「看護」と「介護」の違いはご存じでしょうか。
介護施設では、どちらの職種も「利用者のサポートを行う」という共通点があり、
違いが分からないという方もいるかもしれません。しかし、両者は明確に異なります。
この記事では、まず看護と介護の違いを3つの観点から解説します。
また、両者に共通する業務や、それぞれの仕事に向いている人の特徴も紹介します。
施設で看護・介護職として働いている方や、これから働きたい方におすすめの内容です。
看護と介護の定義の違い
「看護」と「介護」は、仕事内容が重なる部分もあるため混同されることがあり、
違いを正しく説明できる人は多くないかもしれません。
ここから、両者の違いについて、3つの点から説明していきます。
「看護」と「介護」の3つの違いの1つ目は、「定義の違い」です。
看護の定義
「看護」とは、あらゆる年代の個人や家族、集団、地域社会を対象に、健康増進や疾病予防、
健康の回復、苦痛の緩和などを行う支援的な活動のことです。
介護施設では、看護師は介護職と連携しながら利用者のサポートを行います。
介護職は利用者の生活全般をサポートするのが主な仕事ですが、看護師は医療従事者として
利用者の「健康管理」や「医療行為」を行います。
健康管理は、介護職と協力して行い、仕事内容はほとんどが非医療行為です。
医療行為は、薬の管理・投薬やたんの吸引、点滴などを行います。
介護の定義
「介護」とは、要介護者の日常生活の自立を目指す行為全般のことです。
生活行為や自立支援に関わる身体的および精神的、社会的なサポートを行います。
介護に分類される仕事内容には、「身体介護」や「生活援助」などがあります。
身体介護とは、要介護者の身体に直接触れて、日常生活に必要な動作をサポートすることです。
食事や入浴、排泄などの介助が含まれます。
生活援助は、要介護者の身体には触れずに、日常生活をサポートすることです。
例えば、掃除や洗濯、調理、買い物などが挙げられます。
看護と介護の資格の違い
「看護」と「介護」の3つの違いの2つ目は、「資格の違い」です。
看護と介護において、それぞれで取得する資格には違いがあります。
ここでは、看護と介護における主な資格の種類を紹介するので、参考にしてください。
看護の資格
看護の仕事に就くには、資格が必要になります。
この点が介護との大きな違いです。
看護の資格には、以下の4種類があります。
准看護師は都道府県知事が認定する公的資格ですが、他はすべて国家資格です。
- 看護師
- 准看護師
- 助産師
- 保健師
看護師になるには、大学または3年以上の教育を受けて、看護師国家試験に合格する必要が
あります。
准看護師になるには、2年以上の教育を受けて、准看護師試験に合格する必要があります。
なお、助産師と保健師は、それぞれの国家資格を取得する前に、看護師の国家資格を
取得しておかなければなりません。
介護の資格
介護の仕事に就くには、資格が必要というわけではありません。
無資格でも、介護の仕事をすることは可能です。
ただし、以下の職種に就くには、資格取得が必要です。
- 訪問介護員(ホームヘルパー)
- 介護福祉士
- 社会福祉士
- ケアマネジャー(正式名称は「介護支援専門員」)
「訪問介護員」になるには、「介護職員初任者研修」・「介護福祉士実務者研修」や
国家資格である「介護福祉士」のいずれかの資格が必要です。
「介護福祉士」になるには「介護福祉士」の国家資格が、「社会福祉士」になるには「
社会福祉士」の国家資格が必要です。
「ケアマネジャー」になるには、「介護支援専門員実務研修受講試験」に合格後、
実務研修を受講して登録することが必要です。
これら以外にも介護関係の資格の種類は多いです。
取得により、就職で有利になったり、業務の幅が広がったり、キャリアアップにもつながったり
します。
看護と介護の業務内容の違い
「看護」と「介護」の3つの違いの3つ目は、「業務内容の違い」です。
看護と介護において、それぞれで業務内容には大きな違いがあります。
ここでは、看護と介護における主な仕事内容を紹介するので、参考にしてください。
看護の業務内容
ここでは、看護の職種の中でも、「看護師」の介護施設における仕事内容について紹介します。
- 健康管理
医師が常駐していない施設では、看護師が健康管理を担います。
業務としては、バイタルチェックや口腔ケア、爪切り、耳掃除などが挙げられます。
- 療養
施設の利用者には病気を患っている方も多いため、療養に関する業務も重要です。
業務としては、軟膏の塗布や湿布の貼付、ケガの処置、服薬管理、通院付き添いなどが
挙げられます。
- 医療業務
