老健の入所条件は?特徴や入所までの流れもわかりやすく解説

2025.03.03

「老健の入所条件は?」「特徴や費用、入所方法も教えて」という方に、詳しくお答えします。
「老健(介護老人保健施設)」とは、リハビリや医療ケアが充実した自宅復帰の支援を行う施設です。
「特養(特別養護老人ホーム)」などと同様に、公的施設である「介護保険施設」の一つ
となっています。

今回は、老健の入所条件や特徴、受けられるサービス、費用、入所までの流れについて、
詳しく解説します。

老健(介護老人保健施設)とは

「老健(介護老人保健施設)」とは、要介護者の自立を支援し、在宅復帰を目指すための
居住型の介護施設です。長期入院が明けてから自宅へ戻るまでの期間に利用されることが多いです。
地方公共団体などが運営する公的施設で、介護保険が適用されます。

老健は、「在宅復帰・在宅療養支援の拠点となる施設」、「リハビリを提供する機能維持・
改善の役割を担う施設」として位置付けられています。
提供する主なサービスは以下のとおりです。
特に、「リハビリ」と「医療ケア」が充実している点が特徴です。

  • 医師の指示のもとで行われる医療ケア
  • 理学療法士などによるリハビリ
  • 栄養管理・食事・入浴などの日常サービス
    また、老健の施設は入所サービスだけでなく、「ショートステイ(短期入所生活介護)」や
    「デイケア(通所リハビリ)」のサービスに利用されることもあります。

老健の年齢や介護度などの入所条件

ここでは、老健の「入所条件(年齢や要介護度など)」について解説します。
原則としては、「65歳以上」かつ「要介護1~5の認定を受けている」ことですが、
64歳以下でも一定の条件に該当すれば利用できる場合もあります。

 原則65歳以上で要介護1以上の方

老健に入所できるのは、原則として以下の2つの条件を満たした方です。

  1.  65歳以上である。
  2.  要介護1~5の認定を受けている。
    また、老健の特徴から、「リハビリや医療ケアが必要である」ことも、入所条件になります。
    さらに、施設によっては、以下のような条件も満たす必要があります。
    入所前に、施設に入所条件を確認しておきましょう。

    ・支払い能力に問題がない。
    ・保証人がいる。
    ・伝染病などの疾患がない。
    ・病状が安定しており長期入院が必要でない。

 40歳から64歳で特定疾病による要介護認定を受けている方

老健に入所できるのは、原則として「65歳以上」の方ですが、例外もあります。
介護保険の「第2号被保険者」である「40~64歳」の人も、厚生労働省が指定した16種類の
「特定疾病」に該当すれば、要介護認定の申請をすることができます。
「要介護1~5」の認定を受ければ、老健への入所が可能です。

介護保険における「特定疾病」とは、「末期がん」や「関節リウマチ」、
「筋萎縮性側索硬化症(ALS)」、「初老期における認知症」などです。
それぞれの疾病ごとに細かい基準が設けられています。

 認知症の方も入所可能

老健は、認知症の方でも入所が可能です。
認知症に関する専門スタッフが常駐する「認知症専門棟」がある施設もあり、そこでは
専門的なケアが受けられます。どのような対応ができるのか、入所前に施設に
確認しておきましょう。

また、前述のとおり、40~64歳の方も特定疾病による要介護認定を受けていれば、
老健への入所が可能です。この特定疾病には「初老期における認知症」も含まれています。

ただし、老健の目的はあくまで在宅復帰であるため、長期入院が必要になる可能性のある方などは
入所できない場合があるので、注意が必要です。

老健の特徴

老健は、病院での治療を終えた要介護者が、在宅復帰を目指す施設です。
そのため、比較的短い期間での退去が前提となっています。

また、リハビリが充実しているという点も大きな特徴です。専用の器具や人員体制が整っているため、在宅でリハビリに取り組むよりも高い成果が期待できます。

 基本的な入所期間は原則3カ月

老健の入所期間は、「原則3カ月」です。
3カ月ごとに、リハビリでの改善や回復が見られたか、入所の継続は必要かを判断する
「退所前会議」が開催されます。会議の結果、回復したと判断されると退所となります。

その後は、「退所前訪問」、「退所前カンファレンス」、「退所」、「退所後訪問」
という流れです。ただし、必ずしも3カ月で退所ではなく、平均入所期間は「約10カ月」という
データがあります。
施設で入所期間を気にせず長期的に暮らしたい方は、ほかの施設を検討することをおすすめします。

 リハビリに特化した施設である

老健は、在宅復帰を目指すための「リハビリ」が重要な役割を担います。
そのため、老健には「理学療法士」・「作業療法士」・「言語聴覚士」のいずれかの
リハビリ専門職を、「入所者100人につき1人以上」配置することになっています。
また、リハビリに不可欠な「医師」は、「常勤1人以上」の配置が必要です。

