特別養護老人ホーム、通称「特養」とは、病気や障害などを理由に要介護認定を受けた高齢者が、何らかの理由で自宅で生活することが困難となった場合に、 介護や看護のサポートを受けながら生活する入所施設です。
民間の有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅と比べて費用が安く、最期の看取りまで対応可能であることが魅力です。
この記事では、特別養護老人ホームの入所を考えている方の参考になるように、特養がどんなところなのか、サービス内容や費用、入所条件やメリット・デメリットについてわかりや すく解説していきます。
施設の入所を考えられているご本人やご家族の方や自宅での介護負担が大きくなってきている方など、特養に興味がある方は、ぜひ参考にしてみてください。
「特養」とは、高齢者が生活する施設のひとつです。
介護を必要とする高齢者が、自宅で生活することが困難になった場合に、入所して24時間生活の支援を受けることができます。
一般的に、市町村や社会福祉法人などが事業主体となっており、入所者は介護度に応じて費用を支払います。
民間の入居施設に比べ、比較的安い費用で入居することが可能です。
特養は、高齢者に必要な介護を提供するだけではなく、生活全般にわたるサポートを実施しています。
入所者には、個室や多床室などのお部屋を用意されており、食事・入浴・排泄といった日常的な必要な介護サービスが提供されるとともに、その方らしい生活が送れるように、リハビリテーションやレクリエーションなどのサービスも受けることができます。
同じ施設介護サービスとして、介護老人福祉施設という施設がありますが、特別養護老人ホームが必要な介護を受けながら長く生活することを前提いるのに対し、介護老人保健施設は介護を受けながらリハビリ等を行い、在宅復帰を目指す点で違いがあります。
高齢化が進む日本において、高齢者の介護や医療サービスを提供するために、特養は欠かせない施設となっています。
厚生労働省の『特別養護老人ホームの入所申込者の状況(令和4年度調査)』によると、全国の入所待機者は少なくとも23.3万人いるとされています。
介護が必要な高齢者やその方を支える家族の生活を支える重要な存在として、ますます注目されています。
特養が提供しているサービス内容としては、以下のようなことがあげられます。 ・日常生活の支援:食事・入浴・排泄など、日常生活を送るうえで必要な身体介護を専門知識と技術を持った介護スタッフが行います。
・医療と看護の連携:
施設の常駐医師または嘱託医等が、入所者の体調や状態に応じて必要な投薬や処置を行います。看護スタッフと連携しながら、入所者が安心して生活できるようにサポートします。
・行事やレクリエーションなど:
季節に合わせた行事やご利用者が楽しめるレクリエーションなどを提供します。音楽鑑賞や手芸、ゲーム、散歩など、入所者が興味を持てるようなプログラムが用意されています。
・訓練やリハビリテーション:
入所者の体力や認知機能を維持・向上するための訓練やリハビリテーションが提供されています。施設によっては、理学療法士や言語聴覚士などの専門のスタッフがおり、入所者に合ったプログラムを提供し、体力や認知機能の向上をサポートします。
特養は、介護が必要な高齢者の生活を支援するために様々なサービスを提供しています。入所者のニーズに合わせて、必要なサービスを実施しています。
特養の利用に掛かる費用としては以下のようなものがあります。
・介護サービス費:介護サービスを受けるために必要な費用です。基本サービス費と施設の体制や提供しているサービスに掛かる加算に分かれています。入所者の負担割合によって、利用した介護サービスに対して1~3割を負担します。
・食費:1日3食分の食事の費用になります。食費については、1食あたりの食費を設定している施設と1日あたりの食費を設定している施設があります。1日あたりの食費を設定している施設では、外出などで1食提供されなかったとしても、3食分の食費を支払う必要があります。
・日常生活費:おやつなどの嗜好品や医療費、レクリエーション等に掛かった費用のことです。
・居住費:部屋を利用するための費用です。入居されると、それぞれの入所者にお部屋が用意されます。居室のタイプによって、料金が変わります。
これらの費用は全て目安であり、施設によって異なる場合があります。
また、社会福祉減免や負担限度額認定証の交付を受けることにより、自己負担が軽減される場合もあります。
入所を検討する際には、事前に施設に問い合わせるなどして、詳しい費用の情報を確認することをおすすめします。
特養には、従来型とユニット型の2種類があり、それぞれで居室のタイプが異なります。
主な特養の居室のタイプと特徴を簡単に説明すると以下のようになります。
