中心静脈栄養法とは、心臓に近い太い静脈に挿入したカテーテルから、高カロリー輸液を点滴する方法です。確実に栄養を投与できるため、延命治療に使われることが多くあります。
この記事では、中心静脈栄養法の特徴や、メリット・デメリットを紹介。
注意点や余命などもまとめました。食事が取れない高齢者が行うこともあるのが中心静脈栄養法です。もしもの際に参考になるよう、詳しく紹介いたします。
目次
中心静脈栄養法とは、心臓に近い太い静脈に挿入したカテーテルから、高カロリー輸液を点滴する方法。基本的に24時間かけて投与します。
長期間口から食べ物を摂取できなくなったり、胃や腸がうまく機能しなくなったりした場合に行います。また、延命治療に使われることが多い方法の一つです。例えば、末期がん患者が在宅生活を望んで自宅で行ったり、高齢者が食事を摂れなくなった際に行ったりします。
中心静脈栄養法で体内に挿入するカテーテルは、『体外式』と『皮下埋め込み式』の2種類です。
中心静脈栄養法は医療行為のため、介護福祉士や介護スタッフは行えません。そのため、療養型病院や、24時間看護体制が整った介護施設などが受け入れ可能となります。
中心静脈栄養法には、長期間に渡って利用できたり、確実に栄養を投与できたりするなどのメリットがあります。しかし、消化管機能の低下や、介護者への負担などのデメリットも考えられます。
メリットとデメリットどちらが大きいのか判断するためには、両方の情報が必要です。この章で、詳しく紹介いたします。
中心静脈栄養法には、長期間利用できるなどのメリットがあります。
その他にも、自宅でも実施可能、入浴や外出への制限がない場合もあるなどのメリットがあります。
中心静脈栄養法には、カテーテルを挿入する処置や手術がいるなどのデメリットがあります。
中心静脈栄養法には、合併症を伴う可能性やカテーテルの自己抜去による出血などの注意点があります。中心静脈栄養法は、在宅介護でも実施可能。安全に実施するためには、注意点を知っておくと安心です。
この章では、中心静脈栄養法の注意点4つを詳しく紹介いたします。
中心静脈栄養法の注意点の一つに、感染症によるトラブルが起こる可能性があります。静脈に挿入したカテーテルの一部が体外に出ている体外式では、チューブ挿入部を清潔に保たなくてはいけません。
汗や浸出液による汚染や薬剤の付着により、感染症を引き起こす可能性があるためです。血管や血液への感染で怖いのは敗血症。敗血性ショックを起こすと生死に関わる場合もあります。以下の症状に注意が必要です。
挿入部を保護するフィルムテープは1週間に1回、ガーゼやその他の保護テープを使用する場合、週2回程度は交換が必須です。汚染したり入浴などで濡れたりしたら、その都度交換するようにしましょう。
中心静脈栄養法では、合併症に注意しなくてはいけません。起こりうる合併症は、以下の通りです。
上記以外にも、電解質異常やビタミン欠乏症、微量元素欠乏などがあります。
中心静脈栄養法では、カテーテルの自己抜去による出血に注意が必要です。カテーテルが抜けてしまうと、出血を起こしたり感染症を引き起こしたりする恐れがあります。
誤って抜けないように、カテーテルをテープで固定する、輸血ルートを安全ピンで服に固定するなどして予防しましょう。また、認知症の方は特に注意が必要。
カテーテルの必要性を理解できず、違和感を感じ自己抜去するリスクが高いためです。万が一カテーテルが抜けてしまった場合は、点滴をすぐに中止し、医師や看護師に連絡して指示に従ってください。
中心静脈栄養法の点滴ルートは、ねじれなどが原因で閉塞する場合があり、注意が必要です。点滴がうまく落ちない時には、カテーテルや点滴ルートがねじれていないか確認してください。ねじれを整えれば解消されます。
ねじれを整えても点滴が落ちない場合は、カテーテルが破れていたり、カテーテルの位置がずれていたりする可能性があります。医師や看護師に連絡しましょう。また、カテーテル内に逆流が見られる場合は、血栓によるカテーテル閉塞の可能性も考えられます。
その場合は、吸引による血液除去、または薬剤による血液溶解を実施。完全に閉塞してしまった場合は、カテーテルの入れ替えや、再挿入が必要となります。
中心静脈栄養法を行うと、余命が平均6~8か月ほど伸びるという説があります。口から食事が取れない期間が長期間となる場合、中心静脈栄養法を用います。
中心静脈に高カロリーの輸液を投与し、栄養不足や脱水症状を予防。結果、余命が伸びると考えられます。
しかし、高齢者の延命治療として中心静脈栄養法を実施する場合は注意が必要です。寿命が近づくと、人体は水分を体外に排出する力が低下します。中心静脈栄養法で継続して水分を投与すると、排出しきれない水分が体内に溜まります。
結果、全身のむくみや痰の増加などを引き起こす場合もあるのです。中心静脈栄養法は余命を伸ばせる可能性がありますが、長期間実施するとむくみなどのリスクもあります。本人と家族で、将来の延命治療について意思を確認しておくことは大切です。
中心静脈栄養法で栄養状態が改善すれば、口での食事に回復する場合もあります。また、中心静脈栄養法を継続しながら、口からも食事を摂る方法もあります。
ただし、長期間中心静脈栄養法をしていると、食べ物を噛んだり飲み込んだりする力が低下する恐れがあります。誤嚥の危険性が高い場合、口からの食事に回復するのは困難です。
口からの食事を開始するためには、以下の点が重要です。
中心静脈栄養法とは、延命治療に使われることが多い、高カロリー輸液を点滴する方法。消化管機能の低下や、介護者への負担などのデメリットがあります。しかし、長期間利用できることや消化器官への負担を軽減するなどのメリットも多くあります。
注意点は、合併症を伴う可能性やカテーテルの自己抜去による出血などです。高齢で寿命が近い場合は、全身のむくみなどが起きるリスクに注意が必要です。また、栄養状態が改善されれば、口での食事に回復する場合もあります。回復の時期は、医師など専門化の判断に従いましょう。
中心静脈栄養法は、病気や高齢が理由でどなたでも行う可能性があります。記事を参考に、知識を持っておくと安心です。