グループホームの人員配置基準を解説｜人員基準違反した場合は？

グループホームは、高齢者や障がい者が少人数で共同生活を送りながら、必要な支援を
受けられる施設です。家庭的な雰囲気の中で、介護や生活支援を受けながら、
自分らしい生活を続けられることが大きな特徴です。

特に、認知症高齢者向けのグループホームは、認知症の進行を遅らせるためのケアや、
個別に寄り添ったサポートが提供されるため、多くの方に選ばれています。

しかし、グループホームを運営するためには、一定の基準を満たした人員配置が必要です。
適切なスタッフが配置されているかどうかは、入居者の安全や生活の質に大きく関わるため、
非常に重要なポイントです。

本記事では、グループホームの基本的な概要を説明したうえで、人員配置の基準について
詳しく解説します。
管理者、介護従事者、計画担当者、代表者といったそれぞれの役割を理解し、
グループホーム選びや運営の参考にしていただければと思います。

グループホームとは

グループホームは、主に認知症の高齢者や障がいを持つ方が、少人数で共同生活を送るための
施設です。家庭的な環境の中で、介護スタッフによる日常的なサポートを受けながら、
自分らしい生活を続けられるのが特徴です。
一般的には、1ユニット（生活単位）あたり5〜9人の少人数で構成され、入居者同士や
スタッフとの関係が深まりやすい点もメリットです。

また、認知症の方にとっては、馴染みのある生活リズムを保つことが症状の進行を
遅らせる効果があるとされています。そのため、グループホームでは料理や掃除、
洗濯などの日常生活を入居者自身が行えるように支援するスタイルが主流です。
これにより、役割を持ち続けながら生活でき、精神的な安定にもつながります。

一方で、グループホームには介護保険の適用条件があり、認知症の診断を受けた
要支援2以上の方が対象となります。
また、入居者に適切なケアを提供するためには、一定の人員配置基準を満たす必要があります。
次の章では、グループホームに必要なスタッフの種類と、それぞれの役割について詳しく
見ていきましょう。

グループホームの人員配置基準

グループホームでは、入居者が安心して生活できるようにするため、法律で定められた
人員配置基準があります。基本的には、「管理者」「介護従事者」「計画担当者」「代表者」の
4つの役職があり、それぞれに求められる資格や配置基準が定められています。

これらのスタッフが適切に配置されることで、入居者一人ひとりに合ったケアが提供され、
家庭的な雰囲気の中で快適に過ごせるようになります。
次の項目では、各役職について詳しく解説していきます。

　管理者

管理者は、グループホーム全体の運営を統括する重要な役割を担っています。
施設の管理業務だけでなく、スタッフの指導や施設の方針決定など、幅広い業務を担当します。

管理者には、一定の資格要件が求められる場合があり、多くの自治体では介護福祉士や
社会福祉士などの資格を持つことが望ましいとされています。
また、介護業界での実務経験が必要とされることも多く、単に管理業務を行うだけでなく、
現場の介護にも理解を深めていることが求められます。

さらに、管理者はスタッフ間の調整役としての役割も担います。
介護スタッフ同士や医療機関との連携をスムーズにし、利用者にとって最適な介護サービスを
提供できるようにすることが大切です。
利用者や家族との相談対応も管理者の仕事の一つであり、施設の信頼を高めるための重要な
ポジションといえます。

　介護従事者

介護従事者は、利用者の日常生活を支える中心的な存在です。
食事や入浴、排せつなどの介助を行いながら、利用者が快適に過ごせるようにサポートします。

グループホームでは、利用者の自立を促すことが大切にされており、介護従事者はただ支援する
だけでなく、利用者ができる限り自分でできるように促すことも重要な役割です。
そのため、単に介護技術が優れているだけでなく、利用者とのコミュニケーションを大切に
しながら関わる力も求められます。

介護従事者の配置基準は、厚生労働省の規定により定められており、グループホームでは
「利用者3人に対して1人以上の介護職員を配置すること」が原則となっています。
しかし、時間帯によってはこの基準を満たせないこともあるため、
適切なシフト管理が必要になります。

　計画担当者

計画担当者は、利用者一人ひとりに合った介護計画を作成し、実際の介護サービスが適切に
提供されているかを確認する役割を担います。
計画担当者になるためには、「介護支援専門員（ケアマネージャー）」の資格が必要です。

ケアマネージャーは、利用者の状態や希望を踏まえて個別のケアプランを作成し、
スタッフと連携しながら適切な支援を行います。
また、計画担当者は家族との連携も大切にしなければなりません。
利用者の生活環境や家族の意向を考慮しながら、より良い支援計画を立てることが求められます。

　代表者

代表者は、法人格を持つグループホームにおいて、施設の運営責任を担う役職です。
経営の観点から施設全体を管理し、資金管理や行政との手続きを担当します。
代表者には、介護業界の知識だけでなく、経営管理の能力も求められます。

