高齢者虐待防止法とは?定義や正式名称、理念なども詳しく解説!

2023.07.17
  • 介護の豆知識

高齢化が進む日本で、高齢者への虐待が増加しているのはご存じでしょうか。 高齢者虐待は高齢化に伴って増えている社会的問題です。 それを防ぐために制定されたのが、高齢者虐待防止法です。

この記事では、高齢者虐待防止法の定義や理念、虐待の内容や防止するための取り組みを紹介していきます。

高齢者を虐待から救うための法律を理解しておきましょう。 なお、この記事では平成十七年法律第百二十四号 「高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律」に記載されている 条文を参考にしています。

高齢者虐待防止法とは何か簡単に解説

平成18年度から施行された高齢者虐待防止法。 法律名から大まかな内容は理解できそうですが、まずはこの法律の定義や理念は何なのか、基本的な内容について解説します。 間違った理解をしないためにも、定義や理念について知っておきましょう。

高齢者虐待防止法の定義や理念

高齢者虐待防止法、正式名称「高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律」には、大きく2つの目的があります。

虐待から高齢者の権利や尊厳を保持すること、そして養護者の介護負担の軽減と支援です。 ここでの高齢者は、65歳以上の人のことを指します。

「高齢者への虐待を防ごう」という大きな目的はありますが、それを実現するためには高齢者の保護だけでなく、養護者、つまり介護する側の人たちへの支援も必要になります。 この2つを理念として、高齢者への虐待を防ぐことが目的です。

高齢者虐待防止法が制定された理由

高齢者虐待防止法が制定された理由には、以下のようなものがあります。

  • 高齢化社会による高齢者の増加
  • 養護者の増加
  • 介護への関心、意識の低さ
  • 高齢者の自立度の低さ
  • 介護費の増加など社会的ストレス
  • 養護者と高齢者の関係性

養護者とは、養護・介護施設などに勤めていないが高齢者を養護・介護する人のことを指します。 高齢化によって自宅などでも介護が必要となり、介護に関わらなければいけない機会が増えたことで、高齢者への虐待が増加した背景があります。 養護者は介護への関心や意識の低さから、介護従事者は業務が忙しくなったことによるストレスから虐待が起きてしまいます。 高齢者虐待における加害者は養護者や介護従事者ですが、加害者になってしまう人も精神的に追い詰められている傾向があります。

高齢者への虐待が起きるのはどんなケース?

高齢者への虐待にはどのようなケースがあるのでしょうか。 近年深刻とされている高齢者への虐待ですが、発生するシチュエーションとして多いのは主に2つあります。 どんな場合に虐待が起きやすいのか、場面ごとに紹介していきます。

家族や親族からの虐待

自宅などで介護をする場合、高齢者の家族や親族といった養護者から虐待を受ける場合があります。

養護者は介護に関する知識が浅く、関心や意識が低い傾向があります。高齢者の介護にストレスを感じやすく、虐待を起こしてしまうことがあるようです。 慣れない介護に時間を取られると、高齢者以外の人と接する機会も減少します。 閉鎖的な空間は虐待の隠蔽を可能にするため、手を出してしまうことがあるようです。

また、家族や親族といった近しい関係性であることも虐待の要因になり得ます。 関係性が近い故に適当な態度が表面化しやすく、それがお互いにストレスになることで虐待が起こりやすい環境になってしまいます。

入居施設での虐待

高齢者が入居した施設で虐待が起こる場合があります。養介護施設に従事する人が手を加えてしまうケースもあるのです。高齢化社会により養介護施設に入居する高齢者が増え、比例して従事者の業務量も増えました。

人手不足も重なり、命に関わる仕事を多く任され、ストレスを抱えやすくなった背景があります。 加えて高齢者の患者、特に認知症を患った患者の言動に振り回されることで心身ともに疲弊してしまいます。

しかもそのような言動を受け止める必要があるため、誰かに相談することもなくストレスが蓄積されていきます。 患者からのセクハラや暴力などに耐えかねて、虐待を起こしてしまうことがあるそうです。

虐待にはどんな種類がある?

養護者や養介護施設従事者がストレスを抱えることで虐待は起きてしまいます。 では、実際にどのような虐待をしてしまうのか。

高齢者虐待防止法で定められている高齢者への虐待の種類を紹介していきます。 どんな虐待が行われるのか、把握しておきましょう。

身体的ダメージを与える虐待

高齢者に対して身体的なダメージを与える行為は、高齢者虐待に当たります。 養護者や養介護従事者が意図的に高齢者を殴ったり蹴りつけたりして、高齢者にアザや傷などを負わせる暴力的行為は虐待の対象です。

また、外出などの行動を制限し、拘束することも身体的ダメージに当たります。 それが高齢者の安全のための一時的なものであれば問題になりませんが、意図的かつ継続的な制限や禁止、拘束は虐待と見なされます。 直接的な暴力行為だけでなく、高齢者に対する過度な拘束や制限も身体的ダメージの対象です。

