ADLとは何かわかりやすく簡単に解説!種類や評価方法なども紹介!

2023.06.15
  • 介護の豆知識

ADLとは、日常生活をおくる上で必要最低限の動作を指します。 医療や看護、介護、福祉の現場では、対象者のADLを評価する必要があるのです。

この記事では、ADLとは何かを分かりやすく、簡単にまとめました。 ADLの種類や、評価方法も詳しくご紹介いたします。 また、医療や看護、介護、福祉の現場でADLを評価する意味や、目的も解説。

「ADLについて詳しく知りたい」という方に、おすすめの記事となっています。

ADLとは何かわかりやすく簡単に解説!

ADLとは、日常生活動作(Activities of Daily Livingの略)のこと。 日常生活を送る上で、最低限必要な動作を指します。 ADLに含まれる動作は、以下の通りです。

【起居動作・移乗・移動・食事・更衣・排泄・入浴・整容】

ADLは、医療や看護・介護や福祉の現場において、高齢者や障がい者の方の身体能力や、日常生活で困難な動作を知る重要な指標です。 リハビリテーションや機能訓練の効果判定や、要介護認定の調査などに用いられます。

ADLが低下すれば、自力での日常生活が困難となり、より多くの介護が必要になります。 高齢者や障がい者の方のADL低下を予防するためには、リハビリテーションや機能訓練などが重要と言えるでしょう。

ADLの種類

ADLとは、BADLとIADLの2種類があります。 日常生活動作において、BADLは基本的な動作を、IADLはより複雑な動作を指します。

この章では、BADLとIADLそれぞれの意味をわかりやすくまとめました。 それぞれの特徴を知ることで、よりADLへの理解を深めることができるでしょう。

BADL

BADLとは、基本的日常生活動作(Bacic ADLの略)のこと。生活に必要な最低限の動作を指すため、一般的にADLそのものと捉えることが多いです。

BADLに含まれる動作は、以下のようなものがあります。

・起居動作(ベッドからの起き上がりや立ち上がりなど)
・移動(歩行や車いすでの移動、階段昇降など)
・移乗 ・食事(自分で食事を摂れる、嚥下状態など)
・更衣 ・排泄(トイレの使用動作、オムツ使用の有無など)
・入浴 ・整容(洗面、整髪、化粧、髭剃りなど)

どの動作も、日常で最低限必要と言えます。 そのため、一つでも自力で行うことが困難になれば、介護が必要となります。

IADL

IADLとは、手段的日常生活動作(Instrumental ADLの略)のこと。

BADLに比べて、より高度な日常生活動作を指します。 IADLに含まれる動作は、以下のようなものがあります。

・家事全般(掃除、料理、洗濯など)
・電話の使い方
・買い物
・公共交通機関を利用した移動
・予定や服薬、金銭の管理

IADLは、BADLに比べてより複雑な動作と言えます。 例えば、BADLでの「移動」は歩行や車いすでの移動ですが、IADLでは公共交通機関を利用する移動です。

高齢者は多くの場合、まずIADLが低下し、次にBADLが低下していきます。 もしもIADLの低下が見られれば、いずれBADLも低下すると考え、注意・対応すると良いでしょう。

ADLの評価方法とは?

ADLの代表的な評価方法に、「FIM」と「BI」があります。

ADLとは、機能訓練計画や看護計画における重要な指標です。 また、介護度認定やADL維持等加算の認定においても、ADLの評価が必要になります。

「FIM」と「BI」の特徴などを把握することで、使用目的に適した評価方法を選択しましょう。 詳しくご紹介いたします。

評価方法「FIM」とは?評価項目も紹介

ADL評価方法の一つである「FIM」(Functional indepedence measure)。 機能的自立度評価法と言い、対象者が実際に「している動作」を評価する方法です。

