訪問看護とは、看護師など医療関係者が自宅に訪問して、主治医の指示にもとづいて療養上必要な世話や医療行為をおこなう看護サービスと定義されています。
厚生労働省の調査によると、現在(2023年)訪問看護の利用者数は年々増加し、今後も増加することが見込まれています。
その理由として「病気や障害があっても、住み慣れた自宅で暮らしたい」「人生の最期を自宅で迎えたい」と望む利用者が増えていることにあります。
でも「家族だけで医療と介護両面のケアができるか不安」、「一人暮らしだけど大丈夫か」といった不安を訪問看護では在宅ケアサービスの選択肢のひとつとして支えるものです。
訪問看護では、主に患者の健康管理を行います。
患者の身体的な状態や精神的な状態を把握した上で、病気の悪化を防ぐための自宅における生活指導、自己管理方法や自立を促すアドバイスやサポートを行います。
訪問看護で受けられるサービスは大きく分けて6つです。
・健康状態の管理と看護
・療養上の相談
・医療処置
・薬の管理相談
・リハビリテーション
・病院から自宅への移行支援
これらをメインで行うサービスです。
訪問看護を提供している事業所は「訪問看護ステーション」「診療所などの保険医療機関」「定期巡回・臨時対応型訪問介護看護事業所」「看護小規模多機能型居宅介護事業所」「民間の訪問看護サービス」ですが、これらについて利用する方が専門知識を身につける必要はないので、必要に応じてケアマネージャーや市区町村の窓口に相談し、自宅療養するうえで最良の選択肢を取りましょう。
それでは訪問看護サービスの内容についてわかりやすく解説していきます。
利用者の多くは「訪問看護」と「訪問介護」の違いについてわかりにくいと感じています。
本章では、訪問看護と訪問介護の違いについて解説します。
まず「訪問介護」とはホームヘルプサービスともいい、自宅にヘルパーが訪問し、掃除、洗濯、調理、買い物など、家事等の生活援助や食事、排せつ、入浴の介助を行う身体介助を目的としています。
それに対し「訪問看護」では、看護師、准看護師、保健師が医師の指示に基づいて自宅を訪問し、病状の観察、医師の指示にもとづく点滴などの医療行為、在宅酸素などの医療機器の管理、身体の清拭や入浴介助、食事、排せつの介助といった療養上の世話などをおこないます。
他にはご家族の相談にのったり介護方法の指導や認知症のケア、栄養面や運動面についてのアドバイスを行います。
また、がんの末期などターミナルケアをおこなう上では、医師と連携した訪問看護による状態観察や処置が欠かせません。
病気があり医療的なケアをするために「訪問看護」を利用する点が訪問介護との一番大きな違いです。
また、医療保険と介護保険の両方で受けられるサービスなので、どちらも安心して利用することができます。 その違いについては後述します。
それでは具体的に訪問看護で受けることのできるサービスを解説していきます。
①療養生活の相談・支援
具体的には食事や運動、口腔ケア、排せつ介助、洗髪、入浴介助、陰部洗浄などをおこないます。
②病状や健康状態の管理と看護
患者の健康管理を適切におこない、病状が悪化しないように心身の状態に応じた予防的支援をおこないます。
③薬の管理の相談
療養上必要な薬を処方されても、うっかり飲み忘れてしまうことは誰にでもあることですので、訪問看護では、かかりつけ医から処方された薬を用法用量を守って飲めているかの相談にも応じます。また体調の変化などがみられる場合には、かかりつけ医に連絡したりして投薬の面からサポートもおこないます。
④医療処置、治療上の看護
かかりつけ医の指示にもとづいて点滴や注射、たんの吸引などの処置をおこない、病状の悪化を防いだり日々の生活を送りやすくするためのサポートをおこなうことができますし、さらに重要な役割として投薬面のサポートだけでなく、体調の変化がみられる場合にかかりつけ医に直接連絡して、適切な処置を受けられるのも訪問看護の重要な役割です。
⑤リハビリテーション
日常生活に必要な筋力の訓練や運動能力の回復、維持を目的としたものや、床ずれ、肺炎などの合併を予防するために必要なアドバイスや支援を相談できる力強い存在です。
⑥病院からの移行支援
退院した後に自宅に戻るときや、病院から直接施設に入居するときも病院との連携や在宅生活の準備、指導を看護師が行い、移行にあたる手続きやサポート体制が得られることは大きなメリットであり、患者やご家族にとって安心できるサービスです。
