バイタルサインとは?測定方法や血圧・脈拍の基準値も紹介!

2025.03.03

バイタルサインは、私たちの体の基本的な健康状態を示す重要な指標です。
医療や介護の現場では、バイタルサインを測定することで、患者や利用者の体調変化を
いち早く察知し、適切な対応を取ることができます。
特に、高齢者や持病を持つ方にとっては、日々のバイタルサインの管理が健康維持に欠かせません。

本記事では、バイタルサインの基本的な意味や測定の目的、具体的な測定方法について詳しく
解説します。また、成人と高齢者のバイタルサインの基準値の違いにも触れながら、
実際の健康管理に役立つ情報をお届けします。

さらに、意識レベルの評価方法についても紹介するので、バイタルサインを総合的に理解し、
より適切な健康管理ができるようにしましょう。

バイタルサインとは?

バイタルサインとは、生命維持に必要な体の基本的な機能を示す指標のことを指します。
医療や介護の現場では、患者の健康状態を把握し、異常がないかを確認するために定期的に
測定されます。

具体的には、「脈拍」「血圧」「呼吸」「体温」の4つが主なバイタルサインとされています。
これらの数値を測定することで、心臓や肺の働き、体温調節の状態を知ることができ、
異常があれば早期発見につながります。

さらに、意識レベルもバイタルサインの一つとして評価されることがあり、患者の状態を総合的に
判断する際の重要な指標となります。
バイタルサインは、日常の健康管理にも役立ちます。

特に高齢者や慢性疾患を持つ方は、日々の測定を習慣づけることで、体調の変化を早期に察知し、
医療機関への相談や適切な対応を取ることが可能になります。

バイタルサインを測定する目的は?

バイタルサインの測定は、単に数値を知ることが目的ではなく、患者や利用者の健康状態を把握し、
異常がないかを確認するために行われます。特に、以下のような目的で測定されます。

  1. 異常の早期発見です。
    脈拍や血圧が通常よりも大きく変動していたり、体温が極端に高かったり低かったりする場合、
    感染症や脱水、心疾患などの可能性が考えられます。
    バイタルサインを定期的に測定することで、こうした異常をいち早く察知し、適切な治療に
    つなげることができます。
  2. 病状の経過観察です。
    例えば、風邪やインフルエンザにかかった際、発熱が続いているか、脈拍や呼吸が
    落ち着いているかを確認することで、病状が悪化していないかを判断できます。
    また、持病を持つ方にとっては、バイタルサインの変化が病気の進行を示すこともあるため、
    日々の測定が重要です。
  3. 治療や介護の方針決定にも役立ちます。
    医療機関や介護施設では、バイタルサインの測定結果をもとに、投薬の調整やケアの
    内容を決定することがあります。例えば、血圧が高い場合は降圧剤の服用が検討され、
    呼吸が苦しそうな場合は酸素投与が必要になることもあります。

    このように、バイタルサインの測定は、健康状態の管理や治療の判断において欠かせない
    役割を果たしています。
    特に高齢者や持病のある方にとっては、日々の測定が健康維持の鍵となるため、
    正しく測定し、異常があれば適切に対応することが大切です。

バイタルサインの測定方法

バイタルサインは「脈拍」「血圧」「呼吸」「体温」の4つの指標を測定することで評価されます。
それぞれの測定方法について詳しく見ていきましょう。

 脈拍

脈拍は、心臓が血液を送り出す際に生じる血管の拍動を測定するものです。
一般的には、手首の動脈(橈骨動脈)や首の頸動脈で測定されます。

測定の際は、人差し指、中指、薬指の3本の指を使い、血管の拍動を感じ取ります。
通常、1分間の脈拍数を数えますが、15秒間測定した値を4倍する方法もあります。

脈拍数のほかに、「リズムが一定か」「拍動の強さに異常がないか」も確認することが重要です。
測定の際は、人差し指、中指、薬指の3本の指を使い、血管の拍動を感じ取ります。

 血圧

血圧は、心臓が血液を送り出す際の血管内の圧力を示します。
一般的には、上腕にカフ(血圧計の帯)を巻き、測定を行います。
血圧は「収縮期血圧(最高血圧)」と「拡張期血圧(最低血圧)」の2つの数値で表され、
これらのバランスが健康状態を示す重要な指標となります。

測定の際は、リラックスした状態で行うことが大切です。
興奮やストレスがあると一時的に血圧が上昇するため、正確な値を得るためには安静にしてから
測定しましょう。

血圧が高すぎる場合は高血圧症のリスクがあり、低すぎる場合は立ちくらみや意識障害を
引き起こすこともあります。
特に高齢者は、血圧が急激に変動しやすいため、定期的な測定が必要です。

