導尿とは?種類や目的・メリットとデメリットも詳しく解説

2025.03.11

導尿は、排尿が困難な方のために尿を体外に排出する医療処置の一つです。
病気や障がい、高齢による機能低下など、さまざまな理由で導尿が必要になることがあります。
特に介護や医療の現場では、適切な導尿方法の選択と管理が重要になります。

導尿には主に「間欠的導尿(清潔間欠自己導尿)」と「持続的導尿(膀胱留置カテーテル)」の
2種類があり、それぞれに特徴やメリット・デメリットがあります。
また、導尿を行う際には、起こりやすいトラブルや、介護施設での受け入れ体制についても
理解しておくことが大切です。

本記事では、導尿の基礎知識から種類ごとの特徴、注意点について詳しく解説していきます。

導尿とは

導尿とは、膀胱内に溜まった尿をカテーテルを使用して体外に排出する医療行為のことを指します。
排尿は腎臓で作られた尿が膀胱に溜まり、適切なタイミングで尿道から排出されることで
成り立っています。しかし、何らかの理由で尿がスムーズに排出されない場合、導尿によって
人工的に排尿を促す必要があります。

導尿は、一時的な処置として行われる場合と、継続的な管理が必要な場合があります。
例えば、手術後の一時的な排尿障害に対して行われることもあれば、神経因性膀胱などの病気で
長期的に導尿が必要になることもあります。
このように、導尿は排尿障害がある方の生活の質を向上させるために重要な役割を果たします。
次の項目では、導尿の目的について詳しく見ていきましょう。

 導尿の目的

導尿は、主に以下の目的で行われます。
排尿障害の改善 神経因性膀胱や前立腺肥大症などの疾患により、自力での排尿が困難な方が、
安全に尿を排出できるようにすることが最大の目的です。尿を排出できないと、膀胱に尿が
溜まりすぎて膀胱の機能が低下し、腎臓にも悪影響を及ぼす可能性があります。

感染症や合併症の予防 尿が膀胱内に長時間滞留すると、細菌の繁殖が進み、尿路感染症や
腎盂腎炎を引き起こすリスクが高まります。適切な導尿を行うことで、これらのリスクを
軽減できます。

生活の質(QOL)の向上 頻繁な尿意や失禁の不安があると、外出や日常生活に支障をきたすことが
あります。導尿を適切に行うことで、こうした不安を軽減し、より快適な生活を送ることが
可能になります。

導尿の種類

導尿には大きく分けて「間欠的導尿(清潔間欠自己導尿)」「持続的導尿(膀胱留置カテーテル)」の2種類があります。それぞれの特徴や使用される場面について詳しく解説します。

 間欠的導尿(清潔間欠自己導尿)

間欠的導尿とは、一定の時間ごとにカテーテルを挿入し、膀胱内の尿を排出する方法です。
多くの場合、自分で行う「清潔間欠自己導尿(CIC)」が推奨されており、医師の指導のもと、
適切な手技を学びながら実施します。この方法の利点は、常にカテーテルを装着する必要がなく、
感染リスクを低減できることです。

また、排尿のコントロールが可能になるため、日常生活への影響が少なく、より活動的な
生活を送ることができます。適応されるのは、脊髄損傷や神経因性膀胱の患者さん、または
排尿機能の回復を目指す方などです。
導尿のタイミングや頻度は個人の排尿状態に応じて異なりますが、一般的には1日4〜6回程度行います。

 持続的導尿(膀胱留置カテーテル)

持続的導尿とは、カテーテルを尿道または腹壁(膀胱瘻)から膀胱に留置し、常に尿を体外へ
排出する方法です。一般的には、高齢者や重度の疾患を抱える方、または手術後の一時的な
導尿として使用されます。

膀胱留置カテーテルには、尿道カテーテルと膀胱瘻カテーテルの2種類があります。

  • 尿道カテーテル:尿道からカテーテルを挿入し、尿を排出する方法で、病院や介護施設で
    よく用いられます。
  • 膀胱瘻カテーテル:腹部に小さな穴を開け、膀胱に直接カテーテルを挿入する方法で、
    長期的な使用が必要な場合に適しています。

    持続的導尿は、排尿管理が容易になる一方で、感染リスクや皮膚のかぶれなどの問題が
    発生する可能性があるため、定期的なケアが欠かせません。

【種類別】メリット・デメリットを紹介

導尿には、大きく分けて「間欠的導尿(清潔間欠自己導尿)」「持続的導尿(膀胱留置カテーテル)」の2種類があります。それぞれの導尿方法には利点がある一方で、注意すべき点も存在します。
自分や家族の状態に合った方法を選ぶためには、それぞれの特徴をしっかりと理解することが
大切です。