特に、行政の監査や報告書の作成、補助金の申請など、運営に関する事務作業も多く、
施設を継続的に運営するための適切な判断力が必要です。
また、グループホームの理念や方針を決定する役割もあるため、施設全体の方向性を示し、
利用者やスタッフが安心して過ごせる環境を作ることが求められます。

グループホームの人員基準の注意点は？

グループホームを適切に運営するためには、厚生労働省が定める人員基準を満たすことが
求められます。しかし、一般的な介護施設とは異なり、グループホームならではの基準や
注意点も存在します。

特に、医療スタッフの配置義務や夜間の人員配置など、誤解されがちなポイントについて
詳しく見ていきましょう。

　医療スタッフの配置は義務付けられていない

グループホームでは、医師や看護師といった医療スタッフの常駐は義務付けられていません。
これは、グループホームが「介護施設」ではなく「共同生活の場」として位置づけられている
ためです。

ただし、利用者の健康管理が不要というわけではありません。
多くのグループホームでは、地域の医療機関と連携し、定期的な健康チェックや急病時の
対応ができる体制を整えています。
また、一部のグループホームでは、看護師がパートタイムで勤務するケースもあります。

特に、認知症の方は健康管理が重要になるため、介護スタッフがバイタルチェックを行い、
異変があれば迅速に医療機関と連携できる体制を整えることが求められます。

　夜間帯の介護職員は常勤でなくても構わない

グループホームでは、夜間の人員配置についても特別な基準が設けられています。
具体的には、夜間帯においても最低1名の介護職員が配置されることが義務付けられていますが、
この職員は必ずしも常勤である必要はありません。

夜間の見守り業務は、利用者の状態に応じて負担が大きくなることもあります。
例えば、夜間に頻繁に起きる方やトイレの介助が必要な方が多い場合、介護スタッフの
配置を増やすことが望ましいでしょう。
また、夜間に急な体調不良が起こった際の対応も重要です。
常駐するスタッフが医療機関や家族と迅速に連絡を取れるよう、マニュアルを整備しておくことが
求められます。

　介護職員が全員常勤でなくてもよい

グループホームでは、すべての介護職員を常勤で雇用する必要はなく、非常勤スタッフを
組み合わせて運営することが可能です。これは、グループホームが24時間体制で運営されるため、
シフト制を活用しながら柔軟に人員を確保する必要があるためです。

ただし、非常勤の割合が多すぎると、スタッフ間の連携が取りにくくなる可能性があるため、
適切なバランスを考えることが重要です。
また、非常勤スタッフが多い場合、職員の入れ替わりが激しくなり、利用者にとって安心できる
環境が作りにくくなることも懸念されます。
そのため、研修や定期的なミーティングを実施し、スタッフ間の情報共有を徹底することが大切です。

　時間帯により「3：1」にならない場合もある

グループホームの人員配置基準として、「利用者3名に対して介護職員1名以上」という基準が
あります。しかし、これは一日を通した平均での基準であり、必ずしもすべての時間帯で
「3：1」を維持する必要はありません。

例えば、日中は複数のスタッフが勤務し「2：1」の手厚い支援を提供し、夜間は最低限の
スタッフで運営することが認められています。
ただし、利用者の状況によっては、夜間の人員を増やしたほうが適切な場合もあるため、
施設の実態に合わせた配置を考えることが重要です。

また、行政の監査や指導が入った際には、人員配置の記録をしっかり残しておくことが求められます。特に、シフトの管理がずさんだ場合、基準を満たしていないと判断されることがあるため
注意が必要です。

人員配置基準に違反した場合はどうなる？

グループホームの人員基準を満たしていない場合、行政からの指導や改善命令が下される
可能性があります。基準を継続的に違反すると、事業所指定の取り消しや運営停止のリスクも
あるため、適切な人員配置を維持することが重要です。

また、人員基準違反が利用者の生活に悪影響を与えた場合、家族からの苦情や訴訟に発展する
こともあります。例えば、スタッフの不足により利用者の転倒事故が増えたり、
適切なケアが提供されなかったりすると、施設の信頼が大きく損なわれる可能性があります。

まとめ

グループホームは、利用者が安心して生活できるようにするために、適切な人員配置が求められます。管理者、介護従事者、計画担当者、代表者といった役職ごとの役割を理解し、それぞれの
職務を適切に果たすことが重要です。

また、人員基準にはいくつかの注意点があり、特に医療スタッフの配置義務や夜間の人員配置に
ついて誤解されることが少なくありません。施設ごとの実態に合わせた柔軟な運営が必要ですが、
それでも最低限の基準を守ることは不可欠です。

もし人員基準を満たしていない場合、行政からの指導や事業停止のリスクがあるため、
シフト管理の徹底や研修の充実を通じて、安定した運営を目指しましょう。
適切な人員配置が整うことで、利用者が快適に暮らせる環境が実現できるはずです。