 呼吸

呼吸は、体内に酸素を取り入れ、二酸化炭素を排出する生命維持に不可欠な機能です。
呼吸数や呼吸のリズム、深さなどを観察することで、呼吸器系の異常や全身の健康状態を
把握できます。

呼吸数は、1分間に何回呼吸をしているかを数えることで評価します。
通常、目視で胸や腹部の動きを観察しながら測定します。
意識がない場合や動きがわかりにくい場合は、手を胸や腹部に軽く当てて確認する方法もあります。

異常な呼吸の例 ・頻呼吸(ひんこきゅう):呼吸数が異常に多い(1分間に25回以上) 
・徐呼吸(じょこきゅう):呼吸数が異常に少ない(1分間に10回未満) 
・不規則な呼吸:呼吸のリズムが乱れている

 体温

体温は、体内の熱のバランスを示す指標であり、発熱や低体温を通じて体調の変化を知る
重要な手がかりとなります。
特に高齢者は体温調節機能が低下しやすいため、日常的な測定が推奨されます。

体温の測定には、以下の方法があります。 

  • 腋窩(えきか)測定:脇に体温計を挟んで測る一般的な方法 
  • 口腔(こうくう)測定:舌の下に体温計を入れて測る(飲食の影響を受けやすい) 
  • 直腸測定:最も正確な測定方法だが、一般的には医療機関で使用される 
  • 鼓膜(こまく)測定:耳の中に体温計を入れて測る迅速な方法

成人のバイタルサインの基準値を紹介

バイタルサインとは、生命活動を維持するための基本的な生理的指標のことを指します。
医療や介護の現場では、バイタルサインを測定し、その変化を観察することで、
健康状態の把握や異常の早期発見につなげています。

特に成人の場合、基準値から大きく逸脱すると、体調不良や疾患の兆候が考えられるため、
定期的な測定が推奨されます。

 脈拍

脈拍とは、心臓の鼓動によって動脈に生じる拍動のことです。
脈拍を測定することで、心臓のリズムや血液の循環状態を把握することができます。
通常、手首の橈骨動脈(とうこつどうみゃく)や頸動脈(けいどうみゃく)で測定されます。

成人の正常な脈拍数は、1分間に60〜100回とされています。
運動をしているときやストレスを感じているときには脈拍が上昇し、安静時には低下します。
ただし、以下のような場合には注意が必要です。

  • 頻脈(100回/分以上):発熱、脱水、貧血、甲状腺機能亢進症、心疾患などの可能性 
  • 徐脈(60回/分以下):運動習慣がある人では正常な場合もあるが、心疾患や電解質異常が
    原因となることも

 血圧

血圧とは、心臓が血液を送り出す際に血管の壁にかかる圧力のことです。
血圧は「最高血圧(収縮期血圧)」「最低血圧(拡張期血圧)」の2つの数値で示されます。
成人の正常な血圧の基準値は以下の通りです。

  • 正常血圧:収縮期血圧120mmHg未満、拡張期血圧80mmHg未満 
    高血圧:収縮期血圧140mmHg以上、または拡張期血圧90mmHg以上 
    低血圧:収縮期血圧90mmHg未満、または拡張期血圧60mmHg未満

    血圧が高すぎると脳卒中や心疾患のリスクが高まり、逆に低すぎるとめまいや失神を
    引き起こす可能性があります。
    血圧は一日の中で変動するため、毎日同じ時間帯に測定し、記録をつけることで異常を
    早期に発見しやすくなります。

 呼吸

呼吸は、体内に酸素を取り込み、二酸化炭素を排出する重要な生理機能です。
正常な呼吸状態を把握することで、呼吸器系や循環器系の健康状態を確認することができます。

成人の正常な呼吸数は、1分間に12〜20回とされています。

呼吸数が増加(頻呼吸)した場合、発熱、感染症、ストレス、肺疾患などが考えられます。
一方で、呼吸数が極端に減少(徐呼吸)すると、意識障害や神経疾患の可能性があるため
注意が必要です。

また、「努力呼吸」や「喘鳴(ぜんめい)」などの異常呼吸が見られる場合も、
医療機関を受診することが推奨されます。

 体温

体温は、身体の恒常性を保つ重要な指標の一つです。
健康な成人の平熱は36.0〜37.0℃の範囲にあり、個人差があります。

体温は日中にわずかに変動し、朝方に低く、夕方に高くなる傾向があります。
発熱(37.5℃以上)が見られる場合、感染症や炎症の兆候である可能性があり、
特に38.5℃を超える高熱が続く場合は注意が必要です。

一方で、体温が35℃以下になる「低体温症」も、血行不良や代謝の低下を示すサインとなるため、
適切な対応が求められます。

高齢者のバイタルサインの基準値を紹介

高齢者のバイタルサイン(生命徴候)は、健康状態を把握するための重要な指標です。
特に高齢者は、身体機能が低下している場合が多いため、日常的にバイタルサインをチェック
することが不可欠です。
ここでは、高齢者における脈拍、血圧、呼吸、体温などの基準値について紹介します。