 間欠的導尿(清潔間欠自己導尿)のメリット・デメリット

  • メリット 
    間欠的導尿は、一定の時間ごとにカテーテルを挿入し、尿を排出する方法です。
    この方法の最大のメリットは、膀胱機能をできるだけ維持できる点にあります。
    長時間カテーテルを入れっぱなしにしないため、膀胱の萎縮を防ぎ、感染リスクも
    比較的低いとされています。
    また、適切な方法で行えば、日常生活において比較的自由度が高くなります。
    例えば、自宅や外出先でも自己導尿を行うことができ、尿道への長期的な負担を
    軽減できるため、生活の質を維持しやすい点も魅力です。
  • デメリット 
    一方で、間欠的導尿には習得が必要です。
    特に、初めて導尿を行う方にとっては、カテーテルの扱いに慣れるまでに時間がかかることが
    あります。また、導尿の頻度が1日に数回必要となるため、手間がかかる点もデメリットと
    言えます。さらに、衛生管理が不十分だと、尿路感染症を引き起こす可能性があります。
    特に、手指の消毒やカテーテルの清潔保持が徹底されていない場合、感染リスクが
    高まるため注意が必要です。

 持続的導尿(膀胱留置カテーテル)のメリット・デメリット

  • メリット 
    持続的導尿は、カテーテルを尿道または下腹部の膀胱に直接挿入し、持続的に尿を
    排出する方法です。この方法の大きなメリットは、導尿の手間がかからないことです。
    特に、寝たきりの方や自己導尿が難しい方にとっては、介護の負担を軽減できるため有効です。
    また、定期的な導尿を行う必要がないため、本人の負担も軽く、介護者にとっても管理
    しやすい点がメリットと言えます。さらに、尿意を感じることなく自然に排尿が行われるため、
    尿意に悩まされることが少なくなる点も特徴です。
  • デメリット 
    しかし、持続的導尿にはデメリットもあります。
    最も大きな問題は、感染症のリスクが高いことです。カテーテルを長期間挿入し
    たままにするため、細菌が尿道を通じて膀胱に侵入しやすく、尿路感染症のリスクが高まります。また、長期間使用すると、膀胱の萎縮や尿道の損傷が起こる可能性もあります。
    特に、カテーテルの管理が適切に行われない場合、カテーテルの詰まりや膀胱結石のリスクも
    あるため、定期的な交換と適切なケアが必要です。

【種類別】起こりやすいトラブルを紹介

導尿は、適切に管理しないとトラブルが発生することがあります。
特に、間欠的導尿と持続的導尿では、起こりやすいトラブルの種類が異なります。

 間欠的導尿(清潔間欠自己導尿)の場合

間欠的導尿では、適切な方法で行わないと尿路感染症が発生しやすくなります。
また、カテーテルの挿入時に痛みを感じることがあり、慣れないうちは導尿のたびにストレスを
感じることもあります。さらに、導尿の頻度が十分でないと、膀胱内に尿が溜まりすぎて
膀胱炎を引き起こすことがあります。

逆に、頻繁に導尿を行いすぎると、尿道に負担がかかり炎症を引き起こすこともあるため、
適切なバランスが求められます。

 持続的導尿(膀胱留置カテーテル)の場合

持続的導尿では、カテーテルの交換が適切に行われない場合、カテーテルの詰まりや尿漏れが
発生することがあります。また、長期間使用することで膀胱の機能が低下し、カテーテルを外した
際に排尿がうまくできなくなるケースもあります。

さらに、膀胱炎や尿道炎が発生しやすく、症状が悪化すると腎盂腎炎(じんうじんえん)を
引き起こす可能性もあります。そのため、定期的な尿検査や、カテーテルの清潔な管理が
欠かせません。

介護施設における膀胱留置カテーテルの受け入れ体制

介護施設では、膀胱留置カテーテルを使用している方の受け入れ体制が施設によって異なります。
特に、特別養護老人ホームやグループホームでは、医療的ケアの提供範囲に制限があるため、
事前に施設側と相談することが重要です。

介護付き有料老人ホームや医療法人が運営する施設では、看護師が常駐していることが多く、
カテーテル管理を受けられる場合があります。しかし、施設によっては対応が難しい場合もあるため、入所を検討する際は確認が必要です。

まとめ

間欠的導尿と持続的導尿は、それぞれ異なる特徴とメリット・デメリットを持っています。
間欠的導尿は感染リスクが低く、膀胱機能を維持しやすい一方で、自己管理が求められます。
持続的導尿は、長期間の排尿管理が可能ですが、感染症のリスクが高まるため、
定期的な管理が必要です。

介護施設における受け入れ体制も施設ごとに異なるため、事前に確認することが大切です。
導尿が必要な方やそのご家族は、適切な導尿方法と介護施設の選択肢についてしっかりと理解し、
最適な環境を選ぶことが重要です。

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