介護放棄による虐待

介護による支援を必要としている高齢者を放置・放任することをネグレクトと言いますが、ネグレクトも虐待に当たります。 食事や入浴、排泄などの支援や世話を怠ると、高齢者は心身が衰退してしまいます。

こうした行為が意図的に行われている場合、ネグレクトに該当します。 高齢者が生活する部屋の掃除をしない、換気をしないなどの環境整備を放棄する場合も介護放棄と見なされます。

また、医療・介護サービスの利用を制限することも介護放棄に該当します。 医療・介護サービスが必要な状態であるにも関わらず、それを制限することで高齢者の容態を悪化させてしまいます。

精神的ダメージを与える虐待

身体的ダメージだけでなく、精神的ダメージを与える行為も虐待に当たります。 脅迫や侮辱、無視といった言葉・態度で間接的にダメージを与える行為が該当します。 こうした言葉や態度で高齢者は精神的苦痛を感じ、心を弱らせてしまいます。

精神的ダメージは表面化されにくく、高齢者が声を上げない限り周囲が虐待に気付くのは困難です。 ましてや閉鎖的な空間かつ力関係がはっきりしている状態では、高齢者も声を上げにくくなってしまいます。 言葉や態度で精神的にダメージを加える行為も、虐待と見なされます。

金銭に関する虐待

高齢者虐待には、金銭的な問題もあります。経済的虐待として挙げられるのが、金銭に関する虐待です。

主に介護が必要な高齢者が所有する金銭や財産を無断で使用することが、金銭的虐待に該当します。 金銭を勝手に使う、財産を無断で売却して利益を得る行為は高齢者の資産にダメージを与えます。

また、高齢者の金銭使用を過度に制限することも金銭的虐待に該当します。 例えばタバコの購入に対する制限には理由が十分にありますが、理由もなしに制限することは虐待と見なされます。

性的虐待

高齢者が望まない一方的な性的行為は、性的虐待に当たります。 性的な接触行為、裸の状態を放置する行為、猥褻な言葉を投げかけるといった行為は、全て性的虐待に該当します。

また、高齢者に性的行為を強要するような言動も含まれます。 高齢者の介護には入浴や排泄の支援も含まれるため、性的虐待は男女問わず起こる可能性があります。 また、一方的な性的虐待によって高齢者に精神的ダメージを与えることにも繋がります。 性的な嫌がらせも、高齢者虐待に当たります。

虐待防止への取り組み

近年深刻になっている高齢者への虐待。 住居や施設で行われる表面化しにくい問題を防ぐために、どんな取り組みが必要なのでしょうか。

介護に関わる人も、そうでない人も知っておかなければいけません。 高齢者虐待を深刻化させない、未然に防ぐ取り組みについて紹介します。

通報義務や通報先の周知

高齢者虐待防止法第二章第七条では、虐待を受けていると思われる高齢者を発見した場合市町村に通報しなければならないと制定されています。 迅速に通報することで高齢者を救えます。

そのためには、地域住民や養介護施設従事者に通報義務や通報先を周知させなければいけません。

地域住民であれば講演会や相談会、養介護施設従事者であればコンプライアンスに関する研修や教育などを充実させ、通報の重要性を認知させる取り組みが必要です。

立ち入り調査

高齢者への虐待が疑われ、命に関わると判断した場合には住居や施設への立ち入り調査が可能です。

高齢者虐待防止法第三章第十一条では、高齢者への虐待が命の危機に当たるものだと市町村長が判断すれば、 地域包括支援センターもしくは介護に従事する職員が住居や施設に立ち入り調査ができると制定されています。

継続的な虐待で高齢者が重大な危険があると判断された場合は、立ち入り調査ができます。 必要によっては警察の援助も可能で、虐待があるかどうかを調査によって浮き彫りになることもあります。

介護施設の入居者へ地域住民と交流できる機会を作る

入居者と地域住民が交流できる機会を作ることで、養介護施設従事者の高齢者への虐待を防げます。 介護施設では入居者と職員だけで過ごす時間が多いため、虐待が起きている状況が周囲に伝わりにくくなります。

閉鎖的な空間では虐待が起きやすくなるので、開放的な環境を作る必要があります。 地域住民との交流があれば、虐待による身体的変化(傷やアザ)に気付きやすくなります。 また、高齢者も虐待を相談しやすくなり、虐待の深刻化を防げます。

まとめ

高齢者虐待防止法の定義や理念、虐待の種類や取り組みについて紹介してきました。 高齢者への虐待は身近なところで起こっている可能性があります。

様々な要因があって虐待は発生してしまいますが、どんな理由であれ虐待は見過ごしてはいけません。 高齢者への虐待が増加している現状を把握し、防ぐ意識を持っておきましょう。

お役立ちコラム一覧へ戻る