入所者の評価、リハビリ計画の作成、専門的なリハビリの提供、生活機能向上プログラムの指導など、医師の指導のもとで質の高いリハビリが提供されるのです。

老健で受けられるサービス

ここでは、老健の入所者が受けられるサービスのうち、「リハビリ」と「医療ケア」について
詳しく解説します。
それら以外に受けられるサービスは、他の介護施設と同様に、身体介護や生活援助、
食事・栄養管理、レクリエーションなどです。

 リハビリ

リハビリは、「週2回以上」・「1回20~30分程度」と定められています。
また、レクリエーションもリハビリの一環です。

  1.  理学療法
    運動機能のリハビリです。
    例えば、寝返りや起き上がり、ベッドから車いすへの移乗などの練習です。
    自宅の寝室からトイレまで歩く練習など、日常生活を意識したリハビリも計画されます。
    温熱療法や電気療法、マッサージなども行います。
  2. 作業療法
    手先の細かい動きのリハビリです。
    例えば、着替えや食事、文字の書き取り、塗り絵、手芸などです。掃除や洗濯、料理など
    生活に関連する動作のリハビリも計画されます。
    さらに、精神疾患や発達障害の方へのサポートも行われるのです。
  3.  言語療法
    コミュニケーション障害や嚥下障害に介入します。
    言語療法では、負担なく行えるコミュニケーション方法の提案や言語リハビリを行います。
    また、摂食嚥下機能回復のためのリハビリも行われます。

 医療ケア

老健には、医師が1人以上常勤しています。さらに、看護師が24時間常駐している場合も多く、
看護師の配置についても特別養護老人ホーム(特養)より手厚いです。
このように充実した医療体制の中で、以下のような医療ケアを受けることが可能です。
  服薬管理、経管栄養、インスリン注射、たん吸引、摘便、浣腸、
  認知症ケア、カテーテル管理、床ずれの処置、疼痛管理、看取りなど

ただし、看護師の夜間配置は義務ではないため、日中のみの勤務となっている施設もあります。
そのため、夜間の医療ケアが必要な場合は、施設を選ぶ際に注意しておきましょう。
なお、夜間の配置基準は、利用者数41人以上の施設では「看護職員または介護職員2人以上」です。

老健の費用相場

老健の費用相場は、以下のとおりです。

  1. 入居一時金: 0円
  2. 月額利用料: 8~15万円程度
    公的施設である老健は、有料老人ホームなどの民間施設とは異なり、「入居一時金は不要」
    となります。
    月額利用料の内訳は、居住費・食費・介護サービス費・サービス加算・その他費用で、
    民間施設と比べて割安です。
    「介護サービス費」と「サービス加算」のみ介護保険が適用され、1~3割の自己負担です。
    他の費用には介護保険は適用されません。
    なお、所得や資産が一定以下の場合は、「居住費」と「食費」が軽減される
    「負担限度額認定制度」があります。
    また、「介護サービス費」の自己負担額が高額になったときは、上限額を超えた分が
    返還される「高額介護サービス費制度」の利用が可能です。

老健に入所するまでの流れを紹介

老健に入所するまでの流れは、以下のとおりです。

  1.  要介護認定
    要介護1以上の方が入所対象なので、要介護認定を受ける必要があります。
  2. 入所の申し込み
    施設に直接申し込みます。入院中ならば医療ソーシャルワーカーに、在宅介護を受けている
    場合はケアマネジャーに相談しましょう。
  3. 面談
    施設側が本人や家族と面談し、要介護度や現在の心身状態、生活状況、必要な医療ケアなどを
    確認します。
  4. 書類提出
    施設利用申込書や健康診断書などを提出します。
  5. 入所判定
    書類と面談の内容をもとに入所判定が行われます。
  6. 契約・入所
    入所可の判定が出れば、契約を締結し入所日を決めます。

まとめ

今回は、「老健」について入所条件などを解説しました。

・要介護者が在宅復帰を目指す施設。
・入所条件は、原則「65歳以上・要介護1以上」。「40~64歳」でも「特定疾病で要介護1以上」
ならば入所可。
・特徴は、「入所期間は原則3カ月」・「リハビリに特化」。
・医師や看護師、リハビリ専門職が配置され、「専門的なリハビリ」や「手厚い医療ケア」などの
サービスが受けられる。
・入居一時金は不要、月額利用料の相場は「8~15万円程度」。
・入所の流れは、「要介護認定」、「申し込み」、「面談」、「書類提出」、「入所判定」、
「契約」。

この記事が、施設への入所を検討されている方の参考になれば幸いです。

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