中心静脈栄養法とは?特徴やメリット・デメリット、余命なども解説!

2023.08.22
  • 介護の豆知識

中心静脈栄養法とは、心臓に近い太い静脈に挿入したカテーテルから、高カロリー輸液を点滴する方法です。確実に栄養を投与できるため、延命治療に使われることが多くあります。

この記事では、中心静脈栄養法の特徴や、メリット・デメリットを紹介。
注意点や余命などもまとめました。食事が取れない高齢者が行うこともあるのが中心静脈栄養法です。もしもの際に参考になるよう、詳しく紹介いたします。

中心静脈栄養法とは?延命治療に使われることが多い

中心静脈栄養法とは、心臓に近い太い静脈に挿入したカテーテルから、高カロリー輸液を点滴する方法。基本的に24時間かけて投与します。

長期間口から食べ物を摂取できなくなったり、胃や腸がうまく機能しなくなったりした場合に行います。また、延命治療に使われることが多い方法の一つです。例えば、末期がん患者が在宅生活を望んで自宅で行ったり、高齢者が食事を摂れなくなった際に行ったりします。

中心静脈栄養法で体内に挿入するカテーテルは、『体外式』と『皮下埋め込み式』の2種類です。

  • 体外式カテーテル…首や鎖骨、太もも付け根の静脈からカテーテルを挿入し、先端を心臓近くの太い静脈に留置。カテーテルの一部が体外に出ており、そこに点滴を接続します。
  • 皮下埋め込み式カテーテル…通称は『CVポート』。身体の中にカテーテル全てを埋め込むため、外出や入浴などに制限がないのが特徴です。点滴を接続する際は、毎回皮膚の上からポートに針を差し込む必要があります。

中心静脈栄養法は医療行為のため、介護福祉士や介護スタッフは行えません。そのため、療養型病院や、24時間看護体制が整った介護施設などが受け入れ可能となります。

中心静脈栄養法のメリット・デメリット

中心静脈栄養法には、長期間に渡って利用できたり、確実に栄養を投与できたりするなどのメリットがあります。しかし、消化管機能の低下や、介護者への負担などのデメリットも考えられます。

メリットとデメリットどちらが大きいのか判断するためには、両方の情報が必要です。この章で、詳しく紹介いたします。

中心静脈栄養法のメリット

中心静脈栄養法には、長期間利用できるなどのメリットがあります。

  • 長期間に渡り利用可能:正しく管理すれば、体内に挿入したカテーテルは長期間利用できます。交換のための受診も、基本的に必要ありません。
  • 確実に栄養を投与できる:中心静脈は抹消静脈に比べて太いため、血液量が多く、血流も早くなります。そのため、糖濃度の高い輸液を確実に投与できます。
  • 消化器官への負担を軽減:中心静脈栄養法では、消化管を利用せずに栄養・水分を投与。病気や症状によって、消化器官に負担をかけられない方でも投与が可能です。

その他にも、自宅でも実施可能、入浴や外出への制限がない場合もあるなどのメリットがあります。

中心静脈栄養法のデメリット

中心静脈栄養法には、カテーテルを挿入する処置や手術がいるなどのデメリットがあります。

  • カテーテルを挿入する処置や手術が必要:カテーテルを体内に挿入するため、処置や手術が必要となります。経鼻胃管への挿入に比べると、合併症のリスクが増加。考えられる合併症は、麻酔によるショックや動脈損傷、気胸などです。
  • 消化器官の機能が低下する:長期の絶食により、消化官の機能が低下する恐れがあります。使わなくなった腸の粘膜が萎縮すると、腸内環境が変化し感染症を発症しやすくなります。
  • 介護者に負担がかかる:在宅で中心静脈栄養法を実施する場合、介護者は輸血バッグの交換などの医療的管理を行う必要があります。カテーテルによる感染症や合併症のリスクにも注意が必要。慣れない医療的管理は、介護者に負担を強いる可能性があります。

中心静脈栄養法の注意点

中心静脈栄養法には、合併症を伴う可能性やカテーテルの自己抜去による出血などの注意点があります。中心静脈栄養法は、在宅介護でも実施可能。安全に実施するためには、注意点を知っておくと安心です。

この章では、中心静脈栄養法の注意点4つを詳しく紹介いたします。

感染症によるトラブルが起こる可能性がある

中心静脈栄養法の注意点の一つに、感染症によるトラブルが起こる可能性があります。静脈に挿入したカテーテルの一部が体外に出ている体外式では、チューブ挿入部を清潔に保たなくてはいけません。

汗や浸出液による汚染や薬剤の付着により、感染症を引き起こす可能性があるためです。血管や血液への感染で怖いのは敗血症。敗血性ショックを起こすと生死に関わる場合もあります。以下の症状に注意が必要です。

  • カテーテル挿入部の腫れや発赤
  • カテーテル挿入部から膿が出ている
  • 発熱

挿入部を保護するフィルムテープは1週間に1回、ガーゼやその他の保護テープを使用する場合、週2回程度は交換が必須です。汚染したり入浴などで濡れたりしたら、その都度交換するようにしましょう。

