとで行うものと、看護師の判断で行うものがあります。
看護師は、患者のケアを中心とした業務を担当し、医師と協力して医療を提供します。

バイタルサイン(体温・血圧・脈拍・呼吸)の測定や、患者の状態観察(意識レベル、
皮膚の状態、排泄状況など)、病状の変化を記録し、必要に応じて医師へ報告。

また、医師の指示のもとで実施する、注射・点滴の管理(静脈注射、皮下注射、筋肉注射など)や
採血(血液検査のための採血)など。
他にも、清拭・入浴介助・排泄介助などの下の世話もあります。

 研修を受講した介護士ができる医療行為

介護士(介護福祉士など)は、主に高齢者や障がい者の生活支援を行う仕事ですが、
一定の条件下で医療行為の一部を行うことが認められています。
基本的に医療行為は医師や看護師が行うものですが、介護士が行える範囲には制限があります。

介護施設や訪問介護の現場では、以下の医療行為が条件付きで認められています。
口腔内・鼻腔内・気管カニューレ内の痰の吸引や、チューブを使った栄養の注入など。
ただし、これらの行為が出来る介護士は、認定特定行為業務従事者(研修修了者)のみです。

介護士が行える「医療行為に該当しない」医療的ケアは?

介護士が行える医療行為に該当しない「医療的ケア」には、以下のようなものがあります。

  • 爪切り(ただし、糖尿病患者の爪切りは注意が必要)
  • 整髪・洗髪・髭剃り
  • 更衣介助(着替えの手伝い)
  • 口腔ケア(歯磨き・うがいの補助)
  • 食事介助(飲み込みの確認や姿勢の調整など)
  • 排泄介助(おむつ交換、トイレ誘導など)
  • 体位変換(褥瘡予防のための姿勢変更)
  • 関節可動域訓練(リハビリの一環としての軽度な動作補助)
  • 移乗・移動介助(車椅子やベッド間の移動の手伝い)
    以上です。

 介護士ができない医療行為を紹介

介護士が絶対に行ってはいけない医療行為には、以下のようなものがあります。
注射・点滴の管理や実施や、採血、医薬品の調剤や投薬(服薬介助はOK)、
人工呼吸器の管理、カテーテルの挿入・交換、創傷処置(傷の縫合、深い傷の消毒など)です。

 床ずれの処置

床ずれ(褥瘡)とは、長時間同じ体勢でいることで血流が滞り、皮膚や皮下組織が壊死してしまう
状態です。主に寝たきりの方や車椅子を使用する方に発生しやすいです。
床ずれの程度(ステージ)によって処置が異なります。
初期段階(皮膚が赤くなっている程度)の場合は、圧迫を避けるため、こまめに体位変換
(2時間ごとが目安)皮膚を清潔・乾燥に保つなど。
皮膚が破れてしまった場合は、感染を防ぐために創傷を清潔に保つ(医師・看護師の指示に従い、
消毒や軟膏を使用)です。

 摘便

摘便とは、便が硬くなり直腸内で詰まってしまった場合(嵌頓便=かんとんべん)に、
指を使って便を取り除く処置です。特に、重度の便秘や自力で排便ができない方に対して行われます。

摘便を行う状況は、便が直腸内で固まり、自然排便が困難な場合や、下剤や浣腸が効かない場合、
肛門周囲の違和感や強い不快感がある場合、腹部の膨満感や痛みがある場合などです。

摘便の方法は、手袋・潤滑剤(ワセリン・グリセリン)を準備し、患者さんに説明し、同意を得て、
プライバシーを確保(カーテンを閉めるなど)。
患者を左側臥位(横向き)にして、手袋をつけ、指にワセリン(潤滑剤)を塗る。
そして、肛門にゆっくりと指を挿入し、固まった便を少しずつ崩しながら取り出す。
無理に引っ張らず、できるだけ患者の負担を減らします。
摘便後、清潔なタオルやおしりふきで肛門周囲をきれいにしてあげます。
排便の状態を記録し、必要に応じて報告します。

 インスリン注射

インスリン注射は、糖尿病の治療として血糖値をコントロールするために行う自己注射です。
主に1型糖尿病患者や、2型糖尿病でインスリン分泌が不足している方が使用します。
皮下注射(皮下組織に注射する)が基本で、一般的に、お腹、太もも、腕の外側、お尻に注射します。

インスリン製剤・注射器(またはインスリンペン)を用意し、手を清潔にします
(石鹸で手洗い・アルコール消毒)。
そして、注射部位を選びます(毎回異なる部位に打つことで皮膚の硬化を防ぐ)。
インスリンを確認(種類・使用期限・濃度)し、インスリンペンの場合は、カートリッジを装着し、
空打ちをして針の通りを確認します。
注射部位(お腹・太もも・腕)をアルコール消毒し、皮膚を軽くつまんで、90度の角度で注射をし、
インスリンを注入し、5~10秒待ってから針を抜く(薬剤の漏れを防ぐため)。
そして、注射部位を軽く押さえ(揉まない)、針を適切に廃棄し、手を洗います。

 血糖測定

血糖測定とは、血液中のブドウ糖(血糖値)を測定することです。
糖尿病の管理や低血糖・高血糖の予防のために行います。
血糖測定の目的は、糖尿病患者の血糖コントロール、低血糖・高血糖の早期発見、
インスリン注射や食事療法の効果確認です。
特に、インスリン治療をしている方は、定期的な血糖測定が重要です!

血糖測定の手順として必要な道具は、血糖測定器(グルコメーター)、穿刺(せんし)
器具(ランセット)、 試験紙(テストストリップ)、 アルコール綿(消毒用)です。

測定手順は、まず、手を洗い、清潔にする(汚れがあると正確に測れない)、測定器の電源を入れ、
試験紙をセットし、指先をアルコールで消毒し、乾かします。
穿刺器具(ランセット)で指先に小さな傷をつけ、出た血液を試験紙にのせます。
数秒後に測定結果が表示されるので、測定値を記録し、必要に応じて医師や看護師に報告します。
最後に使用済みの針や試験紙を適切に廃棄します。

介護士が処置に迷った場合は医師に相談を

介護の現場では、利用者の健康状態やケアについて判断に迷うことがあります。
そんなときは、自己判断せず適切な対応を取ることが重要です。

  • その処置が「医療行為」に該当するか?
  • 介護士が対応してもよい範囲か?(施設のルール・業務範囲)
  • 看護師や医師に相談できる環境か?
  • 緊急性があるか?(命に関わる状況か?)
    などを考えます。

    迷ったときは自己判断せず、施設や訪問介護のルールに従い、看護師・医師に確認し、
    状況を詳しく伝え、指示を仰ぎましょう。

まとめ

医療行為は、診断・治療・予防を目的に医師、看護師、または他の医療職が行う行為です。
介護現場では、医療行為に該当するものと、介護士が行える範囲に分けて理解することが重要です。
ここでは、医療行為を職種別に整理し、介護施設での役割を明確にします。

医療行為を適切に分担し、役割を守ることで、安全で安心なケアを提供できるようになります。

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