リエイの快護〈好事例~その1〉癒しのデイサービス船橋東
奥様とカラオケに出かけるのが好きだったA様。認知症の症状が進み、夫婦2人での生活は奥様の負担が増えつつあり、週1回、デイサービスに通っていただくことになりました。
「おはようございます!癒しのデイサービスです。本日からよろしくお願い致します!」と挨拶すると、A様は困惑された表情で乗車をためらっていらっしゃいました。すると車内から「ここ(隣の席)いらっしゃい。どうぞ」と声がかかりました。ご近所で顔見知りのY様が、たまたま同じ曜日の利用でした。A様が顔見知りとして認識できていたかはわかりませんが、同世代の方から声をかけていただいたことで少し安心されたのか、戸惑いながらも送迎車に乗っていただくことが出来ました。
「どうして私はここに来たのか」
「どうして連れてこられてしまったのか」
「私は何をしにここへ来たのか」
眉間にしわをよせ、とても険しい表情。
なかなか玄関から奥に入っていただけませんでした。
「お茶を召し上がりませんか?」と再度お席に案内してみても
「何かの手違いでここに来てしまった」
「帰らせてください!」
興奮状態のため少しでも落ち着いていただこうと、スタッフが代わる代わるA様のお話を聴きましたが、何のお話をしても落ち着いてはいただけませんでした。他の利用者様との会話もままならず、ますます興奮状態に。
まずはスタッフ全員がA様とお話しできるようにならなければ・・・
A様が興味のあるものって何だろう?
楽しいと感じることって何だろう?
A様に穏やかにお過ごしいただくための職員の奮闘が始まりました。
お昼になり「お食事の用意ができました」と声をかけると「私は家でもお昼ご飯は食べていないので!」
「私は食べません」
「いただけません!」と頑な。
「奥様が昼食の予約を取ってくださっています。せっかくですから召し上がりませんか?」
「よろしければ温かいうちにお召し上がりください。」
「食べられる分だけでも構いませんので、どうぞ」など色々なアプローチをしてみましたが結局その日は一口も召し上がっていただけず、お帰りの時間になってしまいました。
やはり来所時は「私はどうしてここに来てしまったのか」と不安な様子。
しかし昼食は召し上がっていただくことに成功!
自席ではなくスタッフと一緒のテーブルに「お茶だけでも」とお声かけしたところ着席していただけたので、そこで1人のスタッフが間髪入れずに「いただきます!」と手を合わせ先に食べ始めました。
するとA様もつられて「いただきます!」とお箸を持って食べ始めました!スタッフが更に「美味しいですね」と話しかけると「美味しい!美味しい!」と笑顔で召し上がられました。この日はほぼ完食!スタッフ同士で目を合わせ心の中でガッツポーズ!
2回目以降も来所されてからお昼くらいまでは落ち着かず、スタッフ1名がA様の傍に付き切りで、昼食も最初のひと月はスタッフと一緒でしたが、その後は他の利用者様と召し上がるようになりました。
やはり来所時は「私はどうしてここに来てしまったのか」と不安な様子。
しかし昼食は召し上がっていただくことに成功!
自席ではなくスタッフと一緒のテーブルに「お茶だけでも」とお声かけしたところ着席していただけたので、そこで1人のスタッフが間髪入れずに「いただきます!」と手を合わせ先に食べ始めました。するとA様もつられて「いただきます!」とお箸を持って食べ始めました!スタッフが更に「美味しいですね」と話しかけると「美味しい!美味しい!」と笑顔で召し上がられました。
この日はほぼ完食!スタッフ同士で目を合わせ心の中でガッツポーズ!
その後も回を重ねても、来所されると「どうしてここに来ているのか?」と不安な様子が続く為、昼頃まではスタッフ1名が常に付き添いました。
A様の様子に言動に変化が・・・・
「私はここに来なければいけない人間になってしまったのかなぁ」
「家にいると妻に迷惑ばかりかけている気がして・・・家でけんかしてしまうんですよ」
「自分はまだ現役で働けるくらいの力も体力も残っているのに・・・」
「こんなに元気なのに・・・」
若い頃からスポーツをされていたので全身筋肉質のアスリート体型。
認知症以外には悪いところがないくらいお元気。
だからこそ「まだ働けるのにどうして?」と思われているようでした。
その思いを徐々に受け入れようと、自分の中で消化しようと葛藤されているように見えました。
また、「私はここにいたら迷惑をかけてしまう」「妻にも何も言わずに出てきてしまった」
スタッフは最初、デイサービスに来たくないからの言動だろうと思っていましたが、何度も繰り返されるA様の言葉から、もしかしたら「周りの人に迷惑をかけたくない」という気持ちからなのでは?と思えてきました。
そう考えると初日の食事も「お食事」の仕方がわからなくなっていたのではないか?
だから2回目にスタッフが先に食べ始めた時それを見て一緒に召し上がっていただけたのではないか?
先日は、デイサービスの前で中に入ろうとされず、険しい表情で「私はここに来るべきじゃないです!帰らせてください!」と、今までにないくらい強く訴えられました。しばらく玄関先でお話をお聴きすると「わかりました!今日はここでお世話になりましょう!」と笑顔で言ってくださいました。しかし、そこには必死に自分自身に「気持ちを切り替えよう」とする「言い聞かせ」のように私たちは感じました。
笑顔の裏で、寂しさや悔しさに耐えているのが分かったとき、私たちはこの方の為に何ができるだろうかと考えました。
スタッフの話し合いの結果(デイサービスに通うことが、A様のやりがいに繋がるように)
・テーブル拭き
・消耗品をしまうお手伝い
・手すりや棚の消毒(他の利用者様と交流が持てるように)
・体操や機能訓練を他の方と同じタイミングで実施できるように声掛け
・麻雀に興味があるようなので、他の方がされているとき見学しませんか?と声掛け
不自然に案内するのではなく、きっかけ作りの為の優しい声掛けをすることに。
(NGワード)
「ご飯、しっかり食べてくださいね」
「デイサービスにいてくださるよう奥様から言われています」
「今日は1日ここで過ごしますよ」
A様に限ったことではありませんが、
“認知症になったからといって、すべてがわからなくなったわけではない”
“他者との会話が成り立たない方や、意思疎通が難しい方でも、自分のなかでは葛藤があるのかもしれない。どんな方でも悩みがあるのかもしれない”ということを忘れずに、利用者様お一人お一人と向き合っていくことが大切なのだと改めてスタッフ間で共有しました。
A様、ありがとうございます。これからもよろしくお願い致します。
リエイの介護施設の日々の取組み、利用者様との様々な事例から、心温まるエピソードをご紹介いたします。