高齢者の水分摂取について解説|目安や介護時の注意点なども

2023.08.24
  • 介護の豆知識

高齢者は、若い人と比べて脱水症や熱中症になりやすく、注意が必要。水分摂取は、高齢者にとって体調管理における重要な役割を持っています。

この記事では、高齢者の水分摂取量の目安を、食事と飲み物に分けて詳しく紹介。また、介護が必要な方の水分補給時に注意すべき点もまとめました。

水分補給は、摂取量などを誤ると様々なリスクがあります。あなたやご家族の健康に役立つ、水分摂取の情報をご紹介いたします。

高齢者の適切な水分摂取量とは?

高齢者の適切な水分摂取量は、厚生労働省の発表によると1日当たり2.5リットルが目安です。※厚生労働省『健康のために水を飲もう講座』より

1日の水分摂取量は、飲み水だけでなく食事から得る水や体内で作られる水(0.3リットル)で構成されます。また、体外に排出される水分量も1日当たり2.5リットルとなっています。

この章では、高齢者の1日の水分摂取量について、食事や飲み水で得る水分の目安量を解説。
あなたやご家族の健康管理のために、適切な水分摂取量の目安を把握しましょう。

食事での摂取量目安

高齢者が一日で取る食事での水分摂取量の目安は、およそ1.0リットルです。高齢者は喉の渇きを感じにくくなるなどの理由で、飲み水での水分補給を積極的にしない方がいます。

食事でなら抵抗なく水分補給が行え、栄養も取れます。水分を多く含んだ食事内容を心がけましょう。水分を多く含む食事の一例は、以下の通り。

  • みそ汁やポタージュなどの汁物
  • 切り干し大根
  • ほうれん草のお浸し
  • 果物やゼリーなどのデザート

食事でなら、水分だけでなく脱水症予防に必要な塩分や糖分も摂取できます。

飲み物での摂取量目安

高齢者が一日で取る飲み物での水分摂取量の目安は、およそ1.2リットルです。コップ1杯が200mlとして、一日6杯以上が目安です。

高齢者の水分補給には、何がいいのでしょうか。おすすめの飲み物は、以下の通り。

  • 水や白湯
  • 麦茶
  • 経口補水液
  • スポーツドリンク(体液と同じ濃さのアイソトニック飲料)

冷たい飲み物は胃腸に負担をかけるため、出来れば常温、もしくは40~50度の飲み物が良いでしょう。経口補水液は塩分、スポーツドリンクには糖分が含まれるため、取りすぎには注意が必要。

スポーツドリンクは3倍くらいに薄めるのがおすすめです。また、コーヒーや紅茶、緑茶などのカフェインを含む飲み物や、アルコールには利尿作用があります。水分補給には向きません。

水分の取りすぎ、取らないのも注意

水分は、取りすぎ・取らない両方に注意が必要。水分の取りすぎは心不全や水中毒など、取らないと脱水症や熱中症などを引き起こします。

この章では、高齢者が水分を取りすぎたり取らなかったりした場合のリスクをまとめました。
水分補給の重要性をより理解して頂くために、詳しく紹介します。

水分の取りすぎによるリスク

水分の取りすぎは、心不全や腎不全、水中毒のリスクがあります。高齢者の1日で取る水分摂取量の目安は2.5リットル。そのうち、飲み水は1.2リットル程度です。

高齢者は、加齢により心臓や腎臓の働きが低下しています。1日の目安量を大幅に超えて水分を取りすぎたり、1時間に1リットル以上摂取したりするのは要注意。

腎臓が水分を処理しきれなくなり、体内に水分が溜まります。結果、心不全や腎不全を起こすリスクが上がるのです。

また、水分を取りすぎると血液中の塩分濃度が薄まり、水中毒を起こす恐れがあります。水中毒の症状は、頭痛やめまい、下痢や頻尿などがあり、重症化すると呼吸困難や意識障害を起こすため、注意が必要です。

水分を取らないリスク

水分を取らないと、脱水症や熱中症、脳梗塞や心筋梗塞を起こすリスクがあります。高齢者は、体内に水分を蓄える機能や、体温調節機能が低下しやすいため、脱水症や熱中症が起きやすくなります。

脱水症の症状は、以下の通りです。

  • 唇や口腔内が乾燥している
  • 皮膚や脇の下が乾燥している
  • 皮膚をつまんで離しても、3秒以内に元に戻らない
  • 倦怠感やめまい、ふらつき
  • 手足が冷たい

中度の脱水症になると、頭痛や吐き気、嘔吐などが現れます。重度になると、意識障害やけいれんを起こし、命に関わるため注意が必要です。

熱中症の症状は、めまいや失神、手足のしびれ、嘔吐や下痢など。高齢者は喉の渇きや暑さを感じにくいため、こまめな水分補給や室温調整を心がけましょう。

また、水分を取らないと血液中の水分が減少し、血液の濃度が濃くなり脳梗塞や心筋梗塞のリスクが上がります。

介護が必要な方の水分補給

高齢者の中でも、介護が必要な方の水分補給には特に注意が必要です。水分補給をしたがらなかったり、嚥下(えんげ)状態が低下し摂取が難しかったりする場合があります。

この章では、介護が必要な方の水分補給について、注意点を紹介。対応策もまとめました。高齢者の脱水症状を防ぐためには、介護者による水分補給の対応が重要です。ぜひ参考にしてください。