この章では、FIMについて特徴やメリットをまとめました。 また、評価項目もご紹介いたします。

FIMの特徴やメリット

FIMは、日常生活での「しているADL」を評価するため、介護者の負担度を評価できるという特徴があります。

もしも1日の中でADLに変動がある際は、より介護度の負担が大きい場合を評価します。 評価対象は7歳以上です。

また、令和4年度の診療報酬改定により、疾患別リハビリテーション料にはFIMの評価が月1回以上必要となりました。

厚生労働省のホームページにて、参考資料が開示されています。 FIMを行うメリットは、以下の通りです。

・対象者のADLの自立度・介護量を点数化することができる
・国際的に使われている評価スケールなため、他職種間で共通して使用でき、情報共有がしやすい
・ADL能力について、対象者本人や家族にわかりやすく説明できる
・現状での生活課題が何かを明確にでき、看護計画や機能訓練計画、治療の指標となる
・定期的にFIM評価をすることで、機能訓練での効果判定ができる
・研究や学会発表でのデータに使用しやすい

FIMの評価項目

FIMの評価項目は、実際に行っている動作である「運動」と、認知機能の「認知」の大きく2種類に分かれます。さらに細かく計18項目に分かれています。

まず、運動項目(13項目)は以下の通りです。

【セルフケア】
①食事…食べ物を適切に口に運び、咀嚼・嚥下するところまでを評価。配膳・下膳は評価対象外。
②整容…整髪、手洗い、口腔ケア、洗顔、髭剃り、化粧について評価。
③清拭…首から下(背中は対象外)が洗えるかを評価。シャワー浴や清拭でも可。
④更衣上半身…腰より上の更衣で、服や下着・装具の着脱と、衣服の準備や後始末を評価。
⑤更衣下半身…腰より下の更衣で、服や装具・靴や靴下の着脱と、準備や後始末を評価。⑥トイレ動作…会陰部の清潔保持(後始末を含む)と、衣類の上げ下ろしを評価。

【排泄コントロール】
⑦排尿管理…排尿の完全なコントロール、および排尿コントロールに必要な薬剤や器具の使用を評価。
⑧排便管理…排便の完全なコントロール、および排便コントロールに必要な薬剤や器具の使用を評価。

【移乗】
⑨ベッド・椅子・車いす移乗…ベッド・椅子・車いすでの立ち上がりや起き上がり、移乗動作を評価
⑩トイレ移乗…便器に移ること、便器から離れる動作を評価。日中と夜間で介助の有無が違う場合は、点数が低い方を採用。
⑪浴槽移乗…浴槽に入り、出るまでの動作、および浴槽内での立ち上がりを評価。浴槽までの移動は評価対象外。

【移動】
⑫歩行・車いす…歩行、平地での車いすでの移動を評価。移動可能距離を50mと15mの2段階に分けて評価する。
⑬階段…屋内の12~14段の階段昇降動作を評価。 続きまして、認知項目(5項目)は以下の通りです。

【コミュニケーション】
⑭理解…相手の指示や、会話で伝えたいことを正しく理解できるかを評価。
⑮表出…相手に伝えたい内容を、言葉またはジェスチャーで正しく伝えられるかを評価。

【社会的認知】
⑯社会的交流…家族や他の患者・スタッフと適切に関われるのか、集団行動をとれるのかを評価。相手に迷惑や不快感を与えていないか、理解できるかがポイント。
⑰問題解決…日常生活に即した問題を、安全かつ的確に解決できるのかを評価。
⑱記憶…日常生活を送る上で必要なこと(日課やよく会う人への認識、依頼されたことへの実行)をよく覚えているのかを評価。

FIMは、上記の18項目を1~7点で評価し、合計点でADLを評価するのです。

評価方法「BI」とは?評価項目も紹介

FIMと同じく、代表的なADL評価方法である「BI」(Bathel Index)。 対象者の「できるADL」を、短時間かつ簡単に評価できます。

この章では、BIの特徴やメリットをまとめました。 また、評価項目についてもご紹介いたします。 FIMとの違いを知りたい方に、おすすめの内容です。

BIの特徴やメリット

BIは、評価項目が10項目と、他のADL評価方法に比べて比較的少ないのが特徴です。 採点は100点満点で行われ、「できるADL」を評価します。

例えば、日常生活で行っていない動作でも、リハビリや評価時にできれば「できる」と評価されます。 そのため、実際の生活では問題が無いか、注意して聞き取りをしなくてはいけません。 BIのメリットは、以下の通りです。