・多床室:従来型の特養にある居室のタイプです。2~4人部屋になっており、居室タイプの中では、最も費用が安く抑えられます。ひとりではないため、寂しさを感じることなく過ごせる反面、プライバシーが制限されるという点は注意が必要です。
・従来型個室:従来型の特養にある居室のタイプです。個室ということで、自分ひとりの空間をもつことができ、プライバシーが保たれるというメリットがあります。しかし、多床室に比べて料金は高くなります。
・ユニット型個室:ユニット型の特養にある居室のタイプです。個室を出てすぐに共同生活室という共有スペースがあり、ここで食事をしたり、レクリエーションが行われたりします。個室と共同生活室を気軽に行き来できるため、プライバシーが守られるとともに生活のメリハリがつけやすいというメリットがあります。しかし、従来型の個室に比べて、料金は高く設定されています。
居室は、入所者が基本的な生活をするスペースとなります。入所者の意向や居室の費用を考えた上で、それぞれに合った居室タイプを選択することが大切です。
特養に入所する条件は、以下のように定められています。
・65歳以上で、要介護3以上の認定を受けている高齢者
・40歳以上65歳未満で、特定疾病として認められた要介護3以上の認定を受けている方
・特例条件で入所が認められた要介護1または2の方
特養に入所するには「要介護認定」が必要です。要介護認定とは、介護保険制度に基づいて行われる認定で、高齢者の身体・認知機能・生活動作などを評価し、要介護度を5段階(要支援1・2、要介護1〜5)で判定するものです。
原則として要介護度が3以上の方が特養に入所できます。
よって、いずれ特養に入所したいと考えられていても、要介護3以上の認定を受けていないと、申し込みを受け付けてもらえないため注意が必要です。
また、要介護1または2でも入所ができる特例の条件としては以下のことがあげられます。
・認知症で、日常生活に支障を来すような症状
・行動や意思疎通の困難さ等が頻繁に見られること
・家族等の深刻な虐待が疑われること等により、心身の安全・安心の確保が困難であること
・単身世帯である、または同居家族が高齢又は病弱である等により家族等の支援が期待できず、利用する居宅介護サービスのみでは生活支援の供給が不十分であること。
このような場合は、在宅での生活が困難であると考えられ、入所できる可能性があります。
以上が、特養に入所するための基本的な条件についての説明です。要介護認定のほか、それぞれの特養の体制や健康状態の評価、入所費用の負担など、いろいろな要素が入所には必要になります。
入所を検討している施設がある場合は、事前に相談することをおすすめします。
特養には、入所者やご家族にとって様々なメリットやデメリットがあります。以下では、それぞれのポイントについて詳しく解説していきます。
まず、メリットとしては以下の3つがあげられます。
・費用が安い:民間の有料老人ホームなどのように入居一時金などがありません。また、所得に応じた減免制度なども設けられているため、入所施設としては比較的費用を安く抑えることができます。
・必要なサービスを24時間受けられる:介護スタッフは24時間常駐しているため、生活に必要な介護を受けたり、健康状態に応じた対応をしてくれたりします。そのため、入所者自身やご家族が安心して生活をすることができます。
・最期まで対応してもらえる:特養は、ほとんどの施設で看取り対応を行っています。長期入所が前提となる中で、慣れた環境で必要な介護や支援を受けながら終身まで対応してもらうことができます。
デメリットについては、以下の2つがあげられます。
・申し込みから入所までの待機期間が長い:一時期より待機者数は減少していますが、入所までの待機期間が数年かかることも少なくありません。特養は費用が安いため、入所施設の中では人気が高く、地域差はありますが入所まである程度待つ必要があることを理解しておきましょう。
・対応できないケースがある:特養は24時間の看護師の配置が義務付けられていません。そのため、医療的ケアが必要になってくると特養では対応できなくなる場合があります。
以上が、特養についてのメリット・デメリットになります。入所を希望する際は、よく検討しておくことが必要です。
特養(特別養護老人ホーム)は高齢者が安心して暮らすことができる施設です。
今回は、特養のサービス内容や利用に掛かる費用、居室のタイプ、入所条件や特養のメリット・デメリットについて解説しました。
特養は、高齢者にとっては安心して暮らせる場所であり、入所することで生活の質を向上させることができます。
特養の入所を検討する場合は、入所条件や費用、家族との話し合いなどを考慮して、自分に合った施設を選ぶことが大切です。