時間と量を決める

高齢者で介護が必要な方は、水分補給をこまめにしない方がいます。理由は、喉の渇きを感じにくくなったり、トイレの回数が増えることを気にしたりなど様々。

しかし、適切な水分摂取量を補給しなければ、脱水症などになりかねません。寝たきりの高齢者の場合は、自分で水分を摂取することが困難なため、さらに注意が必要です。

まずは、高齢者に水分摂取量の目安と必要性を説明し、理解を得ましょう。高齢者の水分摂取量は、計算すると『体重×30ml』が目安。寝たきりの方の場合は、2~2.4リットルが目安です。

また、介護や看護をする上で定期的に水分補給ができるように、時間と量を決めても良いでしょう。
毎食事時に加え、起床時、10時、15時、就寝前に、各コップ一杯(約200ml)の水分補給がおすすめです。

記録を付ける

介護が必要な高齢者の方は、水分摂取量の記録を付けると安心です。高齢者は、あまり水分を摂取したがらなかったり自力での摂取が難しかったりと、十分な水分補給ができないことも。

また、体内に水分を留める機能も低下しているため、脱水症状に注意が必要です。介護をする方は、高齢者の脱水症状を防ぐためにも水分摂取量を把握することが重要。

そのために、食事や飲み水の摂取量を記録に付けましょう。1日の水分が不足、もしくは取りすぎか把握しやすくなります。

塩分も摂取する

介護時の水分補給の注意点に、塩分の摂取があります。脱水状態は、水分だけでなく血液の塩分濃度も不足しています。水分ばかり摂り続けると、塩分濃度がさらに低下。

体は塩分濃度を上げるために体内の水分を排出してしまい、さらなる脱水症状を引き起こします。水分補給と同時に、塩分も摂取しましょう。

では、高齢者が水分補給で塩分も摂取できる飲み物は、何がいいのでしょうか。脱水症状の対策として、スポーツドリンクを飲用される方も多いでしょう。

しかし、市販のスポーツドリンクは糖分を多く含み、塩分は少なく注意が必要。3倍くらいに薄め、少し塩分を足すのが適切です。

自作の経口補水液もおすすめ。以下の材料で作ることができます。

  • 水…1リットル
  • 砂糖…小さじ4
  • 塩…小さじ1/2

認知症の方など嫌がる場合は無理やり飲ませない

認知症の方は、認知機能の低下により水分補給の重要性が理解できなかったり、自力での水分摂取が難しかったりします。

また、高齢者は気分や体調、食欲の低下などにより、水分補給を拒むことも。認知症の方など嫌がる場合は、無理やり飲ませてはいけません。さらに拒否感が高まる可能性があります。

なぜ水分補給を嫌がるのか、理由を聞き解決策を講じましょう。また、水分補給の必要性を説明することも重要。

無理強いはせずに、横で一緒に食事を摂ったりティータイムを用意したりして、楽しむ環境を整えましょう。飲み水での摂取が難しければ、みそ汁やスープ、ゼリーや果物などもおすすめです。

嚥下(えんげ)障害がある方にはゼリー状などに

介護が必要な高齢者は、舌やのどの老化により、嚥下機能が低下し誤嚥(ごえん)の危険性があります。嚥下障害がある方には、水分にとろみを付けたり、ゼリー状にしたりすると良いでしょう。

誤嚥は、窒息や誤嚥性肺炎を招き大変危険です。とろみ剤やゼリータイプの飲料を活用すれば、誤嚥を防げます。ポタージュスープもおすすめ。適度にとろみが付いて飲みやすく、また、高齢者に不足しがちな栄養も摂取できます。

また、嚥下障害のある方は、水分補給時に体勢を整えることも重要。椅子に深くこしかけたり、ベッドの頭部をギャッチアップしたりして、水分を摂取しやすい体勢をとりましょう。

まとめ

高齢者の適切な水分摂取量は、1日当たり2.5リットルが目安。食事で1.0リットル、飲み水で1.2リットル、体内で作られる水0.3リットルで構成されます。

1日の目安量より水分を取りすぎると、心不全や腎不全、水中毒のリスクがあります。また逆に取らないと、脱水症や熱中症、心筋梗塞や脳梗塞を起こすリスクに注意が必要です。

介護が必要な方の水分補給には、水分摂取量の記録を付ける、塩分も摂取するなどの注意点があります。高齢者は周囲の人が気を付けないと、なかなか目安量の水分摂取が難しいものです。

水分補給の摂取量や方法を見直し、ご家族の健康を守りましょう。ぜひ記事の内容をご活用ください。

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