何もないところでつまずく原因やつまずかないための対策を解説

2025.03.03

「何もないところでつまずくようになった」という悩みはありませんか。
つまずくのは、足や尻の筋力が落ちていたり、足に合わない靴を履いていたりすることが
原因かもしれません。また、何らかの病気のサインの可能性もあります。

高齢者では、つまずいて転倒すると、骨折から寝たきりになるリスクがあるため注意が必要です。
この記事では、つまずく原因や対策、トレーニング、隠れている可能性がある病気について、
詳しく解説します。

何もないところでつまずく主な原因

「最近、何もないところでつまずくようになった」と感じたら、以下のような原因が考えられます。

  • 体幹の衰え
  • 足やお尻の筋力の低下
  • 適切な靴を履いていない
  • ながらスマホなどの不注意
    それぞれについて、詳しく解説します。

 体幹の衰え

「体幹」が衰えると、つまずきやすくなります。
体幹とは、全身から頭部と四肢を除いた「胴体部分」のことです。
胸や腹、背中、肩回り、お尻もすべて体幹です。よく耳にする「インナーマッスル」は、
体の深層部にある筋肉で、姿勢を維持したり関節の動きをサポートしたりする役割を担います。

このインナーマッスルの中でも、「腸腰筋」は、股関節を支点に足を前に振りあげる動作の
主力になります。この腸腰筋が衰えると、膝や腿が上がらなくなるのです。
高齢者の方だけでなく、デスクワークなどであまり動かない若い世代の方も、
腸腰筋が衰えてつまずきやすくなります。

 足やお尻の筋力の低下

足やお尻の筋力が低下することでも、つまずきやすくなります。
歩くとき足を振り上げるために働くのが、大腿四頭筋や腸腰筋、前脛骨筋で、振り上げた足を
前方に移動させるのが大臀筋や中臀筋、腓腹筋、ヒラメ筋です。

また、歩行は片足立ちの連続です。
この片足立ちに関連する足やお尻の筋力が低下すると、つまずきやすくなります。
腓腹筋やヒラメ筋は、片足立ちの際に骨盤を高い位置へと導く役割があります。
中臀筋や小臀筋は、片足立ちのときに股関節周りを安定させ、反対側の骨盤を
持ち上げるはたらきをします。これらの筋肉の働きが低下すると、足と地面との距離を十分に
保つことができず、つまずく原因となるのです。

 適切な靴を履いていない

適切な靴を履いていないことでも、つまずきやすくなります。
つま先が狭くて指が締め付けられる、サイズがきつくて足全体が圧迫される、ゆとりがありすぎて
前滑りする、といった靴を選んではいけません。

また、歩きにくいヒールの高い靴や、脱げやすいスリッパ・サンダルも避けた方が無難です。

合わない靴を履くことで、足の指や爪、膝、股関節、腰にまで悪影響が出る可能性があります。
これにより、姿勢が悪くなったり、つまずきやすくなったりする原因にもなります。

 ながらスマホなどの不注意

「歩きスマホ」などの、ながらスマホなどによる不注意によっても、つまずきやすくなります。
スマホの画面に夢中になると視覚情報が鈍感になり、周りに注意がいかなくなるからです。
歩きスマホの危険性は科学的にも立証されています。
普通ならば100%避けられる障害物でも、歩きスマホをすると10~20%の人がぶつかるという
データがあります。

つまずいたりぶつかったりするだけではありません。
「駅のホームから転落する」、「踏切内に侵入して列車に轢かれる」、
「車道に飛び出して車に撥ねられる」といった悲惨な事故も起きています。
歩行中は、足元や周囲に注意を払い、スマホを使用する場合は立ち止まるなどしてください。

何もないところでつまずかないための対策は?

前述の原因を踏まえながら、何もないところでつまずかないために、以下のような対策を紹介します。

  • お尻や足の筋肉を鍛える
  • 足首のストレッチを行う
  • 歩き方を改善する・注意深く歩く
  • 足のサイズに合った靴を選ぶ

 お尻や足の筋肉を鍛える

歩行に深くかかわる、お尻の筋肉「中臀筋」と、足の筋肉「腓腹筋・ヒラメ筋」を鍛えると、
つまずきにくくなります。

  • 中臀筋トレーニング
    ① 横向きに寝て、下の手を頭の下に敷き、上の手は身体の前につく
    ② 下の膝を軽く曲げて上の足を骨盤の高さに上げたら、足を少し後方に引く
    ③ 上側の足を伸ばしたまま、ゆっくり開きゆっくり戻す
    ④ これを左右10 回ずつ行う
  • 腓腹筋・ヒラメ筋のトレーニング(カーフレイズ)
    ① 壁の前に立ち、両足を肩幅程度に開く
    ② 壁に軽く手を添えて体を支えながら、踵をゆっくりと上げる
    ③ 踵が上がりきったら、踵をゆっくりと地面スレスレまで下げる
    ④ ②と③を繰り返す(10回3セットが目安)