利用者の体調が急変した場合などの緊急時に、応急処理をしたり、病院への引継ぎなどを
行ったりすることがあります。
看護師が医師の指示のもとで行う医療行為には、点滴や採血、たん吸引、インスリン注射、
胃ろう、尿道カテーテル挿入などが挙げられます。
- その他
介護職員と協力して、食事や入浴などの介助を行います。
介護の業務内容
介護の仕事は、高齢者や障がいを持っている方が安心して生活を送れるようにサポートを
することです。
主な業務は、食事・入浴・排泄などの介助をする「身体介護」と、掃除・洗濯・調理などを行う
「生活援助」です。それら以外にも、機能訓練のサポートやレクリエーションの企画・実施など、
勤務先の施設によって仕事内容は多岐にわたります。
スタッフは、利用者一人ひとりの心身状態を把握し、自立支援や健康回復を目指してケアに
取り組みます。
介護施設で看護と介護で共通する業務
介護施設では、「看護と介護で共通する業務」があります。
代表的なものが「身体介護」で、食事・入浴・排泄などの利用者の日常生活に必要な動作の介助です。
看護師は介護の仕事をすべて行うことができますが、介護職員は原則として看護の仕事である
医療行為を行うことはできません。
ただし、近年は介護職員でも以下のような「医療的ケア」や「一部の医療行為」ができるように
なりました。
- 医療的ケア(一部条件付き)
「体温測定」・「血圧測定」・「動脈血酸素飽和度測定」
「軽度な傷・やけどの処置」・「湿布貼付」・「軟膏塗布」
「目薬の点眼」・「服薬介助」・「坐薬の挿入」・「鼻腔粘膜への薬剤噴霧の介助」
- 条件付きで認められる医療行為
「耳掃除」・「爪切り」・「口腔ケア」・「カテーテル交換の準備・体位補助」
「ストーマに溜まった排泄物の廃棄」・「浣腸」
- 所定の研修の修了により認められる医療行為
「喀痰吸引」・「経管栄養」
看護の仕事に向いている人とは?
看護の仕事に向いている人の特徴は、以下のとおりです。
- 責任感が強い
看護師は命を扱う職業です。そのため、適切な対応を常に心がける責任感は重要です。
- 判断力がある
医療現場には判断力のある人が求められます。
緊急の事態が起こっても、冷静に患者の状態を把握し、優先順位をつけてスピーディーに
対処する必要があるのです。
- 体力があり精神的にもタフ
夜勤からくる不規則な生活に加え、患者のケアや巡回など多くの業務をこなすことが
求められます。そのため体力や精神力は不可欠です。
- コミュニケーション力や協調性がある
コミュニケーション力があれば、患者の悩みを聞き出して、不安を軽減できるでしょう。
また、医師や同僚などさまざまな人と協力して業務にあたらなければなりません。
- 向上心がある
医療は日進月歩の領域です。経験を積むだけでなく、知識や技術を常にアップデート
しなければ仕事にならないことも多いのです。
介護の仕事に向いている人とは?
介護の仕事に向いている人の特徴は、以下のとおりです。
- 人の役に立つことが好き
利用者や家族から直接感謝の言葉をもらえることがあるので、人のお世話をすることが
好きな人は、やりがいを感じるでしょう。
- コミュニケーション力や協調性がある
介護スタッフには、利用者の微妙な変化やニーズを感じる能力が求められます。
人とコミュニケーションをとることが好きな人には向いており、信頼関係の構築や
情報共有にもつながります。
- オン・オフの切り替えが上手
家庭に仕事を持ち帰らず、ストレスをうまく発散できる人は、仕事を長く続けやすいです。
- 体力がある
介護の仕事は、身体介護がメインなので、かなりの体力を要します。
また、夜勤がある職場では、生活リズムが不規則になりがちです。
まとめ
今回は、看護と介護の違いについて解説しました。
- 「看護」とは、病気・ケガなどの治療・療養をサポートする行為。
- 「介護」とは、要介護者の自立支援を目的とした行為全般。
- 看護には看護師の国家資格などが必要。介護には資格は必要ないが、
取得することでキャリアアップにつながる。
- 看護の仕事は、「健康管理」・「療養」・「医療業務」。
介護の仕事は、「身体介護」・「生活援助」。
- 両者に共通する業務は身体介護など。介護職員でも、「医療的ケア」や
「一部の医療行為」が認められることも。
- 看護に向いている人の特徴は、「責任感が強い」・「判断力がある」・「体力がある」
・「コミュニケーション力がある」など。
- 介護に向いている人の特徴は、「人の役に立つことが好き」・「コミュニケーション力がある」
・「体力がある」など。
この記事が、介護業界で働いている方や興味のある方の参考になれば幸いです。