これらの指標を把握しておくことで、健康管理がより確実に行えるようになります。

 脈拍

脈拍は、心臓が1分間に拍動する回数を示すもので、健康状態や体調の変化を早期に知るために
非常に重要です。

高齢者における脈拍の正常値は、一般的に60~100回/分とされています。
しかし、高齢者の場合は、加齢に伴い心臓の働きが少しずつ弱まるため、正常範囲内でも
変動が見られることがあります。
例えば、安静時の脈拍数が80回/分前後であれば、通常は問題ないとされますが、
急激に速くなったり遅くなったりする場合は注意が必要です。

高齢者の脈拍数が急激に増加する原因としては、発熱、運動、ストレス、薬の副作用などが考えられます。反対に、脈拍が異常に遅くなると、心臓の病気や電解質異常、薬の影響が疑われます。
特に、1分間の脈拍数が40回/分未満の場合は、すぐに医師に相談することが推奨されます。

日常的に脈拍をチェックし、変化があれば早期に対処することが重要です。

 血圧

血圧は、心臓が血液を送り出す圧力を示し、心臓と血管の健康状態を知るための重要な指標です。

高齢者の正常な血圧は、上(収縮期血圧)で120mmHg以下、下(拡張期血圧)で80mmHg以下
とされています。
しかし、高齢者になると、血管が硬くなりやすいため、血圧が少し高めでも正常範囲と
されることがあります。

たとえば、上の血圧が140mmHg以下、下が90mmHg以下であれば、通常は問題ないとされます。
ただし、血圧が異常に高くなると、高血圧による脳卒中や心疾患のリスクが増加します。
逆に血圧が低すぎる場合、立ちくらみやめまいを引き起こすことがあり、特に高齢者では
転倒の危険性が高くなります。

血圧が急激に変動することは避けるべきで、定期的に測定を行い、異常を早期に発見することが
大切です。

 呼吸

呼吸の状態も、体調の変化を知るために重要なバイタルサインの一つです。
高齢者の正常な呼吸数は、一般的に1分間に12〜20回程度とされています。

呼吸数が増加する場合は、体が酸素を十分に供給できていない可能性があり、
肺炎や喘息、心不全などの症状が考えられます。
逆に呼吸数が異常に少ない場合は、呼吸困難や過剰な疲労、意識障害を引き起こすことがあり、
早期の対応が必要です。

また、呼吸が浅く、ゆっくりになった場合も注意が必要です。
特に高齢者は、肺活量が低下しているため、呼吸が浅くなることがありますが、これが
継続的に続くと、低酸素血症を引き起こす可能性があります。
呼吸が速くて深い、または異常に浅くて速い場合は、医師に相談することが重要です。

 体温

体温も高齢者の健康状態を知るための重要な指標です。
正常な体温はおおよそ36.5℃〜37.0℃程度とされていますが、高齢者の場合、体温が少し低め
であっても異常ではないことが多いです。

しかし、体温が急激に上昇する場合、感染症や炎症が疑われます。
また、逆に体温が低すぎる場合(36.0℃以下)は、低体温症や感染症の兆候として警戒が必要です。
特に、冬の寒い時期に低体温症になりやすいので、外出時や室内の温度調節に注意を払いましょう。

高齢者は、体温調節が難しくなるため、特に風邪やインフルエンザ、尿路感染症などで体温が
急に上昇することがあるため、体温をこまめに測定して、異常を早期に発見することが重要です。

意識レベルの評価方法は?

高齢者においては、意識レベルの低下も健康状態の重要なサインとなります。
意識がはっきりしない、反応が鈍い、言葉が出にくいなどの症状は、病気や事故による影響かも
しれません。
高齢者の意識レベルを適切に評価する方法を理解しておくことは、異常の早期発見に繋がります。

一般的には、グラスゴー・コーマ・スケール(GCS)などを使って、意識の状態を評価する
ことが多いです。GCSは、開眼、言語、運動の3つの反応をチェックして評価します

高齢者に限らず、意識レベルが低下している場合にはすぐに医師に相談し、原因を特定することが
大切です。特に、脳卒中や低血糖など、緊急を要する場合もあるため、異常を感じた場合には
早急に対処することが必要です。

まとめ

高齢者の健康を維持するためには、日常的にバイタルサインのチェックが不可欠です。
脈拍、血圧、呼吸、体温といった基本的な指標を把握しておくことで、身体の状態を
把握しやすくなります。
特に高齢者の場合、体調が急変することもあるため、日々のチェックが健康維持に繋がります。

意識レベルについても、注意深く観察し、変化があればすぐに医師に相談しましょう。
常に健康状態を把握することで、高齢者が安心して暮らせる環境を作りましょう。

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