 足首のストレッチを行う

足首が硬いと、歩くときに指先が地面に引っかかり、つまずきやすくなります。
歩くときに踏み出す足首は、90度以上に上がるのが理想です。
つまずく場合は、自分が思っているよりも足首が上がっていない可能性があります。
足首を上げるのに必要な筋肉は、脛の「前脛骨筋」です。
この筋肉をストレッチで曲げ伸ばしすれば、足首が柔らかくなります。

  • 脛の筋肉のチェック
    ① ベッドや床の上で両足を伸ばして座る
    ② 足首を自分の方に起こす
     このとき膝も一緒に曲がるならば、脛の筋肉が衰えている可能性があります。
  • 足首ストレッチ
    ① 片手を壁について立つ
    ② 片足を上げて、足首を曲げ伸ばしする
    ③ 反対の足首も同じように曲げ伸ばしする
    これ以外にも、「踵歩き」と「つま先歩き」をそれぞれ10m程度行うのもおすすめです。

 歩き方を改善する・注意深く歩く

歩行中は周囲に注意を払い、不意の障害物を避けるために地面を確認してください。
スマホは立ち止まって通行の邪魔にならないところで使用し、音楽は音量を適度に調整して
注意力を保ちましょう。
正しい歩き方は、以下のとおりです。

① 背筋を伸ばして軽くあごを引き、目線は10~15m先を見る
② 前方に出る膝は、まっすぐに伸ばす
③ つま先は上向きに、踵から着地する
④ 足の重心は、踵からつま先へ移動させていく
⑤ 後ろ足のつま先で地面を蹴る
⑥ 左右の足で交互に②~⑤を繰り返す

 足のサイズに合った靴を選ぶ

足のサイズに合った靴を選ぶ際のポイントは、以下のとおりです。

  1. 踵のフィット感
    歩くたびに踵が脱げてしまうと、不安定になり転倒の危険性があります。
    ポイントは、「踵と靴のカーブの形状が合っている」、「踵部分が適度に硬く隙間がない」、
    「歩いたときに脱げない」という点です。
  2. サイズ
    一番長い指から踵までの長さより、1~1.5cm余裕があるとフィットしやすいです。
  3.  足幅
    足幅とは、親指の付け根から小指の付け根までの長さです。
    足幅に対して靴の幅が狭すぎると、足への負担になります。
    逆に、幅が広すぎると、靴擦れやタコ、外反母趾などの原因になります。

つまずきにくくするためのトレーニング方法

つまずきにくくするためのトレーニングとして、「中臀筋トレーニング」と
「腓腹筋・ヒラメ筋のトレーニング(カーフレイズ)」は、すでに紹介しました。
ここでは、それら以外のトレーニング方法を紹介します。
いずれも高齢者の方でも手軽に行える内容です。

  • 腸腰筋トレーニング
    ① 背もたれから背中を離してイスに座り、姿勢をまっすぐにする
    ② その場で足踏みをする
    ③ 足踏みを20回×2~3セット行う
  • 大腿四頭筋・中臀筋トレーニング
    ① 立った状態で両足を肩幅よりも大きく広げる
    ② 片方の足に体重をかけてゆっくりと膝を曲げる
    ③ ゆっくりと元に戻る
    ④ ②~③を左右交互の足で10回×2~3セット行う

何もないところでつまずく時に隠れている病気は?

何もないところでつまずくときには、さまざまな病気が隠れていることがあります。
ここでは、代表的なものを3つ紹介します。

  1. パーキンソン病
    運動をスムーズに行うのに重要な役割を担う脳の一部が、機能低下することで発症します。
    手足の震えやこわばり、動作が遅くなるなどの症状が現れます。
    姿勢反射障害が進行すると、転びやすくなるのが特徴です。
  2. 脳卒中
    脳の血管が詰まったり破れたりすることで、脳の一部にダメージが生じる病気です。
    脳梗塞や脳出血、くも膜下出血があります。片方の足が動かしにくい、体のバランスが
    取りにくい、などの症状が現れることで転びやすくなることがあります。
  3. 変形性関節症
    関節に炎症が生じ、軟骨や骨が変形する病気です。膝関節や股関節に発症した場合は、
    痛みが生じたり動かしにくくなったりすることで、転びやすくなることがあります。

まとめ

今回は、「何もないところでつまずく」原因や対策などを解説しました。

・原因は、「体幹の衰え」・「足・尻の筋力低下」・「靴が合わない」・「不注意」など。
・対策は、「足・尻の筋肉を鍛える」・「足首ストレッチ」・「正しい歩き方」
・「足に合う靴選び」など。
・トレーニングは、腸腰筋・中臀筋・小臀筋・腓腹筋・ヒラメ筋などを意識して鍛えるとよい。
・疑われる病気は、「パーキンソン病」・「脳卒中」・「変形性関節症」など。

この記事で紹介した対策を実行することで、つまずきにくい体をつくり、健康寿命を延ばしましょう。

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