合併症を伴う可能性がある

中心静脈栄養法では、合併症に注意しなくてはいけません。起こりうる合併症は、以下の通りです。

  • 高血糖・低血糖:高濃度糖質を投与するため、血糖値の変動が起きやすくなります。意識障害や嘔吐、喉の渇きなどの症状に注意が必要。また、中心静脈栄養法からの離脱時は、低血糖になりやすくなります。
  • 血栓症:血栓が血管に詰まる病気。血管に刺したカテーテルが刺激となるため、血栓ができやすくなります。大きくなった血栓が脳や肺などの血管に詰まると、命に関わる場合もあり、注意が必要です。血栓ができると、点滴の落ちが悪い、発熱やむくみが見られるといった特徴があります。
  • 高トリグリセリド血症:脂肪乳剤を投与することにより、高脂血症になること。動脈硬化などを引き起こす恐れがあるため、定期的に医師の診察・様子観察が必要です。

上記以外にも、電解質異常やビタミン欠乏症、微量元素欠乏などがあります。

カテーテルの自己抜去による出血など

中心静脈栄養法では、カテーテルの自己抜去による出血に注意が必要です。カテーテルが抜けてしまうと、出血を起こしたり感染症を引き起こしたりする恐れがあります。

誤って抜けないように、カテーテルをテープで固定する、輸血ルートを安全ピンで服に固定するなどして予防しましょう。また、認知症の方は特に注意が必要。

カテーテルの必要性を理解できず、違和感を感じ自己抜去するリスクが高いためです。万が一カテーテルが抜けてしまった場合は、点滴をすぐに中止し、医師や看護師に連絡して指示に従ってください。

ねじれなどによる点滴の閉塞

中心静脈栄養法の点滴ルートは、ねじれなどが原因で閉塞する場合があり、注意が必要です。点滴がうまく落ちない時には、カテーテルや点滴ルートがねじれていないか確認してください。ねじれを整えれば解消されます。

ねじれを整えても点滴が落ちない場合は、カテーテルが破れていたり、カテーテルの位置がずれていたりする可能性があります。医師や看護師に連絡しましょう。また、カテーテル内に逆流が見られる場合は、血栓によるカテーテル閉塞の可能性も考えられます。

その場合は、吸引による血液除去、または薬剤による血液溶解を実施。完全に閉塞してしまった場合は、カテーテルの入れ替えや、再挿入が必要となります。

中心静脈栄養法を行ったら余命はどのくらい伸びる?

中心静脈栄養法を行うと、余命が平均6~8か月ほど伸びるという説があります。口から食事が取れない期間が長期間となる場合、中心静脈栄養法を用います。

中心静脈に高カロリーの輸液を投与し、栄養不足や脱水症状を予防。結果、余命が伸びると考えられます。

しかし、高齢者の延命治療として中心静脈栄養法を実施する場合は注意が必要です。寿命が近づくと、人体は水分を体外に排出する力が低下します。中心静脈栄養法で継続して水分を投与すると、排出しきれない水分が体内に溜まります。

結果、全身のむくみや痰の増加などを引き起こす場合もあるのです。中心静脈栄養法は余命を伸ばせる可能性がありますが、長期間実施するとむくみなどのリスクもあります。本人と家族で、将来の延命治療について意思を確認しておくことは大切です。

中心静脈栄養法から口での食事に回復することはある?

中心静脈栄養法で栄養状態が改善すれば、口での食事に回復する場合もあります。また、中心静脈栄養法を継続しながら、口からも食事を摂る方法もあります。

ただし、長期間中心静脈栄養法をしていると、食べ物を噛んだり飲み込んだりする力が低下する恐れがあります。誤嚥の危険性が高い場合、口からの食事に回復するのは困難です。

口からの食事を開始するためには、以下の点が重要です。

  • 口腔ケアを行う:口腔機能を出来るだけ維持するためには、中心静脈栄養法の実施中も口腔ケアを行いましょう。口腔内の清潔を保てば、誤嚥性肺炎の予防や味覚感覚の維持に繋がります。
  • 口腔リハビリの実施:言語聴覚士や歯科医、看護師などの専門家による口腔リハビリがあります。食べ物を噛んだり、飲み込んだりする力の維持や向上を目指します。
    口からの食事や口腔リハビリを開始するかは、口腔機能や消化機能の状態を見て判断する必要がありますので、医師など専門家に相談し、指示に従って徐々に行いましょう。

まとめ

中心静脈栄養法とは、延命治療に使われることが多い、高カロリー輸液を点滴する方法。消化管機能の低下や、介護者への負担などのデメリットがあります。しかし、長期間利用できることや消化器官への負担を軽減するなどのメリットも多くあります。

注意点は、合併症を伴う可能性やカテーテルの自己抜去による出血などです。高齢で寿命が近い場合は、全身のむくみなどが起きるリスクに注意が必要です。また、栄養状態が改善されれば、口での食事に回復する場合もあります。回復の時期は、医師など専門化の判断に従いましょう。

中心静脈栄養法は、病気や高齢が理由でどなたでも行う可能性があります。記事を参考に、知識を持っておくと安心です。

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