訪問看護では病気を抱えている方で在宅療養が必要なすべての方が対象となります。
しかし、年齢や疾患によって介護保険と医療保険のどちらを利用できるかが変わってきます。
介護保険を利用した訪問看護の条件は65歳以上であるか40歳~65歳未満の方で、特定疾患を持っている方が対象となります。
介護保険申請をして要支援、要介護認定を受ければ、他の通所介護サービスや訪問介護サービスと併用することができます。
それに対し医療保険を利用する条件は、65歳以上で医師が訪問看護の必要性を認める方で、介護保険の要支援、要介護に該当しない方(介護保険を利用しない方)です。
また、40歳以上65歳未満でも、医師が訪問看護の必要性を認めた方で特定疾患を持っている方が対象になります。
40歳未満でも医師が訪問看護の必要性を認めれば利用することができます。
ただし注意すべき点は、介護保険の訪問看護と医療保険の訪問看護は併用できないので、その点はケアマネージャーや市区町村の窓口に相談しましょう。
訪問看護に必要な費用は、訪問時間の長さや頻度によって異なります。
新規で訪問看護を利用する場合や緊急時に利用する場合など、特定の場面で利用が必要になると加算(プラス料金)が発生することがあるので、事前に確認しておきましょう。
介護保険を利用する場合は、一番自己負担が少ないケース(要支援1で自己負担割合1割)で月ので最大自己負担額が5,032円、一番自己負担が多いケースで(要介護5で自己負担割合2割)最大己負担額が72,434円になります。
一方医療保険では支給限度額がなく、70歳以上であれば医療負担額が原則1割ですが、所得に状況に応じて2~3割になります。
費用面で注意すべきは、介護保険でも医療保険でも個人の身体的状態、経済的状態によって利用できる限度額、利用頻度、利用内容が変わってきますので、サービスを受ける前にしっかりとケアマネージャーや市区町村の窓口に相談しましょう。
続いて、訪問看護を利用するメリットを解説していきます。
①在宅で専門的なケアが受けられる
訪問看護では、看護師や准看護師などの専門職が訪問するので、在宅にいながら医療の専門的処置が受けられることが大きなメリットと言えますし、住み慣れた自宅で高度な医療が受けられることも患者本人の安心につながります。
②通院の手間と負担が省ける
高齢者の場合、医療機関を受診すること自体に大きな負担や不安を抱えるケースが多いので、そのような状態の方が通院の手間と費用を抑え医療処置やリハビリを自宅で受けられることは患者本人やご家族にとっても大きなメリットです。
③ご家族の介護負担の軽減(レスパイト目的)
自宅療養において家族が看護や介護をする場合、肉体的にも精神的にも大きな負担があります。 特に仕事をしている方にとって両立が難しいことからも、訪問看護を利用することで自宅でのケアを看護師になどの専門職に任せられるので、ご家族の負担を大きく軽減できます。
④退院後も住み慣れた自宅での療養を安心して送れる
訪問看護が重要な点のひとつに、自宅で医療機関と同レベルの医療処置を受けられる点が退院から在宅移行する際に大きな手助けとなります。 また、自宅で生活、療養することで生活の質(QOL)の向上につながりますので、患者にとては必要な医療サポートによって充実した療養生活が送れること、ご家族にとっては介護負担が大幅に軽減されるので、非常に重要なサービスといえます。
ここまでの解説で、訪問看護は自宅療養する際に安心した生活ができることや生活の質を上げる重要な役割を果たすことが分かります。
この記事で訪問看護についてご理解いただけたと思いますが、知識を持っていても実際に利用する段階になると焦ってしまう方が多いのが実情ですので、市区町村窓口やケアマネージャーとの相談は早めに行っておきましょう。
サービスの種類や費用面は複雑なので、事前にケアマネージャーや市区町村の窓口、病院などでパンフレットをもらっておくことも安心材料のひとつになります。
また、実際に訪問看護を受けられた方や訪問看護をおこなっている看護師の仕事を解説した情報を動画サイトで見ることもできますし、看護ルー!(カンゴルー⇒看護情報を提供するサイト)でも役割などが詳しく掲載されているので、そちらをご覧いただくことも事前準備に役立つことでしょう。
ご自宅での療養を希望される方にとって、多くの方が利用されるサービスなので、訪問看護サービスというものの存在を知っておくことをおすすめします。