・評価項目が10項目、評価区分が2~4段階と簡単なため、誰でも短時間で行える
・ADLの評価結果が点数化されるため分かりやすく、対象者や家族に説明しやすい
・世界共通の評価方法なため、職種や国籍関係なく、情報を共有しやすい

BIの評価項目

BIの評価項目は、食事や入浴、歩行など全10項目となっています。詳細は、以下の通りです。

①食事…適当な時間内に食べられるのか、介助が必要かを評価。自助具の使用は可。

②移乗(車いすからベッドへ)…車いすとベッド間の移乗を、自分で安全にできるかを評価。車いすを使用していない時点で自立となる。

③整容…洗顔や手洗い、歯磨き、髭剃り、化粧の準備や動作を自分で安全に行えるかを評価。

④トイレ動作…トイレへの出入りや衣類の上げ下ろし、お尻を拭く、トイレを流すといった動作を評価。ポータブルトイレや尿器の使用は可。

⑤入浴…浴槽に入る、シャワーの使用、体や頭を洗うといった動作を評価。シャワー浴でも可。

⑥歩行…平地での歩行、または車いすでの移動を評価。移動距離の目安は45mとする。補装具(車いす、車輪付き歩行器は除外)の使用は可。

⑦階段昇降…階段を自分で安全に昇降できるかを評価。階段の段数は定められていない。手すりや松葉杖、手すりの使用は可。

⑧着替え…衣類や下着、靴下、靴、装具やコルセットを着用できるかを評価。

⑨排便コントロール…便失禁がないかを評価。座薬や浣腸を使用している場合、自分で行えるかを評価。

⑩排尿コントロール…尿失禁がないかを評価。収尿器を使用する場合は、着脱・清掃管理ができるかを評価。

BIは、上記の項目に対し10、5、0点と3段階で評価を付けます。ただし、移乗と歩行は15点を入れた4段階、整容と入浴は5・0点の2段階評価です。

介護・看護・福祉・医療現場でADLを評価する意味や目的とは?

介護・看護・福祉・医療現場でADLを評価することは、対象者のADL能力を客観的に把握する意味があります。 また、ADLを評価する目的としては、ADLの低下予防や、入院中の状態変化の把握などがあります。

まず、ADLを評価する意味について詳しく解説いたします。 介護・看護・福祉・医療現場では、ADLを「自立」・「見守り」・「一部介助」・「全介助」などと分けて評価。 対象者が、施設や病院、自宅においてどのように日常動作を行えるのか、客観的に評価・把握する意味をもつためです。

対象者のADLを把握することで、ADLの低下要望などの目的に活かせます。 ADLを評価する目的は、以下のようなものがあります。

・ADLの低下を予防し、対象者の自立した生活の維持や、介護現場の負担軽減をはかる
・入院中・入所中にADLが回復しているかの確認や、手術や治療後の回復目標に根拠として使用するため
・機能訓練やリハビリテーションでの効果判定に用いる
・看護計画や介護計画に反映し、できる動作まで介助せず、自立をサポートする
・他職種間での情報共有に役立てる(退院後の入所施設検討や、自宅生活での住宅改修や介護サービスの立案など)

様々な意味や目的をもつため、ADLの評価は重要視されています。

まとめ

ADLは、対象者の身体能力や、日常生活で困難な動作を知る重要な指標です。 ADLには基本的日常生活動作のBADLと、さらに複雑な動作のIADLの2種類があります。

高齢者は多くの場合、まずIADLが低下し、次にBADLが低下しますので注意しましょう。 ADLの代表的な評価方法は「FIM」と「BI」。 使用目的に適した評価方法を選択するために、特徴やメリット、評価項目を把握することが重要です。

介護・看護・福祉・医療現場において、ADLの評価は、対象者の日常動作を客観的に把握する意味をもちます。

また、対象者の自立生活を維持する、機能訓練やリハビリテーションの効果判定など、様々な目的もあるのです。 ぜひADLについて理解を深め、対象者に適した医療や看護、介護を提供しましょう。

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